2022.5.17

リアリティ・ショックとは。新卒だけの問題ではない?組織への影響や対応を紹介

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リアリティ・ショックとは、理想と現実の乖離に悩まされる状態を意味する。モチベーションやエンゲージメントの低下、早期離職の要因になりかねないため、組織にとっては見過ごせない問題だ。この記事では、リアリティ・ショックによる影響や防止するための対策などを解説する。

リアリティ・ショックとは?新入社員だけではない?

リアリティ・ショックは、人事担当者が知っておくべき問題の一つである。社員が理想と現実の違いにつまずくことを意味しており、エンゲージメントの低下や早期離職を引き起こす要因として危惧されている。

リアリティ・ショックへの対策を講じるためには、「そもそもリアリティ・ショックとは何か」を正しく理解する必要があるだろう。ここでは、リアリティ・ショックの意味や起こりうるタイミングについて解説する。

リアリティ・ショックとは

リアリティ・ショックとは、理想と現実のギャップに戸惑い、不安や喪失感を抱いたり、モチベーションが低下したりする状態を指す。アメリカの組織心理学者であるE.C.ヒューズが提唱し、マサチューセッツ工科大学のエドガー・シャイン教授が広めた概念である。

ゆとり世代に関連する問題だと思われがちだが、ヒューズは半世紀以上も前にリアリティ・ショックの概念を生み出している。つまり、リアリティ・ショックが生じる理由には時代的背景が関与しておらず、理想と現実のギャップにつまずく現象はいつの時代にも起こりうるものだと考えられるだろう。

パーソル総合研究所が2019年に行った調査では、新社会人のおよそ8割がリアリティ・ショックを感じていることが明らかになった。具体的には給与や報酬、仕事によって得られる達成感などに対し、入社前と入社後で異なるイメージを抱いている人が多く見られた。

参考:パーソル総合研究所「就職活動と入社後の実態に関する定量調査」

ただし、リアリティ・ショックに陥るのは新社会人だけではない。会社に慣れているはずのベテラン社員であっても、環境の変化によって理想と現実のギャップに悩まされるケースがある。リアリティ・ショックについて考える際は、新社会人特有の問題ではなく、会社に所属するすべての社員に起こりうる問題だと理解しておくべきだろう。

起こりうるタイミング

リアリティ・ショックの意味を理解したならば、いつ、どんなタイミングで引き起こされるのかも見ておこう。リアリティ・ショックが起こりうるタイミングとして、主に以下の3つが挙げられる。

・ 新入社員として入社したとき
・ 昇進、昇格
・ 育休からの復帰

新入社員として入社した時

リアリティ・ショックは、新入社員が組織の新たな一員として加わった際に起こりやすい。ゴールデンウィークが明けたころに新入社員のスタミナが切れ始めることから、「五月病」と表現されることもある。

社会人としての一歩を踏み出す際は、自分の働く姿をイメージしながら期待に胸を膨らませるだろう。しかし、実際に働き始めると、思い描いていた理想と現実のギャップに衝撃を受けるケースは少なくない。

具体的には、学生時代には背負ったことのない責任や、新たな人間関係の構築、自己評価と実際のスキルの乖離などが重くのしかかり、会社に対する違和感や不安を抱いてしまうのだ。ギャップとの折り合いをつけられないままでは働く意欲が低下してしまい、早期離職のきっかけにもなりうるだろう。

昇進、昇格

リアリティ・ショックが起こりうるタイミングとして、ベテラン社員の昇進や昇格も挙げられる。昇進や昇格すると、以前とは異なる環境に身を置くことになる。そのような環境の変化が生じた際に、仕事をつまらないと感じるようになったり、思ったように能力を発揮できなかったりするケースは珍しくない。

リアリティ・ショックによって仕事に対するやる気をもてなくなると、会社に長く勤めている社員であっても、キャリアを捨てて離職してしまう可能性が大いにあるのだ。

育休からの復帰

育休から職場復帰する際も、リアリティ・ショックに陥りやすいタイミングといえる。育休を終えて職場に戻ると、以前とは職務や役割が変わっているケースが多いだろう。

思い描いていた育休後の働き方と実際の仕事内容が乖離しており、リアリティ・ショックを経験する人は少なくない。

リアリティ・ショックによる組織への悪影響

社員がリアリティ・ショックに陥ると、組織は以下のような悪影響を受けることがある。

・ モチベーションが低下する
・ エンゲージメントが低下する
・ 離職につながる

リアリティ・ショックは当事者のみならず、周囲の社員や組織にも影響が及ぶ問題だ。理想と現実のギャップが生じることによって、どのような問題が引き起こされるのかを詳しく見ていこう。

モチベーションが低下する

リアリティ・ショックが生じると、社員のモチベーションが低下しやすくなる。理想と現実のギャップを受け入れられないまま仕事をしていると、会社に慣れることや、社会人として成長することは難しいだろう。

モチベーションを維持できなくなった社員は、業務に対して消極的になりがちだ。自発的に行動できなくなってしまうと、ほかの社員がフォローに回らなければいけなくなる。リアリティ・ショックによって一人の社員のモチベーションが低下すると、周囲の人間の負担が増えることにもなりかねないのだ。

関連記事:モチベーションとは?意味やアップさせる方法を分かりやすく解説

エンゲージメントが低下する

リアリティ・ショックによる弊害として、エンゲージメントの低下も問題視されている。

エンゲージメントとは、組織と社員の間に構築された信頼関係や、組織に対する愛着心を指す。社員のエンゲージメントを向上させると、組織に対して強い思い入れをもってもらえるため、早期離職を防止する効果が期待できる。

しかし、社員がリアリティ・ショックに陥ると、理想と現実のギャップから組織に対して違和感を抱きやすい。その結果、組織に対する愛着が薄れてエンゲージメントの低下につながるのだ。

エンゲージメントが高まっていない状態では、コミュニケーション不足やモチベーション低下などの問題が起こりうる。いずれも円滑な組織運営を阻む障害となりうるため、エンゲージメントが低下しないようにリアリティ・ショックへの対策を講じる必要があるだろう。

関連記事:
ワークエンゲージメントとは?企業や従業員にとってのメリットや高めるために必要なこと
リモートワーク時のエンゲージメント向上の秘訣とは?企業ができる具体的な対策

離職につながる

リアリティ・ショックは、社員が離職を考えるきっかけにもなりうる。特に新入社員や若手社員の場合、理想と現実の乖離によって早期離職を決断するケースは少なくない。

入社してから初めの1ヵ月は、新しい環境に適応しようとする人が多いだろう。しかし「五月病」と呼ばれる現象があるように、連休明けは仕事に行くのが嫌になってしまい、早期離職や転職を考えやすくなる。

また、ここまでに述べたとおり、リアリティ・ショックはモチベーションやエンゲージメントの低下も引き起こす。理想と現実のギャップに耐えられず、やる気や組織への愛着心が失われた結果、離職の意思が固まるケースは珍しくないだろう。

リアリティ・ショックを防ぐには

社員のリアリティ・ショックを見過ごすと、組織は大きなダメージを受けることになりかねない。円滑な組織運営を目指すためには、リアリティ・ショックを防止するための対策が必要だ。社員が理想と現実のギャップに苦しまないように、以下の工夫を取り入れてみよう。

・ 新社会人の場合は「レディネス」を高める
・ OJTとOFF-JTでオンボーディングを行う
・ フォローアップを行う

新社会人の場合は「レディネス」を高める

新社会人のリアリティ・ショックを防止するためには、レディネスを高めることを検討すべきだ。レディネス(readiness)はアメリカの臨床心理学者が提唱した概念であり、「準備」を意味する心理学用語である。また、「心身の準備性」と表現されることもある。

本来は教育分野で用いられる概念だが、昨今は人材育成においても注目されている。人材育成におけるレディネスは「就業レディネス」とも呼ばれ、就業に向けて準備が整っている状態を指す。

新社会人のレディネスを向上させると、自社に馴染んでもらいやすくなるため、定着率アップや早期離職の防止が期待できる。

新社会人のレディネスを高めるためには、内定から入社前のフォローを適切に行うことが重要だ。例えば、個別面談で不安を解消したり、交流する場を設けて内定者同士のコミュニケーションを促したりする方法がある。

または、先輩社員と交流する時間を作ったり、組織の魅力をアピールしたりすると、信頼関係の構築やミスマッチの予防につながるだろう。

関連記事:
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OJTとOFF-JTでオンボーディングを行う

リアリティ・ショックの防止策として、OJTとOFF-JTによるオンボーディングを実施するのも賢明だ。OJTとは社内で行う教育訓練、OFF-JTとは社外で行う教育訓練を意味する。

オンボーディングとは新入社員のサポートを指し、入社前から実施されるケースが多い。オンボーディングによって得られるメリットには、新入社員の即戦略化や定着率の向上、モチベーションアップなどが挙げられる。

オンボーディングが成功するかどうかは、新入社員にとって学びやすい環境が整備されていることが鍵となる。その点、OJTとOFF-JTによって実地的な学びの機会を設けると、新入社員は多くの知識を効率的に習得しやすくなるだろう。

OJTとOFF-JTを実施して学びやすい環境を整備し、オンボーディングをうまく機能させられれば、新入社員のやる気や自信が養われる。その結果、組織としては早期離職の防止や生産性向上などの恩恵を受けられるだろう。

関連記事:
OJTとOFF-JTの違いは?人材育成におけるやり方やメリット
オンボーディングとは?組織の生産性向上と離職防止のためにできること

フォローアップを行う

フォローアップの実施もリアリティ・ショックの防止に有効だ。フォローアップとは、入社後に定期的に行われる面談や研修である。入社から3ヵ月後、6ヵ月後、9ヵ月後、1年後に実施されるケースが多い。

フォローアップを適切に行うと、新入社員の不安解消や習熟度の確認が可能だ。次のステップに進むための目標設定もセットで行えば、モチベーションの維持も期待できるだろう。組織にとっては、新入社員の定着率アップや離職率の低下などのメリットがある。

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まとめ

リアリティ・ショックとは、理想と現実の乖離を目の当たりにして、不安や喪失感などを抱くことだ。新入社員に起こりやすい現象だが、環境が変化した際にベテラン社員がリアリティ・ショックを経験することもある。

社員が理想と現実のギャップに悩まされると、組織に対する違和感が芽生えたり、仕事に取り組むモチベーションが低下したりする可能性がある。場合によっては離職にもつながるため、レディネスの向上やオンボーディングなどの工夫を取り入れて、リアリティ・ショックの防止に努める必要があるだろう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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