2023.6.27

エンジニア採用はなぜ難しい?手法やコツ、成功事例を紹介

読了まで約 8

採用業務のなかでも、エンジニアの採用は難しいとされている。この記事では、エンジニア採用を難しくする社会背景やエンジニア職への応募者数が少ない理由、選考期間中や内定者の辞退が多い理由などをわかりやすく紹介する。さらに採用を成功に導くコツや成功事例などもあわせてチェックしよう。

目次

エンジニア採用を難しくしている社会背景とは

エンジニアの採用を困難にしている社会背景には、以下のように複数の要因がある。

● エンジニアの求人倍率は上昇傾向で、売り手市場になっている
● 即戦力重視で新卒よりも経験者の中途採用率のほうが高い
● エンジニアのレベルアップが求められている
● 採用担当者のITスキルの向上が難しい
● 採用媒体・サイトの多様化と採用チャネルの複雑化

これらの背景があり、エンジニアは特に人手不足に陥りやすい。採用を難しくしている要因を、それぞれ詳しく確認していこう。

エンジニアの求人倍率は上昇傾向で、売り手市場になっている

求人募集を行ってもなかなか人材確保が難しいのは、エンジニアの求人倍率は非常に高く、売り手市場であることが要因のひとつだ。レバテック株式会社が発表した「ITエンジニア・クリエイター正社員転職・フリーランス市場動向 2022年12月」によると、ITエンジニア・クリエイター職の求人倍率は15.8倍であった。

なお、求人倍率は「求人数÷転職希望者数」で算出される。つまり、転職希望者数よりもエンジニアの求人数のほうが大幅に多く、買い手側が厳しい状況にあるのだ。

参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000531.000010591.html

即戦力重視で新卒よりも経験者の中途採用率のほうが高い

需要が非常に高いことに加えて、新卒から育てるよりもすでに経験のある中途採用を重視する企業が多いことも、エンジニアの人材確保が難しい要因である。IT人材に関しては、即戦力を求められやすい。スキルや実績のあるエンジニアは、自社だけではなくさまざまな企業から求められているため、特に採用における競争率が高くなっているのだ。

エンジニアのレベルアップが求められている

そもそも日本のエンジニアのレベルアップが求められるような状況で、高いレベルの人材を求める企業はさらに採用が難しいといえる。経済産業省が発表した「IT人材育成の状況等について」によると、日本のIT人材はアメリカやインド、中国、インドネシアなどの各国のIT人材のレベルと比較すると、平均レベルが低いのが現状だ。

レベルの高い人材の数が少ないため、その限られた人材をめぐってさらに採用の競争が激化しているのである。

参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/daiyoji_sangyo_skill/pdf/001_s03_00.pdf

採用担当者のITスキルの向上が難しい

さらに、採用担当者のITに関するスキルや理解力の向上が難しいことも、エンジニア採用が進まない要因のひとつだ。エンジニアを採用する際、採用担当者側にプログラミング言語やエンジニアの用いるツールへの理解や知見がない状態では、応募者の能力や技術をきちんと判断できない。企業として求めるレベルのエンジニアを見つけるためには、どのようなプログラミング言語が使えるのかなど、ある程度理解を深めたうえで獲得したいエンジニアの具体像を明確にすることが重要だ。

採用媒体・サイトの多様化と採用チャネルの複雑化

採用活動の難易度が高まっている理由のひとつとして、採用媒体・サイトの多様化と採用チャネルの複雑化も挙げられる。求職者の意識の変化によって、就職先探しで利用するチャネルが変化した。また、企業側も人手不足を解消しようとして、さまざまな採用方法を組み合わせて工夫を凝らすようになっている。

多様化した採用手法には、ダイレクトリクルーティングやミートアップリファラル採用などが挙げられる。ただし多様化・複雑化した分、一元管理しにくくなってしまい、さらに採用担当者の業務負担が増えて採用活動が難しくなってしまった。

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エンジニア職への応募者数が少ない理由

エンジニア職への応募者数が少なく、採用がうまくいかない理由として、自社の採用活動が適切でない可能性もある。自社の採用活動の内容によって応募者数が少なくなっている場合の理由として、以下のようなものが挙げられるだろう。

採用ターゲットが明確になっていない・狭い
● 求職者が知りたい情報が十分に開示できていない
● 応募者のポテンシャルを見極められずに逃している
● 求めるレベル設定が高すぎる
● 給与水準が相場とずれている

それぞれの理由の詳細を確認していこう。

採用ターゲットが明確になっていない・狭い

エンジニア職で採用する人材のターゲットが明確になっていないと、求人への応募者数が少なくなってしまう。求める人物像があいまいなままでは、求職者が求人を見ても企業が求める人材像や入社後のイメージがわからず、不安を与えてしまいかねない。その結果、興味を持ってもらいにくくなったり応募の敬遠につながったりして、求人への応募者数が伸び悩んでしまうのだ。

また採用ターゲットが狭い場合も、応募者数が少なくなってしまう。例えば、「20~30代で即戦力の人材」という採用ターゲットでは、そのニーズに応えられる人材が一握りになってしまう。

求職者が知りたい情報が十分に開示できていない

求職者が知りたい情報がうまく伝えられていない場合も、求人への応募者数が伸び悩んでしまう。例えば、「この企業といえば」でイメージできるようなものや強みがないと、競合他社との差別化がしにくくなってしまうのだ。

募集要項などで、求職者が働きたいと思えるような魅力付けができていない可能性もある。また、求人募集で使っている写真が暗いなど、ささいなことでも応募が敬遠されてしまうケースがあるため注意が必要となる。

応募者のポテンシャルを見極められずに逃している

エンジニア採用の求人に反応があっても、採用担当者が応募者のポテンシャルを見極められないことで採用がうまくいかないケースもある。先述のとおり、応募者の能力や技術を見抜いてエンジニア採用を成功させるためには、採用担当者自身にもある程度の知見が必要だ。

応募者のポテンシャルを見極められる採用担当者がいないと、せっかくエンジニアを採用できても思ったような働きをしてもらえず、また人材を探すことになりかねない。

また採用基準が担当者ごとに異なる場合には、採用結果が人によってぶれてしまい、本当に欲しかった人材を逃してしまうことがある。

求めるレベルが高すぎる

エンジニアとして求めるレベルが高すぎると、あてはまる人が少なくなり求人募集が難航してしまう。例えば、自社にいたエンジニアが退職し、その人の後任を探している場合に起こり得る。もともといたエンジニアが優秀だった場合、同様のことができるエンジニアを探していては必要以上に採用のハードルが上がって、後任が見つからなくなってしまいかねないのだ。

給与水準が相場とずれている

給与水準が相場とずれている場合も、自社よりも好条件な競合他社に人材が流れてしまって、求職者が集まらなくなってしまう。現在、エンジニアの求人募集に関しては、ほかの職種と比べても人材がたりない「超売り手市場」だといわれている。転職市場の相場や競合他社の採用活動を考慮したうえで、給与水準などを決めるべきだろう。

選考期間中における辞退が多い理由

せっかく求人募集への応募があっても、選考期間中に辞退されてしまうことがある。選考期間中における辞退が多い場合には、以下のような理由が考えられるだろう。

● 面接の案内が遅い
● 選考回数と期間が長い
● 面接官の印象が悪い

選考期間中は求職者と直接会う機会である。企業側が相手を見極めようとするのと同様に、求職者としても企業側を判断する場面であり、企業に対する心証が悪くなった場合などは辞退されてしまいかねない。

それでは、選考期間中における辞退が多い理由を確認していこう。

面接の案内が遅い

面接の案内があるまでに期間が空くと、求職者から辞退されてしまうことがある。求職者のなかには、なるべく早く新しい職に就いて生活を安定させたいと考えている人がいる。面接の案内が遅いと、選考結果が出る前にほかの企業で内定を受け取ってしまい、他社に人材が流れてしまいかねないのだ。

また、「面接の案内がなかなかないのは、落ちてしまったからではないか」と求職者が不安になってしまいかねないことも問題である。

選考回数と期間が長い

採用までの選考回数が多く、内定を出すまでに期間が長くなってしまう場合、面接の案内が遅い場合と同様に人材が他社に流れてしまいかねない。特に優秀な人材ほど、選考期間が長いとその期間中に他社からの内定を得て、自社への応募を辞退されやすくなるため注意が必要だ。また、選考までの期間が空くことで、その企業で働きたいという意欲が薄れてしまいやすくなる。

面接官の印象が悪い

採用担当者の態度が高圧的であったり、頼りないと感じさせたりした場合には、選考途中で辞退されてしまいやすくなってしまう。採用担当者の印象が悪い場合、求職者はその担当者自身だけではなく、企業そのものとしてのイメージまで悪く感じてしまいやすい。もしも採用担当者が「こちらが雇ってやるんだから」と威圧的な対応をしてしまうと、本人からの印象が悪くなるだけではなく、SNSなどでブラック企業だという評判が拡散される恐れがある。

関連記事:採用課題とは?代表例と解決のカギを5つ解説!

内定者の辞退が多い理由

選考が終わり、内定を出したあとでも、内定者から辞退の連絡をされてしまうことがある。内定者の辞退が多い場合に考えられる理由は、主に以下の2つである。

● 内定後のフォローが十分ではない
● 内定理由が正しく伝わっていない

また、内定を出すまでの期間が長いことで他社の選考に積極的になってしまい、自社から内定を伝えたときに辞退されてしまうケースもある。

それでは、内定者の辞退が多い理由を確認していこう。

内定後のフォローが十分ではない

内定を出してからでも、適切なフォローが行われていないと、内定者から辞退されやすくなってしまう。求職者は、内定を受け取ってからも「本当にこの企業が自分にあっているのだろうか」と不安になってしまいやすいものだ。求職者の不安を減らして内定後に辞退されないようにするためには、内定後のフォローが欠かせない。

内定理由が正しく伝わっていない

求職者側に内定を出した理由が正しく伝わっていない場合にも、辞退されやすくなってしまうものだ。求職者がなぜ内定をもらえたのかがわからないでいると、せっかく内定を受け取ったにもかかわらず「内定ブルー」に陥ってしまうことがある。求職者から志望動機を聞くだけではなく、企業側としても内定を出した相手に期待していることや相手の強み、入社してほしいという熱意を伝えることが重要だ。

エンジニア採用を成功に導くコツ

エンジニア採用を成功に導くためには、先述した内容を踏まえたうえで、適切な採用活動を実施するべきである。エンジニア採用を成功に導くコツは、以下のとおりだ。

● 採用ターゲットの幅を広く設定する
● 新卒未経験、中途経験者などさまざまな採用パターンを用意する
● 求人広告では十分な情報開示を行う
● 選考やスキル設定などは現場エンジニアにも協力してもらう
● 給与水準は企業水準とともに相場も考慮する
● 面接・選考をスピーディーに行えるよう調整する
● 内定後のフォローを強化する

それぞれのコツを確認していこう。

採用ターゲットの幅を広く設定する

エンジニア採用を成功に導くには、採用ターゲットを明確にしたうえで、その幅を広く設定することが重要だ。例えば、「20~30代で即戦力の人材」という幅の狭い採用ターゲットではなく、年齢の制限を外して40~50代などの人材もターゲットに入れたり、入社後に育成する前提で人材を探したりするなどである。採用ターゲットを見直すことで、採用活動がスムーズになるだろう。

新卒未経験、中途経験者などさまざまな採用パターンを用意する

先述のとおり、エンジニア採用では即戦力となる経験豊富な中途採用者が求められやすい傾向にあった。しかし、さまざまな採用パターンを用意して、中途採用の経験者だけではなく新卒者や未経験者でも採用の対象とすることができれば、人材を確保しやすくなるだろう。

実際に、近年では未経験可のエンジニア採用が増えている。未経験可にする場合には、社内で人材を教育できるリソースがあるかどうかも考慮に入れよう。

求人広告では十分な情報開示を行う

求人広告で十分な情報開示を行うことも重要だ。安定性や成長性、働きやすさなどの自社の特徴を洗い出し、採用したい人材像のニーズにあった魅力を詳しく伝えていこう。

ただし、自社のメリットばかりを伝えていると、入社後のミスマッチにつながってしまいかねない。自社にとって不都合な点を、今後の改善策とともに開示すると良いだろう。

選考やスキル設定などは現場エンジニアにも協力してもらう

先述のとおり、エンジニア採用では採用担当者にもIT人材に対する理解や知見が必要となるものの、採用担当者の知見を深めることは簡単ではない。現場にいるエンジニアにも協力してもらって、選考基準や求めるスキルの設定などを明確にしておくと良いだろう。例えば、精通するソフトウェアやツール、扱えるプログラミング言語の種類などを具体的に決めておこう。

給与水準は企業水準とともに相場も考慮する

給与水準を定める際は、企業としての水準だけではなく相場も考慮することが重要だ。先述のとおり、給与水準が相場とずれている場合も、自社よりも好条件な競合他社に人材が流れてしまいかねない。競合他社の求人情報を定期的に確認するとともに、親しみやすさなど、より魅力的に見えるような採用活動をしていないかどうかをチェックしておこう。

面接・選考をスピーディーに行えるよう調整する

面接までの連絡といった選考過程の期間を短くすることも重要だ。先述のとおり、選考期間が長くなってしまうと、せっかく応募してくれた人材が他社に流れてしまいやすくなる。なるべく選考をスピーディーに行えるよう調整し、応募者の働く意欲が薄れないようにしよう。

また、もしも期間が長くなってしまう場合には、選考のはじめに一連の流れを説明しておくなどの工夫をすると良いだろう。

内定後のフォローを強化する

内定を出してからの辞退をなくすために、内定後のフォローを強化することも重要だ。内定後のフォローとは、入社前研修の実施や内定者同士の交流の場づくり、こまめに連絡を取るなどである。内定者が自社に入社するまでに十分なフォローを実施することで、不安や焦燥感を払拭して内定ブルーになりにくくなり、定着に向けたサポートができるのだ。

関連記事:通年採用とは?「新卒一括採用」との違いや近年広まる背景

各種採用手法の活用方法

難度の高いエンジニア採用を成功させるために、さまざまな採用手法を活用することをおすすめする。例えば、以下のような手法を活用すると良いだろう。

● 採用セミナーなどのイベントの検討
● 採用管理システム(ATS)の活用
● アウトソーシングやBPOベンダーなどの活用

それでは、それぞれの採用手法の活用方法を確認していこう。

採用セミナーなどのイベントの検討

採用マーケティングでは、セミナーなどのイベントの活用がおすすめだ。特に採用セミナーの開催は、以下のようなメリットがある。

● 採用候補者を集められる
● 求職者に自社の魅力をアピールできる
● 企業理念を伝えられる

採用セミナーは、少なからず自社に関心がある人を集められるため、採用の母集団形成に役立つ。また、参加者と直接的な関わりを持てることもメリットだ。

採用管理システム(ATS)の活用

採用管理システム(ATS)の活用もおすすめである。ATSとは、採用に関する業務を管理できるシステムのことだ。選考の進捗状況や評価などを追跡し、それぞれの候補者ごとの選考ステータスが把握できる。さらに選考の際だけではなく、採用の準備段階から内定フォローまでの管理が可能だ。

ATSを利用するメリットには、一元管理による業務の効率化やデータ・ノウハウの蓄積が可能となることなどが挙げられる。

アウトソーシングやBPOベンダーなどの活用

採用手法ではなく、番外編的な位置付けであるものの、あわせてアウトソーシングやBPOベンダーなどの活用も検討すると良いだろう。BPOとは、外部の専門企業や子会社に自社の業務プロセスを委託することである。従来のアウトソーシングとの違いは、業務におけるタスクの一部のみではなく、業務プロセスを一括して任せることだ。

重要でない業務に関してはアウトソーシングやBPOベンダーなどを活用すれば、自社の社員はコア業務のみに注力できるようになる。その結果、業務改善や採用までの期間の短縮、コストの削減などのメリットを得られるだろう。

エンジニア採用に成功している企業の事例

実際にエンジニア採用に成功している企業の事例は、以下のとおりだ。

<株式会社オムニス>
採用担当者が2名しかおらず、母集団形成にまで手が回らないという課題があった。工数の負担が少ない状態で母集団を形成するためにSNS広告を活用したところ、掲載後から応募が増えてエンジニアの採用につながった。

<BASE株式会社>
採用担当者ではなく現場の社員が中心となって採用に取り組むスクラム採用を実施。より良い人材に出会えることを強調して実施したことで、連帯感の高いチーム形成につながった。

<株式会社マネーフォワード>
長期インターン採用の開始により、ビジネス感度の高い学生と早くから接触できるようになった。さらに、帰属意識の醸成、企業理解度の向上などにつながり、インターン経由での採用に成功している。

まとめ

近年、ますますエンジニアへのニーズが高まっている。エンジニア採用は超売り手市場と呼ばれ、必要な人材を確保しにくいのが現状だ。採用が難しいからこそ、その背景や自社の採用活動における原因などを理解して、改善していく必要があるだろう。

今回ご紹介したエンジニア採用の難しさや成功させるためのコツ、おすすめの採用手法などをしっかりと理解したうえで、実際の企業活動に役立てていこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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