インターネットやスマートフォンの急速な普及とともに、SNSを通じて拡大した「アンバサダー(Ambassador)」や「アンバサダーマーケティング(Ambassador Marketing)」。多くの会社・組織がアンバサダーやアンバサダーマーケティングを戦略的に活用する一方で、「アンバサダーとは自社にとって必要なものなのか」「アンバサダーマーケティングを取り入れる意味はあるのか」など、その効果やメリットをはかりかねている企業担当者も少なくありません。
本記事では、アンバサダーの具体的な定義、アンバサダーマーケティングの意味やメリット、そして実際の企業における活用事例などを詳細に解説します。これらの情報は、マーケティング戦略の立案や改善を検討している企業の方々にとって、有益な指針となるでしょう。
また、アンバサダーマーケティングは、従来の広告手法とは異なる特徴を持つため、その独自性や効果的な実施方法についても触れていきます。SNSの影響力が増大する現代のデジタルマーケティング環境において、アンバサダーの活用がもたらす可能性と課題についても考察します。
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目次
アンバサダーとは?意味や概要
近年、インターネットやスマートフォンの普及により「X(Twitter)」や「Facebook」「Instagram」などのSNSは、私たちの生活に欠かせないものになってきました。
多くのユーザーが情報発信やコミュニティーの形成など、あらゆる目的でSNSを活用していますが、中でも注目されているのがアンバサダーの活用です。
アンバサダーは、企業や組織のブランドや製品、サービスを代表して情報発信を行う人物を指します。これらの人々は、自身の経験や感想を通じて、ブランドの魅力を自然な形で伝える役割を担っています。
アンバサダーの特徴として、通常の広告や宣伝とは異なり、より信頼性の高い口コミ的な情報発信が可能であることが挙げられます。消費者にとっては、実際の使用者からの生の声として受け取られるため、説得力のある情報源となります。
企業にとっては、アンバサダーを活用することで、ブランドの認知度向上やイメージアップ、さらには顧客との関係構築にも繋がるというメリットがあります。特に、若年層を中心としたSNSユーザーへのアプローチに効果的であると言えるでしょう。
このように、アンバサダーはデジタル時代におけるマーケティング戦略の重要な要素として、その存在感を増しています。アンバサダーの具体的な意味や概要について、さらに詳しく解説していきます。
アンバサダーの意味
アンバサダー(ambassador)とは、日本語に訳すと「大使」や「使節」「代表」「代理人」といった意味になります。
ビジネスシーンでのアンバサダーとは、分かりやすくいえば「宣伝大使」です。組織や企業からの依頼を受け、公式に「ブランド」「商品」「サービス」などの広報活動、普及活動を行う人を指しています。
基本的には企業との間に金銭の授受がない契約が多く、好意を持ち応援しているブランドから公式に任命され、商品やサービスについて自ら発信できることに喜びを感じているという人が多いようです。
アンバサダーとは、企業の顔であり、イメージキャラクターとして「広告塔」の意味合いを持つ「応援者」でもあると理解しておきましょう。
アンバサダーの概要
SNSの影響力が拡大している現代において、さまざまな企業がアンバサダーを活用した広告プロモーションを展開していますが、同じように消費者にアプローチする「インフルエンサー」との違いはどこにあるのでしょうか。
インフルエンサーとは、分かりやすくいえば、消費者に強い影響力を持つ「オピニオンリーダー」のような存在です。
たとえば、自身のコミュニティー内の消費者に情報発信できる、拡散力・訴求力の高い「芸能人」「著名人」「ブロガー」「ユーチューバー」「インスタグラマー」などがインフルエンサーとして活躍しています。
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一方、アンバサダーとは企業の「象徴」であり、広告塔としてふさわしいと判断されれば、インフルエンサーのような知名度や影響力の大きさは問わない場合が多いようです。アンバサダーを選出する際には、SNSにおけるフォロワー数の多さよりも、これまでどのような情報発信を行ってきたかなど、投稿の内容や表現の質を評価しているといえるでしょう。
一般的な消費者が、ある商品・サービスのファンになり、自身のSNSでその思いを熱心に発信していたところ、企業担当者の目に留まってアンバサダーに就任したということも少なくありません。
企業はブランドイメージ・商品イメージの向上を目指し、自社に愛着を持つファンを確実に増やすための「長期的なマーケティング戦略」として、一般のアンバサダーを積極的に起用していると考えてよいでしょう。
アンバサダーは、企業と消費者をつなぐ重要な架け橋として機能します。彼らは単なる宣伝者ではなく、製品やサービスの実際のユーザーとして、リアルな体験や感想を共有することで、より信頼性の高い情報を発信することができます。このような真摯な姿勢が、潜在的な顧客の信頼を獲得し、ブランドへの好感度を高めることにつながるのです。
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アンバサダーマーケティングとは?
アンバサダーマーケティングとは、組織や企業がアンバサダーを採用し、SNSなどを通じて自社ブランドや商品・サービスをPRする宣伝手法です。
アンバサダーマーケティングの本質は、アンバサダーを通じて「信頼度の高い口コミ」を生み出すことにあります。アンバサダーは、取り扱う商品やサービスの魅力、知ってもらいたい関連情報などを、自然な形で発信します。これにより、従来の広告よりも受け入れやすく、消費者にとって身近な存在となります。
この手法の特徴として、以下の点が挙げられます。
1.自然な情報発信: 押し付けがましくない、自然な形での宣伝が可能
2.信頼性の向上: 実際のユーザーからの声として受け取られ、信頼性が高まる
3.ブランドイメージの確立: 長期的な視点でブランドの印象を形成できる
4.消費行動の促進: 身近な存在からの推奨により、購買意欲を刺激
アンバサダーマーケティングは、単なる一時的な販促活動ではなく、ブランドと消費者との間に強固な関係性を築くための長期的な戦略として機能します。企業は、自社に愛着を持つファンを確実に増やし、持続的な成長を実現するためにこの手法を活用しています。
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アンバサダーマーケティングが広まってきた背景
アンバサダーマーケティングが広まってきた背景には「口コミ」を参考にする人が増加していることが挙げられます。つまり、ユーザーが商品やサービスを購入する際に、信頼のおける情報源のひとつとなっているのが「口コミ」なのです。
伊藤忠系シンクタンクから生まれた「マイボイスコム株式会社」が2023年3月に行った「ネット上の口コミ情報に関するアンケート調査(第6回)」において、ほぼ半数に及ぶ47.4%のユーザーが「口コミを参考にする」と回答しています。しかも2013年以降その割合は徐々に増えていっています。
出典:マイボイスコム ネット上の口コミ情報に関するアンケート調査(第6回)
(https://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=29608)
そして同じく口コミを参考にするユーザーの年代を消費者庁が調査した結果、若い世代ほど口コミを参考にする割合が高いことが明らかになっています。特にZ世代を中心とした若年層は、インターネットやSNSの利用が日常生活に浸透しており、従来の広告よりも、同じユーザー目線での率直な意見や感想を重視する傾向が顕著です。
出典:消費者庁 口コミサイト・インフルエンサーマーケティングの動向整理
(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/policy_coordination/internet_committee/pdf/internet_committee_180927_0002.pdf)
このような消費者動向の変化を背景に、アンバサダーマーケティングの需要が高まっています。アンバサダーは基本的に金銭的報酬を目的とせず、純粋に商品やサービスのファンとして自発的に活動します。そのため、アンバサダーによる情報発信は、消費者にとって信頼性の高い口コミとして受け取られやすいのです。
この点で、アンバサダーは金銭目的で活動するインフルエンサーとは異なる特徴を持ちます。アンバサダーの活動は、より自然で信頼性の高い口コミとして機能し、企業にとっては長期的なブランド育成や顧客獲得につながる効果的なマーケティング手法となっています。
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アンバサダーマーケティングの実践方法
アンバサダーマーケティングは主に以下の手順で行っていきます。
1. 趣旨を明確にする
2. アンバサダーを選考する
3. 選考したアンバサダーは適任かを判断する
4. アンバサダーへ協力要請とメリットの提示を行う
5. 継続的な協力要請を行いコニュニケーションの深化を図る
これらの手順を丁寧に進めることで、効果的なアンバサダーマーケティングを実現できます。各ステップにおいて、自社のブランドや商品・サービスの特性を考慮しながら、最適なアプローチを検討することが重要です。また、アンバサダーとの良好な関係性を構築し維持することで、長期的な成果につながる可能性が高まります。
趣旨を明確にする
まずアンバサダーを活用してどういった宣伝及びPR活動を行うのかアンバサダーを活用する趣旨を明確にします。この基本となるフェーズを明確にせずにアンバサダーを募集しても、起用する際にどのような特徴を活かしたキャラクターを採用して良いのかが分からなくなります。
そういった場合に起こしてしまいがちなミスが「なんとなく決定してしまう」ことです。しかしこれをやってしまうと、以降のフェーズにブレが生じミスキャストや食い違いが発生する原因となってしまいます。一からやり直しとなりますので、まずは趣旨を明確にすることが必要不可欠です。
アンバサダーマーケティングを成功させるためには、企業が目指す方向性や達成したい目標を具体的に設定することが重要です。例えば、新規顧客の獲得を目指すのか、既存顧客のロイヤリティ向上を図るのか、あるいは特定の商品やサービスの認知度を高めたいのかなど、明確な目的を持つことで効果的な戦略を立てることができます。
アンバサダーを選考する
趣旨を明確にしたら、その趣旨に沿う条件でアンバサダーの募集を行い選考していきます。アンバサダーの募集は紹介制度を利用するか、もしくは自社オウンドメディア、自社主催のイベントなどで告知を行っていきます。
アンバサダーを選考する際には、その人が自社商品やサービスをどれくらい愛好してくれているかを確認します。
● 自社商品やサービスに対する知識をどれほど持っているか
● 普段行っている情報発信の頻度はどのくらいか
● 購入回数やリピートはどのくらいか
といった項目から、顧客ロイヤリティがどれくらい高いかを判断していきます。
さらに、アンバサダー候補者のSNSアカウントを確認し、投稿内容や頻度、フォロワー数などを分析することも重要です。これにより、その人物の情報発信力や影響力を把握することができます。また、自社製品やサービスに関連する投稿の有無や、その内容の質も重要な選考基準となります。
加えて、アンバサダー候補者との面談や、簡単なプレゼンテーションを依頼するなど、直接コミュニケーションを取る機会を設けることも効果的です。これにより、その人物の熱意や表現力、コミュニケーション能力を直接確認することができます。
選考したアンバサダーは適任かを判断する
顧客ロイヤリティが高い人物が見つかったとしても、その人がアンバサダーに適しているかはまだ分かりません。当然、この段階で駄目になる場合もあります。まずはその人の人間性を確認します。
● 責任を持って宣伝、PR活動を行ってくれるのか
● 商品やサービスの魅力を噛み砕いてしっかり伝えられるのか
● ユーザーの反感を買うような言動を起こさないか
といった、アンバサダーに必要な最低限の行動力があるか、そして人間としてのマナーが身についているか、などをチェックしていきます。
また、アンバサダーとしての適性を判断する際には、以下のような点も考慮に入れると良いでしょう。
● 自社ブランドや商品・サービスに対する理解度
● SNSなどでの情報発信の質と頻度
● コミュニケーション能力や表現力
● 自社の企業理念や価値観との親和性
これらの要素を総合的に評価することで、より適切なアンバサダーを選定することができます。適任者を見つけることは、アンバサダーマーケティングの成功に直結する重要なステップであると言えるでしょう。
アンバサダーへ協力要請とメリットの提示を行う
アンバサダーが適任であると判断できれば、その人に対して協力の要請とアンバサダーになることで得られるメリットなどを提示していきます。
アンバサダーが得られるメリットが大きければ大きいほど熱量が高くなり、意欲的に情報発信を行ってもらえます。基本的にアンバサダーとは金銭の授受は行わないため、金銭以外のメリットを充実させる必要があります。
たとえば、以下のような特典が考えられます。
● 定期的に行う自社主催の有料イベントに無料で招待
● アンバサダーの活動による成果に応じて自社商品を無料で提供
● 新作を発売する前に無料でお試しが可能
● 自社の新商品開発会議への参加権
● 限定グッズやノベルティの進呈
● 社内見学ツアーへの招待
これらは、ロイヤルカスタマーであればどれも魅力的で嬉しい条件です。このようにアンバサダーに魅力的なメリットを提示してあげることにより、意欲的に情報発信に取り組んでもらえます。
また、アンバサダーへの協力要請を行う際は、活動の具体的な内容や期待される成果、活動期間などを明確に伝えることも重要です。これにより、アンバサダーは自身の役割を理解し、より効果的な活動を行うことができます。
継続的に協力要請を行いコニュニケーションの深化を図る
アンバサダーとの協力関係が構築された後も、継続的な情報発信を促すためのコミュニケーション強化が重要です。初期の意欲が時間とともに低下する可能性があるため、企業側は積極的にサポートを行う必要があります。
具体的な取り組みとしては、以下のようなものが挙げられます。
1.定期的な情報提供: 新商品や企業の最新情報を優先的に共有
2.フィードバックの機会: アンバサダーの活動に対する評価や感謝を伝える場を設ける
3.限定特典の提供: アンバサダー限定のイベントや商品体験会の開催
4.相談窓口の設置: 活動に関する疑問や相談を随時受け付ける体制づくり
5.成功事例の共有: 他のアンバサダーの好事例を紹介し、モチベーション向上を図る
これらの施策を通じて、アンバサダーとの信頼関係を深め、長期的な協力体制を維持することが可能となります。また、アンバサダーの声に耳を傾けることで、企業側も新たな気づきを得られる可能性があります。
継続的なコミュニケーションは、アンバサダーの活動意欲を高めるだけでなく、企業ブランドへの愛着をさらに強化する効果も期待できます。このような取り組みを通じて、より効果的なアンバサダーマーケティングの実現が可能となるでしょう。
アンバサダーマーケティングの事例
アンバサダーマーケティングは多くの企業で活用されており、その事例は様々です。ここでは、実際に企業が展開しているアンバサダーマーケティングの具体例をいくつか紹介します。これらの事例を通じて、アンバサダーがどのような存在で、どのような活動を行っているのかを理解することができます。
以下に挙げる企業は、それぞれ独自の方法でアンバサダーを募集し、活用しています。各社の事例を見ていくことで、アンバサダーマーケティングの多様性や効果的な実施方法について洞察を得ることができるでしょう。
これらの事例は、アンバサダーマーケティングを検討している企業にとって、参考になる要素が多く含まれています。特に、アンバサダーの選定方法、活動内容、提供される特典などは、自社でアンバサダープログラムを立ち上げる際の重要なポイントとなるでしょう。
それでは、具体的な企業の事例を見ていきましょう。
ホテルニューオータニ東京
ホテルニューオータニ東京のアンバサダーは、新装ルームへの試泊や新作スイーツの試食、イベントへの参加体験などをSNSで発信する活動を行っています。この活動を通じて、ホテルの魅力や最新情報をリアルタイムで広く伝える役割を担っています。
応募方法はInstagramでホテルニューオータニ東京の公式アカウントをフォローし、「#ホテルニューオータニアンバサダー」とハッシュタグをつけて関連する写真を投稿。その後、ホテルニューオータニ東京の公式サイトからエントリーし、選ばれた場合は、関連記事の投稿依頼やイベントへの招待などがあり、正式にアンバサダーとして活動できる仕組みです。このプロセスにより、ホテルに愛着を持つ熱心なファンを効果的に見出し、アンバサダーとして起用することができます。
アンバサダーの活動は、ホテルの魅力を生き生きと伝えるだけでなく、利用者の視点からの正直な感想や体験談を共有することで、潜在的な顧客に対して信頼性の高い情報を提供する役割も果たしています。
Xperia(エクスペリア)
ソニーのスマートフォンXperiaのアンバサダープロジェクトは、多種多様なジャンルのアンバサダーが「Xperiaの魅力を発信する」というコンセプトのもと展開されています。アンバサダーたちは、SNSを通じて魅力的なムービーやショットを投稿し、Xperiaの特徴や機能を分かりやすく紹介しています。
アンバサダーになるための手順は、専用サイト「Xperiaアンバサダー・プログラム」からの登録が必要です。登録時には、名前またはニックネーム、メールアドレス、年代、住まい(地域)などの基本情報を入力します。
Xperiaアンバサダーに選ばれた方々には、いくつかの特典が用意されています。例えば、限定イベントへの参加や、最新機種の情報をいち早く入手できる機会が与えられます。これにより、アンバサダーはXperiaの最新情報や魅力を、リアルタイムで効果的に発信することができます。
このプロジェクトは、ユーザー目線からの情報発信を重視しており、Xperiaの魅力をより身近に、より深く伝えることを目指しています。アンバサダーの活動を通じて、Xperiaブランドの認知度向上や、ユーザーとの信頼関係構築に貢献しています。
ワークマン
作業服販売の大手ワークマンは、さまざまな肩書を持つアンバサダーの情報発信で、数々のヒット商品を生み出しています。
ワークマンに愛着を持つアンバサダーが、もともと作業用として開発された商品をどのように着こなしているか、分かりやすく紹介していることがポイントです。アンバサダーたちは、自身の日常生活や趣味の場面でワークマン製品を活用し、その使い勝手や機能性をSNSで発信しています。
アンバサダーとして起用されれば、イベント参加やSNSへの投稿だけでなく、ユーザー代表として商品開発に携わることもあるようです。この取り組みにより、実際のユーザーの声が商品改良や新商品開発に反映され、より顧客ニーズに合った製品づくりが可能となっています。
ワークマンのアンバサダーマーケティングは、作業服というニッチな市場から、アウトドアやカジュアルウェアなど幅広い層へのアプローチに成功した好例といえるでしょう。
ネスカフェ
ネスレ日本が展開する「無料でコーヒーマシンを貸し出す」サービスにおいて、ネスカフェ製品を購入後、「同僚に商品を紹介するオフィス代表者」を募集しています。
その代表者が一定の条件を満たすとアンバサダーとなり、コーヒーを楽しんでいるオフィスの写真を公式掲示板に投稿したり、定期的にアンケートに答えたりする役割を担います。アンバサダーは、オフィス内でのコーヒーブレイクの様子や、同僚との交流の機会を積極的に共有することが期待されています。
ネスカフェアンバサダーは応募が殺到したことでも有名なマーケティングの事例です。もともとコーヒー好きの社員がアンバサダーになることで、長期にわたる商品購入や口コミ宣伝、ブランドのイメージアップなどに成功しています。このプログラムは、オフィスという日常的な環境でブランドの存在感を高め、継続的な顧客関係を構築する効果的な戦略として評価されています。
DHCブランドアンバサダー
DHCブランドアンバサダーは、DHC商品を日頃から愛用し、その魅力を熟知している方々です。彼らは自身のSNSアカウントを通じて、DHC製品の使用感や効果、お気に入りのポイントなどを発信しています。アンバサダーの多くは、美容や健康に関心が高く、DHC製品を日常的に使用している一般の消費者です。彼らの自然な口コミは、他の消費者にとって信頼性の高い情報源となっています。DHCは定期的にアンバサダー向けのイベントや新製品のお試し会を開催し、彼らとの関係性を深めながら、製品の魅力を広く伝える取り組みを行っています。
アンバサダーマーケティングのメリット・デメリット
さまざまな広告手法の中で、企業が積極的にアンバサダーマーケティングを取り入れる意味・メリットには、具体的にどのようなことが挙げられるでしょうか。デメリットもあわせて、以下で確認しましょう。
● アンバサダーマーケティングのメリット
● アンバサダーマーケティングのデメリット
アンバサダーマーケティングのメリット
アンバサダーとは、消費者目線で商品やサービスを訴求し、企業イメージを高められる宣伝大使です。アンバサダーマーケティングでは、自社のファンや愛着を持っている一般の消費者を起用することが多く、これまで社内で気がつかなかった商品・サービスの「強み」や企業への「ポジティブな口コミ」を発信してくれることに期待が持てます。
また、ビジネス活動を成功に導くためには、自社が設定するターゲット層に興味を持ってもらうアプローチが重要ですが、ターゲット層が身近に感じる属性・感性のアンバサダーを起用し、SNSなどで質の高い情報を発信し続ければ、「リアルに実感できる口コミ」として、効果的な宣伝・PRとなるでしょう。
費用対効果の面からも、アンバサダーマーケティングは有益な広告手法だといえます。企業価値を高めつつ、消費者の購買行動を自然と促せることがポイントです。
アンバサダーマーケティングのデメリット
アンバサダーを起用する際には、自社のブランドイメージとマッチしているかどうかを検討する必要があります。自社がターゲットとしている消費者の属性・感性と、選出したアンバサダーが大幅にずれている場合は、最終的に目指している結果につながらない場合が多いからです。
また、SNSの上でネガティブな反応が起こりやすい投稿が頻繁にある場合は、アンバサダー起用の意味がなくなってしまいます。ターゲット層の消費者が、アンバサダーの投稿に魅力を感じるか、投稿内容の方向性にずれがないかは、常に意識しなければなりません。
したがって、企業がアンバサダーを探し出したり選出したりするには、ある程度の時間やコストをかける必要があります。企業の象徴、広告塔となる最適なアンバサダーを任命する難易度は比較的高く、慎重に行う必要があると理解しておきましょう。
まとめ
アンバサダーとは、「宣伝大使」や「広告塔」の意味を持ち、公式に企業の広報活動、普及活動を行う人です。
アンバサダーを活用し施策を実行していくアンバサダーマーケティングは、インターネットやスマートフォンの急速な普及により拡大した、注目の宣伝手法となります。
企業の商品・サービスに好意を持つアンバサダーがリアルな口コミを発信し続けることで、消費者の信頼を得ながら、ブランドをより身近に感じる宣伝を行うことができます。
従来のメディアによる広告手法とは異なり、SNSでの新しいコミュニケーションとなるアンバサダーマーケティングの成功には、投稿内容の「質の良さ」が欠かせません。
ポジティブで魅力的な情報発信ができる、最適なアンバサダーを企業が見つけ出せるかどうかが、アンバサダーマーケティング成功の鍵を握っているといえるでしょう。