2022.7.25

フィードフォワードとは?フィードバックとの違いや人材育成に有用な理由

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フィードフォワードは未来に向けた視点でアプローチをする新しい人材育成の手法だ。従業員の自主性向上や組織力強化の効果があるため、導入する企業が増えている。

この記事では、フィードフォワードの意味やフィードバックとの違い、導入によるメリット、使う際のポイントについて解説する。

未来志向のフィードフォワードとは?フィードバックとの違い

フィードフォワードとは、未来に向けたアプローチをする人材育成の手法だ。個人の特性を活かし自主性や新しい発想を生みだせる新しい手法として注目を集めている。

時代背景の変化により、顧客のニーズが多様化したことや、トラブル発生の抑制が求められていることも、注目を集める理由だ。ここではフィードフォワードの考え方やほかの人材育成手法との違い、注目を集める背景について解説する。

フィードフォワードとは

フィードフォワードとは、未来にアプローチする人材育成の手法のひとつで、フィードフォワード協会では次のように定義している。

“現状にとらわれてしまいがちな部下や後輩、配偶者や子供に対して、コミュニケーションや観察を通して相手の状況を把握し、相手に起きている出来事やそれにともなって体験している感情を受け止めた上で、その人が自分のゴールに意識を向けて行動できるように促す技術のこと”

参考:一般社団法人フィードフォワード協会「フィードフォワードの定義」

その前提には「過去や現在ではなく未来をみる」という考え方が前提となっている。「どうやって解決するのか」に焦点を当てることでポジティブな姿勢への育成に効果があるのだ。

フィードフォワードはノウハウをはじめとした形式化された教育ではなく、個人の特性を活かし自主性や新しい発想を生みだせる手法として注目を集めている。組織内でのダメ出しや批判といったネガティブな行動も抑制されるため、組織としてフィードフォワードに取り組めば、組織力強化にもつながるのだ。

フィードバックとの違い

フィードフォワードの対義的な用語にフィードバックがある。フィードバックは人材育成では当たり前に使用されている手法で、過去の出来事に対し、良かった点や改善点を伝え、今後の成長に活かしていくものだ。

改善点を伝える際は未来を見ているため、必ずしも過去だけを見ているものではない。しかし、あくまでも過去の情報をもとに改善を始めるため、未来だけを見るフィードフォワードとは考え方が対照的といえるだろう。

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ティーチングやコーチングとの違い

人材育成に関する用語として、ティーチングやコーチングがある。フィードフォワードとこれらの用語との違いは、教える人と教えられる人の関係性だ。

ティーチングは「指導」を指し、知識を教える人と教えられる人が存在する。学校の先生と生徒の関係性だ。フィードフォワードでは、先生と生徒の関係性は存在しない。あくまでも未来の行動につなげるための対策を考えさせるため、答えを誰かが示すものではないのだ。

コーチングは指導するのではなく、問いを繰り返すことで新たな気付きを与える手法だ。指導しないという点ではコーチングとフィードフォワードは似た考え方といえる。しかし、コーチングもティーチングと同様に先生と生徒のような関係性が成り立っている。

フィードフォワードは生徒と先生の関係性ではなく、対象者とその対象者が自主的に考えるためのサポート役という関係性で成り立っているのだ。

なぜ注目されているのか

フィードフォワードが注目を集めている背景には、時代背景の変化が挙げられる。近年では、ITの進歩とともに顧客のニーズが多様化したことで、企業には過去の考え方にとらわれない新しいサービスの提供が求められるようになった。そのため、イノベーションを起こせる人材が求められるようになっている。

ハラスメントへの取り組みが高まっていることも、注目を集めている要因だ。従来のフィードバックは、教える側からの一方的な指導になることから、ハラスメントと受け止められるケースが増えてきている。特に、過去に視点を向けることで従業員が自尊心を損ない、退職に発展するケースもあるようだ。

フィードフォワードを導入することで、過去ではなく未来に視点を向けることができる。それにより、お互いの意見を尊重する状況が生まれ、ハラスメントの発生リスクも軽減できるのだ。

フィードフォワードが注目されている背景には、イノベーションを起こせる人材の育成と従業員の定着率向上が求められていることがあるといえる。

フィードフォワードのメリット

フィードフォワードを導入するメリットには、自律型の人材育成につながることと、良好なチームづくりの実現が挙げられる。部下自身で考えることを習慣化できれば、自主性を高められるのだ。

自主性が高いメンバーが集まったチームは、雰囲気が良くなりチーム力の強化につながる。ここでは、フィードフォワード導入によるメリットについて解説する。

自律型の人材育成につながる

フィードフォワードを導入するメリットとして、自律型の人材育成につながることが挙げられる。未来に視点を向けるため、相手の欠点や問題を指摘しない。否定されることがないため、自尊心を損なうことがないのだ。

フィードフォワードでは、相手の意見を問いかけるようにコミュニケーションをとる。「今後どうするのか?」「何をしたいのか?」といった言葉を投げかけることで、自分の未来の行動を考えさせるのだ。この問いを繰り返すことで解決策を考える習慣が身につき、問題に対して自主的に考える力が養える。

フィードフォワードでは、相手から言葉を発するのを待たなければならない。はじめはなかなか言葉が出てこなかったり、考えが不足していたりするだろう。そのため、指導する側は不安に感じ、ついやり方を教えてしまうかもしれない。

しかし、失敗したとしても自分で考え続けていれば、次に活かせるものだ。習慣化させることで自主的にチャレンジする意識や文化が作られる。そのためにも、部下本人を観察し、自分の言葉で意見を発せられるのを待つ必要がある。

ただし、経験ある立場から、抽象的な問いかけにより解決策を考えさせることも可能だ。「今、自分に起こっている問題を、組織で改善するにはどうする?」といった問いかけで視野を広げてあげることで、部下の考えも広がるだろう。

このように、従来のフィードバックに比べ、部下と良好な関係をつくりながらモチベーションを高め、自主性を促すことができる点がフィードフォワードのメリットといえる。

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良好なチームづくりに影響を与える

フィードフォワードによって自主性が高い従業員が増えれば、チームにも好影響を与える。メンバーがポジティブな意見を出し合うことで、チームの雰囲気が良くなることは想像できるのではないだろうか。

チームの雰囲気が良くなれば、チームとして課題を解決する意識が出てくる。そうすることで、チームの結束力もつながり、チーム内でお互いに助け合う環境が構築できるだろう。

助け合う文化が浸透しているチームになれば、マネージャーはチームの目標管理や意思決定といった本来の役割に専念できる。マネジメント強化にもつながり、チーム力はさらに強化されるのだ。

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フィードフォワードを使う際のポイント

フィードフォワードを使う際には、ポイントを押さえる必要がある。否定せず、前向きな意見を投げかけることがポイントだ。論理飛躍した意見でも否定せず、前例や慣習にとらわれない新しい視点を持つことが大切だ。

それにより、新しいアイデアの創出や組織力強化につながるだろう。また、状況に応じてフィードバックを使うこともポイントだ。ここでは、フィードフォワードを使う際のポイントについて解説する。

否定をせず、問題解決に向けてどうするか考えられる質問を投げかける

フィードフォワードを実施する際は、決して否定せず、どうすれば問題解決できるのかを問いかけることがポイントだ。フィードフォワードは過去に目を向けない。つまり、前例や慣習にとらわれず、新しい視点を持つことが大切なのだ。

フィードフォワードを実施すると、論理飛躍した意見がでることもある。その場合でも「現実的ではない」と否定するのではなく、未来に向け「実現する方法」を話し合うことで、イノベーションにつながるのだ。

そもそも、イノベーションを起こすような革新的なアイデアは、前例にとらわれたものではなく、飛躍した意見から生まれることもある。一見現実的ではないアイデアでも、実現するための方法を考えることで、これまでは思いつかなかった方法が見つかることもあるのだ。

アドバイスをする際は前向きな内容を客観的、具体的にする

チームで問題解決に取り組む際は、メンバーそれぞれが対策を考えたうえで、前向きな意見を交わすこともポイントだ。フィードフォワードでは否定しないことが大前提となっている。

否定することなく、前向きな意見やアドバイスを交わすことで、ひとりでは気付かない解決策を生みだせるのだ。その際は「個人ではなくチームとしてどうすればいいか」を客観的かつ具体的に考えることが大切だ。

前向きで客観的かつ具体的な意見を交わすことで、飛躍した意見が現実的なものになるだろう。仮に、実現できなかった場合でも、前向きに議論することでメンバー同士の結束力が高まり、ひいては組織力強化につながるのだ。

フィードバックを状況に応じて併用する

状況に応じてフィードバックを使うこともポイントだ。なかなか自分で改善策を見つけられない部下の場合は、改善点を指摘すれば自分で分析できるようになる。その際に有効な手法がフィードバックだ。

フィードバックは過去の出来事に対し問題点を明らかにする手法だ。フィードバックで改善点を指摘しながらも、フィードフォワードで前向きに解決策を考えることで、フィードバックとフィードフォワードのデメリットを補完できる。

状況に合わせて使い分けることで、より効果的な人材育成につながるのだ。

まとめ

フィードフォワードとは、未来に向けた視点でアプローチをする人材育成の手法だ。個人の特性を活かし自主性や新しい発想を生みだせる手法として注目を集めている。導入するメリットとして、部下の自主性を高められることやチーム力の強化が挙げられる。

フィードフォワードを使う際は、部下の意見を否定せず、前向きな意見を投げかけることがポイントだ。前例や慣習にとらわれない新しい視点を持つことが大切だ。状況に応じてフィードバックを使うことで、より効果的な人材育成につながる。

フィードフォワードの特徴や使い方を理解し、人材育成とチーム力の強化につなげよう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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