バタフライ・サーキットとは、Googleが提唱した情報探索行動の構造であり、現代の「パルス消費」とも深く関連しています。消費者の情報探索行動は、単調なルートを辿るのではなく、蝶(バタフライ)のように左右に広がり、行ったり来たりを繰り返す複雑な様子をしています。この特徴から「バタフライ・サーキット」と名付けられました。
このバタフライ・サーキットの構造こそが、現代の購買行動に特徴的な「パルス消費」を誘発する要因となっているのです。つまり、消費者の情報探索が複雑化・多様化していることが、突発的な購買行動につながりやすい状況を生み出していると考えられます。
スマートフォンが普及し、いつでもどこでも情報にアクセスできるようになった現代において、消費者の購買行動は従来の段階的な「カスタマージャーニー型」から、より衝動的で瞬間的な「パルス型」へと変化しています。認知から購入に至るまでが一直線ではなく、興味を持った瞬間に検索し、そのまま購入に至るケースが珍しくなくなりました。
この記事では、パルス消費につながるバタフライ・サーキットとはどのようなものかわかりやすく解説します。
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目次
情報探索をかき立てる動機は「さぐる」と「かためる」に分類できる
Googleの調査によると、消費者が情報探索行動を起こす動機は、大きく分けて「さぐる」と「かためる」の2つのモードに分類できます。これらのモードは、消費者がどのような目的で情報を求めているかを示唆しており、バタフライ・サーキットにおける消費者の複雑な行動パターンを理解する上で重要な要素となります。
さぐる
このモードは、消費者がまだ具体的な選択肢を絞り込めていない、あるいは新しい可能性を探求したいと考えている状態を指します。具体的には、「気晴らしさせて」「学ばせて」「みんなの教えて」「にんまりさせて」といった、発見やエンターテイメント、知識習得を目的とした検索行動が含まれます。パルス消費のきっかけとなることも多く、予期せぬ発見が購買意欲を刺激します。
かためる
一方、「かためる」モードは、消費者がある程度選択肢を絞り込み、購入や意思決定に向けて情報を確定させたいと考えている状態です。これには、「納得させて」「解決させて」「心づもりさせて」「答え合わせさせて」といった、意思決定に必要な確証や詳細情報を得るための検索行動が含まれます。このモードでの情報収集は、購買の最終段階における重要なプロセスです。
一般的に、情報探索行動は「さぐる」モードで選択肢を広げ、その後「かためる」モードでそれらを絞り込んでいくという、カスタマージャーニーのような直線的なプロセスを辿ると考えられがちです。しかし、実際の消費者の情報探索行動は、この限りではありません。たとえば、「さぐる」モードで情報収集をしていたにも関わらず、魅力的な商品に出会った瞬間に「かためる」モードを経ずに直接購入に至る「パルス消費」が発生したり、逆に「かためる」モードで集中的に比較検討していたにも関わらず、新たな疑問が生じて再び「さぐる」モードに戻ったりするなど、消費者の行動は非常に流動的で、これらのモード間を行き来することを繰り返します。Googleはこの複雑で非線形な情報探索行動の構造を「バタフライ・サーキット」と名付けました。
パルス消費につながるバタフライ・サーキット
バタフライ・サーキットとは、Googleが提唱する消費者の情報探索行動の構造であり、その特徴は、消費者の購買行動が従来の段階的な「カスタマージャーニー型」から、スマートフォン普及の影響もあって現代では「パルス型」へと変化している点にあります。パルス消費は、このバタフライ・サーキットの構造と密接に関連しており、瞬間的かつ衝動的な購買行動が起こりやすくなる要因となっています。
バタフライ・サーキットの構造がパルス消費を促進するのは、消費者の複雑で多層的な情報探索行動に起因します。例えば、ある商品を購入しようと検討している際に、消費者は関連する他の商品やサービスにも自然と目を向けます。これは、一つのバタフライ・サーキットが完了したかのように見えても、実際にはそれに関連する新たなバタフライ・サーキットが開始されることを意味します。このような連鎖的な情報探索は、予期せぬ発見や興味を引き起こし、結果としてパルス消費へと繋がりやすくなるのです。
さらに、バタフライ・サーキットは単一のカテゴリーに留まらず、複数のカテゴリーで同時に発生することもあります。義務的な情報収集(例えば、必要な商品のリサーチ)を行っている最中に、気分転換や楽しさを求めて別のカテゴリーの情報を探索する行動が並行して起こることがあります。この「義務」と「楽しみ」の情報探索が交錯することで、自分への「ご褒美」といった形でパルス消費が発生するケースも少なくありません。このように、バタフライ・サーキットの柔軟で反復的な性質が、現代のパルス消費という購買行動を理解する上で非常に重要な鍵となります。
現在の消費者行動を理解・観察することが大切
Googleの調査によると、現代の消費者の約70〜80%は、バタフライ・サーキット型の情報探索行動をとっていることが明らかになりました。これは、消費者が常に商品やサービスに関する情報を探し続けており、パルス消費を引き起こす瞬間を狙っている状態にあると言えます。
このような消費者の行動様式を理解するためには、現在のパルス消費行動やバタフライ・サーキット型情報探索行動を深く理解し、継続的に観察していくことが不可欠です。具体的には、「さぐる」モードで消費者がどのような情報を求めているのか、そして「かためる」モードでどのような点に迷いや懸念を抱いているのかを把握することで、購買行動が発生する「瞬間」を予測することが可能になります。
従来の画一的なマーケティング手法にとらわれるのではなく、バタフライ・サーキットという複雑な情報探索の構造を理解し、消費者が「今」どのような行動をとっているのかをリアルタイムで捉えることが、これからのマーケティング戦略において極めて重要となります。特に、パルス消費につながる消費者の動機や行動パターンを観察することで、より効果的なアプローチが見えてくるでしょう。
まとめ
情報探索をかき立てる動機は「さぐる」と「かためる」に分けられますが、消費者の行動は必ずしも「さぐる→かためる」と一直線に進むわけではなく、バタフライ・サーキットのように情報探索行動は不規則に広がります。このバタフライ・サーキットとは、Googleが提唱する情報探索行動の構造であり、行ったり来たりを繰り返しながら広がる様子が蝶(バタフライ)のように見えることから名付けられました。このバタフライ・サーキットの構造が、消費者の突発的な購買行動であるパルス消費を起こりやすくする要因となっています。これからのマーケティングにおいては、従来の型に囚われず、現在のパルス消費を促すバタフライ・サーキット型の消費者行動を深く理解し、観察していくことが重要です。

