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ライフオンプロダクツ(2021年にキングジムが全株式を取得)の人気商品「蓄熱式ねこ湯たんぽ」を手にする宮本社長

キングジムが次々とヒット商品を生み出す納得の理由

2023.12.7
読了まで約 4

プロフィール

宮本彰(みやもとあきら)

1954年生まれ。東京都出身。慶応大学卒業。77年に祖父が創業したキングジムに入社。84年常務取締役、86年専務取締役。88年に発売されたラベルライター「テプラ」開発プロジェクトのリーダーを務めた。92年に代表取締役社長に就任。

ラベルライター「テプラ」、デジタルメモ「ポメラ」、コロナ禍で大ヒットとなったアルコールディスペンサー「テッテ」など独創的な商品で知られるキングジム。M&Aによって商品ジャンルを拡大しており、調理家電、組み立て式家具、造花、手袋などグループが取り扱う商品は多彩だ。絶妙なSNSマーケティングも冴え渡り、公式X(旧ツイッター)アカウントのフォロワーは45万を超えている。

かつてキングジムの事業の大黒柱は、紙の書類を綴じて保存する「キングファイル」だった。ペーパーレス化が進む中でキングファイルの需要はジリジリ縮小している。仮に、この大黒柱にしがみついて多角化を進めていなかったとしたら、今のような発展はなかっただろう。

キングジムは、なぜ多角化に成功したのか。そしてコロナ禍の中で多くの人々に使われた「テッテ」のようなタイムリーなヒットを出すことができるようになったのか。その秘密を宮本社長に直撃した。

”本業”の全盛期に新事業を立ち上げた

ーー「キングファイル」という看板商品が全盛期だった1988年に、宮本社長は「テプラ」という次の柱を打ち立てました。

宮本 1978年に日本初のワードプロセッサが登場し、1980年代に入るとオフィスへの普及が始まりました。将来、書類は電子化されて紙の消費は減っていくことは間違いなく、ペーパーレスという言葉も使われ始めました。ペーパーレス化が進むとキングファイルの需要は減り、存亡の危機につながるわけです。

ところが実態はペーパーレスどころではなかった。80年代以降もコピー機やプリンターなどの電子機器の普及によって紙の利用は急増し、ファイリング需要はずっと伸び続けた。そんな中でテプラを生み出したことが今のキングジムに繋がっています。

写真:KING FILEの表札
「キングファイル」こそが、キングジムの大黒柱だった

ーー新事業を育てようという経営陣の英断があった。

宮本 そう単純ではありません。キングジムのように規模の小さい会社では経営資源も限られていますから、当時の幹部は強みを持つファイリング製品に集中すべきという意見でまとまっていました。規模で勝るライバルがファイリング製品に本腰を入れてきているのに、収益の見込みも立てられない新事業開発に人や予算を割り当てるような余裕はない、と。

しかし私を含む一部の若手社員はそうは思っていませんでした。私は経営企画部長という役職でしたが、1985年に同じ志をもつ社員たちと「Eプロジェクト」と呼ばれるチームを立ち上げ、電子製品開発の準備を進めました。

Eプロジェクトでは未来を見据えていました。今のところは電子機器のおかげでプリントアウトされる紙の書類が急増しているが、それは過渡期だから起きていること。将来は必ず敵になると踏んでいた。キングファイルは全社を支える柱だったので、需要が減り始めると大変なことになると思っていました。

ーー「テプラ」開発のゴーサインが出ました。

宮本 当時の弊社にとっては大きな投資でしたが、最終的には2本目の柱を作ろうということで、ゴーサインが出ました。業績が好調で1988年にキングジムは年10億円の経常利益を上げていた。テプラが失敗すると最大で5億円の損失が出るリスクもあったが、大失敗したとしても会社が傾くわけではない。キングジムの未来を支える若手社員のやる気を尊重して、最後は当時の社長(宮本浩三)がOKを出してくれました。私たちの熱意がすごかったので、ゴーサインを出すしかなかったのだと思います。

ヒット商品は社内の空気を変える

ーー発売するとすぐに大評判となり、(ファイル製品との比較で)商品単価の高さもあって、当時は売上の半分を占める、まさに二つ目の柱となった。社内はどう変わりましたか。

宮本 発売直後は、営業部の社員たちがテプラを売ってくれるような空気はありませんでした。キングジムはテレビCMを打つような予算もないので、販売店などの取引先に営業して口説く必要がある。口コミによる評判作りは、キングジムにとって生命線です。しかし、顧客企業からの信頼が厚いエース級のベテラン営業はテプラに見向きもしてくれませんでした。

このままだったら大変でしたが、若手社員は少しでも売り上げを伸ばそうとして担当している取引先にテプラを熱心に売り込んでくれた。すると取り扱う店が増えていくので、どんどん若手社員の成績が上がっていく。半年も経つころには、テプラの単価が高いこともあって月間売上でベテランを抜いてしまうようになりました。

こうなるとベテラン営業もパッと考えを変えてテプラを売るようになった。何しろ取引先から「なんでうちにテプラを持ってこないんだ」とクレームもあるので、扱わざるを得ない。テプラはあっという間に社内の空気を変えてしまいました。

「テッテ」は狙って出したものではなかった

写真:アルコールディスペンサーの「テッテ」
コロナ禍でヒットしたアルコールディスペンサーの「テッテ」

ーーコロナ禍では素早く市場のニーズを汲み取り、「テッテ」を投入しました。

宮本 もしそうであれば美しい話ですが、そうではありません。実はテッテはコロナ禍になる前の2019年2月の発売です。インフルエンザ予防のための商品として売っていました。ところが売れない。もう販売を中止しようと思っていたところに、コロナ禍となって突然売れ始めたんです。

当初は、まったく手を触れずにアルコールを噴霧する製品はテッテくらいしかなかったんです。ところがコロナ禍によって手を触れずに消毒することへの重要性が高まっていき、大ヒットに。在庫もたっぷりとあったので、素早い対応ができました。

センサーの設定や噴霧させるアルコール量のコントロールなどはそれなりに難しい。あわてて開発した他社の製品には今ひとつのものが多く、テッテの評判は高かったです。

写真:棚に並んだキングジムの商品
宮本社長は「何がヒットするのかは読みきれないからこそ多彩な商品を展開する必要がある」と語る

ーーインフルエンザ向けとはいえ、「これからの世の中にはこうしたものが必要なんだ」という強い思いとそれを実現させる組織がなければ、テッテのヒットは生まれなかったわけですよね。

宮本 そういうことです。何がヒットするのかは読みきれない。だから目の前の効率化を狙って商品ジャンルを絞り込んでしまうと、ヒットのチャンスを逃すことになってしまう。絞り込んでしまえば、多くのアイデアがお蔵入りとなり、社員もつまらないでしょう。ワクワクと仕事をできるようにするためにも、多くの商品を出していくことが大切です。

後編へ続く
キングジムが「ポメラ」で掘り当てたヒットの鉱脈

編集者

山田俊浩(やまだ としひろ)

東洋経済新報社 編集局次長
2020年10月から現職。2014年5月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。就任時には月間3000万PVだった東洋経済オンラインを月間2億PVを超える大手新聞社に匹敵する大型ニュースサイトへと引き上げた。2019年1月から2020年9月までは週刊東洋経済編集長。著書に『稀代の勝負師 孫正義の将来』(東洋経済新報社)がある。また不定期でAbemaTV の『ABEMA Prime』(アベプラ)にコメンテーターとして出演中。趣味はオーボエ演奏で都民交響楽団に所属。

執筆者

本田 雅一(ほんだ まさかず)

ITジャーナリスト
IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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