2022.9.22

自社の離職率は高い?低い?日本の業界別離職率と下げる取り組みを解説

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離職率とは、一定期間のなかで退職した従業員の割合を表す指標のことである。今回は離職率とはどのようなものか、計算方法や数値が高い原因などを紹介する。数値を下げるための取り組みも解説するため、併せてチェックしよう。

日本における業界別の離職率

厚生労働省が発表した2021年1月~6月までの上半期の雇用動向調査結果の概要によると、年初の常用労働者数の割合に対する離職率は8.1%であった。ちなみに、同時期の入職率は8.6%あり、入職超過率は0.5ポイントだった。

日本における年初の常用労働者数の割合に対する業界別離職率は、以下のとおりである。

宿泊業・飲食サービス業……15.6%
教育・学習支援業……12.4%
生活関連サービス業・娯楽業……11.0%
サービス業(他に分類されないもの)……9.7%
医療・福祉……8.6%
学術研究・専門技術サービス業……7.6%
不動産業・物品賃貸業……7.4%
卸売業・小売業……6.9%

離職率の求め方についての詳細は後述するが、さまざまな計算方法がある。データを確認する際は、どのような計算方法をしているのかによって算出される数値が異なることに注意しよう。

参考:令和3年上半期雇用動向調査結果の概要(厚生労働省)

そもそも離職率とは?

求人情報や人事部門では、離職率に注目が集まっている。離職率とは、多くの場合は短い期間のなかで退職した従業員の割合を算出しているデータである。入社1年以内や3年以内などの期間に絞り、そのなかで従業員が離職してしまった率を算出しているものだ。

それでは、離職率とはどのようなものかと、算出する方法を詳しくチェックしていこう。

離職率とは

そもそも離職率とは、「一定期間内にどれほどの従業員がその仕事を辞めたのか」という定着率とは逆の割合を示したデータである。会社規模や属する業界、従業員の属性などによっても離職率の数値は大きく異なるため、企業における離職率の適正値といえるような値はない。ただし、同じ国や業界、企業のなかでの労働環境の変化をチェックしたいときには活用できるデータである。

人材流動化の高まりや人手不足の問題などにより、企業にとっては離職率を高めないようにすることの重要性が高まっている。「これほど人が辞めるのはなぜなのか」と感じたならば、離職率が高まっていないかをチェックするようにしよう。離職理由や改善すべき労働環境などを知り、離職率を下げる取り組みをすることで、企業として必要な優れた人材を確保しておけるかどうかにつながっていく。

関連記事:定着率とは?計算方法や業界別平均、5つの改善策を解説

離職率の求め方

離職率の定義や算出する際の計算方法は、とくに定義が決まっているものではない。そのため同じように離職率について書かれたデータであっても、求め方によっては算出する数値が大きく異なることに注意が必要である。

たとえば、厚生労働省が発表している雇用動向調査では、以下の計算式を使って離職率を算出しているものだ。

離職率=離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100(%)

たとえば、1月1日現在の常用労働者数が100名で10名が退職した企業の場合、「10 ÷ 100 × 100」=離職率10%となる。ちなみに、先述の厚生労働省のデータは6月までのデータとして計算されているものだ。

このほかにも、さまざまな求め方がある。起算日までの1年間の離職率を求める場合には、以下のように計算する。

離職率=起算日から1年間の離職者の数 ÷ 起算日における在籍者数 × 100(%)

もともと100名の雇用がある企業で離職者の数が10名おり、起算日における在籍者数が90名となった場合には、「10 ÷ 90 × 100」=離職率は約11%だ。 ちなみに、起算日までの間に新たに採用した人数は除いて計算する。

また、新卒社員が3年以内に離職した割合を調べるケースでは、以下のように算出しよう。

離職率=3年以内に離職した人数 ÷ 新卒社員の入社人数

たとえば10名の新卒社員を採用し、5名が3年以内に退職した場合には、「5 ÷ 10」=離職率は50%だ。

過去5年間で中途社員が1年以内に離職した割合を求める場合には、以下のように計算する。

離職率=過去5年間で採用後1年以内に離職した中途社員の数 ÷ 中途社員の入社人数

このように、元とするデータの違いによって離職率の計算方法は異なり、それぞれに算出される数値が変わるため注意が必要である。

参考:雇用動向調査:調査の結果‐用語の解説(厚生労働省)

離職率が高い場合の原因

離職する原因には、給与や評価への不満、職場の人間関係、企業の将来に対する不安などがある。また、評価・待遇の不全やハラスメントの横行、組織内のコミュニケーション不全やフォローアップ体制の不備などが離職率の高い労働環境の特徴である。離職率が高い場合には必要な人材が流出してしまう可能性があるため、離職率が高くなっている原因を見つけ出し、改善のための取り組みが必要だ。

ただし先述したとおり、離職率の求め方によっても算出される数値が異なる。さらに、従業員の年齢に偏りがある場合には一時的に離職率が上がったり、採用人数が少ない企業では1名が退職することでの上昇率が高かったりする。そのため、離職率の数値が高いからと言って労働環境などが良くないとは言い切れないため、参考程度に見ておこう。

関連記事:フォローアップの意味は?離職率との関連性や方法

離職率を下げるための取り組み

離職率を下げるためには、以下のような取り組みをすると良い。

・ 社員の退職理由を深堀する
・ 採用のミスマッチを防ぐ
・ 労働条件を見直す
・ 組織の心理的安全性を高める
・ スキルアップの機会を設ける
・ 評価制度を見直す

それぞれの取り組みについて詳しくチェックしていこう。

社員の退職理由を深堀する

離職率を下げるためには、本当の退職理由を深掘りすることが重要だ。たとえば職場の人間関係の悪化によってストレスを感じていることが本当の退職理由である場合には、理由さえわかっていれば配置転換などで人材の流出を防げるだろう。

このような本音を聞き出せるようにするためには、日頃からしっかりとコミュニケーションを取っておけるような取り組みが必要だ。

採用のミスマッチを防ぐ

採用のミスマッチを防ぐことでも離職率低下につなげられる。とくに新卒採用の場合には、自分に合わない仕事だったという理由で従業員が辞めていくことがある。

採用プロセスの見直しにより緻密な選考をすることで、自社に合わない社員を採用しないなどの取り組みでミスマッチを防ぐようにしよう。

関連記事:ミスマッチとは?企業やビジネスにおける定着率の高い組織をつくるための秘訣

労働条件を見直す

労働条件やワークライフバランスへの不満によって離職するケースもある。そのため、労働条件や労働環境を見直すことも、離職率低下につなげられる重要な取り組みのひとつだ。

福利厚生の充実やフレックスタイム制の導入などにより、労働条件や労働環境を見直せる。また、休暇を取得しやすい仕組みや企業文化を作ること、業務効率化の促進による残業時間削減などもおすすめだ。働く方の事情に応じて柔軟に働けるように、働き方改革を実施して労働環境を改善させていこう。

離職率が高い企業は、とくに働き方改革に積極的に取り組むことをおすすめする。

関連記事:週休3日制のメリット・デメリットは?導入が進む5つの企業事例もご紹介

組織の心理的安全性を高める

従業員のメンタルヘルスに関する取り組みを進めていき、従業員の心の健康を保持・増進していくことも、離職率を下げるための取り組みにおすすめだ。

メンタルヘルスの取り組みは、以下の4つを軸として進めていく。

<セルフケア>
メンタルヘルスやストレスを正しく理解する。ストレスを認識し、対処する。

<ラインによるケア>
職場環境の改善。相談への対応や支援など。

<事業場内産業保健スタッフなどによるケア>
事業場内産業保健スタッフなどが監督管理者や労働者を支援する。心の健康づくり計画の中心的な役割を果たす。

<事業場外資源によるケア>
事業外のサービスを活用する。ネットワークを形成する

人間関係の悩みを相談できる窓口を設置するなど、積極的にメンタルヘルスケアに取り組んでいこう。

関連記事:新入社員の心理的安全性を作る方法は?環境整備のポイントを解説

スキルアップの機会を設ける

従業員がスキルアップできるような機会を設けることも、離職率を下げるための取り組みにつながる。離職する理由のひとつに、仕事のやりがいや達成感がないことが挙げられている。逆に、資格の取得や任される仕事が増えていく、専門的なスキルが求められる、成長が感じやすいなどの業種は離職率が低くなるケースがあるようだ。

スキルアップの機会を設けることについては、裁量のある仕事を任せたり、新たな経験をさせたりなど、実力を積めるようにすると良いだろう。

関連記事:
OJTとOFF-JTの違いは?人材育成におけるやり方やメリット
リスキリングの意味は?リカレント教育との違い、取り組み事例5社を解説

評価制度を見直す

評価制度に納得感がないという理由が離職する理由になるケースもある。不平等な評価や不透明な評価制度になっていると評価制度に対する不満が溜まり、それが給与や企業自体に対する不満になることがあるため注意が必要だ。また、評価制度が良くないことでやりがいや達成感がないという印象も持たれてしまいかねない。

適切な目標の設定や定期的な面談の実施、評価制度の導入による評価の仕組みの開示など、公平で適切な評価ができるようにすると良いだろう。

関連記事:相対評価と絶対評価を分かりやすく解説。最近の傾向はどっち?

まとめ

離職率とは、「一定期間内にどれほどの従業員がその仕事を辞めたのか」という割合を示したデータである。離職率の定義や計算方法はとくに定義が決まっているものではない。そのため同じように離職率について書かれたデータであっても、求め方によっては算出する数値が大きく異なることに注意が必要である。

離職する際の原因には、給与や評価への不満、職場の人間関係、企業の将来に対する不安などがある。離職率が高い場合には必要な人材が流出してしまう可能性があるため、数値を減らせるように離職率が高くなっている原因を見つけ出し、改善のための取り組みをすると良いだろう。

離職率を下げるためには、以下のような取り組みがおすすめだ。

・ 社員の退職理由を深堀する
・ 採用のミスマッチを防ぐ
・ 労働条件を見直す
・ 組織の心理的安全性を高める
・ スキルアップの機会を設ける
・ 評価制度を見直す

これらの情報を理解して、実際の企業活動に役立てていこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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