PDCAサイクルは、以前から存在する業務改善・サービス改善の手法です。かつてはPDCAサイクルには一定の有効性があり、これに疑問を投げかける余地はありませんでした。しかし、近年では「PDCAサイクルは時代遅れだ」と言われるケースが多くなっています。なぜ、PDCAサイクルは古いと言われるようになったのでしょうか。
本記事では、PDCAサイクルの概要と、なぜ時代遅れと言われるのかについて紹介します。また、PDCAサイクルとOODAサイクルの違いについても解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
目次
PDCAサイクルとは?
PDCAサイクルとは「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)」を繰り返しながら業務改善を行う枠組みのことです。元は品質管理の分野において提唱されたのが始まりですが、現在ではビジネス全般で使用されるようになりました。
計画から改善までの過程を繰り返し行うことで、継続的にフィードバックを重ね、経営管理を長期的に改善していく狙いがあります。
参考記事:フィードバックを効果的に行うには?オンラインやリモート、テレワーク時代の重要なポイント
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PDCAサイクルがなぜ古いと言われるのか
今日、PDCAサイクルは「古い」「時代遅れ」「意味がない」といわれることも多いです。PDCAサイクルで業務改善を行いたい場合は、その欠点を前もって考慮した上で活かすのか活かさないのかを判断する必要があります。
以下では、PDCAサイクルが古いと言われる理由について詳しく解説します。
中長期目線で考えるため時間がかかる
PDCAサイクルが時代遅れと言われる最大の理由は業務改善という目的を達成するまでに時間がかかるからです。
計画から改善までの各サイクルを何度も繰り返す必要があるため、成果を出すのに時間がかかってしまうことが問題なのです。
あくまで中長期的な視野でサイクルを回す必要があるため、短期間で成果を出したいという人には不向きなフレームワークといえるでしょう。
PDCAサイクルそのものが目的化することがある
PDCAサイクルが正しく実行され、巧みにフィードバックされれば、たしかに業務改善につながります。しかし、PDCAサイクルの遂行そのものが目的になってしまうと、成果を上げることは難しくなります。
PDCAを惰性で回しても成果は出ません。Pその目的を理解し、計画、実行、評価、改善の各ステップが、次のステップにつながるように意識することが大切です。
PDCAサイクルを繰り返しながら、PDCAサイクル自体の運用を定期的に見直し、運用マニュアルを作成し、組織内で共有することで、惰性による運用にならないように努めましょう。
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PDCAサイクルのメリット
古い、時代遅れと評価されるPDCAサイクルですが、以下のようなメリットもあります。
・ 課題を明確にできる
・ 次にやるべき改善が明確になる
・ 運用担当者のスキルアップにつながる
それぞれ順番に説明します。
課題を明確にできる
PDCAサイクルは、必ずPlan(計画)から始まります。掲げた目標を達成するため、前回のAction(改善)から求められたフィードバックを計画段階で活かすことにより、課題を明確にできるのです。
また、PDCAサイクルは運用担当者のほかにも、上層部から現場まで課題・進捗を広く共有できるメリットがあります。
様々な立場の意見を取り入れながらじっくりと評価・計画できることもPDCAサイクルの強みです。結果的に社内・チーム全体で課題に取り組む意識も養われます。
次にやるべき改善も明確になる
PDCAサイクルは計画的に業務改善を行うためのフレームワークであるため、何回も繰り返すことでより効果を得られやすくなります。
サイクルの回数を重ねていくなかで、前回と今回のサイクルの改善点から計画や目的の修正点を洗い出し、業務改善へのフィードバックを明確にします。
Do(実行)・Check(評価)段階では、目標と結果にどれだけのギャップがあるかがわかるため、失敗や問題点の原因や対策を練りやすくなり、新しい課題を達成するための新たな改善点を導きます。
フィードバックをもとに次のサイクルで綿密な計画を練り、精緻なデータをもとにした改善案も出やすいです。
運用担当者のスキルアップにつながる
PDCAサイクルを適切に回すためには運用担当者に一定のスキルレベルが求められます。このため、マネジメントの質の向上も期待できます。
中長期前提で行うことはデメリットでもありますが、中長期のフレームワークだからこそ、運用担当者が先を見据えて計画的に取り組めます。結果的に中長期的な視座に立ってサイクルを回すスキルが向上します。一定期間にわたるマネジメントをすることで、チーム全体の進捗やフィードバックを共有して次のサイクルに活かせるようになります。
参考記事:PDCAとは?何のためにPDCAサイクルを回すのか?古いと言われる理由とともに解説
PDCAサイクルのデメリット
メリットも多いPDCAサイクルですが「古い」「時代遅れ」「意味がない」と言われてしまうように、デメリットも抱えています。PDCAサイクルを業務改善の過程に組み込む場合は、メリットとデメリットをよく比較して、最終的な目標にコミットしているかを丁寧に検討する必要があります。
PDCAサイクルのデメリットは、下記のとおりです。
・ 新しいアイデアが生まれづらい
・ 改善までに時間がかかる
それぞれ順番に説明します。
新しいアイデアが生まれづらい
PDCAは、前回のサイクルから生まれた改善フィードバックをもとに、計画・実行段階で少しずつ改善していくフレームワークです。そのため、新しいアイデアを入れてしまうと、正しく評価できなくなるという短所があります。
発生した失敗を対照実験のように評価していく仕組みを一回作ってしまうと、新しいアイデアを入れると振り出しに戻ってしまう可能性があるのです。
PDCAサイクルは、中長期のスパンを確保して実践しなければなりません。新しいアイデアを入れると、PDCAサイクルのそれまでの積み重ねが無駄になってしまううえに、プロジェクトに更に時間を要することになりかねません。
また、PDCAサイクルではPlan(計画)段階ではどうしても現場の意見が入りづらいという欠点もあります。現場を見ていない運用担当者や上層部が計画してしまうと、現場の意見が反映されづらく、現場でしかわからないことや革新的なアイデアを見逃してしまう恐れもあるのです。
ある程度の基礎ができているもの・そこに新しいアイデアを取り入れる必要がないようなことを対象にしている場合は、PDCAサイクルに向いていると言えるでしょう。
改善までに時間がかかる
業務改善に時間がかかってしまうことが、最大の欠点にして、PDCAサイクルを採用するネックになり得るでしょう。
目に見える形で成果として表れるには時間を要するため、現在の業務フローに大きな問題を抱えていたり、すぐにでも解決しなければいけないケースには向かないでしょう。
PDCAサイクルを導入する際は、ある程度の時間がかかることを覚悟して始めましょう。また、それでもPDCAサイクルを導入したい場合には、なるべく短期で結果を出せるような施策を行うことをおすすめします。
PDCAサイクルとOODAの違いとは?
前述のPDCAサイクルのデメリットがネックとなってしまい、導入に二の足を踏む場合は、OODA(ウーダ)ループを検討しましょう。
OODAループとは、Observe(観察)→Orient(状況判断・方針決定)→Decide(意思決定)→Act(行動)の頭文字を取ったフレームワークを指します。
PDCAサイクルは、計画・実行・評価・改善のステップを一つずつ踏む必要があります。
一方で、OODAはサイクルではなくループの形式を取るため、サイクルを一巡する必要がなく、任意の段階に戻れる点が強みです。
PDCAサイクルでは業務改善が見込めない場合や、デメリットが気になる人は、OODAを試すことをおすすめします。
参考記事:PDCAサイクルを効果的に回すマーケティングの重要ポイントとは?
OODAのメリット
OODAにはPDCAサイクルにはないメリットがあるため、業務改善をしたい場合は自身の状況に合わせて適切に採用しましょう。
OODAループは、PDCAサイクルのデメリットを打ち消すことができ、PDCAサイクルが合わない・意味がないと感じる場合や、時間がかかりすぎる点を懸念している人におすすめです。
OODAのメリットは、下記のとおりです。
・ 状況に合わせた施策を打ちやすい
・ 顧客のニーズに合わせられる
・ 改善までのサイクルが早い
それぞれ順番に説明します。
状況に合わせた施策を行いやすい
OODAはサイクルではなくループなので、問題点が生じたり、省略できる段階がある場合は任意のステップまで戻って再試行できます。
この点、PDCAは1サイクルで評価・改善しないことには再試行できないため、状況や変化に合わせた施策は行いづらく、OODAのほうが適していると言えるでしょう。
柔軟に対応する必要がある場合には、OODAを採用することで、臨機応変かつスピーディーな業務改善が期待できます。
OODAの強みは現場で意思決定し実行できることにあります。このため、何か問題が発生した場合は状況に応じて最短で打開できます。
顧客のニーズに合わせられる
OODAは変化に強く、新しいアイデアにも対応できるため、顧客のニーズを即座に取り入れられます。
一方で、PDCAサイクルの場合は、計画段階で入念に策を練らねばならず、何回もサイクルを重ねて修正していくため、顧客のニーズに対応する余地が限られてしまいます。
そのため、PDCAサイクルは顧客に要望された急な仕様変更には耐えられず、それまでの積み重ねが振り出しに戻ってしまう恐れもあるのです。
顧客からの要望が多い場合や、まだ始まって間もないプロジェクトなどは、現場を見ながら判断していけるOODAのほうが適しています。
改善までのサイクルが早い
OODAは現場の状況を見て即座に修正でき、ループを順序立てて回す必要もないため、短期間である程度の結果が出ます。
PDCAサイクルの大きなネックである「業務改善の結果が出るまでが長い」ことを解決できるため、短期で結果を出さなければならない場合はOODAのほうが適しています。
また、OODAは現場でトライ&エラーしていく仕組みであるため、上層部や運用担当者の意思決定に時間がかかりません。このことも短期で結果を出せる理由として挙げられます。
実行したのちに観察段階に戻る必要がなく、現場の判断に応じて臨機応変に対応できます。結果として短期間でループを回して改善できるのです。
参考記事:シェアドリーダーシップとは?メリットやポイントを解説
まとめ:今後はPDCAよりもOODAを中心に行いましょう
本記事では、PDCAサイクル・OODAの概要を紹介するとともに、それぞれのメリットとデメリットを解説しました。
PDCAサイクルは広く知られているとおり、メリットもたくさんあります。しかし、その性質からデメリットも注目され「古い」「時代遅れ」「意味がない」との評価も目立つようになりました。
業務改善をしたいものの、PDCAサイクルを採用するには時間が限られ、しかも業務上、臨機応変の対応が求められるような場合はOODAがおすすめです。PDCAサイクルに限界を感じる方は、ぜひ本記事を参考にして、OODAを業務改善に役立ててください。