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スモールマス最大化〜花王のデジタル広告投資のポイントとは?

2021.1.6
読了まで約 3

日本の大手化学メーカー「花王株式会社」では、圧倒的なテレビ広告と販社を通じた一斉配荷、大量陳列で商品を供給していました。しかし、ここ10年で人々のライフスタイルは大きく変わり、消費者のニーズは多様化・細分化されてきています。その結果、一人ひとりの細かなニーズに対応した商品やサービスが求められるようになりました。

花王では、2015年から「スモールマス」を提唱しています。スモールマスとは、マスより小さく一定の市場規模を持つセグメントという意味です。スモールマスを最大化するには、どのようなデジタル広告投資が効果的なのでしょうか。

この記事では、スモールマスを最大化する広告戦略事例を見ながら、花王が考えるデジタル広告投資のポイントをご紹介します。

花王が提唱するスモールマスの広告戦略とは

花王が提唱するスモールマス戦略とは、既存のマスより小さいながらも一定の市場規模を持つ消費者グループに対し、それぞれに適した商品を提供するというものです。消費者のニーズが多様化・細分化する現在においては、消費者の興味関心やライフスタイルでセグメントを分け、一人ひとりのニーズに適したマーケティング戦略が必要になります。花王は2015年からスモールマスを提唱し、従来のマス向けブランドから細分化した商品をラインアップしています。

●花王のスモールマス向け商品の一例
・エッセンシャル flat:くせ毛に悩む若い女性向けヘアケアブランド
・アタックZERO:洗濯洗剤ブランド「アタック」から派生
・クリアクリーン フルージュ:口腔ケアブランド

こうしたスモールマス向け商品のファンになってもらうには、コア層が抱える悩みやニーズを理解しなければなりません。広告投資においては、スモールマス顧客層のライフスタイルに合うブランドの提案やトライアル購入の促進を通し、商品やサービスのよさを伝える土壌を築いていく必要があります。

花王は、スモールマスへのアプローチはテレビCMだけでは限界があり、よりターゲットを絞って訴求できるデジタル広告が重要なツールになると考えています。

スモールマス向けの悩み解決商品に見る広告戦略

花王のヘアケアブランド「エッセンシャル flat」は、くせ毛に悩む女性のために作られたスモールマス向けの商品です。こうした悩み解決型の商品を検索する消費者は、それぞれ悩みの質や程度が微妙に異なるため、検索キーワード設計を幅広く設定する必要があります。

そこで花王はGoogleと協力し、早い段階からコア層が検索するキーワードを抽出しました。具体的には、「くせ毛」「髪 うねり」といった髪の悩みに関する直接的なキーワード、「ストレートパーマ」「ヘアアイロン 人気」といった髪の悩みを解決する方法を探るキーワード、「シャンプー 口コミ」「ヘアケア 効果」といったヘアケアのカテゴリキーワードなどです。幅広いキーワード設計の結果、ブランド名や商品名からの検索流入だけでなく、髪の悩みやヘアケアカテゴリーの検索流入も多数獲得できました。

本発売前のEC先行販売において、「エッセンシャル flat」の売れ行きは9月目標比290%を達成し、実店舗での発売やテレビCMなどのフルローンチ前からコア層への訴求に成功しています。検索キーワードを広く設計したことで、髪の悩みを持つコア層を確実に掴むことができたと考えられます。

花王が考えるデジタル広告投資のポイント

スモールマスの商品展開を進める花王でも、広告宣伝においてはマス広告の予算がデジタル広告を上回っています。しかし、スモールマス商品のマーケティングには、コア層に向けた検索広告や動画広告が必要であり、デジタル広告の活用が欠かせません。

花王が実施した「エッセンシャル flat」の広告戦略は、ECサイトのみで先行発売するという過去に例のない取り組みであり、デジタル領域に投資を集中させました。悩みを抱えるコア層の検索キーワードを的確に捉えることで、一定の成果を出しています。デジタル広告の強みは、こうしたコア層の悩みやニーズに応える形で最大限活かすことができるのです。

今後のデジタル広告投資を考えるうえで、花王は「再現性」が重要だと見ています。再現性を追求していくには、「エッセンシャル flat」の事例のように検索キーワードからの流入を解析し、KPI(※)を設定することが大切だと花王は考えています。

(※)Key Performance Indicator(重要業績評価指標)の頭文字をとったもの。目標の達成度を測る指標のこと。

まとめ

◆花王が提唱するスモールマス戦略とは、既存のマスより小さいながらも一定の市場規模を持つ消費者グループに対し、それぞれに適した商品を提供するというものである。

◆スモールマスへのアプローチはテレビCMだけでは限界があり、よりターゲットを絞って訴求できるデジタル広告が重要なツールになる。

◆花王は、悩み解決型商品の検索キーワードを広く設計したことで、髪の悩みを持つコア層の獲得に成功した。「エッセンシャル flat」の売れ行きは9月目標比290%を達成し、実店舗での発売やテレビCMなどのフルローンチ前からコア層へ訴求できた。

◆今後のデジタル広告投資を考えるうえで、花王は「再現性」が重要だと見ている。再現性の追求には、検索キーワードからの流入を解析し、KPIを設定することが大切である。

監修者

古宮 大志(こみや だいし)

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長

大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、クライアントのオウンドメディアの構築・運用支援やマーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。Webマーケティングはもちろん、SEOやデジタル技術の知見など、あらゆる分野に精通し、日々情報のアップデートに邁進している。

※プロフィールに記載された所属、肩書き等の情報は、取材・執筆・公開時点のものです

執筆者

『MarkeTRUNK』編集部(マーケトランクへんしゅうぶ)

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