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マーケティングと広報の分業はもう限界?AI時代にBtoB企業が生き残るための組織アップデート戦略

2026.4.9
読了まで約 6

多くのBtoB企業が抱えがちな「マーケティングと広報の組織課題」について、その背景と具体的な連携のヒントを掘り下げます。

近年、生成AIの台頭などを背景に、これまでの明確な分業体制ではスムーズに機能しづらいケースが増えてきています。なぜ今、マーケティングと広報の連携強化が求められているのか、組織の壁をどう乗り越えるかについて、各種の調査データや先進事例を交えながら解説します。

関連記事:広報とは?売上に直結する「信頼の土壌」の作り方と、広報×マーケティング連携の重要性

マーケティングと広報の境界線が曖昧に?多くの企業が抱える組織課題の本質

「マーケティングと広報の業務範囲が重なり、役割分担が難しくなってきた」と感じることはありませんか?企業規模や事業フェーズによって悩みはさまざまですが、これは単なる社内だけの問題ではなく、デジタル化やAI化が進む市場において多くの企業が直面している変化と言えます。

広報担当者の5割以上が「マーケと連携することが増えた」と回答

かつて、広報はメディアリレーション等を通じて企業の信頼性を高め、マーケティングは広告や販促活動でリード獲得や売上を追求するという、比較的明確な分業がありました。

しかし、2025年10月に株式会社IDEATECHが実施した調査によれば、大企業の広報・PR担当者の8割以上が「役割の変化」を実感しているというデータも示されています。

あなたは、5年前と比べて、PR・広報の役割は変化していると感じますか。

出典元:リサピー®︎
参考リンク:【「伝える広報」から「仕掛けるPR」への転換期】 大企業の広報・PR担当者の8割以上が「役割の変化」を実感 これからの広報が求められる仕事とは?

また、同じ調査の中で「PR・広報の役割の変化として、特に実感しているもの」として「経営やマーケティングと連携することが増えた」を挙げた人は5割以上いました。

PR・広報の役割の変化として、特に実感しているものを教えてください。

出典元:リサピー®︎
参考リンク:【「伝える広報」から「仕掛けるPR」への転換期】 大企業の広報・PR担当者の8割以上が「役割の変化」を実感 これからの広報が求められる仕事とは?

現代の顧客は、広告だけでなくSNS、第三者のレビュー、メディア記事などあらゆる情報源を横断して意思決定を行います。この状況において、広報が築く「社会的な信頼」とマーケティングが担う「顧客へのアプローチ」が連動して初めて、一貫したブランド体験を提供でき、ひいては最終的な事業成果に繋がりやすくなると言えるでしょう。

分業、兼務、役割の重複…現場で起きているリアルな悩み

境界線が曖昧になる中で、現場では過渡期ならではの課題が発生しやすくなっています。

  • 分業によるサイロ化:マーケは「リード数」、広報は「メディア掲載数」と異なるKPIを追うため、せっかくのメディア掲載が商談創出に活かされないといった機会損失が起きている。

  • 役割のグレーゾーン:「SNS運用やオウンドメディアはどちらの管轄か?」といった業務の切り分けが曖昧になり、施策に一貫性が欠けてしまう。

  • 兼務のジレンマ:中小企業などに多く、一人の担当者が両方を兼務することで業務負荷が過大になり、戦略的な活動に時間を割きにくくなる。

原因分析:マーケティングと広報の境界が溶け始めた背景

なぜ今、BtoB企業においてマーケティングと広報の境界線が溶け始めているのでしょうか。その背景にある市場の変化を考察します。

生成AIとAI検索(LLMO/AEO)の台頭

大きな要因の一つとして考えられるのが、生成AIやAI検索の台頭です。ユーザーの検索体験は、複数のサイトを比較検討する形から、AIが情報を要約して直接回答を提示する「アンサーエンジン」へと進化しつつあります。AIによってコンテンツ作成が効率化された結果、「単なる情報発信」だけでは競合との差別化が難しくなりました。

AI検索において自社が選ばれる(LLMO/AEO対策)ためには、自社の主張だけでなく、第三者からの言及(サイテーション)や客観的な権威性がより重要視されるようになっています。

「客観的な信頼」がマーケティングの土台になる時代へ

AIは、Googleが提唱する「E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)」などの概念に基づき、情報の信頼性を評価する傾向にあります。この「権威性」や「信頼性」を高める上で、報道機関や業界の専門家といった第三者からの客観的評価を獲得する広報活動は、これまで以上に重要な意味を持ちます。

つまり、広報が築いてきた「客観的な信頼構築」が土台になければ、マーケティングの「需要創出」が機能しづらい時代に入ったと言えるのです。その結果、プレスリリースのオウンドメディアへの還流や、導入事例を通じたソートリーダーシップ(特定のテーマ・分野で新しい考えや知見を提示する)発信など、両者の「共通領域」が増加しています。

プレスリリース、オウンドメディア…共通領域となった業務の具体例

現代の「信頼の獲得(広報)」と「需要の創出(マーケティング)」の業務領域には多くの共通部分が生まれています。もはや「この業務はマーケティング」「これは広報」と明確に線引きすることが難しく、両者が連携して取り組むべき業務が増えているのです。

たとえば、日立やカゴメといった大企業でも、両部門の連携を模索する動きが見られます。

参考リンク:【日立・カゴメ実践録】マーケと広報、機能分けは陳腐化!? ブランド価値を最大化する組織のカタチを探る (1/3):MarkeZine(マーケジン)

以下に、その具体的な業務例を挙げます。

共通領域となった業務 マーケティング視点の目的 広報視点の目的
オウンドメディアの記事制作 リード獲得、顧客育成(ナーチャリング) ソートリーダーシップ確立、思想やビジョンへの共感獲得
プレスリリース・調査レポート コンテンツの一次情報として活用し、リード獲得につなげる メディア露出による認知度向上、社会的信頼性の獲得
導入事例コンテンツ 具体的な成功イメージを提示し、購買を後押しする 第三者の声を通じて製品・サービスの信頼性を証明する
SNS(XやLinkedIn)での発信 潜在顧客との接点創出、コミュニティ形成 ステークホルダーとの関係構築、企業ブランディング

成果を最大化する連携強化の3つの実務ヒント

マーケティングと広報、それぞれの専門性を最大限に活かし、事業成長という共通のゴールに向かうためには、具体的な連携の仕組みが不可欠です。この章では、多くのBtoB企業が明日から実践できる、連携強化のための3つの実務ヒントを詳しく解説します。

ヒント1:共通の目標(KGI/KPI)を設定し、施策を接続する

広報の「露出」をゴールにせず、その掲載実績をナーチャリングやウェビナー集客にどう活かすか、マーケと広報で「その後の導線」を一緒に設計することが有効です。例えば、「PR記事からオウンドメディアへの送客数」や「メディア掲載をフックにした資料ダウンロード数」などを中間KPIに設定することで、両者の活動がつながりやすくなります。

ヒント2:AI検索(E-E-A-T)を意識したコンテンツを共創する

広報が持つ「一次情報・独自データ」を、マーケティングがAIに引用されやすい形式(E-E-A-Tを満たす記事)に仕立て直すといった協業が考えられます。調査リリースを配信して終わりにするのではなく、そのデータを基にマーケティング側で深掘り解説記事を作成するなど、それぞれの強みを持ち寄ることで良質な資産コンテンツを生み出せます。

<コンテンツ共創の具体例>

  1. 【広報】調査リリース配信:主要メディアでの掲載を獲得し、「権威性」と「信頼性」を担保する。
  2. 【マーケティング】深掘り解説記事の作成:広報が得た一次データを基に、ターゲットの課題解決に繋がる具体的なノウハウを盛り込んだSEO記事を作成。「専門性」を強化する。
  3. 【広報+マーケティング】専門家対談コンテンツ:記事の著者として社内のエースエンジニアや開発責任者を立て、さらに業界の有識者を招いて対談。その内容を記事や動画にすることで、「経験」と「権威性」をさらに高める。

このように、両者がそれぞれの強みを持ち寄ることで、AIと顧客双方から高く評価される資産コンテンツを効率的に生み出すことができます。

ヒント3:RACIチャートで役割分担を明確化する

業務が重なるのは必然と割り切り、プロジェクト管理手法の「RACIチャート」などを用いて「実行責任」「承認者」「協業・相談先」を明確にしておくことが大切です。

RACIとは、以下の4つの役割の頭文字を取ったものです。

  • R (Responsible):実行責任者(実際にタスクを行う担当者)
  • A (Accountable):説明責任者(タスクの完了に最終責任を負う承認者)
  • C (Consulted):協業・相談先(実行前に相談を受ける専門家など)
  • I (Informed):報告先(進捗や結果の報告を受ける関係者)

例えば、「導入事例コンテンツの制作」という共通業務に対して、以下のように役割分担を明確にします。

タスク マーケティング担当 広報担当 営業担当 法務部
顧客への取材交渉 C (相談先) A (説明責任者) R (実行責任者) I (報告先)
記事構成案の作成 R (実行責任者) C (相談先) I (報告先)  
原稿執筆・編集 R (実行責任者) C (相談先)    
顧客・法務レビュー R (実行責任者) C (相談先) I (報告先) A (説明責任者)
サイト公開とプレスリリース配信 A (説明責任者) R (実行責任者) I (報告先)  

このようなチャートを一度作成するだけでなく、月1回の定例会などで定期的に見直し、実態に合わせて更新していくことが重要です。これにより、「誰がボールを持っているのか分からない」状態を防ぎ、スムーズな協業体制を構築できます。

未来の組織がとるべき3つの進化パターン

このような変化に対応するため、企業は自社の規模や事業フェーズに応じて組織体制をアップデートしていく必要があります。ここでは、想定される3つの進化パターンを提示します。

進化パターン 特徴 特に有効な企業フェーズ
CMO/CCO連携強化型 CMO(最高マーケティング責任者)とCCO(最高コミュニケーション責任者)が共同で全社的なコミュニケーション戦略を策定。KPIを共有し、傘下のマーケティング部門と広報部門が一体となって施策を実行する。 大企業、事業部が複数ある企業
グロース・コミュニケーション部 新設型 事業成長(グロース)をミッションとし、マーケティングと広報の機能を併せ持つ専門部署を設置。「マーケティング広報」や「PRマーケター」といった職種が中心となり、リード獲得やナーチャリングまで責任を負う。 急成長中のスタートアップ、中堅企業
アジャイル型 統合チーム プロジェクト単位でマーケティング、広報、営業、開発などからメンバーを集め、特定の目的(例:新製品ローンチ)のために機動的に動くチームを組成。変化の速いSaaS業界や、小規模な組織に適している。 スタートアップ、小規模組織

いずれのパターンにおいても重要なのは、「顧客への価値提供」と「社会からの信頼獲得」という2つの目的を分断せず、常に一体のものとして捉える視点です。マーケティングと広報の垣根を越えた先にこそ、AI時代を生き抜くBtoB企業の新たな成長戦略があります。

まとめ

生成AI時代を迎え、顧客が求める情報の質が変化し、客観的な信頼性がより重視される今、マーケティングと広報の分業体制を見直す時期が来ているのかもしれません。共通KPIの設定やコンテンツの共創を通じて組織の垣根を越え、一貫したメッセージを発信していくことが、これからのBtoB企業における新たな成長の鍵となりそうです。

執筆者

マーケトランク編集部(マーケトランクへんしゅうぶ)

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