【特別インタビュー】インターネット広告に20年携わった有馬氏が目指す、究極のデジタルマーケティングとは 後編

楽天データマーケティングの社長であり楽天副社長執行役員CROの有馬誠氏のインタビュー後編をお送りする。
ここでは楽天グループの推進するマーケティングソリューション「RMP(Rakuten Marketing Platform)」の仕組みをおさらいするとともに、電通とのタッグで目指す究極のデジタルマーケティング、そしてインターネット広告の未来までを語っていただいた。

2018年5月、楽天は、広告商品群のブランドを「Rakuten Marketing Platform」に統一した。
「Rakuten Marketing Platform (RMP)」とは、1億を超える楽天IDとそれに基づく購買データなどの消費行動分析データで展開される、「楽天エコシステム(経済圏)」を活用したフルファネルのマーケティングソリューション。
あらゆるマーケティングプロセスにワンストップで応えるべく、様々なプロダクトが用意されている。

楽天のビッグデータと電通のマスメディア戦略構築力が出会うことで実現した「RMP」について、有馬氏は以下のように語る。

「認知/興味関心/購買/リピート/ファン化、というマーケティングファネルのうち、電通が得意とするのは『購買』以前、楽天が得意とするのは『購買』以降。この組み合わせがとても面白いと思うんです。テレビやインターネットを見て商品を認知した人のうち、どのくらいの人が購買し、リピーターになったのか。マーケティングファネルの上から下までを短時間で継続的に回転させることこそ、究極のデジタルマーケティングであると考えています」

究極のデジタルマーケティング。その構想は、現段階でどこまで達成できているのだろうか?

「自省を込めて言いますが、日本のインターネット広告については『20数年やってきてまだこの程度か』と思っています。ビッグデータの解析にAIが導入され、ここ数年でデータの解析からアクションを起こすまでの時間とコストは劇的に短縮化されましたが、日本ではテレビとインターネットの分断がいまだに大きいという問題があります。我々はテレビとともに大きくなりたいと思っている。ユーザーは、スマホやタブレットとテレビを分け隔てなく見ています。アメリカではネットでテレビCMを見た10秒後、そのユーザーのスマホに商品のバナーが出てくるといった仕掛けがすでに実現している。これこそ、統合マーケティングの理想的な形です。テレビ対インターネットではなく、いかに両者がうまく手を組むかを考えることの方が重要であり、まさに我々が取り組むべきことだと思っています」

インターネット広告には、ロボットが広告を閲覧・クリックする広告詐欺の「アドフラウド」、実際にはユーザーに見られていない広告の問題である「ビューアビリティ」、好ましくないサイトに広告が表示される「ブランドセーフティー」などの課題があるという。
これらを解決するためにも、購買データを基準にするメリットがあるそうだ。有馬氏はこう分析する。

「これまでのインターネット広告は、決してユーザーには好かれていませんでした。それはユーザーに最適化されていない情報がランダムに節操なく表示されるからです。例えば目が悪くない人のブラウザーにしつこくコンタクトレンズの広告が表示されたら、それは嫌がられて当然です。その点、購買データを基準とした広告は『広告主』『パブリッシャー(広告を掲載するサイト)』『ユーザー』それぞれにメリットをもたらします。これは我々が『“三方良し”のインターネット広告』と呼んでいるものです。

まず広告主にとっては、購買を期待できるユーザーに届けることで効果を上げる確率が高くなります。そして広告を掲載するパブリッシャーにとっては、購買につながる広告を掲載することで広告費が落ちやすくなり、それによって取材費なども出やすくなる。しっかりと書かれた記事を掲載するサイトは、ユーザーの滞在時間が長く、滞在時間が長いサイトに掲載された広告ほど効果も高いことが我々の調査で明らかになっています。ユーザーにとっては、関係のない情報がランダムに表示されず、有益な情報が表示されるようになります。購買データを基準として情報を最適化することで、必要ない広告を見る機会は限りなく減ります。三者それぞれにメリットがもたらされることで好循環が生まれるわけです」

また、すべてはユーザーの許諾ベースと断った上でと前置きし、有馬氏はこうも言う。

「『楽天市場』は、競合他社のサイトに比べて滞在時間が3倍ほど長いという調査結果があります。それは決め打ちで商品を買いに来るのではなく、『どんなものがあるかな』とウインドウショッピングを楽しむ感覚でサイトを見に来るユーザーが多いからです。ユーザーの閲覧する商品が増えれば、その人の趣味嗜好や目的がより明確になります。例えばふるさと納税に関する商品をたくさん見ている人たちには、そのニーズに合った別のふるさと納税の広告を表示するなど、より精度の高いターゲティングが可能です。楽天グループとして今後モバイルや物流サービスへ向けた取り組みが本格化していけば、そこで得られる情報もきめ細かなサービスの実現につながると思います」

インターネット広告の未来について尋ねると、1億を超えるIDを持つ楽天にしかできない取り組みを例に、次のような話を聞くことができた。

「ユーザーひとりひとりに対するサービスの向上という意味では、インターネット広告にはほとんど無限といっていい可能性が広がっています。例えば、コンタクトレンズのメーカーが1,000人以上の人に自社のコンタクトレンズの魅力を届けたいとする。一方で、『楽天市場』にはコンタクトレンズを買う人が多くいる。その時にどうするか。楽天では、その方たちの属性などのデータを920もの項目で分析することができます。そして1億を超えるIDから、その人たちに近い層の人をAIが探し出すわけです。広告主の予算によって規模感を決め、920項目のうち90%一致する層、75%一致する層といった具合で対象をリストアップする。1億以上のIDを持っているからこそ、このようなアプローチが可能になるんですね」

楽天の2018年の広告取扱高は930億円で、「楽天市場」に出店する約4万7千店舗による広告収入が多くを占めている。
それを3年後の2021年には「倍の2,000億円にまで伸ばしたい」と語気を強めた有馬氏。
広告取扱高で2,000億円といえば、最大手のテレビ局など、一部のメディアにも匹敵する規模である。
しかしこれも、オンライン/オフライン/リテールのすべてを楽天IDで連携させることができる楽天の強みを活かせば不可能ではない数字だという。

最後にマーケターへのメッセージをお願いした。

「同じ企業でも、マーケティングファネルの上と下で担当部署が違う、予算も別というところがまだまだ多いので、時代とともに見直していく必要があると思います。我々としてはテレビや新聞雑誌、SNS検索、ECサイトなどを統合的に考えながら、いかにうまく組み合わせて運用型のPDCAサイクルに持ち込むかが大きな課題です。今後も購買データを積極的に活用したソリューション、プロダクトを提供していきますので是非ご期待ください」

究極のデジタルマーケティングを追求する有馬氏の取り組みは、これからも続く。


有馬  誠 氏

楽天株式会社 副社長執行役員CROメディア&スポーツカンパニー プレジデント
楽天データマーケティング株式会社 代表取締役社長
楽天アドロール株式会社 代表取締役会長

インターネット黎明期の1996年、ヤフーに第一号社員として入社し、その後グーグルの代表取締役を務めるなど日本のインターネット広告の発展を支えた。2017年7月、楽天の副社長執行役員CRO(チーフレベニューオフィサー)に就任。同時に楽天と電通によるジョイントベンチャー、楽天データマーケティングの代表取締役社長に就任し、同年10月に営業を開始した。

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