2022.9.6

定着率とは?計算方法や業界別平均、5つの改善策を解説

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定着率とは、入社して一定期間を過ぎたときに、従業員がどれだけ定着しているかを表す指標のことである。今回は定着率とはどのようなものか、計算方法や業界別平均値、数値が低い原因などを紹介する。改善させる5つの主な取り組みも解説するため、併せてチェックしよう。

定着率とは?離職率との違い

定着率とは、入社した従業員がある一定期間を過ぎたときに、どれだけ自社に定着しているかを表す指標のことである。基本的には、入社から〇年経った時点で在籍している社員の割合から算出される。定着率が高いほど長く在籍する従業員が多く、定着率が低いほど短期間で退職してしまう従業員が多いことが確認できる数値だ。

採用活動にたくさんの時間と費用をかけて人材を獲得しても、なかなか定着してもらいにくいという企業は多い。定着率が低いと、せっかく確保した人材が流出してしまうことになるため、採用に必要なコストが高くついてしまいかねないのだ。

一方で定着率が高い企業は、従業員の離職が少なく、働きやすい環境が整備されていると考えられるだろう。そのため、社員の定着率は企業の魅力度を表す指標のひとつとしても注目されている。自社で働き続けたいと感じている従業員が多いことを伝えられるため、魅力的な企業であるとして求人広告などでよくアピールされている数値である。

一般的に、定着率は離職率と対になるデータとして扱われるものだ。離職率とは、従業員が入社してから一定期間経った時点で、どれだけの割合が離職したかを表す指標である。

同じ期間中のデータから算出した場合、離職していない割合を表す定着率と、離職した割合を表す離職率は、足して100%になる。

定着率の計算方法

先述のとおり定着率は、基本的に入社から〇年経った時点で在籍している社員の割合から算出される。ただし法的な定義はなく、計算方法が定められているわけでもない。定着率の計算方法は、以下のとおりだ。

・定着率=入社時点の社員数 ÷ 一定期間後に在籍している社員数 × 100(%)

同じ期間中のデータから算出した場合、離職していない割合を表す定着率と離職した割合を表す離職率は足して100%になる。そのため、もしも定着率を調べたい期間中の離職率を把握している場合には、以下の式でも算出可能だ。

・定着率=100%-離職率

これらの指標は、どれも一定期間後にどのような変化があったのかをもとにして算出している。そのため、計算によって得られた定着率は「入社から〇年後の定着率は〇%である」などと表現しよう。

ちなみに、厚生労働省が雇用動向の調査として用いる際の離職率の求め方は、以下のように定義している。

・離職率(%)=離職者数 ÷ 1月1日現在の常用労働者数 × 100 (%)

参考:厚生労働省「平成30年雇用動向調査結果の概況」

業界別で見る離職率平均

日本において新規学卒者を採用した際には、入社から3年経つとおよそ3割が退職するといわれているようだ。それをもとに、新卒募集の際に青少年雇用シートで開示する内容のなかには、直近3年間での採用者数と離職者数がある。このように、とくに3年目の定着率は重要な指標として扱われている。

また、入社する業界によっても離職率の平均が大きく異なるという特徴がある。新規学卒者の就職後3年以内における離職状況を取りまとめた厚生労働省のデータによると、2020年度に3年以内離職率の高かった産業は、以下のとおりとなっている。

・ 宿泊業・飲食サービス業
・ 生活関連サービス業・娯楽業
・ 教育・学習支援業
・ 医療、福祉
・ 小売業

高卒と大卒とで多少離職率の数値や順位が異なる。しかし、これらの離職率が高い上位5産業は、高卒と大卒のどちらも5位以内にすべてがランクインしてしまっている。なかでも、宿泊業・飲食サービス業は高卒でも大卒でも離職率がトップになっており、高卒で61.1%、大卒で51.5%もの割合の新規学卒者が3年以内に離職している。

そのほかの業種を含めて見てみると、2020年度における新規学卒者の離職率は、例年に比べて低下傾向であった。入社後3年以内の離職率は、新規高卒就職者で36.9%、新規大卒就職者で31.2%だったというデータが出ている。

このように、採用する業界によっても離職率の平均値は異なってくるものだ。

参考:
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況を公表します」
厚生労働省「令和3年上半期雇用動向調査結果の概要」

定着率が低い原因

HR総研が実施した「人材定着の取り組み」に関するアンケート結果から、人材の定着率の低さやその原因などについてチェックしていこう。「自社の人材の離職率についての実感」をアンケート調査した結果によると、離職率が適正値よりも高いと感じている企業は、全体の約3割以上にのぼる。この結果から、離職率の高さに課題を感じる企業が多く存在することがわかるだろう。(ProFuture株式会社/HR総研

<自社の人材の離職率についての実感(新入社員に限らず)>

グラフ:自社の人材の離職率についての実感

定着率が低く、離職につながってしまう原因として、職場の人間関係によるものだったと考えられているケースが多い。アンケート調査の結果によると、同率1位が「上司との人間関係」や「業務内容のミスマッチ」で38%、3位が「待遇(給与・福利厚生)」で32%、4位が「同僚・先輩・後輩との人間関係」で30%と続いている。

<離職率の原因だと感じていること>

グラフ:離職率の原因だと感じていること

定着率が低くなる原因は、企業規模によっても異なるようだ。たとえば、「社内でのキャリアアップが見込めない」という原因は、従業員数1,001名以上の企業において31%と多く、300名以下の企業では17%と少ない傾向を示したのである。

<企業規模別:離職の原因だと感じていること>

グラフ:企業規模別_離職の原因だと感じていること

定着率を改善させる5つの主な取り組み

定着率を改善させるための主な取り組みは、以下のとおりである。

・ 採用時のミスマッチを防ぐ
・ 社内コミュニケーションを促進させる
・ 人事評価制度を見直す
・ 人材配置を見直す
・ 社員のキャリア形成をサポートする

ちなみに、先述のHR総研が実施した「人材定着の取り組み」に関するアンケート結果では、企業が取り組んでいることに関するデータもある。離職リスクを早期に把握するために企業が取り組んでいることとして多いのは、1位が「評価時の面談」で43%、2位が「人事面談」で41%、3位が「サーベイ(社員満足度、エンゲージメント等)の実施」で31%だった。また、定着率向上への取り組みは、規模が大きな企業ほど対象を選抜したうえで実施しているようである。

<離職リスクの早期把握のために取り組んでいること>

グラフ:離職リスクの早期把握のために取り組んでいること

それでは、上記の定着率を改善させるための取り組みについて、それぞれ詳しくチェックしていこう。

採用時のミスマッチを防ぐ

定着率を改善させるためには、採用時のミスマッチを防ぐことが重要だ。仕事の実態が採用時に想像した社風や仕事内容、待遇と異なっていた場合には、退職につながるケースが多い。

ミスマッチを防ぐためには、採用活動の際に自社について実態よりも良いものとして伝えないことが重要だ。社内環境の実態などを伝えること、入社前の社内見学をすることなどで、実態をイメージしやすくするといいだろう。

関連記事:ミスマッチとは?企業やビジネスにおける定着率の高い組織をつくるための秘訣

社内コミュニケーションを促進させる

離職につながってしまう原因は、職場の人間関係によるものだと考えられているケースが多くある。社員間でコミュニケーションを取る機会を創出し、積極的な交流が生まれるようにすることで、風通しの良い職場作りをしていくことがおすすめだ。

また、マンツーマンの面談や1on1、メンター制度などを導入することも良いだろう。居心地が良いと感じられるような職場にして、定着率の向上を図っていこう。

関連記事:
1on1ミーティングとは?テレワーク・在宅勤務だからこその1on1の必要性とは
メンターとメンティーとは?制度として導入する目的や注意点
フォローアップの意味は?離職率との関連性や方法

人事評価制度を見直す

人事評価制度を見直すことも定着率の改善につなげられる。頑張っても昇給やキャリアアップにならないような環境では、従業員のモチベーションがダウンしてしまう。能力や成果が正当な評価を受けられる制度を整えることが重要だ。

今までの人事評価制度が上司による主観的な評価だったのであれば、客観的な視点での評価を取り入れると良いだろう。たとえば、同僚も含めた複数の評価者による360度評価を導入するなどとした場合、社員からの納得感や信頼感を得られやすい。

関連記事:テレワーク・在宅勤務での人事評価制度はどのように変わる?評価の軸はプロセスから成果へ

人材配置を見直す

従業員が持つそれぞれの能力や志向、経歴などにあわせて、人材配置を見直すことも重要だ。やりがいを感じられないような仕事では、離職につながってしまうことがある。従業員ごとの特徴を踏まえて適切な人材を配置することが、定着率を上げることになるのだ。

人材情報を見える化するタレントマネジメントというフレームワークを活用すると、人材配置や人材評価、社員教育などに役立てられるだろう。

関連記事:新卒の配属先を決める方法は?考え方や配属後に気をつけたいポイント

社員のキャリア形成をサポートする

社員のキャリア形成をサポートすることでも、定着率の向上につなげられる。成長を感じられないと従業員のモチベーションが下がってしまいやすいため、積極的に従業員の能力開発を支援するのがおすすめだ。人材ごとの特徴をもとにして育成し、知識を身に付けさせて能力を引き出していけたならば、企業へのエンゲージメントも向上できるだろう。

関連記事
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まとめ

定着率とは、入社してからある一定期間を過ぎた時点において、自社に定着している従業員の割合を表す指標のことである。定着率が高いほど長く在籍する従業員が多く、定着率が低いほど短期間で退職してしまう従業員が多いことが確認できる数値だ。定着率の計算方法は、以下のとおりである。

・定着率=入社時点の社員数 ÷ 一定期間後に在籍している社員数 × 100(%)

もしも定着率を調べたい期間中の離職率を把握している場合には、以下の式でも算出可能だ。

・定着率=100%-離職率

これらの指標は、どれも一定期間後にどのような変化があったのかをもとにして算出している。そのため、計算した定着率は「入社から〇年後の定着率は〇%である」などと表現しよう。

定着率が高い企業は、従業員の離職が少なく、働きやすい環境が整備されていると考えられるため、社員の定着率は企業の魅力度を表す指標のひとつとしても注目されている。定着率を改善させるための主な取り組みは、以下のとおりである。

・ 採用時のミスマッチを防ぐ
・ 社内コミュニケーションを促進させる
・ 人事評価制度を見直す
・ 人材配置を見直す
・ 社員のキャリア形成をサポートする

これらの情報を理解して、実際の企業活動に役立てていこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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