2022.9.30

ゆでガエル理論とは?組織が陥った時に抜け出す方法を解説

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ゆでガエル理論とは、環境がゆっくりと変化していくと気づきにくいという寓話から、変化を見逃さないことの大切さを説く話だ。今回はゆでガエル理論とはどのようなものか、その状態に組織が陥る原因や抜け出す方法などを紹介する。そもそも陥らないようにするための取り組みも解説するため、併せてチェックしよう。

ゆでガエル理論とは?

そもそもゆでガエル理論とは、環境の変化がゆっくりと進んでいくと気づかずに死んでしまうカエルの寓話からきている。その話とは、カエルをいきなり熱いお湯のなかに入れるとすぐに跳んで逃げていくが、常温の水の中に入れてゆっくり時間をかけて温度を上げていくと、温度の変化に気付かずにそのままゆであがってしまうというものである。

このカエルに関する寓話では、いきなりなにかが起こるのではなく、ゆっくりと進行していく場合には変化に気付きにくいこと、気付くほどに状況が変化したときには手遅れになることを表している。これをもとに、徐々に進行する変化を見逃してしまわないようにするための教訓として、企業経営などのビジネスシーンや地球環境問題などでゆでガエル理論が使われているのだ。

ゆでガエル「理論」とはいうものの、作り話であって科学的な根拠はなく、実際にはカエルがこのような反応をすることはないといわれている。カエルをもし熱湯に入れた場合には、逃げ出す前に死んでしまうそうだ。逆に常温の水からゆっくりと温度を上げていった場合には、ある程度の温度になると逃げ出していく。

ゆでガエル理論を最初に提唱したのは、アメリカの精神医学者で思想家、文化人類学者でもあるグレゴリー・ベイトソンだとされている。疑似科学的な作り話ではあるが、さまざまな人にとって思い当たりやすい内容であるため、説得力を持って広く浸透している。

人間には環境適応能力があるため、徐々に環境が変化する場合には、その変化の度合いに気づきにくいものだ。このような人間の思考や行動の特徴を鋭く捉えているため、経営者や経営コンサルタントなどがわかりやすい教訓としてまことしやかに語り、広く知られるようになったといわれている。

ゆでガエル理論をイメージしやすくなるように、ビジネスシーンでの例を挙げてみよう。たとえば顧客のニーズが変化していき、その企業がいままでに出していたような商品やサービスなどでは、対応できなくなってしまったケースがあるとする。この場合には、顧客のニーズが変化していったことによって今までどおりの売り上げが出せず、会社の業績が徐々に減っていってしまう。

本来であれば、どうして業績が悪化してしまっているのかをしっかりと分析し、顧客のニーズの変化を把握したうえで、今までとは違ったやり方に変化させていくべきだろう。しかし「うちの会社はこのやり方でうまくやってきたから」というように、過去の成功体験にしがみついてしまうことがある。ニーズの変化に気付かず、「景気さえ良くなればまた今までのような業績に戻るだろう」と信じて突き進んでいってしまうと、さらに業績が悪化し、取り返しのつかない状態になってしまうかもしれない。この状態のことを「ゆでガエル状態」という。

また企業全体だけではなく、個人に対してもゆでガエル理論は教訓にできるものである。ビジネス環境の変化が激しいため、一人ひとりのビジネスパーソンも新しい知識や技術を習得するなどして、さらなる活躍ができるようになることが期待されている。しかし、今までの知識や過去の実績で満足してしまっている方は、ゆでガエル予備軍だといえるだろう。

ゆでガエルの状態に組織が陥る原因

先述のとおり、人間には環境適応能力があるため、徐々に環境が変化する場合には違いに気づきにくいものである。そのうえ、日本社会ではとくにゆでガエルになってしまいやすい傾向があるため、注意が必要だ。

組織や個人がゆでガエルの状態に陥る原因は、大きく分けると以下のとおりである。

・ 過去の成功体験に固執してしまうこと
・ 周囲の空気を読んでしまうこと
・ 組織の風通しが悪いこと
・ 未来に対してネガティブなイメージを持ってしまいやすいこと
・ 問題を先送りにしてしまうこと

それぞれ詳しくチェックしていこう。

<過去の成功体験に固執してしまうこと>
基本的に人間は安定を求め、変化を恐れるものであるため、新しいことにチャレンジして利益を伸ばそうとするよりも、リスクを回避して過去のやり方に固執してしまいやすいのだ。しかし、時代の変化によって顧客のニーズなども変わっていくため、過去の成功体験がまた通用するとは限らない。このように、変化から目を背けて現状を維持し続けてしまうことが、ゆでガエルの状態に陥る原因のひとつである。

<周囲の空気を読んでしまうこと>
日本では組織のなかで波風を立てないようにと、周囲の空気を読んでしまいやすい。自分の意見をおさえ込んで、周りの人の要求や意見のとおりにしなければならないと思ってしまいがちであるが、これでは本来の問題点から目を背けてしまうことにつながる場合がある。

<組織の風通しが悪いこと>
組織の風通しが悪いと意思疎通を活発化させにくく、危機に陥ったときに上層部の危機感が従業員に伝わりにくい。危機回避のための適切な対応や改革が実行しづらくなってしまい、迅速な対応ができない可能性があるのだ。また、従業員が異変を感じたとしても、風通しが悪い組織だと波風を立てないようにして、問題点や改善点から目を背けてしまいがちになってしまい、理想と現実が乖離していくリアリティ・ショックな状態にもなり得る。

関連記事:リアリティ・ショックとは。新卒だけの問題ではない?組織への影響や対応を紹介

<未来に対してネガティブなイメージを持ってしまいやすいこと>
ニュースで伝えられるような事象は、未来に対してネガティブなイメージを持ちやすいものが多く、印象に残りやすい。防衛本能が過剰反応してマイナス思考を持ってしまうことで、必要以上に変化を受け入れられなくなってしまい、危機に気づきにくくなることがあるのだ。

<問題を先送りにしてしまうこと>
責任逃れや結論を出すまでの時間稼ぎなどのために問題を先送りにしてしまうことも、ゆでガエルの状態に陥る原因のひとつだ。また、他人に意思決定を委ねたいがために、問題を先送りにしてしまうこともある。

ゆでガエルの状態から抜け出す方法

ゆでガエルの状態から抜け出すためには、以下の方法がおすすめだ。

・ 危機感を自覚して共有する
・ 挑戦を続ける
・ 客観的な視点から状況を把握する

危機感を自覚し、周りの人たちにも共有できるようにしておかなければ、「今までのやり方で良いじゃないか」と考えて変化していけなくなってしまいやすい。経営状況をオープンにするなど、広く危機感を持ってもらうことで自ら変わる姿勢になり、変革をもたらしやすくなる。

また、挑戦を続けることも重要だ。今までの知識や経験だけに頼るのではなく、新しいことに挑戦したり明確なミッション・ビジョンを設定したりなど、プラス思考になれたならば攻めの姿勢を強められる。そうなれば変化に対応しやすくなり、適切に変革していけるようになるだろう。

関連記事:ミッションとは?ビジョンとの違いやなぜ必要なのかを解説

客観的な視点から状況を把握することも重要なポイントだ。ゆでガエルになってしまうのは、ぬるま湯に浸かっている状態で、自分が置かれている状況を把握できないことが原因である。自社の立場や状況、仕事の内容、商品やサービスの質、顧客が求めているニーズなどを客観的に確認し、しっかりと状況を把握することで、ゆでガエル状態から改善できるようになるのだ。

たとえば、今までの功績などをもとに自分たちだけで判断するのではなく、第三者に経営状態をチェックしてもらって意見を聞くことなどがおすすめである。これにより、客観的な状況把握がしやすくなるだろう。

そもそも陥らないようにするには?

そもそもゆでガエル状態に陥らないようにするためには、ハーバード大学ジョン・コッター名誉教授が提唱する変革の8段階のプロセスを参考にするのがおすすめだ。変革の8段階のプロセスは、以下のとおりである。

・危機意識を持つこと
・変革を実行するためのチーム作りをすること
・変革のビジョンを持つこと
・ビジョンを周知徹底すること
・積極的な行動や発言を促し、自発的になれるように社員を促すこと
・目の前の小さな目標からクリアすること
・多くの短期的成果をもとに積極的な改革をしていくこと
・変革した内容を企業文化として定着させ、現状に甘んじずに変化していける会社にすること

ゆでガエル状態に陥らないようにするためには、企業の将来やチームの成果、自分の仕事などに危機感を持つことが重要だ。そのうえで、リーダーシップや広い人脈、他者からの信頼があり、今後への危機感と対応するための権限を持つ人物を変革チームのリーダーにすると良いだろう。このとき、チームメンバーにも変化を恐れない人物を選ぶのがおすすめである。

関連記事:
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統率力とは何か?リーダーシップやマネジメントとの違い、身につける方法

そして変革の意義や目的を考えたうえでビジョンを策定し、実現に向けて戦略を練っていく。従業員にもビジョンやその意義、戦略を周知徹底し、共感を得ることが重要だ。

さらに社員の自発性を促せるように、積極的な行動を阻んでいるような社内の慣習やシステム、構造を変革していこう。そして、最終的な成果をいきなり求めるのではなく、小さな目標からクリアして、大きな成果につなげていくことが重要だ。

まとめ

ゆでガエル理論は、環境の変化がゆっくりだと危機があっても気づきにくいカエルの寓話からきている。このカエルに関する寓話では、いきなりなにかが起こるのではなく、ゆっくりと進行していく場合には変化に気付きにくいこと、気付くほどに状況が変化したときには手遅れになることを表している。

徐々に進行する変化を見逃さないようにするための教訓として、企業経営などのビジネスシーンや地球環境問題などでゆでガエル理論が使われているのだ。組織や個人がゆでガエルの状態に陥る原因は、大きく分けると以下のとおりである。

・ 過去の成功体験に固執してしまうこと
・ 周囲の空気を読んでしまうこと
・ 組織の風通しが悪いこと
・ 未来に対してネガティブなイメージを持ってしまいやすいこと
・ 問題を先送りにしてしまうこと

ゆでガエルの状態から抜け出すためには、危機感を自覚して共有すること、挑戦を続けること、客観的な視点から状況を把握することが大切だ。

これらの情報を理解して、実際の企業活動に役立てていこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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