Web広告に取り組んだことのない方であれば、まずはリスクを抑えて「予算月10万円くらいから始めよう」という方も多いでしょう。
しかし、いざ始めるとなると「プロに任せるべきか(外注)、自分でやるべきか(内製)」で悩み、自分でやると決めても「何から手をつければいいのか分からない」と不安になるのではないでしょうか。
そこで本連載では、Amazonでベストセラーとなった著書『「本業が忙しくて広告まで手が回らないよ!」という人のためのGoogle検索広告入門』を執筆し、中小企業のWebマーケティング支援に強く、これまでに100業種・1,000アカウント以上の広告運用に携わってきた株式会社オンジン代表の今井悠人が、全3回にわたり「少額予算でのリスティング広告運用の勝ち筋」を解説します。
第1回となる今回は、業界歴10年以上の経験から見えた、AI時代のひとり担当者における広告運用のマインドセットについてお話しします。
なぜ月10万円等の少額予算なら内製を推奨するのか。そして、本業が忙しい中でも完璧を目指さず成果を出す「80点主義」の広告運用の始め方を提案します。 テクニックを学ぶ前に、まずは運用に対する心の持ちようを少し変えてみましょう。
人事・経営層のキーパーソンへのリーチが課題ですか?
BtoBリード獲得・マーケティングならProFutureにお任せ!
目次
月10万円なら「内製」から始めることを推奨する理由
まず予算の大小かかわらず、広告運用の理想について、筆者は「内製」だと思っています。広告代理店を経営している立場として、少々言いづらいことではあるのですが、これは紛れもない本音です。
最大の理由は、社内と社外では商材や顧客理解の解像度に大きな差があるからです。自社の商品やサービスの魅力を一番よく知っているのは、代理店の担当者ではなく、間違いなく社内の皆さん自身です。「誰に、どんな内容をどのような言葉で伝えれば商品価値が伝わるのか」。この理解度の深さは、そのまま広告のコンバージョン率(獲得率)に直結し、CPA抑制に繋がります。
広告運用の本質は、管理画面の操作テクニックではありません。「顧客の気持ちを翻訳し、広告クリエイティブやLPに落とし込むこと」です。
加えて、月10万円の予算では、後述する代理店のビジネスモデル上、高い費用対効果を出し続けることが構造的に難しいという現実もあります。そのため少額予算であれば、自社での広告運用を基本おすすめしています。
この理由を説明していきます。
最低運用代行手数料がかかるため
最も大きな課題はコストです。広告代理店に運用を依頼する場合、広告費とは別に運用代行手数料が発生します。相場は「利用広告費の20%」ですが、ここで少額予算ならではのジレンマが発生します。
多くの代理店では、採算を合わせるために最低手数料を設定しているケースがほとんどだからです。代理店によって異なりますが、私の肌感覚では安くて月3万円〜5万円。一般的な相場は10万円〜20万円ほどです。ちなみに大手代理店になると、予算が数千万円以上でないと依頼すらできないこともあります。
そこでたとえば、月10万円の予算で依頼し、手数料が5万円だと仮定します。すると、実際に広告配信に使われる金額はわずか5万円。実質的な手数料率は50%にも跳ね上がります。
クリック単価(業種の相場)にもよりますが、これでは十分なクリック数を確保できず、期待するコンバージョン数(売上)につなげることが非常に難しくなります。
一方、内製化すれば予算の100%を広告費に回せるため、大きな問題のない80点の広告運用ができれば、コンバージョン数の増加が見込めます。
代理店の構造上、手厚いサポートが難しいため
少々厳しい言い方になりますが、月10万円ほどの少額予算規模において、代理店から手厚いサポートを期待するのは、構造的に難しい場合が多いのが現実です。
代理店のビジネスモデルは、基本的に労働集約型です。手数料売上が少ないクライアントに、経験豊富なベテラン担当者を張り付きで稼働させてしまうと、会社としては赤字になりかねません。そのため、少額予算の運用代行をビジネスとして成立させるには、どうしても少ない工数で対応せざるを得ないのです。
その上で広告運用は「誰が運用するか」によって成果が大きく変わります。では、少額のクライアントは誰が担当するのか?というと、多くの場合は社内で経験の浅いメンバーが担当することになります。エース級の社員は予算の大きいクライアントを中心に担当せざるを得ないからです。
そのため少額予算のうちは自分で運用の基礎を身につけ、自らの手でコントロールするほうが、結果として質の高い運用ができるケースも往々にしてあるでしょう。
弊社も代理店事業を行っていますので、これは決して業界批判ではありません。どのビジネスでも大口クライアントにリソースを集中させるのは、経営判断として当たり前のことだからです。
ただしLTVが高いビジネスなら少額予算でも外注はあり
もちろん、例外はあります。
例えば、LTV(顧客生涯価値)が高いビジネスモデルの場合です。手数料が引かれた後の少ない広告費であっても、1件成約すれば大きな利益が出て、トータルで黒字になるなら、外注という選択もありでしょう。
弊社でもシミュレーションを行い、少額予算でも十分に黒字化が見込めると判断した場合は、工数を抑えた運用となる旨をご了承いただければ、お引き受けしております。
実は過去、ご予算が少ないという理由だけで一律お断りしていた時期もありました。 しかし、困って頼ってきてくれた方を門前払いするような対応は、弊社のビジョンにも反しますし、何より私自身の心情としてどうしても納得がいきませんでした。
正直に言えば、経営効率だけで見れば正解ではないのかもしれません。ですが、ここはもう理屈ではありません。 現在は予算の大小を問わず、私たちの力を必要としてくれるのであれば、支援させていただいています。
また、格安手数料の代理店や、フリーランスに依頼するという手もあります。とにかく手間をお金で買いたいという場合は、それも一つの選択肢です。ただ、そういったケースでも、優先順位が下がりやすいという構造的なリスクは完全には消えません。
したがって、困難な事情がない限り、まずは内製でスタートすることを推奨します。外注を検討するのは、内製で成果が出て予算を拡大するフェーズに入ってから、あるいは「自分でやってみたけれど、どうしても成果が出ない」と判断してからでも遅くはありません。
「素人には無理」は思い込み。独学でも十分成果が出せる理由
「理屈はわかるけど、知識のない素人が成果を出せるわけがない。」
そう不安に思う方も多いでしょう。
しかし、安心してください。今は独学のひとり担当者でも十分に成果が出せる時代です。理由を説明します。
職人技はもう不要。原則、手動調整よりAIに任せるべき
かつてのリスティング広告運用は、まさに職人技の世界でした。数千ものキーワードや広告グループを登録し、入札単価を毎日手動で調整する……そんな緻密な作業が成果を左右していました。
しかし現在は、広告媒体側のAI(機械学習)が飛躍的に進化しました。「どのユーザーに、いつ、いくらで入札すればコンバージョンしやすいか」。こうした判断は、人間が手動で計算するよりも、AIに任せたほうが高精度に行えます。
もちろん、成果を突き詰めればキーワードを漏れなく登録し、手動で入札価格調整すべき局面もあります。ですが、80点の広告運用を実現するためであれば、職人技のような細かい調整は必要ありません。
広告運用ノウハウのインプットが楽になった
一昔前まで、広告運用の高度なノウハウは代理店の中にしかなく、外部からは見えにくい秘伝のタレのようなものでした。
しかし現在は、代理店のブログやX、YouTube、書籍などで、プロの広告運用者と同等の知識を誰でも簡単にインプットできます。
手前味噌ですが、私の著書や弊社オンジンのHPでも、初心者の方が迷わず広告運用できる情報を包み隠さず発信しています。独学で進める際は、ぜひ辞書代わりに活用してみてください。
・「本業が忙しくて広告まで手が回らないよ!」という人のためのGoogle検索広告入門
・【リスティング広告完全ガイド】初心者でも圧倒的な成果を生み出す全手法
知識の差は縮まり、作業の差はAIが埋めてくれました。だからこそ、「プロじゃないから」と恐れる必要はありません。自信を持って、内製化への一歩を踏み出してみてください。
私自身、これまでに業界未経験の方を10人以上育て、中小企業から上場企業まで多くの内製化を支援してきました。その経験から断言できますが、最初は知識ゼロで構いません。「自分でやってみよう。」という強い覚悟さえあれば、広告運用のスキルは習得可能です。
次は内製化するために挫折しないポイントを説明します。
まずは80点主義で回そう。最低限の運用ルール
ひとり担当者が広告運用を挫折する最大の原因は「頑張りすぎてしまうこと」にあります。100点満点のプロの運用を目指して、本業が忙しいのに必要以上に情報収集したり、毎日管理画面に張り付いたりして疲弊してしまうのです。目指すべきはまず80点。あえて「やらないこと」を決めるのが、無理せず続けられるポイントです。
AI時代における、3つの「80点主義で回すための運用ルール」を提示します。
広告管理画面の調整は毎日しなくていい
「毎日なにかしら調整しないと不安」という気持ちは痛いほど分かります。
しかし、日々の数値のブレに一喜一憂して設定をいじりすぎるのは、AIの学習にとって逆効果(ノイズ)になることが多いのです。
特に月10万円という少額予算の場合、1日で得られるデータ(クリック数など)は微々たるものです。信頼できるデータがたまるまで、じっと待つのも仕事のうち。少額予算の場合は「週に2回、30分だけ見て調整する」くらいの距離感が、実は成果が出やすかったりします。
注意点として、数値をこまめに確認するのは良いことですし、改善点が明らかな状態であれば、頻繁に調整すべきです。特に必要ではないのに、目的なしで頻繁に手を加えるのは不要という話です。
手動での入札単価調整をしない
前述の通り、80点運用をする上ではキーワードごとの入札単価を手動で決める必要は基本ありません。「目標コンバージョン単価」や「クリック数最大化」などの自動入札機能を使い、AIに入札単価調整を任せることをおすすめします。
クリック単価が異常に高騰するような状況では、手動で入札抑制をすべき……と代理店としては言いたいところですが、判断が難しく運用工数も増えるため、まずは自動入札に任せて運用していきましょう。
細かすぎるキーワード登録をしない
昔は、ユーザーがコンバージョンする検索語句を網羅するために、キーワードを細かく何百個も登録することもありました。しかし、AIが言葉の文脈(検索意図)まで理解できるようになった今は不要です。
主要なキーワードを登録しておけば、関連する検索語句にまで、AIが自動で対象を広げて広告を出してくれます。
例えば、「りんご 通販」というワードであれば、ロングテールキーワードで「りんご 通販 おすすめ」「りんご 通販 安い」などがありますが、「りんご 通販」のみ登録するようなイメージです。
意図しない検索で広告が出るのが怖いという方もいるかもしれません。 そこは、次回お伝えする除外キーワード設定でコントロールすればOKです。細かすぎるキーワード登録は80点運用を目指す上では必要ありません。
まとめと次回予告
今回は、80点の広告運用内製化に向けたマインドセットを中心にお伝えしました。 「これなら自分にもできそう」と思っていただけたなら、第一歩は成功です。
次回は、これを実現するための具体的な設定編です。 毎日の運用で楽をするために、最初に絶対に外してはいけない「アカウント構造(シンプル化)」と、無駄なクリックを防ぐための「除外設定」などのポイントを解説します。
成果の9割は初期設定で決まります。管理画面を毎日見なくて済むメンテナンスフリーなアカウント構築術を公開しますので、ぜひ次回もご覧ください。





