Webサイトを制作する際に、「ワイヤーフレーム」という言葉を耳にしたことはありませんか?ワイヤーフレームは、Webサイト制作における重要な設計図のようなものです。特に、複数の関係者が携わるプロジェクトでは、イメージの共有に大きな役割を果たします。
本記事では、ワイヤーフレームの定義や必要性について詳しく解説します。また、ワイヤーフレームの作成方法や、制作に役立つおすすめツールも紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
Webデザインやサイト構築に携わる方はもちろん、これからWebサイトの制作を依頼しようと考えている方にとっても、ワイヤーフレームの知識は非常に有用です。効率的なサイト制作とプロジェクト管理のために、ワイヤーフレームについて理解を深めていきましょう。
目次
ワイヤーフレームとは?
Web制作時に使用されるワイヤーフレームとは、 ホームページの基本的なレイアウトやコンテンツの配置を簡単にスケッチした設計図です。ページの「どこに」「何を」「どのように」配置するかをまとめ、自社サイトの構築・改修時の確認や、クライアントのコンセプトに沿った構成をイメージしやすくするために作られます。
ワイヤーフレームの名称は、「ワイヤー(ケーブル・電線)」と「フレーム(骨組み・骨格)」という言葉の組み合わせから来ています。この名前が示すように、ワイヤーフレームはWebサイトの骨格を表現するものであり、グラフィックやデザインの細部までは含まれません。むしろ、建築物の間取り図のような役割を果たし、サイトの基本構造を明確に示すことに重点を置いています。
ワイヤーフレームは、プロジェクトの初期段階で作成されることが多く、サイトの全体像を把握し、各要素の配置や重要度を検討するための重要なツールとなります。これにより、デザインや開発の方向性を決定し、効率的なWeb制作プロセスを実現することができるのです。
ワイヤーフレームが必要な理由
ワイヤーフレームは、Webサイト制作において非常に重要な役割を果たします。その主な理由は以下の2点です。
● 情報整理
● 関係者との情報共有
まず、情報整理の面では、ワイヤーフレームを作成することで、制作しようとしているWebサイトの構造や内容を視覚化できます。これにより、サイトのレイアウトやコンテンツの配置など、基本的な設計を明確にすることができます。どのようなページ構成にするか、各セクションにどんな情報を盛り込むかなど、サイトの骨格を整理する上で非常に有効なツールとなります。
次に、関係者との情報共有という点においても、ワイヤーフレームは大きな威力を発揮します。クライアントやWebデザイナー、開発者など、プロジェクトに関わる様々な立場の人々が、同じビジョンを共有するためのツールとして機能します。特に、複数の担当者が関わる大規模なプロジェクトでは、ワイヤーフレームを通じて完成イメージを共有することで、認識のずれを防ぎ、スムーズな進行を促進することができます。
さらに、ワイヤーフレームは柔軟性が高く、プロジェクトの進行に応じて修正や調整が容易です。初期段階でワイヤーフレームを作成し、関係者間で議論を重ねることで、本格的な制作に入る前に多くの問題点を洗い出し、解決することができます。これにより、後々の大幅な修正や手戻りを防ぎ、効率的なWeb制作が可能となります。
このように、ワイヤーフレームは単なる設計図以上の価値を持ち、Web制作プロジェクトの成功に欠かせない重要なツールと言えるでしょう。
ワイヤーフレームを制作する流れ
ワイヤーフレームの意味・必要な理由をご紹介したところで、ここからは実際にワイヤーフレームを制作する流れについて、企業の公式サイト(コーポレートサイト)を例に説明していきます。ワイヤーフレームの制作は、Webサイトの設計において重要なステップであり、以下の4つの段階を経て行われます。まず、必要な情報を洗い出し、次にラフ案を作成します。その後、レイアウトを考案し、最後に本番の制作に移ります。この流れに沿って作業を進めることで、効率的かつ効果的なワイヤーフレームを作成することができます。各段階で注意すべきポイントがありますので、それらを踏まえながら制作を進めていくことが大切です。
必要情報の洗い出し
まずは、Webサイトに掲載したい必要情報を洗い出していきましょう。はじまりの段階ではまだ完成イメージはできていない状況なので、掲載したい内容をすべて書き出すようにしてみてください。
必要情報の例
● 会社名
● 社長メッセージ
● ロゴ
● バナー
● 住所
● 業務内容
● 電話番号
● アクセス
● 問い合わせページ等
必要情報を書き出した後には、似たような情報をグルーピング(グループ分け)していきましょう。グルーピングをする理由は、似た情報を同じような配置で制作するのが、ワイヤーフレームの基本であるからです。たとえば、「電話番号」、「住所」、「アクセス」は同じグループにするというように、似たようなくくりでグルーピングできるものをまとめていきましょう。
そして最後に、ピックアップした情報の重要度を決定していきます。Webサイトの目的やコンセプトに沿って、重要度を決定しましょう。その際に、すべて書き出した内容についての見直しを行い、不要な情報は削除していくようにするとベターです。
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ラフ案の作成
必要情報の洗い出しをして、グルーピング・情報の取捨選択ができたら、ワイヤーフレームのラフ案を作成していきます。この段階では本当にスケッチのような感じで、ラフなものを作るようにしましょう。ラフ案を作り込み過ぎてしまった場合、レイアウト考案の段階で適切なレイアウトを選択できなくなってしまう危険性があります。
必要情報をどこに、どのような形で配置するか、Webサイトに訪問した人の導線を意識しながら、ラフなワイヤーフレーム案を作成していきましょう。この時点では細かい詳細にこだわらず、大まかな構成やレイアウトのアイデアを素早く視覚化することが重要です。紙とペンを使って手書きでスケッチするのも効果的な方法の一つです。
レイアウト考案
ラフ案を作成したら、次はレイアウトを考える段階に入ります。この段階では、ホームページを制作する上でのコンセプトを決定し、それに基づいてレイアウトを考案していきます。企業の方向性や目指すイメージによって、サイトのレイアウトも大きく変わってきます。例えば、親しみやすさを重視するのか、それとも堅実な企業イメージを演出したいのかによって、適切なレイアウトは異なります。
レイアウトには、一般的に使用されるいくつかのテンプレートがあります。主なものとしては、1カラム(1列)レイアウト、マルチカラム(複数列)レイアウト、サイドバー固定レイアウトなどが挙げられます。これらの中から、情報の量や内容、そして企業の方向性に最も適したレイアウトを選択することが重要です。
選択する際は、ユーザビリティや情報の優先順位も考慮に入れましょう。例えば、1カラムレイアウトは、シンプルで見やすい反面、大量の情報を効率よく配置するのは難しいかもしれません。一方、マルチカラムレイアウトは多くの情報を同時に表示できますが、デザインが複雑になりすぎないよう注意が必要です。
また、レスポンシブデザインの観点から、異なるデバイスでの表示も考慮に入れることが大切です。スマートフォンやタブレットでの閲覧を想定し、デバイスに応じて最適化されるレイアウトを設計することで、より多くのユーザーに快適な閲覧体験を提供できます。
レイアウト考案の段階では、クライアントや関係者との密なコミュニケーションも欠かせません。企業のブランドイメージや、ターゲットとする顧客層のニーズを十分に理解した上で、最適なレイアウトを決定していくことが重要です。
本番制作
レイアウトが決定したら、実際のワイヤーフレーム制作に移ります。
Webサイトのページは、大きく分けて以下の要素で構成されます。
・ヘッダー:ページの上部
・フッター:ページの下部
・メインビジュアル:サイト訪問者の視覚に最初に表示される部分
・コンテンツエリア:ページの内容のメイン部分
各要素において、訪問者にどのように見せるべきか、注意すべき点を考慮しながら、必要な内容を配置していきます。
ワイヤーフレームは、代表的なページごとに制作します。その際、他のページへの導線もしっかりと意識することが重要です。ユーザーの動線を考慮し、スムーズな遷移ができるよう設計しましょう。
完成形のワイヤーフレームを制作する際は、以下の点に注意します。
・情報の優先順位を反映させる
・コンテンツの配置バランスを整える
・ユーザビリティを考慮したデザインにする
・レスポンシブデザインを意識する
これらの点に注意しながら、プロジェクトのゴールに沿ったワイヤーフレームを制作していきましょう。完成したワイヤーフレームは、チームメンバーやクライアントとの共有・レビューを行い、必要に応じて修正を加えていきます。
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ワイヤーフレームを便利に制作できるツール7選
ワイヤーフレームの作り方の流れを理解したところで、ここからはワイヤーフレームを効率的に制作できる便利なツールを7つご紹介します。これらのツールは、それぞれ特徴や強みを持っています。自社のホームページのコンセプトや制作目的に合わせて、最適なツールを選択することが重要です。
以下に紹介するツールは、プロのデザイナーから初心者まで幅広く利用されており、機能や価格帯も様々です。無料で利用できるものから、月額制の有料サービスまで、予算や必要な機能に応じて選択することができます。
ワイヤーフレーム制作ツールを活用することで、アイデアを素早く形にし、チーム内での共有やクライアントへのプレゼンテーションをスムーズに行うことができます。また、多くのツールが直感的な操作性を備えているため、専門的なデザインスキルがなくても、効果的なワイヤーフレームを作成することが可能です。
それでは、各ツールの特徴や利用方法について詳しく見ていきましょう。
Adobe XD
Adobe XDは、ワイヤーフレームやアニメーションなどの制作を行うためのWebデザインツールです。デバイスごとにテンプレートが用意されており、プロトタイプ機能や余白表示、リピート機能など便利な機能が豊富です。デザイナーやWeb制作者に人気の高いソフトウェアで、直感的な操作性も特徴です。
基本の有料プランは、月額1,298円(税込)で利用することができますが、無料で使えるスターターキットも用意されています。Webデザインを職業としていない方にとっては、こちらのスターターキットで十分でしょう。スターターキットでも基本的な機能は使用可能で、ワイヤーフレームの作成には十分な機能が揃っています。
Cacoo
Cacooは、ワイヤーフレーム以外にもプレゼン資料などが作成できるビジュアルコラボレーションツールです。100種類以上のテンプレートを用意しているところも魅力ですが、Slackなどの外部サービスとの連携、チャット機能などを搭載しており、コミュニケーション機能の豊富さがCacooの強みと言えるでしょう。
基本料金は、プロプランが月額660円とリーズナブルです。チームプランも1人あたり月額660円で200ユーザーまで使えるので、比較的大規模なプロジェクトでも使用することができるでしょう。
シート数の制限など、機能的には劣ってしまいますが、無料で使えるフリープランも用意されています。
Sketch
Sketchは、Bogemian Coding社が開発したMac専用のワイヤーフレームツールです。直感的な操作性が特徴で、Mac用のツールを探している方には使いやすいツールでしょう。UI/UXデザイナーに人気があり、豊富なプラグインも利用可能です。
基本料金は、スタンダードプランの月額9ドルで、さらに機能が拡張されたビジネスプランは運営会社に問い合わせて利用することができます。また、30日間無料で使える試用期間も用意されているので、気になる方はこちらで試してみるとよいでしょう。Sketchは定期的にアップデートが行われ、常に最新の機能を利用できる点も魅力です。
Excel
Excelは、パソコンを利用している方には説明不要の表計算ソフトです。Excelはソフトが普及しているため、使い慣れた操作でワイヤーフレームを制作することができます。
ただし、複雑な構造やレイアウトのワイヤーフレームを制作する際は、Excelでは不十分ですので、専用のデザインツールを使うようにした方がよいでしょう。
基本料金は、Microsoft Excelがインストールされていれば無料です。今ではGoogleが提供しているGoogle スプレッドシートというクラウド上で共同編集できる表計算ソフトもあります。無料でワイヤーフレームを制作したい方は、Google スプレッドシートを利用してもよいでしょう。
Wireframe.cc
Wireframe.ccは、利用しやすいワイヤーフレームツールです。とてもシンプルなインターフェイスが特徴で、必要最低限のレイアウトでワイヤーフレームを作りたいという方におすすめです。料金は1人月額16ドルからで、サインアップすることで7日間の無料トライアルを利用できます。
Marvel
Marvelは、複雑なプログラミングコードを利用せずに、プロトタイプが作成できるワイヤーフレームツールです。
速効性が特長ですが、すべてのデバイスごとにテンプレートが数百種類あること、無料プランでもプロジェクト作成が無制限なところも魅力でしょう。
Marvelの特徴として、直感的な操作性も挙げられます。ドラッグ&ドロップでデザイン要素を配置できるため、デザインの経験が少ない方でも使いやすいツールとなっています。また、チーム間でのコラボレーション機能も充実しており、リアルタイムでの共同編集やコメント機能を活用することで、効率的なプロジェクト管理が可能です。
Justinmind Prototyper
Justinmind Prototyperは、ワイヤーフレームから高度なプロトタイプまで、幅広いデザインを制作できる多機能なプロトタイピングツールです。その特徴的な機能として、Webインタラクションの設定が可能で、ユーザーの操作に応じて画面が反応するような高度な設計が行えます。また、豊富なUI要素や組み込みウィジェットを活用することで、効率的にデザインを作成できます。料金プランは、月額9ドルのスタンダードプラン、月額19ドルのプロフェッショナルプラン、そして大規模な企業向けのプランが用意されています。初めて利用する方や機能を試してみたい方のために、無料版も提供されているので、まずはこちらから始めてみるのもよいでしょう。
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ワイヤーフレームの参考サイト
ワイヤーフレームの制作において、実際の例を参考にすることは非常に有益です。これから制作を始める方にとって、視覚的な例を見ることで、アイデアを得たり、構成の参考にしたりすることができます。ここでは、ワイヤーフレームの制作時に参考となる有用なサイトをご紹介します。これらのサイトを活用することで、より効果的なワイヤーフレームの作成が可能になるでしょう。ただし、これらのサイトは海外のものであるため、英語での表記となっていますが、ビジュアル面での参考としては十分に役立つものとなっています。
Wireframe Showcase
海外のサイトであるため、英語表記ですが、見たいホームページにカーソルを合わせると、ワイヤーフレームが重ねて表示されます。とても分かりやすい作りになっており、ワイヤーフレーム制作の参考にしやすいでしょう。実際のウェブサイトとそのワイヤーフレームを比較できるため、デザインの構造や要素の配置を視覚的に理解するのに役立ちます。様々な業種や目的のウェブサイトが掲載されているので、幅広いアイデアを得ることができます。
I ♥ wireframes
I ♥ wireframesは、ワイヤーフレームを実際に制作した人たちから投稿されたワイヤーフレーム実例紹介サイトです。
掲載されているワイヤーフレームは、実に800種類以上あり、パソコン用・スマホ用など様々なデバイスごとのワイヤーフレームを見ることができます。こちらも海外のサイトであるため、英語表記になっていますが、ワイヤーフレームを視覚的に把握するためにはよいでしょう。多様な業種や目的に応じたワイヤーフレームの実例が豊富に集められているため、自身のプロジェクトに適したアイデアを得るのに役立ちます。
まとめ:ワイヤーフレームで万全の準備を
ワイヤーフレームとは、ホームページの基本的なレイアウトやコンテンツの配置を簡単にスケッチした設計図のことで、情報整理や関係者との情報共有のために制作されます。無料や、お手頃な価格で利用できるワイヤーフレームツールがありますので、積極的に活用するようにしましょう。
自社のホームページのコンセプトを明確にし、関係者のイメージを統一するためにはワイヤーフレームの制作が必須と言えます。Web制作に失敗しないためにも、ワイヤーフレームを作成して十分な準備を行うことが重要です。また、ワイヤーフレームを通じて、ユーザビリティやデザインの方向性を事前に検討することで、効率的なWeb制作プロセスを実現できるでしょう。
最後に、ワイヤーフレーム作成は単なる作業ではなく、クリエイティブな思考プロセスの一部であることを忘れないでください。サイトの目的や想定するユーザー体験を常に念頭に置きながら、柔軟な発想で取り組むことが成功への鍵となります。