新型コロナウイルス感染拡大の影響により、人々のライフスタイルは大きく変化しました。外出自粛やリモートワークの普及に伴い、オンラインでの活動が急速に増加しています。こうした背景から、生活者がメディアに触れる機会も、従来のテレビからYouTube広告をはじめとするデジタルプラットフォームへとシフトしつつあります。このような環境下で、企業は効果的なYouTube広告活用によるデジタルマーケティング施策をどのように展開しているのでしょうか。この記事では、YouTube広告を段階的に活用し、マーケティングのデジタル化を推進している企業の事例を通じて、その具体的なアプローチと成果をご紹介します。特に、YouTube広告の特性を理解し、戦略的に活用することで、従来のテレビCMだけではリーチできなかった層へのアプローチや、より高い費用対効果を実現することが可能になります。YouTube広告は、ターゲティング精度やクリエイティブの柔軟性において、デジタルマーケティングにおける強力なツールとなり得るのです。YouTube広告によるデジタルマーケティングは、変化の速い現代において、企業が顧客との接点を維持・拡大するための重要な戦略と言えるでしょう。
事例①タウンワーク〜テレビとデジタルの広告予算配分を見直し
アルバイト求人サイト「タウンワーク」を運営する株式会社リクルートジョブズは、これまでテレビCMを中心とした広告キャンペーンを展開してきました。しかし、昨今のデジタル化の波を受け、広告予算の配分を見直す必要に迫られました。そこで、YouTube広告への投資を増やす決断に至ったのです。
この大胆な予算配分の変更は、Googleのリーチプランナー(※)を活用したシミュレーションによって後押しされました。リーチプランナーは、ターゲットや予算、地域などの情報を基に、メディアプランの有効性を検証できる強力なツールです。リクルートジョブズは、このツールを用いて納得いくまでシミュレーションを重ね、YouTube広告への投資の妥当性を確認しました。
さらに、広告のデジタル化に対応するため、クリエイティブ自体の見直しも行われました。具体的には、YouTubeクリエイターとコラボレーションした、ターゲット層に響く広告動画を制作。東名阪エリアで若年層を対象にテレビCMとYouTube広告を同時に出稿した結果、ターゲットリーチはYouTube経由で+6.9%となり、全体で29.0%ものリーチ拡大に成功しました。これは、具体的には170万人ものリーチ増加に相当します。

出典:Google社 『段階的な YouTube 広告活用でマーケティングをデジタル化──タウンワーク、アットホーム、 WOWOW』
特筆すべきは、YouTube広告の出稿費用がテレビCMのおよそ3分の1程度であるという点です。リクルートジョブズは、今後、テレビCMとYouTube広告を同等に扱い、プランニングからクリエイティブ制作まで、YouTubeに最適な手法を研究・追求していく方針です。この事例は、YouTube広告が従来のテレビCMのリーチを補完し、さらに拡大する可能性を示唆しています。
(※)Google広告キャンペーン用のプランニングツール。ターゲットや予算、地域などのさまざまな情報に基づき、メディアプランの有効性を示すことができる。
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事例②アットホーム〜デジタルを主体としたクリエイティブを制作
不動産情報サイト「アットホーム」も、当初はテレビCMを中心としたマーケティング施策を展開していました。しかし、広告効果の最大化と、より直接的なビジネスへの貢献が課題として浮上しました。この課題を解決するため、GoogleのABCDフレームワークを活用し、広告クリエイティブの評価と改善に着手しました。
アットホームでは、テレビCMで制作したクリエイティブをそのままYouTube広告などのデジタル媒体に流用していました。ABCDフレームワークによるクリエイティブチェックでは、14点満点中12点と一定の評価を得ましたが、デジタル媒体に最適化することで、さらに高い効果を発揮できる余地があることが明らかになりました。特に、YouTube広告においては、視聴者のエンゲージメントを高めるための工夫が求められていました。
そこでアットホームは、YouTube広告の効果を最大化するために、広告クリエイティブを再設計しました。デジタル媒体での視聴に最適化された、明確なメッセージ伝達、テンポの良い展開、そして視聴者の行動を促すようなCTA(Call to Action)を組み込んだクリエイティブを制作しました。その結果、広告に接触したユーザーにおける「アットホーム」の指名検索数は、以前の広告接触者と比較して3.2倍という顕著な増加を示しました。この事例は、既存のクリエイティブをそのまま流用するのではなく、YouTube広告のようなデジタル媒体の特性を理解し、それに最適化されたクリエイティブを制作することの重要性を示しています。デジタルマーケティング戦略において、クリエイティブの質は広告効果に直結するため、このような改善はマーケティング効果の最大化に不可欠です。
事例③WOWOW〜段階的にYouTubeへ予算投資
ドラマやスポーツ、ドキュメンタリーなどさまざまなエンターテインメントを発信する「WOWOW」では、2018年度時点におけるYouTube広告の予算はわずか0.7%でした。それまではデジタル広告の活用経験がほとんどありませんでしたが、YouTube広告の可能性を模索する中で、Googleのリーチプランナーを活用してテレビCMとYouTube広告のリーチをシミュレーションした結果、2019年はYouTube広告に8.1%の予算を分配しています。このYouTube広告への投資は、デジタルマーケティング戦略の一環として、段階的に進められました。
WOWOWでは、まずテレビCMで制作したクリエイティブをYouTube広告に流用することから始めました。これは、YouTube広告の効果を測りながら、メディア特性への理解を深めるための第一歩でした。次に、さらに効果を最大化するために、YouTubeクリエイターとの連携や、動画広告のフォーマットに最適化されたクリエイティブの制作へと進み、段階的にYouTubeへの予算投資を増やしていきました。

出典:Google社 『段階的な YouTube 広告活用でマーケティングをデジタル化──タウンワーク、アットホーム、 WOWOW』
その結果、デジタル専用クリエイティブを制作したオリジナルドラマ『鉄の骨』の広告配信における検索は+1207%と顕著な増加を示し、特に20歳〜39歳の女性層のWOWOW平均加入者数は前年比の12.2倍と、YouTube広告が新規顧客獲得に大きく貢献しました。WOWOWでは全体の予算や他のメディアプランは変更せず、YouTube広告の予算のみを増やしたため、この目覚ましい検索数や加入者数の増加にYouTube広告が大きく影響したと考えられます。
まとめ
生活者のメディア接触がテレビからデジタルへとシフトする中で、YouTube広告を活用したデジタルマーケティングへの注力度を高める企業が増加しています。
タウンワークは、テレビとYouTube広告の予算配分を見直し、YouTube広告への積極的な投資により、ターゲットリーチを大幅に拡大することに成功しました。Googleのリーチプランナーを活用し、効果的な予算配分とクリエイティブ戦略を展開しました。
アットホームは、テレビCMのクリエイティブをそのまま流用するのではなく、GoogleのABCDフレームワークに基づき、YouTube広告に最適化されたクリエイティブを再設計しました。その結果、マーケティング効果の最大化に成功し、ブランド検索数の顕著な増加を実現しました。
WOWOWは、当初わずかだったYouTube広告への予算配分を段階的に増やし、テレビCMクリエイティブの流用から、デジタル専用クリエイティブの制作へと移行しました。この戦略により、オリジナルドラマの検索数増加や新規加入者数の大幅な増加といった、目覚ましい成果を上げています。YouTube広告は、効果的なターゲティングとクリエイティブによって、ビジネス目標達成に大きく貢献する可能性を秘めています。YouTube広告の活用は、現代のデジタルマーケティング戦略において不可欠な要素となっています。

