事業を成功に導く上で不可欠な要素となるのが「マーケティング」です。そして、効果的なマーケティング戦略を立案・実行するためには「マーケティングリサーチ」が極めて重要な役割を果たします。多くの経営者や事業責任者の方々が、マーケティングリサーチについてより詳しく理解したいと考えているのではないでしょうか。
マーケティングリサーチの意義は、新規事業や既存事業の成長戦略を策定する際に、その効果や潜在的リスクを事前に把握することにあります。つまり、マーケティングリサーチは事業の成功確率を高め、失敗のリスクを最小限に抑える役割を担っているのです。逆に言えば、マーケティングリサーチを怠り、根拠のない推測や個人的な感覚のみに基づいて新たな施策や事業を展開することは、非常に危険であると言えます。
本記事では、マーケティングリサーチについて以下のトピックを詳しく解説していきます。
● マーケティングリサーチとは?
● マーケティングの大きな役割
● マーケティングリサーチの2つの方法
● マーケティングリサーチの流れ
これらのトピックを通じて、マーケティングリサーチの本質と具体的な実施方法、そしてその重要性について理解を深めていただきます。マーケティングリサーチに関する知識を深めたい方、あるいはマーケティング戦略の立案・実行能力を向上させたい方にとって、本記事は大変参考になるはずです。ぜひ最後までお読みいただき、皆様の事業発展にお役立てください。
目次
マーケティングリサーチとは?
マーケティングリサーチとは、企業が効果的なマーケティング戦略を立案・実行するために行う、市場や顧客に関する体系的な情報収集と分析活動です。この過程では、消費者の行動、ニーズ、嗜好、競合他社の動向、市場トレンドなどの多岐にわたるデータを収集し、それらを詳細に分析します。
マーケティングリサーチの主な目的は、企業の意思決定をサポートし、リスクを軽減することにあります。正確な市場情報を基に戦略を立てることで、新製品開発、価格設定、販促活動、ブランディングなど、様々なマーケティング活動の成功確率を高めることができます。
具体的には、アンケート調査、インタビュー、フォーカスグループ、観察法、実験など、様々な手法を用いてデータを収集します。これらの手法は、研究の目的や対象に応じて適切に選択されます。
収集されたデータは、統計的手法や質的分析を用いて解釈され、そこから得られた洞察は、マーケティング戦略の立案や改善に活用されます。このプロセスは継続的に行われ、市場の変化に応じて戦略を柔軟に調整することが可能となります。
マーケティングリサーチは、企業が顧客中心のアプローチを取り、市場のニーズに適切に対応するための重要なツールとなっています。これにより、企業は効率的にリソースを配分し、競争力を維持・向上させることができるのです。
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マーケティングリサーチの目的
マーケティングリサーチの主な目的は、効果的なマーケティング戦略を立案し実行するために、市場や顧客に関する正確な情報を収集・分析することです。これにより、企業は顧客のニーズや市場動向を的確に把握し、より効果的な意思決定を行うことができます。
具体的には、以下のような目的があります。
- 市場理解の深化: 競合状況、市場規模、成長率などの市場構造を把握します。
- 顧客ニーズの特定: 潜在的な顧客の要望や不満を明らかにし、製品開発やサービス改善に活かします。
- マーケティング施策の効果測定: 広告や販促活動の効果を数値化し、ROIを最大化します。
- 新規事業機会の発見: 未開拓の市場セグメントや新たなビジネスチャンスを見出します。
- リスク軽減: 事前に市場の反応を予測し、失敗のリスクを最小限に抑えます。
これらの目的を達成することで、企業は競争力を高め、持続的な成長を実現することができます。マーケティングリサーチは、データに基づいた戦略立案と実行を可能にし、ビジネスの成功確率を大幅に向上させる重要な役割を果たします。
市場調査との違い
マーケティングリサーチと市場調査は、しばしば混同されがちな概念です。両者とも市場を調査する点では共通していますが、その目的と時間軸に大きな違いがあります。
市場調査は、主に現在と過去のデータを収集し、現時点での市場状況を把握することを目的としています。これは、現状分析や競合他社との比較などに活用されます。
一方、マーケティングリサーチは、市場調査で得られたデータを基に、将来の市場動向や顧客ニーズを予測し、効果的なマーケティング戦略を立案することを目指します。つまり、マーケティングリサーチは、より長期的かつ戦略的な視点を持っているといえます。
具体的には、市場調査が「今、何が売れているか」を明らかにするのに対し、マーケティングリサーチは「今後、何が売れるか」「どのような商品開発が必要か」といった未来志向の問いに答えようとします。
このように、市場調査とマーケティングリサーチは相互補完的な関係にあり、効果的なマーケティング活動を行うためには、両者を適切に組み合わせて活用することが重要です。
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マーケティングリサーチの大きな役割
マーケティングリサーチは企業にとって極めて重要な役割を果たします。主に3つの大きな役割があり、これらはマーケティング戦略を成功に導く上で欠かせません。マーケティングリサーチを適切に実施することで、企業は市場動向を正確に把握し、効果的な意思決定を行うことができます。また、顧客のニーズや要望を深く理解することで、製品やサービスの改善につながり、競争力の向上にも寄与します。さらに、マーケティングリサーチは新たな市場機会の発見や、潜在的なリスクの特定にも役立ちます。これらの役割を理解し、効果的に活用することで、企業は持続的な成長と発展を実現することができるのです。
顧客のニーズを把握する
マーケティングリサーチを行うことで顧客のニーズを正確に把握できます。
WEBを活用したアンケートや直接インタビューなど、様々な手法を用いて数千人、数万人単位の大規模なデータを収集します。このように広範囲かつ大量のサンプルを集めることで、得られたデータは顧客の本音をより正確に反映していると考えられます。こうして把握したニーズは、新商品開発やサービス改善、既存製品のリニューアルなどに活用でき、大きな効果をもたらします。
しかし、多くの経営者が陥りがちな罠があります。それは、自己の感覚や経験のみに基づいて「こうすべきだ」と判断する「プロダクトアウト」の考え方です。この考え方は非常に危険で、市場のニーズとかけ離れた商品やサービスを提供してしまい、最悪の場合は経営破綻につながることもあります。
そのため、「プロダクトアウト」ではなく、市場の声を丁寧に聴いた上で需要のある製品やサービスを提供する「マーケットイン」のアプローチを取ることが重要です。マーケティングリサーチはまさに「マーケットイン」に不可欠な市場理解を可能にするツールであり、事業成功の鍵となる重要な役割を果たします。
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マーケティング施策の成功確率を高める
マーケティングリサーチは、マーケティング施策の成功確率を圧倒的に高めます。
例えば、商品をアピールして多くの人に見てもらうときに、会社側が考えている商品の強みと顧客が考えている商品の強みがずれていては、どれだけアピールしても魅力的に感じません。
他にも、リサーチによって顧客がどのような人たちで、どういう印象を自分たちに持っているのかなどを知ることで、それらを活かしたマーケティング施策を実施することができ、成功確率が変わります。
このように、マーケティングリサーチにより顧客の実態を捉えることで、実施したマーケティング施策の成功確率を高めることができます。さらに、リサーチから得られた情報を基に、ターゲット顧客に合わせたコミュニケーション方法や販売チャネルの選択など、より効果的な戦略立案が可能になります。
顧客目線の商品開発ができる
マーケティングリサーチは顧客のニーズを知ることだけでなく、顧客が商品についてどう感じているか、どうしたら顧客がさらに満足するかなど、顧客目線の情報を得ることに繋がります。
顧客目線の情報を得ることで、顧客の視点に立った商品の開発が非常に行いやすくなります。会社に利益をもたらしてくれる顧客の欲しいものを理解し、商品・サービスのさらなる向上、新しい商品の開発を行うことができるので、さらに売上の向上に繋がります。
商品を購入するのは顧客なので、その顧客の目線を明確に知れるマーケティングリサーチは非常に強い武器となるでしょう。また、顧客目線の商品開発は、顧客満足度の向上にも直結し、長期的な顧客との関係構築にも寄与します。これにより、リピート購入や口コミによる新規顧客の獲得など、持続的な事業成長につながる可能性が高まります。
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マーケティングリサーチの2つの方法
マーケティングリサーチには「定量調査」と「定性調査」という2つの主要な方法があります。これらの調査方法は、市場や顧客に関する異なる種類の情報を収集するために用いられます。両方の調査を適切に組み合わせることで、より包括的で信頼性の高い市場分析が可能となります。
定量調査は数値データを扱い、統計的な分析が可能な情報を集めるのに適しています。一方、定性調査は数値化しにくい感情や意見、行動の背景などの質的な情報を収集するのに適しています。
これら2つの調査方法は互いに補完し合う関係にあり、一方だけでは得られない洞察を提供します。例えば、定量調査で「何が」起きているかを把握し、定性調査でその「理由」を探ることができます。
効果的なマーケティングリサーチを行うためには、調査の目的や対象に応じて、これらの方法を適切に選択し、組み合わせることが重要です。次のセクションでは、それぞれの調査方法についてより詳しく説明します。
定量調査
定量調査とは、人数や金額、増加率、割合などの数字として表現できるデータを収集する調査方法です。この方法は、客観的な数値データを提供するため、説得力のある分析結果を得ることができます。
定量調査の特徴として、広範囲にわたる数値分析が可能であり、市場全体の傾向を把握するのに適しています。これにより、企業は市場の状態を冷静かつ客観的に判断するための材料を得ることができます。
具体的な調査手法としては、以下のようなものが挙げられます。
- WEBアンケート:オンラインでの質問票調査
- 郵送調査:質問票を郵送して回答を得る方法
- 電話調査:電話を通じて質問し回答を得る方法
- 街頭調査:公共の場所で対面式に行う調査
これらの方法を用いて、大規模なサンプル数からデータを収集し、統計的に有意な結果を導き出すことができます。定量調査は、市場規模の推定、顧客満足度の測定、商品の認知度調査など、様々な目的に活用されています。
定性調査
定性調査とは、定量的に表すことが難しい情報を収集、分析を行う調査方法です。
この調査方法は、数値化が困難な人々の感情、意見、行動の背景にある動機などを深く掘り下げて理解することを目的としています。例えば、商品やサービスの満足度、会社の印象など人の感覚に起因するところが大きい要素は定性調査の対象になるでしょう。
これらの情報を調査する方法として、主に以下の2つが挙げられます。
- デプスインタビュー:1対1で詳細なインタビューを行い、個人の経験や意見を深く探ります。
- グループインタビュー:複数の参加者が同時に議論することで、多様な視点や意見を収集します。
定性調査の結果は、数値ではなく言葉や記述で表現されるため、市場や顧客の本質的な理解に役立ちます。これにより、製品開発やマーケティング戦略の改善に向けた洞察を得ることができます。
関連記事:マーケティングリサーチの「定量調査」と「定性調査」の違いを解説
マーケティングリサーチの流れ
マーケティングリサーチの具体的な流れについて解説していきます。効果的なリサーチを実施するためには、適切な手順を踏むことが重要です。ここでは、マーケティングリサーチの基本的な流れを紹介します。これらのステップを理解し、実践することで、より精度の高い市場調査を行うことができます。また、自社でマーケティングリサーチを行う際には、この流れを参考にしながら、自社の状況や目的に合わせて適宜調整することをおすすめします。リサーチの各段階で得られる情報を最大限に活用し、効果的なマーケティング戦略の立案につなげていくことが重要です。
リサーチの目的を明確にする
マーケティングリサーチの最大のポイントは、リサーチの目的を明確にすることです。調査していると、目的に乖離した本質的ではないデータを集めてしまっているケースも少なくありません。
また、目的によって適した調査方法が変わってくるため、ゴールとなる目的を明確にしてからマーケティングリサーチを行う必要があります。目的を明確にするとどのような情報が必要か整理することができるので、調査の効率を高めるためにも必ず行いましょう。
目的を設定する際は、具体的で測定可能な形にすることが重要です。例えば、「顧客満足度を向上させる」という漠然とした目的ではなく、「現在の顧客満足度を10%向上させる」というように、数値目標を含めた明確な目的を設定しましょう。これにより、リサーチ後の成果を正確に評価することができます。
リサーチの計画を決める
リサーチの計画を綿密に立てることは、効果的なマーケティングリサーチを実施する上で不可欠です。具体的には、以下の要素を明確に定義する必要があります。「調査対象の条件」、「調査項目」、「調査手法」、「調査の対象人数」、「全体のスケジュール」です。これらの要素を事前に決定することで、リサーチの方向性が明確になり、効率的な調査が可能となります。
特に注意すべき点として、リサーチには本質的に終わりがないという特性があります。情報を収集すればするほど、より正確で詳細な市場理解が得られますが、同時にコストと時間も増大します。そのため、計画段階で適切な調査範囲と期間を設定し、その枠内で最大限の成果を得られるよう努めることが重要です。
また、計画を立てる際には、リサーチの目的に立ち返り、各調査項目がその目的達成にどのように寄与するかを常に意識しましょう。無駄な調査を避け、真に必要な情報のみを効率的に収集できるよう、計画を最適化することが求められます。
リサーチをスケジュール通りに行う
計画を立てた後は、スケジュール通りにリサーチを進めましょう。
リサーチは、情報が集まらなかったり、対象を見つけることに時間がかかったり、トラブルが起きる可能性も考えられます。思ったスケジュール通りにリサーチが進まない場合は、改めて計画を組み直すことも検討しましょう。
また、リサーチの進捗状況を定期的に確認し、必要に応じて調整を行うことが重要です。予定よりも早く進んでいる場合は、より詳細な調査を行う機会として活用できるかもしれません。逆に遅れが生じている場合は、優先順位を見直し、最も重要な情報を確実に得られるよう努めましょう。
リサーチの質を保つためにも、無理なスケジュールを組まず、十分な時間を確保することが大切です。ただし、市場環境の変化が激しい場合は、スピード感を持って調査を進めることも求められます。状況に応じて柔軟に対応することを心がけましょう。
リサーチ結果の確認・分析
リサーチの結果はしっかり確認と分析を行いましょう。
確認と分析を怠るとせっかく時間やお金、労力をかけて調査したことが無駄になってしまいます。分析は最もマーケティングリサーチで重要な工程で、得た情報から何を見出すかで今後の方向性や取るべき行動が変わってきます。
また、分析を行うことで、自社が考えていなかった顧客の視点や、自社の商品・サービスの向上に活かせる意外な情報を得られることもあります。冷静に会社のイメージや商品の印象などの情報を得ることのできるチャンスなので、徹底的に分析することをおすすめします。
分析の際は、単にデータを眺めるだけでなく、統計的手法を用いて客観的な評価を行うことが重要です。例えば、相関分析や回帰分析などの手法を活用することで、より深い洞察を得ることができます。また、データの可視化ツールを使用して、グラフや図表を作成することで、結果をより分かりやすく表現することができます。
さらに、リサーチ結果の分析は一度で終わりではありません。定期的に分析を行い、市場の変化や顧客ニーズの推移を継続的に把握することが大切です。これにより、長期的な戦略立案や迅速な意思決定に役立つ情報を常に更新できます。
リサーチの結果を踏まえて行動を決める
リサーチの結果が分かると、その結果を踏まえて具体的に何を行動するか決めましょう。
また、何を行動するかだけでなく、いつ行動するのか、どういう方法で目的を成し遂げるのかなど、できるだけ明確にして行動指針を決めることが重要です。曖昧に進めて、明確な結果や仮説がないまま行動に移して、何も成果を上げられないといった事態が発生することもあります。
そのような事態を避けるためにも、この段階で再度リサーチや分析からやり直すことになってもしっかり次の行動を判断しましょう。具体的な行動計画を立てる際は、SMARTの原則を活用すると効果的です。Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限がある)という5つの要素を考慮しながら、行動計画を策定することで、より実行性の高い計画を立てることができます。
まとめ
マーケティングリサーチは、企業の成長と成功に不可欠な要素です。多くの企業が即座に行動を起こし結果を出したいという焦りから、その重要性を軽視してしまう傾向にありますが、これは大きな誤りです。適切に実施されたマーケティングリサーチは、潜在的な損失を防ぐだけでなく、収益を最大化する機会を提供します。
本記事で解説した具体的な手順、プロセス、そしてマーケティングリサーチの目的を理解することで、より効果的な戦略立案が可能になります。自社の状況に合わせてマーケティングリサーチを実施することで、市場動向や顧客ニーズを的確に把握し、競争力を高めることができるでしょう。
さらに、マーケティングリサーチは単なるデータ収集にとどまりません。得られた情報を適切に分析し、実践可能な洞察に変換することが重要です。これにより、より効果的な製品開発、ターゲット市場の特定、そして顧客満足度の向上につながります。
最後に、マーケティングリサーチは継続的なプロセスであることを忘れないでください。市場環境は常に変化しているため、定期的にリサーチを行い、最新の傾向や顧客ニーズに対応することが成功への鍵となります。この記事を参考に、自社のマーケティング戦略を見直し、より効果的なアプローチを構築していくことをお勧めします。