2022.1.25

採用ブランディングとは?取り組む目的、ポイントを解説!

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採用ブランディングとは、自社のイメージを高めてファンを増やし、自社に共感してくれる人材を確保するための戦略である。採用課題の解決策として注目されているが、デメリットもあるため注意しておこう。採用ブランディングの手法や取り組む際のポイントなどを解説する。

採用ブランディングとは?

採用ブランディングとは、自社のイメージを高めて優秀な人材の採用につなげることである。自社の魅力や価値をアピールして他社との差別化を図り、求職者に自社のファンになってもらうという狙いがある。

優れた人材を確保するのは簡単なことではない。採用戦略の見直しが求められる中、採用ブランディングは有効な手法として注目されている。

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そもそも「ブランディング」とは

ブランディングとは、「ブランドを構築する」を意味する「branding」に由来する言葉だ。自社の製品や商品、サービスが「自社ならではのもの」と消費者に認知されることを目指す事業戦略である。

そもそも「ブランド」とは、以下のように特定の商品を区別するための要素を指す。ブランドという言葉のイメージから高級品に限った概念と間違われやすいが、商品やサービスの価格は無関係である点に注意しよう。

・名称
・ロゴ
・商標
・キャッチコピー
・デザイン
・イメージ
・キャラクター
・シンボルマーク など

ブランディングは、さまざまな媒体を駆使してこれらのブランドを消費者に認知してもらう活動のことである。

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採用における意味

ブランディングを採用の分野に応用した手法は、採用ブランディングと呼ばれる。ブランディングが自社の商品やサービスを広める活動であるのに対し、採用ブランディングは自社をブランドとして扱うのが特徴だ。

企業理念やビジョン、会社の雰囲気といった情報を発信するなど、求職者に「ここで働きたい」と思わせるためのアプローチを行なう。Webサイトや採用説明会などを通して自社のイメージを向上させ、他社との差別化を図るとともに、自社のファンになってくれた求職者を採用することが目的だ。

膨大な情報が飛び交う現代社会では自社の情報が求職者に届きにくく、新卒・中途採用ともに優秀な人材を獲得するのは困難だろう。言い換えると、転職サイトや人材紹介会社などを活用した母集団形成だけでは人材を確保しにくくなっているのだ。

採用ブランディングは、このような人材獲得の課題を解決する方法として注目されている。

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採用ブランディングのメリット・デメリット

採用ブランディングは、人材採用やインナーブランディングにおいて大きな効果が期待できる。一方で、気軽に取り組める戦略ではない点はデメリットといえる。採用ブランディングの実施を検討する際は、以下のメリットとデメリットを理解しておこう。

メリット

採用ブランディングがもたらすメリットは主に以下の3つだ。

1.採用競合との人材獲得競争を有利に進められる
2.採用後のミスマッチを防止できる
3.インナーブランディングに繋がる

それぞれのメリットについて詳しく見ていこう。

採用競合との人材獲得競争が有利に

採用ブランディングを行なうと、採用競合との人材獲得競争を有利に進められる。採用ブランディングでは、採用サイトなどのWebサイトや採用オウンドメディア、SNSといったさまざまな媒体を駆使して自社のイメージを向上させるのが基本だ。

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情報発信の機会が増えることにより、自社に興味をもつ人はもちろん、それまで自社を知らなかった人にもアプローチできる可能性が高まる。たくさんの人に認知してもらえれば、求人に対する応募者の増加や入社意欲の向上が期待できるだろう。

また、採用ブランディングの初期段階では、自社の企業理念やビジョンなどを見つめ直し、他社との違いや自社の強みを洗い出すステップがある。他社との比較によって明確になった「他社には無くて自社にはあるもの」をアピールすれば、求職者に「この会社で働きたい」と思ってもらいやすくなるだろう。

人材獲得の競争が激化する中、自社に魅力を感じてくれた求職者を効率よく確保できるのは採用ブランディングの大きなメリットといえる。

採用後のミスマッチを防止する

求職者とのマッチングの精度が上がり、採用後のミスマッチを防止できるのもメリットの一つだ。採用ブランディングで自社に関するさまざまな情報を発信することは、求職者の企業理解を深めることに繋がるだろう。

情報を受け取った求職者は、企業が求める人物像や企業と自身のマッチ度を判断したうえで応募すると考えられる。自社に共感してくれる人材が集まることにより、採用後にギャップが生じて内定を辞退されたり、離職されたりするリスクを抑えられるだろう。

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インナーブランディングに繋がる

採用ブランディングのメリットとして、インナーブランディングに繋がる点も見逃せない。インナーブランディングとは、自社で働く社員が企業理念や自社の価値について深く理解し、共感する状態を目指すものである。

採用ブランディングにおいて発信された情報は、求職者だけではなく自社の社員も目にするだろう。求職者向けのメッセージを自社の社員が受け取ることで、企業理念や会社の価値を再認識する機会となり、モチベーションアップが期待できる。
採用ブランディングは自社の価値観にマッチする人材を確保できるだけではなく、既存社員の定着率の向上にも良い影響を与えるのだ。

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デメリット

採用ブランディングにはさまざまなメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在する。

1.短期的な採用成果には繋がらない
2.長期的にPDCAを回す必要がある

メリットだけを見て採用ブランディングを実施すると、なかなか成果が上がらずに途中で投げ出すことになりかねない。採用ブランディングを始める前に、デメリットについても押さえておこう。

短期的な採用成果には繋がらない

採用ブランディングは短期的な採用成果が見込めるものではない。例えば、WebサイトやSNSサイトなどで情報発信をしても、たくさんの人の目に留まるまでには時間を要する。

一般的な目安として、採用ブランディングを実施してから結果に繋がるまでにかかる期間は最低でも2〜3年だ。採用課題の解決策として有効であるが、即効性があるものではないと理解しておこう。

長期的にPDCAを回す必要がある

採用ブランディングは一度の施策で完結するものではないため、長期的にPDCAを回さなければいけない。企業イメージを向上・定着させるためには、取り組みに対する反響やサイトのアクセス数などを分析してブラッシュアップしていく必要がある。

古い情報を掲載しているとマイナスな印象を与えかねないため、発信する情報の鮮度にも配慮が必要だ。成果に繋げるためには、長期的な視点で試行錯誤を繰り返し、継続的に取り組むことが求められる。

関連記事:PDCAサイクルとは?他の手法との違いや定着させる方法、企業実例

取り組む際のポイント・手法とは?

採用ブランディングを実施する際には、知っておくべきポイントがいくつかある。併せて、情報発信にはどのようなやり方があるかを理解し、自社に合った手法を用いることも大切だ。

取り組むポイント

採用ブランディングでは、以下の3つのポイントを意識しよう。

1.自社が求める人材のペルソナを設定する
2.求職者視点で、自社がどのように見られたいかを明確にする
3.評価軸を決める

それぞれのポイントについて詳しく解説する。

自社が求める人材のペルソナを設定する

採用ブランディングを始める際は、「自社がどのような人材を求めているのか」を洗い出す必要がある。企業理念やミッション、ビジョン、バリューなどを見つめ直し、自社にマッチする人材について検討する作業だ。

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人物像を明確化するために役立つのが「ペルソナ」の設定である。ペルソナはマーケティング用語の一つで、商品やサービスを利用するであろう架空の人物を指す。採用ブランディングにおいては「自社が採用したい人物像」としてペルソナを設定する。

以下のように細かく項目を設定し、さまざまな角度から人物像を作り上げるのが基本だ。

・性別
・年齢
・学歴
・職歴
・専門知識やスキル
・趣味や特技
・価値観
・ライフスタイル
・人間関係 など

求める人物像を明確にすると、適切なメッセージや施策を考えやすくなる。また、採用したい人物像について自社内での認識のずれがなくなるため、共通認識を持ったうえで採用活動を進められるだろう。

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求職者視点で、自社がどのように見られたいかを明確にする

採用ブランディングでは、求職者に対して自社の魅力をアピールしなければいけない。その際に必要となるのが、求職者の視点に立って自社のイメージを考えることだ。

「自社がどのように見られたいか」を明確にすると、採用ブランディングの軸となる採用コンセプトを決定できる。採用コンセプトとは、自社の基本方針や自社が発信するメッセージのことだ。

採用コンセプトに一貫性を持たせると自社のブランド化が有利に進み、自社のイメージが浸透しやすくなる。その際に「求職者が魅力を感じるかどうか」を意識してメッセージを構築すれば、さらに共感を得やすくなるだろう。

評価軸を決める

採用ブランディングに取り組む場合、事前に評価軸を決定しておくことが大切である。自社が必要とする人材について、譲れない条件と重視しない条件を明確にしておくのだ。

大手企業では、条件をすべてクリアしなければ優れた人材でも採用されないケースが多い。しかし、大手企業が求める条件が自社にとって優先度の低いものであれば、その人材を自社で採用する価値は大いにあるだろう。

「自社が求めるもの・必要としないもの」を打ち出して採用ブランディングを展開することで、自社が求める人材を効率よく集められる。そのためには、採用ブランディングを実施する前に評価軸を整理し、自社にとって必要な条件を決めておく必要があるだろう。

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情報発信の主な手法

採用ブランディングで情報を発信する手法は主に3つある。

1.SNS
2.採用プラットフォーム
3.オウンドメディア

それぞれの特徴について詳しく見ていこう。

①SNS

採用ブランディングの手法としてSNSを活用する方法がある。SNSによって年齢層に違いはあるものの、特に若年層にリーチしやすいため、新卒採用において大きな効果を発揮するのが特徴だ。

日常的に使用されるツールであり、情報の拡散量が高いのもSNSならでは。テキストと一緒に画像や動画も発信できるため、求職者の企業理解が深まりやすいというメリットもある。

また、SNSを通じて求職者や転職潜在層と直接コミュニケーションを取ることも可能だ。継続して更新したり、ネットリテラシーを養ったりする必要はあるが、コストを抑えて幅広い人材にアプローチする手法としては有効といえる。

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②採用プラットフォーム

採用管理システムのように、採用に関する業務を一元的に管理できるプラットフォームを利用するのもいいだろう。採用管理システムとは、応募者の管理やスケジュール調整、採用サイトの作成などを一つのプラットフォーム上で行なえるシステムだ。

採用管理システムを導入すれば、採用業務にかかるコストや手間が削減され、採用ブランディングを効率的に進められる。業務効率の向上によって余力が生まれ、さらに採用戦略に時間をかけられることで、採用力の強化も期待できるだろう。

③オウンドメディア

採用ブランディングの手法の一つとして、オウンドメディアの運営が挙げられる。特に採用に特化したオウンドメディアは、求職者や潜在候補者にリーチすることを目的としており、自社に興味を持った人への情報発信や情報のストックができる。

オウンドメディアを求人の入り口にすると、外部の求人媒体に頼ることなく人材を確保できる。企業理念や自社の魅力、社員インタビューなどを自由に発信できるため、自社のファンを獲得しやすくなるのも大きなメリットだろう。

まとめ

採用ブランディングとは、自社のイメージを高めてファンを増やし、自社に共感してくれる人材を確保するための戦略である。転職サイトや人材紹介会社などを活用した母集団形成だけでは人材を確保しにくくなっているため、優秀な人材を獲得する方法として注目されている。

自社をブランドとして扱い、企業理念やビジョン、会社の雰囲気といった情報を発信するなど、求職者に「ここで働きたい」と思わせるためのアプローチを行なっていくが、取り組みは長期的となる。まずは「自社がどのような人材を求めているのか」を洗い出すことからはじめ、企業理念やミッション、ビジョン、バリューなどを見つめ直し、自社にマッチする人材についてじっくりと検討するといいだろう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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