マーケティング施策を考える中で、「自社の戦略が見えない」「競合の動きがつかめない」と感じたことはありませんか。
その答えは、IR(投資家向け情報)にあります。
「うちは非上場企業だから、IRは関係ない」と思っていませんか?実は、競合他社やターゲットとなる顧客企業が上場していれば、IR資料は「市場の羅針盤」や「顧客攻略の武器」として活用できる最強のツールになります。
IRを読むと、自社の強み・弱み、競合の戦略、市場動向、経営の重点テーマ、さらには今期の成長に貢献する施策までがつながって見えてきます。
本記事では、IRがなぜマーケターにとって重要なのか、実務でどう活かせるのかを解説します。
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目次
IRとは
IR(Investor Relations:インベスター・リレーションズ)とは、端的にいうと企業が株主や投資家に対し、経営状況、財務状況、将来の戦略といった投資判断に必要な情報を、公平かつ継続的に提供していく活動全般のことです。
この活動を通じて作成・公開される資料がIR資料であり、具体的には次のようなものが含まれます。
| 資料名 | 内容の概要 | 主な役割 |
| 決算短信 | 四半期・通期の業績を速報的にまとめた資料 | 業績の早期開示・市場への迅速な情報提供 |
| 決算説明資料(プレゼン資料) | 業績の詳細や今後の戦略を図解で解説 | 投資家への理解促進・戦略の明確化 |
| 有価証券報告書 | 法に基づき提出される詳細な企業情報 | 企業の全体像を正確に開示する法定文書 |
| 株主通信 | 株主に向けた企業活動・経営状況の報告書 | 株主との関係構築・理解促進 |
IRの目的は、投資家に企業の価値を正しく理解してもらい、適切な評価(株価)を得ること、そして信頼関係を構築することにあります。
IRをマーケティング施策に活用する方法
ここでは、IRをマーケティング施策に活用する方法を紹介します。
自社の強み・弱みを客観的に理解する
IR資料には、企業の成長ドライバーとなっている事業、利益を圧迫している課題のある事業が、具体的な数字と図解で客観的に記されています。
たとえば、「SaaS事業の解約率改善が今期の最重要課題」と明記されていれば、マーケティング施策は新規リード獲得よりも既存顧客のエンゲージメント向上施策に重きを置くべき、という明確な判断軸が生まれるでしょう。
このように経営の重点テーマを把握することで、日々のマーケティング施策が「なぜこの施策を推進しているのか」という問いに対する解像度が格段に高まります。
また、IR資料は、外部環境、競合他社との比較、自社のリソースといった分析を支える貴重なインプットとなります。
3C分析におけるCompany(自社)とCompetitor(競合)の分析や、SWOT分析におけるStrength(強み)とWeakness(弱み)を客観的な数字にもとづいて行う際に、IR資料は有益な情報源となるでしょう。
▼3C分析やSWOT分析については、以下の関連記事で詳しく解説しています。
3C分析とは?やり方や手順、テンプレートも紹介
SWOT分析とは?やり方やテンプレ、事例、注意点をわかりやすく解説
経営層と同じ言語で話す
IRを読み込むことで、経営層が使用する共通言語を習得し、提案や報告が、上層部にとって「自分たちの戦略に組み込まれている」と認識されやすくなり、社内での説得力が向上します。
具体的には、IRを理解しているマーケターは次のような視点で施策を説明できるようになります。
| 観点 | 内容 | 説明できること |
| 市場成長率 × 自社の強み | 市場成長率の高い領域に対し、自社の優位性(特許技術・顧客基盤など)をどう活かすかを示す | 「この市場で当社は○%のシェアを狙える」というマクロ視点の戦略性を説明できる |
| 事業ポートフォリオ上の位置づけ | 施策が成長事業の加速なのか、基盤事業の維持・効率化なのかを明確化 | 投資の狙い(成長 or 安定)が明確になり、経営層が意思決定しやすくなる |
| 投資対効果(ROIC/ROAS/LTV)との関連 | マーケ施策を主要経営指標(LTV、ROAS、ROIC)に紐づけて説明 | マーケ投資を「費用」ではなく「未来の収益を生む戦略的投資」として認識させる |
このように、経営層が納得する言語で説明できるようになることは、マーケターが経営参画意識を高め、より重要な意思決定に関与するための第一歩となります。
予算確保をする
マーケティング担当者が直面する最大の課題の一つが、予算の確保です。IR資料は、この予算確保の交渉において、強力な武器となります。
IR資料を読み込めば、会社の今年度の最優先事項、事業の優先順位、そして成長に不可欠な重点テーマを正確に把握できます。
予算申請の説得力を高めるには、次のようにIRの情報を活用するとよいでしょう。
● IRの重点テーマに紐づける:IR資料に記載された「新規顧客獲得数○%増」等の目標に対し、「本施策は○%の達成に貢献」と数値で結びつける
● 競合との比較優位性を示す: 競合他社のIR情報も参照し、「競合A社がこの分野に注力し始めている今、当社がこの施策に投資しないことは機会損失につながる」と、経営リスクの観点から予算の必要性を主張する
IRを理解すれば、会社の方針と市場環境を踏まえた合理性に基づいて予算申請できるため、予算確保の難易度が大きく下がります。
競合分析
IRの活用は、競合他社のマーケティング戦略を把握するための信頼できる手段となります。
上場している競合他社のIR資料を読めば、その企業の経営層が市場をどう見ているか、そしてどこにリソースを投下しようとしているかが明確に見えてきます。
IR資料から読み取れる競合の情報には、次のようなものがあります。
| 観点 | 内容 | 活用できる示唆 |
| 競合の戦略と重点投資領域 | どの事業をコア事業/成長ドライバーとして扱い、どれだけ予算を投下しているか | 市場の勢力図、競合の勝ち筋、投資の優先度を理解し、自社の戦略に反映できる |
| 狙っているターゲット層 | 競合がエンタープライズへシフト、地域集中など、狙いを明言している場合 | ターゲットの変化=市場トレンド。自社が狙うべき領域やメッセージ設計の判断材料になる |
| 競合視点での市場トレンド | 競合が重要視する市場の課題、注力している新技術、投資テーマ | 自社が注力すべきテーマ、差別化ポイント、マーケティングの優先領域を特定できる |
IR情報にもとづく競合分析は、Webサイトや広告の表面的な比較ではなく、経営レベルの解像度の高いマーケティング戦略立案に役立ちます。競合の次の一手を予測し、先手を打つためのインサイトを得られるのです。
自社が非上場企業の場合の活用法
ここまで自社がIRを出している前提でもお話ししてきましたが、自社が非上場(スタートアップや中小企業)の場合でも、IR情報の活用は非常に有効です。
むしろ、情報の少ない非上場企業こそ、公開されている他社の情報をフル活用すべきです。
業界トレンドの「答え合わせ」に使う
自社と同業界の上場企業、あるいは業界トップシェア企業のIR資料は、いわば「業界の縮図」です。
「業界最大手のA社がこのDX分野に巨額投資している」という事実は、市場トレンドが動いている強力な証拠になります。自社の戦略が市場の流れとズレていないかを確認する「答え合わせ」の資料として、競合他社の決算説明資料を活用しましょう。
顧客企業の「攻略本」として使う(ABM)
BtoBマーケティングにおいて、ターゲット企業が上場企業であれば、IR資料は「攻略本」そのものです。
中期経営計画を読めば、その企業が今後3年で「何を課題とし、何に投資したいか」が明確に分かります。「コスト削減」よりも「新規事業創出」に注力している企業であれば、提案のアプローチも当然変わるはずです。顧客のIRを読み解くことは、受注確度を高める最短ルートと言えます。
社内資料を「IR」と見立てる
非上場企業であっても、経営陣は銀行や株主(ベンチャーキャピタルなど)に向けた資料を作成しています。
「経営会議の資料」や「全社総会の発表資料」を社内版のIRと捉え、読み込んでみてください。そこに書かれている数値目標や課題意識こそが、あなたがマーケティング施策で解決すべき「経営のオーダー」です。
まとめ:マーケターこそIRを活用しよう
本記事では、IR(投資家向け情報)が、投資家だけでなく、マーケティング戦略を立案・実行するマーケターにとっても、重要な一次情報であることを解説しました。
自社が上場企業であれば、IR資料を読むことで経営層と同じ視座を持つことができ、マーケティング戦略や施策の説得力向上につながります。また、非上場企業であっても、市場の動きや顧客企業のニーズを掴むための「最強の武器」として活用できます。
しかし、IRで得た貴重なインサイトを、「誰に、どのようなコンテンツで、どこに届けたら、最も成果につながるか」という具体的なマーケティング施策に落とし込む作業は、専門的なノウハウを要します。
人事・経営層にアプローチすべきという結論を、具体的なアクションに結びつけたいとお考えであれば、ターゲットに特化したチャネルでのアプローチが不可欠です。
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