近年、インターネットやSNSの普及により、口コミマーケティングの重要性が増しています。商品やサービスを体験した顧客が、その魅力を自ら広めてくれる「口コミマーケティング」は、非常に効果的な宣伝手法となります。この情報拡散力を活用したマーケティングが、バイラルマーケティングです。本記事では、バイラルマーケティングの概要、メリット、そして実施のポイントについて解説します。口コミマーケティングを成功させるためには、顧客が自発的に情報発信したくなるような仕掛けが不可欠です。
バイラルマーケティングは、まさにこの「口コミマーケティング」の力を最大限に引き出す戦略と言えるでしょう。口コミマーケティングの潜在的な力を理解し、それを効果的に活用することが、現代のビジネスにおいて成功の鍵となります。口コミマーケティングを理解することで、より費用対効果の高いプロモーションが可能になります。口コミマーケティングの成功事例は数多く存在し、それらを参考に自社に合った手法を取り入れることが重要です。口コミマーケティングは、企業が直接発信する情報よりも、消費者の生の声として伝わるため、高い信頼を得やすいのが特徴です。口コミマーケティングを成功させるための第一歩は、まず自社の商品やサービスに「口コミしたくなる」ほどの価値があるかを見極めることです。
バイラルマーケティングとは?
バイラルマーケティング(Viral Marketing)の語源は、ウィルス(virus)です。情報拡散の様子が、まるでウィルスの感染が拡大していくように見えることから、「ウィルス性の」という意味のバイラル(viral)が使われるようになりました。
バイラルマーケティングとは、インターネットの情報拡散力を活用し、不特定多数の顧客やユーザーに情報を効果的に広めていくマーケティング手法を指します。具体的には、企業側がブログやSNS(TwitterやInstagram)、口コミサイトなどに、「バイラルコンテンツ」(バイラルCMと呼ばれることもあります)と呼ばれる、思わず共有したくなるような魅力的な情報を投稿して実施します。この手法は、口コミマーケティングの一種と捉えることができます。
●ステマ、バズマ、インフルエンサーマーケティングとの違い
耳にすることも多いステルスマーケティング(ステマ)とは、それが企業の宣伝であると顧客に悟られないように広告を行うことを指します。このマーケティング手法は、顧客を欺くような側面があることからモラルに反すると非難されることもあり、バイラルマーケティングとは本質的に異なります。
また、バズマーケティング(バズマ)やインフルエンサーマーケティングは、インフルエンサーなどを用いて人為的に口コミを発生させ、商品やサービスの特徴を拡散していくマーケティング手法です。バイラルマーケティングと似ている部分もありますが、バズマーケティングが、その対象の話題を増やすこと(バズらせる)を主な目的としているのに対し、バイラルマーケティングは、「良い情報」や「得した情報」を、顧客が自発的に共有したくなるような仕組みを企業側が作り出し、その対象の魅力的な部分を自然に広げていくことを目的とします。
バイラルマーケティングとは、「良い情報」や「得した情報」を自分の周りの人間や親しい人に知らせたい、伝えたい、おしえてあげたい、という人間の心理を利用したマーケティング手法です。「顧客が思わず人に薦めたくなるような工夫をする」マーケティングと理解すればよいでしょう。
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バイラルマーケティングのメリットとデメリット
バイラルマーケティングの最大のメリットは、低コストで情報拡散を実現できる点にあります。テレビCMや雑誌広告といったマス広告は、一般的に莫大な費用がかかりますが、ターゲット層によっては必ずしも効果的とは限りません。例えば、若年層をターゲットにする場合、彼らが日常的に利用しないメディアへの広告は非効率的になる可能性があります。このような状況下で、口コミマーケティングの一種であるバイラルマーケティングは、インターネットやSNSを主軸とすることで、費用対効果の高い情報伝達を可能にします。特に、ターゲット層が日常的に情報収集を行うプラットフォームを活用することで、より効果的にメッセージを届けることができます。
一方で、デメリットも存在します。最も大きな課題は、商品やサービス自体の魅力が不足していると、情報が自然に拡散されないことです。無理に話題性を演出しようとすると、ステルスマーケティング(ステマ)と見なされるリスクがあり、顧客からの信頼を損なう可能性があります。また、情報拡散を促進するために紹介者へインセンティブ(報酬)を付与する方法も考えられますが、これが裏目に出るケースも少なくありません。インセンティブ目当ての紹介者が、商品の内容を十分に理解しないまま、あるいは自分自身が経験していないにも関わらず、安易に他者へ推奨してしまうと、かえってブランドイメージの低下を招きかねません。このような行動は、ステマと混同されやすく、顧客体験を損なう要因となり得ます。したがって、バイラルマーケティングを成功させるためには、顧客が自発的に「誰かに教えたい」「共有したい」と思えるような、商品やサービス本来の魅力が不可欠です。この「共有したくなる」要素こそが、バイラルマーケティングの核となるのです。
口コミマーケティングの成功は、商品やサービスの質に大きく依存するため、その点において自信を持てない場合は、慎重な戦略立案が求められます。バイラル効果を狙う際は、本物の価値を伝えることが重要です。
バイラルマーケティング実施のポイント
菓子食品の製造・販売を行う株式会社ロッテは、若年層の「ガム離れ」が進んでいる状況を改善するため、噛むとはじけるフレーバーチップを入れたガム「Fit’s」で口コミマーケティングを実施しました。口コミマーケティングの成功事例として、このFit'sの事例は非常に参考になります。
商品のプロモーションでは敢えてテレビCMを少なくし、YouTubeやTwitterを中心に情報を発信。その内容も、販売したい商品であるガム「Fit’s」をあまり前面に出さず、若年層に人気のある「ダンス」に重点を置きました。このような口コミマーケティング戦略は、ターゲット層の関心を惹きつける上で効果的です。
YouTubeでは人気のある俳優やアイドルがダンスを踊り、一般の高校生などが「自分も踊ってみた」動画を投稿できるように工夫しました。これは、ユーザー参加型の口コミマーケティングを促進する良い例です。また、YouTubeとコラボしたダンスコンテストなども開催し、若年層のファンを着実に獲得しました。このように、インフルエンサーマーケティングとも連携させつつ、自然な広がりを意図した口コミマーケティングが展開されました。結果として動画の再生回数は1ヵ月で1,000万回を超える大ヒットになり、「Fit’s」の認知度を向上させることにも成功しました。この成功は、SNSマーケティングと組み合わせた口コミマーケティングの有効性を示しています。
口コミマーケティングを実施するうえで重要なのは、マーケティングの内容を決して宣伝っぽくしないことです。かといってステルスマーケティングのように、顧客に隠し事をする口コミマーケティングは厳禁です。あくまで、それが自然に広まっていくような「仕組み」をインターネットやSNSを使って作ることが口コミマーケティングの成功に繋がります。顧客体験を重視し、商品やサービスそのものの魅力を最大限に引き出すことが、口コミマーケティングにおけるコンテンツマーケティングの役割でもあります。デジタルマーケティングの一環として、効果測定を行いながら口コミマーケティングを戦略的に進めることが重要です。
まとめ
バイラルマーケティングは、その情報拡散の様子がウィルスのように広がることから名付けられました。これは、口コミマーケティングの一種であり、顧客が自発的に情報を共有したくなるような仕掛けを作り出すことが核となります。ステルスマーケティング(ステマ)のように消費者を欺く手法や、インフルエンサーに頼って人為的に話題を創出するバズマーケティングとは異なり、バイラルマーケティングは、商品やサービス自体の魅力や提供される情報への価値を基盤としています。
口コミマーケティングの強力な推進力は、人々の「良いものを共有したい」「得した情報を知らせたい」という心理に根差しています。そのため、バイラルマーケティングを成功させるには、まず商品やサービスに人々が自然と「おすすめしたい」と思えるほどの魅力があるかどうかが極めて重要です。その上で、インターネットやSNSといったプラットフォームを活用し、「宣伝」と感じさせない自然な情報拡散の仕組みを構築することが肝要です。魅力的なコンテンツや体験を提供し、それが消費者の共感を得ることで、熱量の高い口コミが生まれ、継続的な情報伝播へと繋がっていくのです。
バイラルマーケティングの実施においては、ターゲット層が興味を持つであろうエンゲージメントの高いコンテンツの作成や、共有したくなるようなインセンティブ(賞賛や特別感など)の設計が有効です。SNSでのシェアを促すボタンの設置や、ユーザー参加型のキャンペーンなども、口コミの連鎖を生み出すための効果的な手段となります。バイラルマーケティングは、低コストで高い広告効果を期待できる一方で、炎上リスクも伴うため、慎重な戦略設計と運用が求められます。共感を呼ぶストーリーテリングや、トレンドを捉えた仕掛けを講じることで、自然な口コミの拡散を促進し、ブランド認知度向上や売上増加に繋げることが期待できる、現代における重要なマーケティング手法の一つと言えるでしょう。

