2023.1.6

DX人材とは?種類やスキルマップ、育成方法を分かりやすく解説

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DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を行う上で必要となるスキルや適性を持っていて、様々な背景から育成の必要性が増している人材がDX人材だ。

今回は、DX人材の概要や役割、職種、必要な能力などを紹介する。人材の育成事例まで解説するため、併せてチェックしよう。

DX人材とは?

「DX人材」とは企業がDXを実行し、推進していくために必要なスキルや適性を持った人材のことである。DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称だ。

はじめに、DX人材とはどのような人材か、その定義や役割、求められている背景について詳しくチェックしていこう。

DX人材の定義

DX人材とは、企業がDXを実行する上で必要となるスキルや適性を備え、DXを推進していける人材のことだ。

DXとは単なるデジタル化ではなく、ビジネス環境の変化に対応し、企業の競争上の優位性を確立するための変革を伴う取り組みのことだ。

DXでは、デジタル技術やデータを活用し、顧客や社会ニーズにあった製品やサービス、ビジネスモデルに変革して業務や組織、企業文化、風土などを変える。これらの取り組みによって競争力を強化し、優位性を確立することがDXだと定義されている。

DXはスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した概念だ。そこではDXのことを「デジタル技術が人の暮らしのあらゆる面で引き起こしたり影響を与えたりする変化である」と表している。

DX人材には、企業でDXプロジェクトの推進を先導して、ビジネスモデルや企業組織に変革を起こすことが期待されている。

DX人材の役割

DX人材は、様々な技術を活用して、企業でDXについて先導する立場として取り組んでいく役割を担っている。そのため、デジタルテクノロジーやデータ活用、ITなどの専門分野に関する知見が必要だ。

さらに、企業でDXプロジェクトの推進を先導していく役割を果たすためには、自社のビジネスや業務内容を深く理解している必要がある。その上でデータとデジタル技術を活用し、改革していく方法への構想力を持ち、実現に向けたビジョンを明確に描ける人材が求められているのだ。

DX人材が求められる背景

現在、企業では様々な課題を抱えており、経済産業省は「DXの取り組みに遅れてしまった場合に、日本経済全体に大きなインパクトを与えることとなる」と発している。

日本がデジタル化するためには大きな課題があり、「2025年の崖」と呼ばれている。企業では、基幹システムのベースとしてメインフレーム(汎用コンピュータ)が使われていることが多い。

しかし、メインフレームを利用して構築したレガシーシステムを使い続けていては、最新技術について臨機応変に対応できないとされている。維持管理費が増大するなどの理由もあり、大きな経済損失が発生するとされ、企業のDX推進が必須なのだ。

また近年は、コロナ禍によって非接触型コミュニケーションや業務プロセスの見直しが必要となり、IT化が求められている。今後の日本では、少子高齢化によってますます労働の担い手が不足することもあり、生産性の向上を追求するためにも、DXに取り組む重要性が増しているのだ。

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DX人材が担う7つの職種

デジタル技術といえば、エンジニアやプログラマなどをイメージするかもしれない。しかし、DX人材が担うのはこれらの職種だけではないため、育成する際はより広い分野や業種で通用するスキルが必要だ。

DX人材は、以下のような7つの職種を担っている。

● プロダクトマネージャー
● ビジネスデザイナー
● テックリード(エンジニアリングマネージャー、アーキテクト)
● データサイエンティスト
● 先端技術エンジニア
● UI/UXデザイナー
● エンジニア/プログラマ

それぞれの職種に関して、詳しくチェックしていこう。

プロダクトマネージャー

プロダクトマネージャーは、DXやデジタルビジネスを実現させる取り組みを主導する役割を持つ人材だ。リーダーとして組織を牽引する存在で、ビジネス戦略の策定やデジタル活用、プログラムの再構築、予算管理などの様々な業務を求められる。

製品やサービスを開発する際には、ビジョンを明確化して目標を設定し、チームを先導していく。プロダクトで様々な職種の人材をまとめる必要があり、マネジメントスキルやIT、UI・UX、ビジネスデザインといった幅広いスキルや知識が必要だ。

ビジネスデザイナー

ビジネスデザイナーは、DXやデジタルビジネスに関するより具体的な企画立案、推進の役割を担う人材だ。ITを用いたビジネスアイデアから、実際のビジネスモデルやビジネスプロセスを構築していく。

ビジネスデザイナーになるには、ビジネスアイデアの着想力や企画構築スキル、ステークホルダーとの利害調整、プロジェクトを円滑に進めるファシリテーション能力などが必要だ。

テックリード(エンジニアリングマネージャー、アーキテクト)

テックリードとは、DXに関連したシステムの設計から実装までを任されるチームのリーダーで、テクニカルリードやリードエンジニアとも呼ばれている。チームメンバーをまとめ、他部署との折衝を行い、生産性の向上や品質を担保する。

また、エンジニアリングマネージャーやアーキテクトの役割も果たす。エンジニアリングマネージャーは、エンジニアチームをマネジメントする人材だ。アーキテクトは、デジタル技術を導入する方法を具体的にしてシステムを設計する役割を担う。

テックリードには、マネジメントスキルや高いコミュニケーションスキル、経営視点が必要だ。

データサイエンティスト

データサイエンティストは、AIやIoTなどのDXに関するデジタル技術やデータ分析に精通した人材である。ビッグデータの分析や解析などで事業に必要な情報を引き出すため、統計解析や機械学習に関する技術的なスキルや知識が必要だ。

また、ビジネスモデルへのAIの活用に関する役割も担う。事業部側と共同で進めるために、ビジネスへの理解度の高さも求められる。

先端技術エンジニア

先端技術エンジニアとは、AIや機械学習、ブロックチェーン、ディープラーニングなどのデジタル技術を扱う役割を担う人材だ。先進的なデジタル技術を扱うため、当然のことながら最先端の技術に対する理解とスキルが求められる。デジタル技術は変化が速いことから、先端技術エンジニアには新しい情報を採り入れ続ける感度の高さも必要だ。

UI/UXデザイナー

UI/UXデザイナーは、実際に使うシステムやサービスについて、操作画面などのユーザー向けインターフェースをデザインする役割を担う人材だ。UI/UXデザイナーが考案する「デザイン」とは、見た目の美しさだけではなく、使い心地の良さも重視する。優れたデザインを考案できるUI/UXデザイナーがいれば、顧客満足度や利用率、継続率の向上につながる。

UI/UXデザイナーには、特に使い心地の良さにつながるデザインスキルが重要だ。さらに、情報収集能力やコミュニケーションスキルなどが求められる。

エンジニア/プログラマ

エンジニアやプログラマも、もちろんDXの推進に必要な人材だ。エンジニアやプログラマは、インフラの構築やシステムの実装、保守などを担当する。

担当する業務は幅広く、ソフトウェアエンジニアリングやプロジェクトマネジメント、業務分析、知的資産の管理・活用などがある。エンジニアリングスキルやプロダクトの設計スキル、プロジェクトマネジメントスキルなどが必要だ。

関連記事:デジタル人材の定義は?採用・育成方法~定着のポイントを解説

DX人材に必要な能力

DX人材に必要な能力は様々なものがある。例えば、以下のような能力が必要だ。

● ビジネス戦略・企画能力
● UI/UXデザインスキル
● データの分析・管理スキル
● デジタル理解・活用能力
● データサイエンティストスキル
● ファシリテーション能力
● プロジェクトマネージメント力
● リーダーシップ

DXを進めるためには、企業にとって必要なものを理解して目標やシナリオを設計できる、ビジネス戦略・企画能力が必要だ。先端技術のトレンドをキャッチして自社に採り入れていくデジタル理解・活用能力も重要である。

さらに、プロジェクトを円滑に進めるためのファシリテーション能力やプロジェクトマネージメント力など、DXの推進で担当する業務内容に応じて必要な能力は異なる。

関連記事:DX人材育成で注目を集めるリスキリングとは?導入し成功させるためのポイント

DX人材のスキルマップ

DX人材には、ビジネス系と技術系によって求められているスキルに違いがある。プロダクトマネージャーやビジネスデザイナーは、DX人材の中でもビジネス系であるため、求められているのもビジネス系のスキルが重視されているのだ。例えば、ビジネスデザイナーにはアイデア力やファシリテーション能力、ビジネス戦略やビジネスモデルの設計力、企画立案能力などが必要である。

ただし、ビジネス系のDX人材であっても、デジタルに対するある程度の知識やトレンドのキャッチは前提となっていることに注意しよう。

関連記事:HRDXとは?企業が採用DXをコロナ禍でも推進するために必要なこと

DX人材の育成事例

DX人材の育成事例には、以下の企業が挙げられる。

● ソフトバンク株式会社
● ダイキン工業株式会社
● 日清食品ホールディングス
● キリンホールディングス
● NECマネジメントパートナー株式会社

例えば、ソフトバンク株式会社ではDX人材を選ぶ際に、スキルよりもマインドを重視して人選している。交渉スキルや新規事業の立ち上げに関する金銭的な意識の高さ、柔軟な思考力などを重視して、営業や営業企画、事業企画のメンバーを中心に専門組織でDX人材を育成した。

DX人材としてのスキルは、研修や専門的知識を持つメンバーを加えることで育てている。

関連記事:リスキリングの意味は?リカレント教育との違い、取り組み事例5社を解説

まとめ

日本の企業がデジタル化するためには大きな課題があり、DX人材の供給が足りていない。IT化が求められていること、少子高齢化によってますます労働の担い手が不足することなどもあって、DX人材の育成が必要である。

DX人材は、以下のような7つの職種を担っている。

● プロダクトマネージャー
● ビジネスデザイナー
● テックリード(エンジニアリングマネージャー、アーキテクト)
● データサイエンティスト
● 先端技術エンジニア
● UI/UXデザイナー
● エンジニア/プログラマ

DX人材にはビジネス系と技術系があり、担当する業務内容に応じて必要な能力は異なる。DX人材の育成の際は、求められているスキルの違いにも留意し、育成事例などを参考にして実際の企業活動で活用していこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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