大企業からスタートアップ、自治体まで幅広く支援をし、実務と経営の両面をよく知るマーケティングの専門家、吉澤健仁氏。2回目は「損失回避」という心理作用を利用して、ホワイトペーパーのダウンロード数を増やす方法です。BtoBマーケターはぜひ参考にしてください!(マーケトランク編集部)
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目次
いい資料なのに、なぜダウンロードされないのか?
時間をかけて作ったホワイトペーパーが、思ったほどダウンロードされない。
BtoBマーケティングの現場では、決して珍しい話ではありません。
内容には自信がある。
現場で実際に使えるノウハウも入れている。
営業からも「資料自体はいい」と言われている。
それでもDL数が伸びない。
私自身、これまで多くのBtoB企業のマーケティング支援に関わる中で、この状況を何度も見てきました。そして詳しく確認していくと、多くの場合、問題は資料の質そのものではなく、資料に入る前の設計にあります。ホワイトペーパーは、作り込めば作り込むほど成果が出る施策ではなく、入口の一言で結果が大きく変わる施策です。つまり、努力量よりも設計の良し悪しが成果を左右します。
この考え方は、拙著『お金をかけずに売れる仕組み大全』でも訴求戦略の章で詳しく解説していますが、ホワイトペーパーは特に心理設計の影響を強く受けます。
人は得したいよりも損したくない
ホワイトペーパーのDL数を考えるうえで、必ず押さえておきたいのが、人の意思決定のクセです。
行動心理学では、人は「得をすること」よりも、「損を避けること」に強く反応することが分かっています。これが損失回避バイアスです。
つまり、
これを読むと成長できます
これを知ると役立ちます
よりも、
これを知らないと損をします
これを放置すると危険です
のほうが、人は行動しやすい。
ホワイトペーパーのDL数が伸びない最大の原因は、この心理が入口設計に組み込まれていないことにあります。裏を返せば、ここを押さえるだけで、他の施策を大きく変えなくても成果が改善する余地があるということです。
関連リンク:行動経済学とは?理論を簡単に解説!企業のマーケティングに活かした例も紹介
DLされないホワイトペーパーに共通する特徴
DL数が伸びない資料には、はっきりとした共通点があります。
その多くは、「いいこと」しか書いていません。
- 〇〇の基礎知識
- 〇〇の成功事例まとめ
- 〇〇入門ガイド
情報としては正しい。
しかし、緊急性がありません。
BtoBの現場では、緊急性がないものは「後で読む」に分類され、そのまま忘れられます。ホワイトペーパーが読まれないのは、価値が低いからではなく、今読む理由がないからです。忙しい担当者ほど、この判断はシビアになります。
DLされるタイトルは不安を含んでいる
一方で、DLされやすいホワイトペーパーのタイトルには共通点があります。
それは、「読まないことによる不利益」が暗示されていることです。
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多くの企業が気づいていない広告費の無駄
その施策、実は成果が出ない理由
こうしたタイトルを見ると、人は無意識に考えます。
自分も当てはまっているのではないか。
見落としているリスクがあるのではないか。
この不安こそが、ダウンロードの動機になります。BtoBにおいては、安心よりも先に「見逃してはいけない」という感覚を作ることが重要です。
内容を変えなくてもDL数は増やせる
ここで強調したいのは、中身を大きく変える必要はないという点です。
多くの場合、DL数が伸びない理由は、資料の質が低いからではありません。
入口の言葉選びが、行動につながっていないだけです。
タイトル、サブタイトル、冒頭の説明文。
この三点に損失回避の視点を入れるだけで、DL数が大きく変わるケースは少なくありません。実務では、タイトルだけを差し替えてABテストを行うだけでも、効果の有無がはっきり出ることがあります。
すぐ使える損失回避型タイトルの三つの型
- やってはいけない型
- 放置すると危険型
- 対象者限定型
これらは煽りではなく、読み手が自分の状況を冷静に判断するためのフレームです。自分は安全圏にいるのか、それとも見直すべき段階に来ているのか。その確認を促す役割を持っています。
若手担当者が誤解しやすいポイント
若手のマーケティング担当者ほど、「煽りすぎてはいけない」「誠実に伝えなければならない」と考えがちです。
しかし、損失回避を使うことは煽ることとは違います。
本当に起こり得るリスクを、分かりやすく言語化しているだけです。
むしろ、リスクを伝えずに「いいこと」だけを書くほうが、意思決定を遅らせ、結果として機会損失を生みます。上司や営業から見ると、「判断材料が足りない資料」になってしまうのです。
サンクコスト効果を組み合わせる
ホワイトペーパー施策と非常に相性がいい心理が、サンクコスト効果です。
人は、すでに時間や労力をかけたものを途中でやめにくい。
冒頭で「多くの企業が同じ悩みを抱えている」と提示し、
途中で「ここまで読んだ方へ」と語りかける。
こうした設計を入れることで、読み進めるほど「ここでやめるのはもったいない」という心理が自然に働きます。最後まで読ませることができれば、その後のアクションにもつながりやすくなります。
関連リンク:サンクコスト効果とは。コンコルド効果と同じ?日常生活やビジネスシーンでの例
DL後の行動まで設計できているか
ホワイトペーパー施策で見落とされがちなのが、ダウンロード後の行動設計です。
DL数が増えても、その後に何も起きなければ意味がありません。
重要なのは、資料を読んだ人が次に何を判断するのかです。
このまま様子を見るのか。
社内で共有するのか。
問い合わせや商談を検討するのか。
損失回避型のホワイトペーパーは、「今動かないとまずい」という認識を作るため、その後のメールや営業アプローチとも非常に相性が良くなります。営業担当が商談の中で、「実はこの資料に書いてあるリスクがありまして」と切り出しやすくなる点も、大きなメリットです。
ホワイトペーパーは社内説得ツールになる
ホワイトペーパーの役割は、外部向けだけではありません。
実際には、社内での意思決定や上司説得に使われるケースも非常に多いのです。
損失回避を軸に設計された資料は、「やらない理由」を潰す力を持っています。担当者個人の意見ではなく、「資料に書いてあるリスク」として提示できるため、社内調整が進みやすくなります。これは若手担当者にとって特に大きな助けになります。
ホワイトペーパーは量産できる
ホワイトペーパーは、一つの完成形を目指すものではありません。
一つのテーマを、
- 失敗視点
- 放置リスク視点
- 対象者別視点
に分解するだけで、複数の資料に展開できます。
重要なのは、完璧な一冊を作ることではなく、判断材料を増やすことです。結果として、接点が増え、検討期間全体を通して自社の情報に触れてもらえる確率が高まります。
ホワイトペーパーは勉強資料ではない
ホワイトペーパーは、単なる勉強資料ではありません。
BtoBにおいては、意思決定のための材料です。
だからこそ、
読むと便利
役に立つ
ではなく、
読まないと判断を誤る
知らないと損をする
という設計が必要になります。
どこから見直せばいいのか分からない場合
まずは、今使っているホワイトペーパーのタイトルを、そのまま書き出してみてください。
そして、「この資料を読まないことで、どんな不利益があるか」を考えてみる。
それが言語化できない場合、入口設計に改善余地があります。
DL数を増やす鍵は心理設計にある
ホワイトペーパーのDL数は、努力量ではなく設計で決まります。
資料の質を疑う前に、
まずは「損したくない心理」がきちんと組み込まれているかを確認してみてください。
書籍紹介
本記事で紹介した損失回避バイアスやサンクコスト効果を活用したホワイトペーパー設計は、拙著『お金をかけずに売れる仕組み大全』のChapter2「損したくないが人を動かす」で、より体系的に解説しています。
ホワイトペーパーだけでなく、資料ダウンロード、LP、提案資料など、BtoBマーケティング全体に応用できる心理設計を、具体例とともに整理しています。広告費をかけずにリード獲得の質と量を高めたい担当者の方に向けた一冊です。

