大企業からスタートアップ、自治体まで幅広く支援をし、実務と経営の両面をよく知るマーケティングの専門家、吉澤健仁氏。今回から始まる連載では、豊富な支援実績をもとに、BtoBマーケティングで顧客に選ばれるための戦略を語ってもらいます。第1回目のテーマは、サービスの命運を分ける「ネーミングの極意」。悩める法人マーケティング担当者は必見です!(マーケトランク編集部)
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目次
中身はいいのに、なぜ選ばれないのか?
中身には自信があるのに、なぜか選ばれない。
BtoBマーケティングの現場で、こうした悩みを抱えている担当者は少なくありません。
私自身、これまで数多くのBtoBサービスの立ち上げやマーケティング支援に関わってきましたが、その中で繰り返し目にしてきたのが、「サービス内容そのものではなく、伝え方で損をしているケース」です。
その代表例が、プラン名やサービス名の問題です。
この視点は、拙著『お金をかけずに売れる仕組み大全』でも繰り返し取り上げているテーマであり、広告費や施策を増やす前に、まず見直すべきポイントでもあります。実際、名前を変えただけで、問い合わせの質が変わった、商談での説明が驚くほど楽になったというケースは決して珍しくありません。
BtoBのプラン名は「説明される前」に評価されている
多くのBtoB担当者は、詳細は営業が説明すればいい、資料を読めば分かるはずだと考えがちです。
しかし現実には、BtoBサービスは説明される前の段階で、すでに評価が始まっています。
サービス一覧ページ、料金表、比較記事、社内共有用の資料。
こうした場面で最初に目に入るのが、プラン名やサービス名です。
そしてBtoBの場合、その名前は「自分のため」ではなく、「社内で説明するため」に使われます。
つまり、プラン名は社内説明用のラベルでもあり、その分かりやすさは意思決定のスピードに直結します。検討初期で「分かりにくい」と感じさせてしまうと、その時点で選択肢から外れてしまう可能性すらあるのです。
なぜBtoBほど分かりにくい名前が多いのか
BtoBサービスの名前が分かりにくくなりがちな理由は、決して担当者のセンスの問題ではありません。構造的な理由があります。
- 専門性を出そうとする。
- 競合と同じ言葉を無意識に使ってしまう。
- 提供内容を正確に表現しようとして情報を詰め込みすぎる。
その結果、スタンダードプラン、プロフェッショナルプラン、〇〇コンサルティングといった、違いが伝わらない名称が量産されます。
社内では通じていても、初めて見る相手にはよく分からない。この状態は、BtoBでは致命的です。特に若手担当者ほど、「ちゃんとした名前をつけなければ」という意識が強く働き、かえって抽象的な言葉を選んでしまいがちです。
よくある「伝わらないプラン名」の典型例
抽象度が高すぎる名前
トータルサポートプラン、総合コンサルティング、フルサポート支援。
一見すると安心感がありますが、実際には何をしてくれるのかが分かりません。
BtoBでは、何でもやりますという表現は、結局よく分からないという評価につながります。
比較すると意味が消える名前
ベーシック、スタンダード、アドバンス。
自社サイトでは意味が通じていても、比較表に並んだ瞬間に意味を失います。
競合も同じ言葉を使っているため、選ばれる理由になりません。
提供者視点だけで作られた名前
〇〇式マーケティング支援、独自フレームワーク導入プラン。
提供側としては強みでも、読み手からすると「それで、何が良くなるのか」という疑問が残ります。
ネーミングはコピーではなく翻訳である
成果が出るネーミングは、コピーライティングというよりも翻訳作業に近いものです。
専門的な中身や提供価値、強みを、相手が一瞬で理解できる言葉に置き換える。
この視点が欠けると、どれだけ良いサービスでも「よく分からないもの」になります。
特にBtoBでは、「正確さ」よりも「理解されやすさ」を優先する場面が多い。ここを勘違いすると、伝えるための言葉が、かえって壁になってしまいます。
成果が出るネーミングの大原則:何をするかではなく、何が変わるか
多くのBtoBサービス名は、提供内容で止まっています。
- マーケティング支援。
- MA導入サポート。
- Web改善コンサルティング。
しかし意思決定者が本当に知りたいのは、導入後に何が変わるのかです。
- 問い合わせが増えるのか。
- 商談の質が上がるのか。
- 営業が楽になるのか。
成果が想像できるかどうかが、選ばれるかどうかの分かれ目です。
Before / Afterで見るネーミング改善例
Webマーケティング支援プラン
→ 問い合わせを増やすWebマーケティング支援
MA導入運用サポート
→ 営業が追客に困らなくなるMA導入支援
DX推進コンサルティング
→ 現場が止まらないDX導入支援
いずれも、導入後の状態がイメージできるようになっています。
専門用語は社内説明で詰まる
CVR最適化、グロースハック、オムニチャネル。
マーケティング担当者には通じても、社内説明の段階で止まるケースは非常に多いものです。
上司や他部署から「それはつまり何なのか」と聞かれた瞬間、検討は一気に鈍ります。
特に若手担当者ほど、専門用語を使ったほうが仕事ができそうに見えるのではないかと不安になりがちです。しかし実務では逆で、誰にでも説明できる言葉で整理できていることのほうが、評価され、信頼されます。
プラン名だけで自分向けかどうかを判断させる
- 内製チーム立ち上げ支援。
- マーケ部代行プラン。
- 戦略設計特化プラン。
こうした名称であれば、読み手は自分が対象かどうかを即座に判断できます。
価格表やサービス一覧で迷わせないことは、BtoBにおいて非常に重要な設計です。選ばれない理由の多くは、内容ではなく「判断しづらさ」にあります。
すぐ使えるネーミング設計3ステップ
まず導入前の悩みを書く。
問い合わせが増えない。商談につながらない。社内にノウハウがない。
次に導入後の状態を書く。
安定して問い合わせが来る。営業が楽になる。再現性のある運用ができる。
そして、その状態をそのまま名前に近づける。
コピーをひねり出す必要はありません。
お客様の未来を、そのままラベルにする。それだけで十分です。
どこから手をつければいいのか分からない場合
新しい名前を考える前に、今使っているプラン名やサービス名をすべて書き出してみてください。
そして「この名前を初めて見た人は、どんな状態を想像するだろうか」と自問します。
説明しないと分からない、補足が必要だと感じるなら、それは改善のサインです。
ネーミングの見直しは、何かを付け足す作業ではなく、削ぎ落とす作業に近いものです。
「専門性を盛るよりも、成果を一言で言い切れているかどうか。」
その視点に立つだけで、名前は驚くほどシンプルになります。
分かりやすさは安っぽさではありません。
意思決定のスピードを上げ、社内稟議を通しやすくするための、極めて実務的な価値です。
プラン名は最初の営業資料である
実際にネーミングを見直しただけで、商談時の説明が短くなった、誤解が減った、比較検討で選ばれやすくなったといった変化は数多く起きています。
広告費や施策を増やす前に、まず名前を疑う。
これは最もコストがかからず、再現性の高い改善策です。
BtoBマーケティングにおいて、プラン名やサービス名は、最初に読まれる営業資料だと言っても過言ではありません。
書籍紹介
本記事で紹介したネーミングの考え方や具体事例は、拙著『お金をかけずに売れる仕組み大全』のChapter3「ひと目で伝わる覚えられるネーミングの極意」で、フレームワークと実例を交えて詳しく解説しています。
BtoBサービスのプラン名、料金プラン、資料タイトルなどをどう設計すれば「説明しなくても伝わる状態」を作れるのかを、現場視点で整理しています。広告費をかけず、設計と仕組みで成果を出したいBtoB担当者の方に向けた一冊です。

