2020.9.3

採用サイトと採用オウンドメディアの違いとは?メリット・デメリットをご紹介

読了まで約 7

・目的に応じた自由な運用ができる採用オウンドメディア。
・採用オウンドメディアは、常にコンテンツを制作、発信していくことが可能。
・採用オウンドメディアのメリットとは?
・採用オウンドメディアのデメリットとその対応策とは?
・潜在ニーズまでを届けられるかどうかが優良コンテンツのカギ。
・採用オウンドメディア運用のコツとは?

採用サイトと採用オウンドメディアの違いとは?

企業が自前で運用するWebメディアを「オウンドメディア」というが、その中でも特に採用活動を目的としたものを「採用オウンドメディア」と呼ぶ。

採用オウンドメディアは、求人媒体とは異なり、サイトの全コンテンツを自社で設計・運用できるので、目的に応じた自由な運用ができることに強みがある。新卒採用などでよく制作される、いわゆる採用サイトも自前運用という意味ではオウンドメディアの1つということができる。

あらゆる情報をWeb上で取得するようになった現在、採用サイトは企業による採用戦略の中でも非常に重要な存在となっている。

では、自社で構築する採用サイトと採用オウンドメディアはどこが違うのだろう。

まず、採用オウンドメディアは採用サイトとは異なり、「コンテンツを比較的短いスパンで更新」し、「継続的に読者と繋がっている」点に特徴があるメディアだ。

採用サイトは、一般的に募集要綱、企業理念、事業・仕事紹介、求める人材像などで構成され、細部まで作り込まれた静的なサイトであることが多い。作り込んであるだけに、一度作成したコンテンツは更新頻度が低くなり、数年間更新されないこともある。また、更新頻度が低いだけでなく、定期的にアクセス解析を行っていない採用サイトが多く、企業側の一方的な発信に終始してしまうケースもままみられる。

一方、採用オウンドメディアは、ブログ記事など比較的更新の容易なコンテンツを組み合わせており、短いスパンで更新を行うのが特徴だ。そのため、読者の反応を見ながら、必要に応じてコンテンツをどんどん積み重ねていけることに価値がある。

このような更新頻度の違いに加え、求職者向けというターゲットを明確にする意味からも、採用オウンドメディアはコーポレートサイトとは分離して作成した方がよい。

しかし、採用を目的としたオウンドメディアでありながら、採用が目的とは表に出さず、つい読んでしまう楽しいコンテンツや有益な情報があるコンテンツとして発信し、潜在的なファンを獲得する手法を取ることも可能だ。企業ブランディングを高める目的の一環として、あえてコーポレートサイト内に置くということも考えてよい。

要は自社にとっての目的とターゲットを見極めて、コーポレートサイト、採用サイト、採用オウンドメディアの最適な切り分けを行い、運用していくことが重要なのだ。

・関連記事:求職者が『見たい!』と思う、採用オウンドメディアのコンテンツ例を解説

採用オウンドメディアのメリット・デメリット

採用オウンドメディアには次のようなメリットがある。主に採用サイトとの違いに着目して紹介しよう。

1.フォーマットに縛られないオリジナルのコンテンツを発信できる

例えば既存の求人ポータルサイトなどに掲載する場合、ページのデザインフォーマットや構造があらかじめ決められており、掲載できる写真の数や文字の量などに制限がある場合がほとんどだ。

一方、採用オウンドメディアであれば、社員自身の投稿記事や取材形式のインタビュー記事、動画による部署紹介といったコンテンツそのものを自由に企画することができる。

また、自社で運営する場合であっても、担当部署数名だけが窓口になって内容を決めていきがちな採用サイトと異なり、全社的にアイディアを募り、希望するメンバーなら誰でも企画に参画できる体制を作ることで、採用オウンドメディアが求心力となり、社内のエンゲージメントを高める効果も期待できる。

2.求職潜在層や他業種の人材にもアプローチできる

求人サイトは自社で作成したものであっても、基本的に就職や転職など求職意向が高い読者が閲覧するメディアだ。

これに対してオウンドメディアは、そのコンテンツ自体に興味があったり、会社そのものや業種、職種に興味のある人が読者となるため、いまのところ求職意向はそう高くないが、会社とのマッチ度が高いという、求職潜在層との接点になりやすい。

さらに、コンテンツを工夫すれば、職種や業種に関係のない部分でも会社に共感できるポイントを見出すことも多いので、これまで接点のなかった業界からの応募が望めるなどの効果も期待できる。

3.自社とのマッチ度が高い人材と出会える

採用オウンドメディアでは、既存のメディアでは伝えきれない企業のリアルな情報を自由に発信することにより、差別化と採用ブランディングに繋げることができる。

このため、自然と自社のカルチャーに共感したファン層を構成することができ、フィットする人材を獲得する可能性が高まり、入社後のミスマッチを減らすことも可能だ。

関連記事
ミスマッチとは?企業やビジネスにおける定着率の高い組織をつくるための秘訣
カルチャーフィットとは?新卒・中途採用のミスマッチを防ぐポイントを解説

4.アクセス解析を活用したPDCAで情報を資産化できる

従来の採用メディアによる採用手法では、出稿媒体でPVや応募数などはわかっても、細かい分析まではできないことが多く、選考離脱の理由分析などもエージェントの主観を介したレポートとなるため、その信頼性には疑問符がつくこともあった。

しかし、採用オウンドメディアでは、アクセス解析やSEOなどを施しやすく、自由に多彩な手法が使える。これらを活用すれば、どのコンテンツがよく読まれているのか、どのコンテンツがコンバージョン(CV)につながっているのかなどを知ることが可能だ。

こうしてコンテンツの内容、キーワード、応募へのアクションを促す仕組みなど、効果とその原因を分析・特定し、PDCAサイクルを回して改善していくことで情報を資産化し、より効果のあるメディアへと育てていくことができる。

・関連記事:PDCAサイクルの具体例を徹底解説します!成功・失敗の要因を説明!

5.都合のいいタイミングで情報発信できる

これは採用サイトにはない大きなメリットだ。

採用サイトは一度構築してしまうと全面リニューアルは難しく、少なくとも2〜3年のスパンでの見直しが妥当なところだ。更新性のあるコンテンツを組み込んでおくにしても、一部のページに限られてしまうことが多い。

これは、これまで主流だった新卒一括採用と就活ルールの存在が背景にある。

就活生が採用サイトを閲覧するのは限られた期間であり、次の年は一学年下の就活生が閲覧するだけなので、毎年リニューアルする必要がそれほどなかったのだ。

しかし、転職市場の拡大や通年採用などにより、採用メディアは常に閲覧されることになり、しかも情報が更新されていないと読者が離れるという状況になった。

・関連記事:通年採用とは?「新卒一括採用」との違いや近年広まる背景

一方で採用オウンドメディアは、更新性の高いコンテンツの集合体と見なすことができ、いくつかのコンテンツを積み重ねてあるので、このタイミングではこのコンテンツが更新され、次はこのコンテンツから情報が発信される、といったダイナミックな情報発信が可能だ。

では、採用オウンドメディアのデメリットにはどのようなものがあるだろう、対応策とともに紹介しよう。

1.長期的な運用体制を作らないと効果が出ない

採用オウンドメディアに即効性はほぼなく、継続運用することではじめて効果が出るものだ。

採用オウンドメディアを長期的に運用するためには、まずは責任者を配置し社内体制を固めることが重要だ。さらに一部では外部スタッフを活用するなど、事前の手間と準備がどうしても必要となる。

このため、採用オウンドメディアの立ち上げのために新たに人事を配置したり、体制を整えたりすることが難しい場合は、まずは自社の採用サイトを充実させるところからはじめるのが妥当だろう。

2.社内に協力体制がないと行き詰まる

そもそも、社内に情報発信を面白がる文化、少なくとも情報発信に協力的な文化がないと、採用オウンドメディアを運営することは厳しい。

例えば、運営担当者がリアルな情報を発信しようと経営層にインタビューを依頼しても、経営層が会社のリアルな声を伝えることを拒否したり、インタビューに出たくないと却下されたらコンテンツとして成り立たない。

そのため採用オウンドメディアを導入する際は、事前に自社の現状や文化にあっているかを十分に見極める必要がある。

もし、採用オウンドメディアの立ち上げが難しい場合でも、まずは、既存媒体に頼っていた採用サイトを自社運営とし、ここにオウンドメディア的な情報発信コンテンツを配置することで、社内の情報発信文化を醸成していく、という方向で進めていくことも可能だ。

採用オウンドメディア運用のポイント

良質な採用オウンドメディアは、求職者が本当に知りたい情報をわかりやすく届けるものであり、求職活動の質を向上させるコンテンツを有している。この視点で採用オウンドメディア運用のポイントを見てみたい。

ポイント1 経営理念の確認

採用オウンドメディアとコンテンツの最も根本となる基盤は経営理念だ。

その名称はミッション、ビジョン、行動指針、ミッションステートメントなど企業によりさまざまであるが、ほとんどの会社コーポレートサイトや採用サイトなどに掲げられているのではないだろうか。

しかし、その意味を社員が理解し、実践していないということもありうる。

単なるコトバではなく、自社らしさの根本である理念やパーパスを、経営トップと社員とで共有することなくしては、ユーザーの求職活動の質を向上させるコンテンツを発信することはできない。

もし自社の経営理念について社員の理解が進んでいない、実践されていないという場合は、ぜひ、そこから検討し直すべきだ。

・関連記事:ミッションとは?ビジョンとの違いやなぜ必要なのかを解説

ポイント2 ターゲットの明確化

次に重要なのは採用したいターゲット(求める人材像)の整理、明確化だ。

これからオウンドメディアを通してメッセージを届けるにあたり、ターゲットが整理できていなかったり、曖昧なままでは企業と求職者にミスマッチが生じることになる。

ジョブディスクリプションによって、任せる仕事内容や必要な能力、経験を明確化しておくことはもちろん、今後のキャリアや関心ごとなどペルソナを細かく突き詰めて設定しておくことで、発信するメッセージに一貫性が生まれ、採用に携わる関係者が共通認識を持ちやすくなる。

また、ペルソナを設定すると、どんな情報が喜ばれるのか、どんな情報が必要とされているのかが具体的に見えてくる。

・関連記事:採用マーケティングで重要な「ペルソナ」とは?その設計方法や具体例を解説

ポイント3 自社の魅力の整理・明確化

続いて、自社にどのような魅力があるのかを整理・明確化する。

これには社風・文化・理念・存在価値・強み・ミッション・社会貢献・働く仲間のことなどできる限り多くの魅力を洗い出しておきたい。

そのうえで、ターゲットに合わせてどんな方向性で魅力を訴えるのか、どうすれば差別化ができるかを整理、検討して明文化していくとよい。

ポイント4 コンテンツを制作する際の視点

次はオウンドメディアのコンテンツを設計、制作していくことになるが、これにはいくつもの要素があり、方法論があるのでその中のいくつかを紹介しよう。

経営理念が持つ要素からコンテンツを作成
例えば、

・ミッション:企業が果たすべき使命
・ビジョン:企業の見据える未来、実現したい未来
・バリュー:企業が持っている社会的な価値

など、経営理念が持つ要素を、それぞれのコンテンツに落とし込んでいくというトップからの視点。

また、ごく具体的にコンテンツの特徴を分け、それぞれを別の見せ方で発信することもできる。
例えば

・事業内容・ビジネスモデル:商品・サービス
・仕事内容:働き方、仕事内容
・人的魅力:働く仲間のキャラクター
・組織・風土:企業文化における
・会社基盤:知名度、企業規模、売上・利益など
・施設・環境:施設やオフィスといったハード面、勤務地など
・給与・福利厚生:給与・福利厚生面

などを整理してペルソナに発信するという方向だ。

どちらの場合も、単なる情報提供ではなく、その企業が仕事を通じて世の中に提供している価値や、そこに込めた社員たちの想いを届けるという視点からの発信が重要だ。

ポイント5 運用を続ける

オウンドメディアが構築できたら、あとは根気よく運用を続けることが重要だ。採用オウンドメディアの成功の可否を決めるのは、コンテンツの質と量であり、それはどちらも継続することでアップしていくからだ。

たとえば、週に一記事のペースで、と決めたら、そのペースを崩さずに行くことが大切であり、そのための計画を準備しておくとよい。

定期的な記事のアップはPV数を伸ばすことにもつながるが、それよりも、その企業に本当にフィットした人材に向けて、少しでも会社のことを知ってもらい、応募してもらうためのコンテンツを方が大切だ。そのため、無理なくコンスタントに続けられるペースを検討しておきたい。

ただし、頑張って週一のペースでコンテンツをアップしても、コンテンツ自体に魅力がないと読者は増えない。

とはいっても、前述のように「ユーザーが120%満足できるコンテンツ」をはじめから発信することは困難なので、例えば、社内外へのコミュニケーション全般を担う専門チームを社内で立ち上げ、ここにコンテンツ作成と発信のノウハウを蓄積していくことなどが有効な対応策となる。

まとめ

・採用オウンドメディアは、「コンテンツを比較的短いスパンで更新」し、「継続的に読者と繋がっている」点に特徴があるメディア。採用サイトは一度作成したら、コンテンツを頻繁に更新することはなく、数年経ったらリニューアルするメディア。という違いがある。

・自社にとっての目的とターゲットを見極めて、コーポレートサイト、採用サイト、採用オウンドメディアの最適な切り分けを行い、運用していくことが重要。

・採用オウンドメディアには、1.フォーマットに縛られないオリジナルのコンテンツを発信できる、2.求職潜在層や他業種の人材にもアプローチできる、3.自社とのマッチ度が高い人材と出会える、4.アクセス解析を活用したPDCAで情報を資産化できる、5.都合のいいタイミングで情報発信できる、というメリットがある。

・採用オウンドメディアには、1.長期的な運用体制を作らないと効果が出ない、2.社内に協力体制がないと行き詰まる、というデメリットがあるが、採用サイトの良さなどと組み合わせることで対応できる。

・採用オウンドメディアの立ち上げが難しい場合でも、まずは、既存媒体に頼っていた採用サイトを自社運営とし、ここにオウンドメディア的な情報発信コンテンツを配置することで、社内の情報発信文化を醸成していく、ということも可能。

・採用オウンドメディア運用のポイントには、1経営理念の確認、2ターゲットの明確化、3自社の魅力の整理・明確化、4コンテンツを制作する際の視点、5運用を続ける、という5つのポイントがある。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

get_field('cf_general_profile_name', 39);

『MarkeTRUNK』編集部

マーケターが知りたい情報や、今、読むべき記事を発信。Webマーケティングの基礎知識から
知っておきたいトレンドニュース、実践に役立つSEO最新事例など詳しく紹介します。
さらに人事・採用分野で注目を集める「採用マーケティング」に関する情報もお届けします。
独自の視点で、読んだ後から使えるマーケティング全般の情報を発信します。

関連記事 RELATED POSTS

関連資料ダウンロード RELATED POSTS

メルマガ会員登録で最新マーケティング情報やトレンド情報、セミナーイベント情報をチェック!

メールマガジンのサンプルはこちら