手元のスマートフォンで知りたい情報を検索したり、ECサイトを利用して買い物したりと、顧客との接点を持つオンラインはビジネスの拡大のために欠かせないものとなっています。現代において、人々のオンライン広告に対する情報探索行動は非常に複雑化しており、単なる検索から購入に至るプロセスはもはや直線的ではありません。このため、オンライン広告を活用して顧客層を拡大するには、従来の単純な消費行動モデルに沿った施策では通用しないのが現状です。
この記事では、オンライン広告の活用によって新たな顧客層の獲得や既存顧客のエンゲージメント向上に成功した企業事例を紐解きながら、効果的なオンライン広告戦略のポイントを解説していきます。特に、デジタル広告における成功事例から、自社のビジネスに活かせるヒントを見つけていきましょう。
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目次
複雑化する情報探索行動〜オンラインで顧客層を拡大するポイント
現代の顧客は、スマートフォンを使った情報収集やオンラインショッピングなど、多様なチャネルを通じて企業と接点を持っています。しかし、その情報探索行動はもはや直線的ではありません。「さぐる」検索で漠然とした情報を集め、「かためる」検索で具体的な情報を絞り込む、といった「バタフライ・サーキット」と呼ばれる行動パターンが一般的です。購入に至るまでのプロセスも、「瞬発型」「主観型」「真面目型」など、個々人の状況や心理状態によって多様化しています。
このような複雑化する情報探索行動に対応し、オンライン広告を活用して顧客層を拡大するためには、従来の画一的なアプローチでは限界があります。Googleは、この課題を克服するために、以下の2つの重要なポイントを提案しています。
- 顧客との接点を持つ間口を広げること: 検索連動型広告だけでなく、ディスプレイ広告や動画広告など、多様なオンライン広告フォーマットを活用し、潜在顧客との接触機会を増やします。デジタルマーケティング戦略においては、ターゲット層が接触する可能性のあるあらゆるチャネルでの露出が重要となります。
- ユーザーエクスペリエンス(UX)を改善すること: 広告をクリックした後のランディングページでの体験を最適化し、スムーズな情報提供やアクション(お問い合わせ、資料請求、購入など)を促します。コンバージョン率の向上には、UXの改善が不可欠です。ウェブ広告の効果を最大化するためには、広告クリエイティブとLPの一貫性も重要視されます。
これらのポイントを踏まえ、より多くの潜在顧客にアプローチするためのオンライン広告戦略は、SEO対策と並行して実施することで、相乗効果が期待できます。また、リスティング広告だけでなく、SNS広告やディスプレイ広告といった多様な広告媒体を組み合わせることで、より広範な顧客層へのリーチが可能になります。効果測定を継続的に行い、データ分析に基づいた改善を繰り返すことが、オンライン広告運用の成功には不可欠です。
ここからは、間口を広げてオンラインでの新規顧客を拡大したSBIホールディングス、UXの改善でコンバージョン率向上につなげたエムスリーの成功事例をそれぞれご紹介していきます。
SBIホールディングス「インズウェブ」の成功事例
SBIホールディングス株式会社が運営する「インズウェブ」は、一括で保険の見積もり比較ができるサービスです。保険商品選びは、多くのユーザーが綿密なリサーチを行うため、これまで「インズウェブ」では、関連性の高いキーワードで集客できる検索広告がオンライン広告配信の大半を占めていました。しかし、検索連動型広告ではコンバージョンにつながるキーワードが限られてしまうこと、また競合他社の出稿量の増減が自社の運用に直接的な影響を与えてしまうことが、継続的な課題となっていました。これらの課題を解決し、より多くの潜在顧客にリーチするための新たなオンライン広告活用として、同社はYouTube広告の「TrueViewアクション」を採用しました。
TrueViewアクションは、見込み顧客の獲得とコンバージョンの促進を目的とした動画広告フォーマットであり、ユーザーの関心を引く「行動を促すフレーズ」や広告の見出しをオーバーレイで表示できる点が特徴です。このTrueViewアクションを検索広告と並行して8週間配信した結果、運用期間の後半には、顧客獲得単価(CPA)が23%低下し、コンバージョン率(CVR)は40%向上するという顕著な効果が実証されました。
「インズウェブ」は、これまで検索広告を主なオンライン広告戦略としていましたが、新たな施策としてTrueViewアクションを並行して活用し、顧客との接点の「間口を広げた」ことで、新規顧客の開拓に成功しました。このディスプレイ広告と検索広告を組み合わせた多角的なアプローチが、オンライン広告運用の成果を最大化させた要因と言えるでしょう。この事例は、既存のオンライン広告手法にとらわれず、新たなフォーマットを導入することの重要性を示唆しています。
エムスリー「薬キャリ」の成功事例
エムスリー株式会社が運営する「薬キャリ」は、薬剤師を対象とした転職プラットフォームです。同社は、まだサービスに登録していない薬剤師を潜在顧客として捉え、オンライン広告の運用による認知度向上に注力しました。その結果、薬キャリというサービス名自体の認知拡大には十分な成果を上げることができました。
しかし、サービス認知に成功した同社が次に目指したのは、ユーザー獲得、すなわちサービスへの登録を促し、コンバージョン率(CVR)を向上させる施策でした。特に、まだ具体的な転職プランを持たず、検討段階にある薬剤師をサービス登録まで誘導することには難しさが伴いました。これらの見込み顧客に対しては、まずサービス利用への心理的ハードルを下げる必要がありました。そこで同社は、検索連動型広告において、広告文に直接登録ボタンを表示できる「リードフォーム表示オプション」の活用を決定しました。
この「リードフォーム表示オプション」を導入することで、広告からワンクリックで直接登録フォームが開くようになり、従来のウェブサイトへの遷移を伴うプロセスと比較して、問い合わせに至るまでのステップが大幅に簡素化されました。このUX(ユーザーエクスペリエンス)の改善により、見込み顧客が抱えていた心理的な障壁が低減され、よりスムーズな行動を促すことが可能になりました。
「リードフォーム表示オプション」を適用した広告運用の結果、従来の広告手法と比較して、顧客獲得単価(CPA)は17%低下し、コンバージョン率(CVR)は14%向上するという顕著な効果が確認されました。この施策の成功要因は、ペルソナを再定義し、まだ行動に移せていない見込み顧客の特性を深く分析した点にあると考えられます。その結果、彼らにとって最適なアプローチを見つけ出し、次の具体的な行動へと繋げることができたのです。デジタルマーケティング戦略における、顧客理解の重要性を示す好例と言えるでしょう。
まとめ
オンライン広告を活用した顧客層拡大の鍵は、顧客の複雑化する情報探索行動を理解することにあります。人々は「さぐる」検索と「かためる」検索を繰り返し、購入に至るまでのプロセスは「バタフライ・サーキット」と呼ばれるように直線的ではありません。このような状況下でオンライン広告による顧客層拡大を成功させるためには、以下の2点が重要となります。
- 顧客と接点を持つ間口を広げること: SBIホールディングス「インズウェブ」の事例のように、検索広告だけでなくYouTube広告「TrueViewアクション」などの多様なオンライン広告を活用し、潜在顧客へのリーチを拡大することが効果的です。これにより、新規顧客獲得単価(CPA)の低下やコンバージョン率(CVR)の向上といった具体的な成果につながりました。ディスプレイ広告や動画広告の活用は、認知度向上と併せてコンバージョン促進にも寄与します。
- ユーザーエクスペリエンス(UX)を改善すること: エムスリー「薬キャリ」の事例では、検索広告における「リードフォーム表示オプション」の活用により、登録への心理的ハードルを下げ、CVRを大幅に改善しました。リスティング広告とフォームを連携させることで、ユーザーの離脱を防ぎ、スムーズなコンバージョンへと導くことが可能です。アフィリエイト広告やSNS広告など、各チャネルの特性を理解し、UXを最適化することが重要です。ターゲティング広告の精度を高め、適切なタイミングで適切な情報を提供することも、UX改善の一環となります。
これらの成功事例から、従来の検索連動型広告のみに頼るのではなく、ディスプレイ広告、動画広告、SNS広告など、多様なオンライン広告を組み合わせ、顧客の行動様式に合わせたUXを提供することが、顧客層拡大とビジネス成長の実現に不可欠であることがわかります。インフィード広告やネイティブ広告も、ユーザーの行動を阻害せずに自然な形で情報を提供できるため、UX向上に貢献する可能性があります。プログラマティック広告の活用により、より効率的かつ効果的な広告配信も期待できます。リターゲティング広告も、一度関心を示したユーザーへのアプローチとして有効です。



