2022.11.29

ワークライフバランスは古い?定義や取り組み事例、リモート時代に適した新たな考え方を解説!

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近年、働き方改革の推進によって労働環境が見直されたことなどで、「ワークライフバランス」の実現に向けた取り組みが盛んだ。今回は、ワークライフバランスの定義とともに重視される背景や取り組み事例を紹介する。リモート時代に適した新たな考え方も解説するため、あわせてチェックしよう。

ワークライフバランスの定義

「ワークライフバランス」という言葉は、働き方改革の推進とともにどんどん広まった。しかし、ワークライフバランス本来の意味を正確に捉えず、仕事と生活のどちらかを重視するかのように誤解している人も多いようだ。

そもそもワークライフバランスとは、「仕事と生活の調和や調整」を意味する。どちらか一方だけではなく、仕事をすることも生活の質もどちらも充実させるという考え方である。

従来の日本社会では「仕事一筋」な生き方が主流となっていて、仕事のみが重要視されがちであった。そのため、ワークライフバランスは今までの考え方の反動ともいえるだろう。

1980年代にアメリカで誕生したワークライフバランスという概念は、日本ではバブル崩壊後の1990年代以降に普及しだした。もともと女性の社会参画が活発になったことで、徐々に仕事と子育ての両立が問題視されるようになり、無理なく働き続けられるようにと対策を始めたことが最初だといわれている。

その後、家族のあり方や働き方の多様化が進み、雇用不況によって企業に経済的な豊かさを期待できなくなったことも重なった。これらにより、男女ともに仕事だけではなく、プライベートも重視するような生き方が注目を集めるようになったのである。

ワークライフバランスの実現によって、以下のメリットが期待できるだろう。

・ 仕事以外の時間が確保できるようになり、充実した生活を送れるようになる
・ 家庭での時間が増え、家族が充実感を得られるようになる
・ 休息をしっかりと取れるようになって、心身を健康に保てる
・ 時間に余裕ができ、自己啓発や地域活動などの本人が本当にやりたかったことをできる
・ 子育てや介護などで忙しくとも、自分らしい形で仕事も頑張れるようになる

ワークライフバランスがうまくいけば、充実した生活を送ることで仕事がはかどるようになり、それによって私生活も潤うというように相乗効果を期待できる。時間に余裕ができることでスキルアップが図れ、その効果で仕事が効率的に進められるようになるなど、ワークライフバランスによる好循環が見込めるのである。

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ワークライフバランスが重視される背景

日本でワークライフバランスが重視されるようになったことには、以下のような背景がある。

・ 少子化の進行
・ 団塊世代の大量退職
・ 共働き世帯の増加
・ 女性が活躍できる社会への期待
・ 高齢化問題

このなかでも、とくに少子高齢化の問題が大きな要因だといえるだろう。少子高齢化によって働く人が減少し、長時間労働が蔓延したことや、仕事と子育てや親の介護との両立が難しいことなどが社会問題となった。これらの理由により、仕事と生活のバランスを取ることの重要性が高まっていった。

企業としても、従業員の労働環境の整備や健康管理、業務管理などの努力をおこなうことが重要である。ワークライフバランスを実現できた場合には、企業にとって以下のメリットがある。

・ 従業員満足度が高まり離職率の低下と定着率の向上が期待できる
・ 従業員の意欲や能力を向上させられる
・ 労働環境の良さをPRでき、有能な人材を確保しやすくなる
・ 長時間労働をしないことで、自然と業務の効率が上がる
・ 女性社員が定着する

そのため、企業をより良くするためにもワークライフバランスを重視すべきなのだ。

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ワークライフバランスの取り組み事例

ワークライフバランスの取り組みについて、実際に取り組んで成功している企業の事例を見てみると、どのように実施すればいいのかをイメージしやすくなるだろう。今回ワークライフバランスの取り組みについて紹介するのは、以下の企業である。

・ サイボウズ株式会社
・ 信州ビバレッジ株式会社
・ 株式会社スープストックトーキョー
・ 株式会社資生堂

ワークライフバランスの取り組み方は、企業ごとに違いがあるものだ。それぞれの事例をチェックしていこう。

サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社は、Great Place to Work® Institute Japan(GPTWジャパン)が実施する日本における「働きがいのある会社」ランキングの中規模部門で、2019年には第2位に選ばれている。同社のなかでもユニークな制度が「働き方宣言制度」で、社内のグループウェアで勤務時間を宣言し、自分の働き方を決められるようになっている。

ワークライフバランスを改善できるよう、ほかにもさまざまな工夫がなされていることが特徴だ。その結果、2005年には離職率が28%であったが、4%前後にまで減少した。

信州ビバレッジ株式会社

信州ビバレッジ株式会社では、繁忙期と通常期があることや工場の24時間操業などで労働環境が安定せず、残業時間が多い状態であった。そこで週休3日制や残業時間を少なくするなど、年間を通して安定した働き方になるように労働環境の改善に取り組んだ。

趣味を楽しむ時間が充分に取れるようになったことが、入社を決める理由にもなっている。年3回のアンケートをもとにどんどん改善をおこない、働きやすくて離職率の低い、満足度の高い環境になっている。

株式会社スープストックトーキョー

株式会社スープストックトーキョーでは、お客様が温かい気持ちになる接客ができるように、従業員の熱量が上がるような働き方を目指して独自の社内制度づくりをしている。

年12日の生活価値拡充休暇などを実施し、飲食業ではかなり珍しい年間休日120日取得可能な体制に変革した。また、ピボットワークといった制度も創設し、副業を認めることで意欲ある社員を後押ししている。これらの取り組みによって新卒や中途採用の応募が増え、離職者が減るなどの成果が出ている。

株式会社資生堂

株式会社資生堂では、仕事と家庭の両立ができるようにさまざまな支援をおこなっている。もともと女性社員の多さもあって、女性の働き方に関する取り組みが進んでいる企業だ。そのうえで、数が少ない男性社員も制度を利用しやすいように育児休業の取得などを促進し、男女ともに育児に参加しつつキャリアアップもできるような環境を作っている。

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ワークライフバランスはもう古い?リモート時代に適した新たな考え方

ワークライフバランスという言葉は、よく浸透している。しかし、ワークライフバランスは両者のバランスをとりにくいなどの難点がある考え方だ。そのため、リモート時代に適した以下のような新しい考え方ができている。

・ ワークライフマネジメント
・ ワークライフインテグレーション
・ ワークライフブレンド

最後に、これらの新しい考え方についてもあわせて確認していこう。

ワークライフマネジメント

ワークライフマネジメントとは、仕事も生活もどちらも成功できるように、積極的にマネジメントしていくという考え方のことである。

もともとワークライフバランスは、ワークとライフのどちらも充実させる考え方だ。しかし、言葉が浸透していくなかで、どちらもほどほどにしようと考える人が出てきてしまった。本来の「自発的によくしよう」とするものではなく、従業員のために企業がおこなうものであるかのような認知のされ方をするようになってしまったのだ。

そのため、仕事と生活のバランスを自らがマネジメントし、生活や仕事の質を主体的に高めていこうとする、ワークライフマネジメントの考え方ができたのである。メリットは、生産性の向上や優秀な人材が長期間活躍できること、私生活も仕事も充実できることなどだ。

ワークライフインテグレーション

ワークライフインテグレーションとは、仕事とプライベートを切り離さずに統合する考え方だ。メリットにはメンタルヘルスの維持や生活の質を高める効果、ダイバーシティの環境を実現できることなどがある。また企業にとっては、生産性の向上や従業員の自己成長につながる効果、企業の業績アップなども狙える。

しかし、自由な働き方が実現できるようになるものの、仕事と生活の切り分けが難しく、マネジメントが難しくなるというデメリットもある。

ワークライフブレンド

ワークライフブレンドとは、仕事と私生活を切り分けない考え方だ。勤務時間などにとらわれずに自分の裁量で働けるようにするものであり、欧米の企業で採用され始めている。

ワークライフブレンドは、仕事とプライベートを共存させることで得られるメリットを重視している。主なメリットは、以下のとおりだ。

・ 自由度が高い
・ 仕事や私生活を無理せずに両立できる
・ 仕事や私生活で得られる知識などをどちらにも活かしていける
・ アイデアがひらめきやすい

ただし、制度化が難しいこと、各々でのスケジュール管理の重要性が増すことなどのデメリットがある。

関連記事:自社の離職率は高い?低い?日本の業界別離職率と下げる取り組みを解説

まとめ

ワークライフバランスとは、「仕事と生活の調和や調整」を意味する。どちらか一方だけではなく、仕事をすることも生活の質も充実させるという考え方だ。

ワークライフバランスがうまくいけば、充実した生活を送ることで仕事がはかどるようになり、それによって私生活も潤うといった相乗効果を期待できる。時間に余裕ができることでスキルアップを図れ、その効果で仕事が効率的に進められるようになるなど、ワークライフバランスによる好循環が見込めるだろう。

日本でワークライフバランスが重視されるようになったことには、以下のような背景がある。

・ 少子高齢化問題
・ 団塊世代の大量退職
・ 共働き世帯の増加
・ 女性の活躍できる社会への期待

ワークライフバランスの取り組み事例や、「ワークライフブレンド」といったリモート時代に適した新たな考え方などもしっかりと理解し、実際の企業活動で活用していこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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