2019年4月より順次施行されている働き方改革関連法案は、多くの企業において残業時間の低減に向けた取り組みを加速させています。しかし、単に残業時間を削減するだけでは、生産性の低下を招く可能性があります。そのため、マーケティング業務においても、効率化を真剣に検討し、実行していくことが不可欠です。
「具体的にマーケティング担当者の業務をどのように効率化すれば良いのか?」という疑問をお持ちの皆様も多いのではないでしょうか。本記事では、働き方改革の概要を再確認するとともに、マーケティング担当者のアンケート結果から見えてくる現状と課題を共有します。さらに、マーケティング担当者の業務効率化に貢献する具体的なツールを3つ紹介いたします。これらの情報を参考に、貴社の働き方改革推進の一助となれば幸いです。
働き方改革とは?
最初に「働き方改革」についておさらいしておきましょう。
働き方改革の目的
働き方改革とは、日本の労働人口が今後減少していくことに対して、その対策として実施されているものです。下表の通り、2010年を境として、これまで増加してきた日本の総人口は減少していくこととなりました。
それにともなって高齢化率も増大し、15歳~64歳までの「労働人口」は大幅に減少していく見込みです。この労働人口の減少は、経済成長への影響も懸念されており、マーケティング 効率化 をはじめとするあらゆる業務分野において、生産性向上が喫緊の課題となっています。
また、働く人の意識も以前とは異なってきています。高度経済成長時代は主流だった早朝から深夜まで働く「モーレツサラリーマン」は影を薄め、家庭と仕事を両立しワークライフバランスを保ちたいと思う人が増えています。このような社会背景の中、マーケティング 業務効率化 は、単なるコスト削減策ではなく、従業員の満足度向上にも繋がる重要な経営戦略として位置づけられています。
そのような状況において今後日本の生産性を維持するためには、
・業務を効率化することにより労働者一人ひとりの生産性を向上させる
・現在職に就いていない人も働けるよう雇用機会を拡大する
・一人ひとりの労働にたいする意欲や能力を十分に発揮できる環境をつくる
ことを考えなくてはならなくなります。これが働き方改革の目的です。特に、変化の激しいマーケティング業界においては、最新のトレンドやテクノロジーを常にキャッチアップし、戦略に活かすための時間的余裕を生み出すためにも、マーケティング 効率化 は不可欠な取り組みと言えます。
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働き方改革に向けた厚生労働省の取り組み
働き方改革の実現へ向け、厚生労働省では、労働生産性の向上と多様な働き方の実現を目指し、多岐にわたる取り組みを推進しています。これらの取り組みは、個々の労働者の健康と幸福を増進させるとともに、企業全体の競争力強化に寄与することを目的としています。マーケティング業務の効率化も、こうした全体的な生産性向上の一環として捉えることができます。
| 項 目 | 概 要 |
| 長時間労働の是正 | 時間外労働の上限は、1ヶ月で45時間、年間で360時間が上限。また、特別な事情が短期的にあるケースでも、年間で720時間、単月なら100時間、複数月にわたる場合は月平均80時間が上限。 |
| 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保 | 正規雇用者と非正規雇用社との不合理な待遇差を解消し「同一労働同一賃金」を原則とする。 |
| 柔軟な働き方がしやすい環境整備 | テレワークや副業・兼業などにより、柔軟な働き方がしやすい環境を整備する。 |
| ダイバーシティの推進 | 病気の治療と仕事の両立、女性が活躍できる環境整備、高齢者の就業支援、子育て・介護などと仕事の両立、障害者就労の推進、外国人材の受け入れ、および若者が活躍しやすい環境整備などをとおし、ダイバーシティを推進する。 |
| 賃金引き上げ、 労働生産性向上 |
最低賃金を引き上げるとともに、労働者一人ひとりの生産性向上を支援する。 |
| 再就職支援、 人材育成 |
再就職の支援、あるいは人材の育成により労働人口の減少を補う。 |
| ハラスメント防止対策 | 職場のパワーハラスメントなどを防止することにより働きやすい環境を整備する。 |
参照:厚生労働省『「働き方改革」の実現に向けて』
マーケティング担当者は働き方改革をどう感じているのか?
さて、以上で見てきた働き方改革について、マーケティングの実務担当者はどのように感じているのでしょうか? マーケティングの実務家による国際組織「MCEI(Marketing Communication Executives International)」の東京支部が2018年に行ったアンケート結果から、その実情と、マーケティング 効率化への意識を探ってみましょう。
働き方改革への取り組みは実施されているか?
アンケートでは、まず「働き方改革への取り組み状況」が質問されました。
出典:MCEI『国会の裁量労働関連データ問題など何かと話題の「働き方改革」。マーケティング実務家はどう実感しているのか?』
その結果「働き方改革を実施している(またはすでに実施済み)」が6割以上、「実施する予定がある」と合わせると7割以上となっています。実施されている取り組みの内容は以下の通りとなっています。実施されている取り組みの内容は以下の通りとなっており、特に長時間労働の是正に多くの企業が注力していることが伺えます。
・長時間労働の是正(78%)
・多様人材活躍・ダイバーシティ(48%)
・裁量労働/フレックス制度(27%)
・オフィス制度(25%)
・テレワーク(23%)
働き方改革は、特に残業時間の低減については、このアンケートを見る限り着実に進められつつあるといえるでしょう。
関連記事:ダイバーシティとインクルージョン入門|意味、重要性、推進によって企業・社会にもたらす変革を解説
自身の残業時間はどうなっているのか?
働き方改革によりマーケティング実務家の残業時間がどうなっているのかも、アンケートでは質問されています。
出典:MCEI『国会の裁量労働関連データ問題など何かと話題の「働き方改革」。マーケティング実務家はどう実感しているのか?』
働き方改革の必要性と改革が必要な業務内容
アンケートでは、マーケティング実務者自身が業務を行うにあたって「働き方改革が必要と思うか」を質問しています。
出典:MCEI『国会の裁量労働関連データ問題など何かと話題の「働き方改革」。マーケティング実務家はどう実感しているのか?』
その結果、約8割が「必要だと思う」と答えています。改革が必要と思われる業務や作業は以下の通りとなっています。
・会議のやり方(41%
・資料作成(33%)
・業務改善・効率化(33%)
・情報収集・整理(25%)
・企画・アイディア創出(22%)
マーケティング実務家にとっても、働き方改革を実践し生産性を向上する余地はまだまだあるということでしょう。特に、会議の進め方や資料作成、情報収集・整理といった日常的な業務の効率化が求められています。これらの領域で、デジタルツールの活用やプロセスの見直しが、マーケティング 効率化に繋がる鍵となるでしょう。
参照:MCEI『国会の裁量労働関連データ問題など何かと話題の「働き方改革」。マーケティング実務家はどう実感しているのか?』
マーケティング業務効率化のための推奨ツール3選
マーケティング担当者が日々の業務を効率化し、働き方改革 を推進するためには、適切なツールの導入が不可欠です。ここでは、特に効果的な3つのツールを紹介します。これらのツールを活用することで、マーケティング 効率化 を実現し、より戦略的な業務に注力できるようになります。
1.チャットワークなどのビジネスチャット
チャットワークなどのビジネスチャットの導入は、マーケティング担当者の業務を効率化することにつながります。
従来のメールや電話でのコミュニケーションと比較して、ビジネスチャットではより効率的なコミュニケーションが可能となります。
●ビジネスチャットのメリット:
・迅速な情報共有: メールのように時間差がなく、電話のようにリアルタイムでのやり取りが可能です。
・円滑なチーム連携: 1対1のコミュニケーションはもちろん、複数人でのグループチャットも容易で、プロジェクトの進捗共有や意思決定を迅速化できます。
・ファイル共有の利便性: さまざまなファイルを簡単に添付・共有でき、資料のやり取りにかかる手間を削減します。
・会議時間の短縮: 非同期でのコミュニケーションや、必要な情報へのアクセスが容易になることで、会議の回数や時間を削減する効果が期待できます。
●ビジネスチャットを導入する際の注意点:
・情報過多への対策: 情報量が多くなると、過去の発言を遡りにくくなることがあります。重要な情報は「ピン留め」する、定期的に要点をまとめるなど、情報整理のための運用ルールを明確に定めることが重要です。
・ツール選定の重要性: 各ツール(チャットワーク、Slack、LINE WORKSなど)にはそれぞれ強みと弱みがあります。自社のチーム規模、コミュニケーションスタイル、必要な機能などを考慮し、最適なツールを選定することが マーケティング 効率化 の鍵となります。
マーケティングオートメーション(MA)
マーケティングオートメーション(MA) は、見込み顧客のリスト管理、ステップメールの自動送信、Webサイトの行動分析、パーソナライズされたコンテンツ配信など、マーケティング活動の多くのプロセスを自動化するツールです。これにより、マーケティング担当者は定型的・反復的な作業から解放され、より高度な戦略立案やクリエイティブな業務に集中できます。
●MAのメリット:
・見込み顧客の獲得・育成: 従来のマーケティングでは見込み顧客のフォローアップに限界がありましたが、MAを活用することで、見込み顧客の行動履歴に基づいた適切なアプローチを継続的に行うことが可能になります。これにより、顧客の取りこぼしを減らし、成約率の向上に繋げられます。
・パーソナライズされた顧客体験: 顧客一人ひとりの興味関心や行動に合わせた情報提供が可能になり、顧客満足度とエンゲージメントを高めます。
・データに基づいた意思決定: MAは、マーケティング活動の成果を詳細にデータ化します。これにより、効果測定や改善点の特定が容易になり、データに基づいた的確な意思決定を支援します。
●MAを導入する際の注意点:
・スモールスタートの推奨: MAは長期的な視点で運用することで真価を発揮します。最初から大規模に導入するのではなく、一部の機能から試験的に導入し、効果を確認しながら段階的に拡張していくアプローチが推奨されます。
・コンテンツの充実: MAの効果は、配信するコンテンツの質に大きく依存します。ターゲット顧客に響く魅力的なWebコンテンツ(ブログ記事、ホワイトペーパー、ウェビナーなど)を継続的に作成・提供することが、MA導入の前提となります。
・運用体制の整備: MAツールを使いこなすための専門知識や、運用体制の構築が必要です。社内での研修や、外部パートナーとの連携も検討しましょう。
チャットボット
自社Webサイトへのチャットボット導入は、カスタマーサポートの効率化と顧客満足度の向上に大きく貢献します。特に、マーケティング 効率化 の一環として、顧客からの問い合わせ対応を自動化することは、担当者の負担軽減に繋がります。
●チャットボットのメリット:
・カスタマーサービスの効率化: オペレーターは一度に一人にしか対応できませんが、チャットボットであれば同時に多数の問い合わせに対応可能です。これにより、オペレーターの負荷を軽減し、対応待ち時間を短縮できます。
・顧客満足度の向上: 24時間365日対応が可能になるため、顧客は時間や場所を選ばずに疑問を解消できます。これにより、顧客体験の向上に繋がります。
・リード獲得の機会創出: 問い合わせ対応を通じて、見込み顧客のニーズを把握し、適切な情報提供や担当者への引き継ぎを行うことで、新たなビジネスチャンスに繋がる可能性があります。
●チャットボット導入時の注意点:
・オペレーターへのスムーズな引き継ぎ: チャットボットで解決できない複雑な問い合わせや、顧客がより詳細な情報を求めている場合に、オペレーターへスムーズに引き継ぐフローを設計することが不可欠です。場合によっては、電話やFAQページへの誘導が適切なこともあります。
・回答精度の継続的な向上: チャットボットが適切に回答できなかった質問を常に分析し、回答データベースを更新していく必要があります。不十分な回答は、ユーザーの不満に繋がり、逆効果になる可能性があります。
・シナリオ設計の重要性: どのような質問に、どのような回答を返すのか、想定されるユーザーの質問パターンに基づいた精緻なシナリオ設計が、チャットボットの効果を最大化する上で重要です。
まとめ
働き方改革は、労働人口の減少という社会課題に対応し、一人ひとりの生産性向上を目指すものです。特にマーケティング部門では、業務の効率化が喫緊の課題となっています。多くのマーケティング担当者は、働き方改革の必要性を実感しており、その実現には、マーケティング 効率化のための具体的な施策が不可欠です。
本記事では、働き方改革の概要と厚生労働省の取り組み、そしてマーケティング担当者の意識調査を紹介しました。その結果、約8割のマーケターが働き方改革の必要性を感じており、特に会議の進め方や資料作成、マーケティング 効率化そのものが改善すべき業務として挙げられています。
これらの課題を解決し、マーケティング業務を効率化するためには、適切なツールの導入が有効です。本記事で紹介したビジネスチャット、マーケティングオートメーション(MA)、チャットボットは、コミュニケーションの迅速化、顧客管理の自動化、カスタマーサポートの負荷軽減など、それぞれがマーケティング 効率化に大きく貢献します。これらのツールを戦略的に活用することで、残業時間の削減と生産性向上を両立させ、持続可能な働き方改革の実現を目指しましょう。





