「ファンマーケティング」というマーケティング手法をご存じでしょうか?企業や商品・サービスに愛着を持っているファンを増やし、安定的な経営に繋げるファンマーケティングが注目されています。
ファンをしっかりと増やすことができれば、情報や環境が早いスピードで移り行く現代でも、安定的に事業を拡大させることが可能となります。ファンマーケティングは、顧客との長期的な関係構築を重視し、ブランドロイヤリティを高める効果的な戦略です。
そこで今回の記事では、ファンマーケティングの基礎知識や活用するメリット、ファンマーケティングを成功させるためのポイントについて解説していきます。また、ファンマーケティングの実践例や成功事例についても紹介します。ぜひあなたもファンマーケティングを活用して、自身の事業拡大に繋げていきましょう。顧客との絆を深め、持続可能な成長を実現するファンマーケティングの可能性を探ってみましょう。
目次
ファンマーケティングとは
ファンマーケティングとは、企業や商品、サービスに対する熱狂的な「ファン」を増やし、中長期的な売り上げを目指すマーケティング手法です。このアプローチは、顧客との深い絆を築き、ブランドロイヤルティを高めることを目的としています。
ファンマーケティングにおける「ファン」とは、企業の世界観、創業者の価値観、想いに共感し、熱狂的に企業を愛し、信頼している人を指します。最も分かりやすい例として、Apple信者が挙げられます。彼らは新製品の発表に注目し、発売日には店頭に並ぶほどの熱心さを見せます。
このようなファンの存在が重要である理由は、「パレートの法則」(別名「2:8の法則」)に関係しています。この法則によると、会社の売り上げの8割は2割の顧客が生み出すとされています。そのため、企業はリピートする2割のファンを大切にする施策を展開することが多いのです。
ファンマーケティングの目的は、この2割のファンをさらに熱狂させること、そしてファンの数を増やすことにあります。これにより、情報や環境が急速に変化する現代においても、安定的に事業を拡大させることが可能となります。
ファンマーケティングの効果的な実施には、顧客との継続的なコミュニケーション、特別な体験の提供、ブランドストーリーの共有などが重要です。また、ソーシャルメディアを活用したファンコミュニティの構築も、ファンマーケティングの重要な要素となっています。
このようなファンマーケティングの取り組みにより、企業は単なる商品やサービスの提供者ではなく、顧客の生活や価値観に深く関わる存在となることができます。そして、このような深い関係性を築くことで、長期的かつ安定的な成長を実現することが可能となるのです。
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ファンマーケティングの重要性
インターネット普及後、ビジネス戦略として徐々に浸透してきたファンマーケティング。近年ファンマーケティングが注目されており、その重要性も増しています。
なぜ今「ファンマーケティング」なのか、その理由を解説します。ファンマーケティングは、単なる一過性の流行ではなく、現代のビジネス環境において不可欠な戦略となっています。
●インターネットの普及
●新規顧客獲得が困難な現状
●LTV獲得への移行
●ブランドロイヤリティの構築
●競合他社との差別化
特に、ブランドロイヤリティの構築と競合他社との差別化は、ファンマーケティングの重要な側面です。ファンマーケティングを通じて、顧客との強固な関係性を築くことで、ブランドへの忠誠心を高め、競争の激しい市場で優位性を確保することができます。
さらに、ファンマーケティングは口コミ効果を最大化し、顧客自身がブランドの擁護者となることで、効果的かつ信頼性の高いマーケティングチャネルを創出します。これにより、従来の広告手法よりも効率的に新規顧客を獲得し、既存顧客の維持にも貢献します。
ファンマーケティングの重要性は、単に売上を伸ばすだけでなく、持続可能なビジネスモデルを構築する上で欠かせない要素となっています。顧客との深い絆を築き、ブランドの価値を高めることで、長期的な成功を実現する強力なツールとなるのです。
インターネットの普及
インターネットの普及によって、顧客(消費者)は自分に最適な商品やサービスを自分で探すことができるようになりました。インターネット上に公開されているあらゆる情報を閲覧し、競合他社との比較検討ができるようになりました。
つまり、自分にとって「興味のない=ファンではない」企業の商品やサービスは、手に取ってもらうことすら難しくなってきたのです。こういった時代背景から、ファンを獲得するファンマーケティングが重要視されるようになってきたのです。
さらに、インターネットの普及により、ファンマーケティングの手法も進化しました。企業はSNSやウェブサイトを通じて、ファンとのコミュニケーションを容易に行えるようになりました。ファンは自社の情報をリアルタイムで入手し、商品やサービスに関する意見を直接企業に伝えることができるようになったのです。このような双方向のコミュニケーションが、ファンマーケティングの効果を高める一因となっています。
新規顧客獲得が困難な現状
上述のような時代背景に伴い、新規顧客の獲得は一段と難しいものになってきました。ファンマーケティングの重要性が増す中、従来の手法だけでは顧客を惹きつけることが困難になっています。
マーケティングにおいて「新規顧客1人の獲得には既存顧客の5倍のコストが必要」と言われる1:5の法則は以前より認識されていましたが、現状ではそれよりも厳しい市場環境となってきています。顧客の選択肢が増え、情報過多の時代において、新規顧客の心を掴むことはますます難しくなっているのです。
このような市場背景から、ファンマーケティングにより一人でも多くのリピーターや既存顧客を増やす必要性に迫られてきているのです。新規顧客獲得のコストが高騰する中、既存顧客をファン化し、長期的な関係を築くことが、持続可能なビジネス成長の鍵となっています。
LTV獲得への移行
さらに、上述のような時代背景や市場規模の縮小に伴い、企業は徐々に新規顧客の開拓からLTV(Life Time Value=顧客生涯価値)の高いロイヤルカスタマーの獲得へと重点を移し始めています。
つまり、「どれだけ長く自社の商品やサービスを購入してもらえるか」というマーケティング戦略に移行しているのです。ここで重要なマーケティング戦略が「ファンマーケティング」です。ファンマーケティングを通じて、顧客との長期的な関係性を構築し、LTVを最大化することが可能となります。
高度経済成長期以降のように、老若男女問わずマス広告を打って新商品を出せば売れるという時代はすでに終焉を迎えています。自分に最適な商品やサービスを顧客自身が探せるようになった昨今において、自社の商品やサービスを顧客自ら選定し、長く購入してくれるロイヤルカスタマーの獲得に重点を置く必要があるのです。ファンマーケティングは、このようなロイヤルカスタマーを育成し、維持するための効果的な手法として注目されています。
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ファンマーケティングの手法
ファンマーケティングの主な手法として6つご紹介します。これらの手法を効果的に組み合わせることで、より強力なファンマーケティング戦略を構築することができます。
●ファンミーティング
●ファンコミュニティ
●ファンベースマーケティング
●SNSでの交流
●サブスクリプション型サービス
●モニター体験
ファンマーケティングは、単に製品やサービスを売るだけでなく、顧客との長期的な関係構築を目指す戦略です。これらの手法を通じて、企業は顧客との絆を深め、ロイヤルティを高めることができます。特に、ファンベースマーケティングやSNSでの交流は、デジタル時代におけるファンマーケティングの重要な要素となっています。
また、これらの手法を実施する際は、顧客のプライバシーに配慮し、透明性を保ちながら進めることが重要です。ファンマーケティングを成功させるためには、顧客の声に耳を傾け、彼らのニーズや期待に応えていく姿勢が不可欠です。
ファンミーティング
ファンミーティングは芸能人やアイドルなどの著名人がファンサービスの一環として開く交流会ですが、これを企業が特定の顧客であるロイヤルカスタマーなどに向けて行います。
自社の商品やサービスを愛用してくれている顧客は、その商品やサービスを開発した開発者や、携わっている従業員たちの顔ぶれなどに少なからず興味があるものです。こういったファンたちをファンミーティングに招いて特別な機会を設けることにより、より一層自社への愛着を深めてもらいます。
ファンマーケティングの観点から、ファンミーティングは非常に効果的な手法です。顧客と直接対話することで、製品やサービスに対する生の声を聞くことができ、さらにはファンの期待や要望を直接把握することができます。また、ファンミーティングを通じて、企業の理念や価値観を直接伝えることで、ファンとの絆をより深めることができます。これにより、ファンの忠誠心を高め、長期的な顧客関係を構築することが可能となります。
ファンコミュニティ
その商品やサービス、あるいは自社に関するファンコミュニティの場を提供するのも一つの手です。ファンコミュニティとはファン同士が交流する場のことで、その商品やサービス、あるいは自社などに対して熱心な支持者が集まります。
基本的に当の本人は介在せず、ファン同士でのやり取りや意見交換などが行われる場となります。ファンミーティングが主に「企業とファン」の交流する場である一方、ファンコミュニティは「ファンとファン」が交流する場となります。
ファンコミュニティを通じて、顧客同士のつながりが深まり、ブランドへの愛着がさらに強化されます。また、ファンコミュニティ内での活発な議論や情報交換は、新たな商品アイデアや改善点の発見にもつながり、企業にとって貴重な洞察を得る機会となります。
さらに、ファンコミュニティは口コミマーケティングの強力な基盤となり、ファンによる自発的な商品PRや新規顧客の獲得にも寄与します。このように、ファンコミュニティの構築と維持は、長期的なファンマーケティング戦略において重要な役割を果たすのです。
ファンベースマーケティング
ファンベースマーケティングは、顧客やフォロワーを単なる購買者や利用者としてではなく熱烈な支持者やファンとして捉えるマーケティング手法です。顧客ニーズに基づいて製品・サービスの提供だけでなく、顧客との関係を重視します。一度の購買や契約利用にとどまらず顧客との持続的な関係を築きリピーターとして製品の価値を高め、単なる顧客との関係ではなく顧客自らがブランドや企業の支持者として、積極的に推奨・広告活動を行うような顧客との関係を構築します。
ファンマーケティングの一環として、ファンベースマーケティングは長期的な視点で顧客との絆を深めることを目指します。例えば、顧客参加型のイベントやキャンペーンを実施したり、ファン限定の特典を提供したりすることで、ファンの帰属意識を高めます。また、ファンの声に耳を傾け、製品開発やサービス改善に活かすことで、ファンとの共創関係を築くことができます。このようなアプローチにより、ファンマーケティングの効果を最大化し、持続可能な成長を実現することが可能となります。
SNSでの交流
TwitterやInstagram、FacebookなどのSNSでコミュニケーションを図ることも有効です。SNSでは対面での緊張感もないため、ファンも気軽に接してきてくれます。
こういった接してきてくれるファンに対して丁寧な応対をすることにより、親近感も湧きさらに興味を抱いてくれるようになります。また、やり取りの中から商品やサービスについての質問や疑問、要望などを投げかけてくることもあります。
SNSはコストもそれほどかからないため、コストパフォーマンスに優れた手法と言えます。特に、InstagramやTikTokなどの視覚的なSNSプラットフォームでは、商品やサービスの魅力を効果的に伝えることができます。ファンマーケティングの観点から、これらのプラットフォームを活用して、ブランドの世界観やストーリーを共有することで、より深い絆を築くことができるでしょう。
さらに、SNSを通じてファンとの双方向のコミュニケーションを行うことで、リアルタイムでフィードバックを得ることができます。このようなファンの声を積極的に取り入れることで、商品やサービスの改善にもつながり、ファンとの関係性をより強固なものにすることができます。
サブスクリプション型サービス
サブスクリプション型サービスにファンを招いて、囲い込んでしまうのもファンマーケティングの一つの手法です。
会員になったファンのみが利用できる特別なサービスや限定商品の提供などを展開してあげると、ファン側としてはお得感やメリットを感じられます。さらに、会員限定で優遇措置などを講じてあげることにより、企業ブランディング効果も生まれ、より思い入れを深めてもらうことができます。
ファンマーケティングの観点から、サブスクリプション型サービスは顧客との長期的な関係構築に効果的です。定期的な課金モデルを通じて、継続的な収益を確保しつつ、顧客ロイヤルティを高めることができます。また、サブスクリプション会員向けの特別なコンテンツや体験を提供することで、ファンの満足度を高め、口コミによる新規顧客獲得にもつながります。
モニター体験
モニター体験に参加してもらうのもファンマーケティングとしてはおすすめです。
ターゲットに向け商品を送付し実際に使用してもらったり、店舗に招待してサービスを受けてもらったりします。実際に体験してもらうことにより、認知度や理解度を深めてもらいファン化を狙っていきます。ファンマーケティングの観点から、モニター体験は非常に効果的な手法です。
そうすることで口コミなどでも広めてもらいやすくなり、SNSでの投稿や拡散にもつながります。さらに、モニター体験を通じて得られたフィードバックは、商品やサービスの改善に活かすことができ、ファンマーケティングの質を向上させる貴重な情報源となります。
また、モニター体験は既存のファンだけでなく、潜在的なファンを発掘する機会にもなります。新規顧客を獲得し、ファンベースを拡大するためのきっかけとしても活用できるでしょう。
ファンマーケティングのメリット
ファンマーケティングを実際に活用するメリットを4つ紹介します。しっかりと理解して自身の経営に活かしていきましょう。
● 安定した売り上げ基盤
● 良質な口コミから新規顧客の獲得
● 広告費の削減効果
● 良質なフィードバック
ファンマーケティングは、企業や商品・サービスに対する熱狂的なファンを増やすことで、中長期的な売り上げを目指すマーケティング手法です。この戦略を効果的に実施することで、企業は安定した顧客基盤を構築し、持続可能な成長を実現できます。
ファンマーケティングの最大のメリットは、ロイヤルカスタマーの獲得です。これらのファンは、企業の商品やサービスを継続的に購入し、ブランドを積極的に支持します。さらに、ファンは自発的に企業の宣伝役となり、口コミやSNSを通じて新規顧客の獲得にも貢献します。
また、ファンマーケティングは広告費の削減にも繋がります。熱心なファンが自然と企業の商品やサービスを宣伝してくれるため、従来の広告手法に頼る必要性が減少します。これにより、マーケティング予算を他の重要な分野に振り分けることが可能となります。
さらに、ファンからは製品やサービスに関する貴重なフィードバックを得ることができます。彼らの意見や提案は、商品開発や顧客サービスの向上に直接活かすことができ、企業の競争力強化に繋がります。
このように、ファンマーケティングは単なる販売促進策ではなく、顧客との深い関係性を構築し、企業の持続的な成長を支える重要な戦略といえるでしょう。
安定した売上基盤
ファンマーケティングのメリットの一つは、安定した売上の基盤を作れることでしょう。なぜなら、会社の売り上げの8割は熱狂的な2割のファンの存在によって成り立っているからです。
そして、ファンの特性として簡単に他の商品に目移りしないので、中長期的に安定的な売上を計上することができます。また、ファンマーケティングの魅力として、成熟市場であっても安定した売上を計上できる点もあります。
一般的に成熟市場では、商品・サービスの品質や機能の面ではどの競合他社でも大きな違いがなくなり、最終的に価格によって顧客は購入の判断を下すようになります。そのため、成熟企業では商品の価格が低下し、利益が縮小する傾向が見受けられます。
しかし、高価格であっても商品・サービス、さらに企業に信頼をしているため、購入するといったファンが多くいる企業は、成熟市場でも高い利益を得ることができます。ファンマーケティングを効果的に実施することで、このような安定した売上基盤を構築できるのです。
前項にも出てきましたが、携帯電話市場のAppleが良い例です。すでに市場は成熟していて、性能の面ではどの機種であっても大きな差がないので、価格競争が多くなってきています。
実際にスマホは安いものだと5万円以内で手に入るものもありますが、Appleは未だに10万円前後、一番高い商品に至っては15万円近くするiPhoneを販売しています。しかし、Apple製品を重宝している方達の力で高い利益を得ています。
このような事例からも、ファンは企業にとって安定的な利益を生み出してくれる大切な存在だということが分かります。逆に言えば、ファンを蔑ろにすると8割の売り上げを手放すことと同じであることを理解しておきましょう。ファンマーケティングを通じて、長期的な視点で顧客との関係性を構築し、安定した売上基盤を確立することが重要です。
良質な口コミから新規顧客の獲得
ファンマーケティングが上手にできれば良質な口コミが生まれ、良質な口コミが生まれれば新規顧客の獲得がスムーズに行えます。一般的に、新規顧客を獲得するには既存顧客を維持するための5倍の時間的コスト、費用的なコストがかかると言われています。
経営を順調に行うために「コストをあまりかけたくない」と経営者であれば誰しもが考えることですが、売上を大きく伸ばしたいのであれば新規顧客の5倍のコストは避けては通れないといったもどかしさが存在しています。そこで、新規顧客をスムーズに獲得できる方法が良質な口コミです。
例えば、おいしいラーメン屋を探している場合を考えてみましょう。通常であれば、食べログなどのレビューサイトで高評価のお店を探すでしょう。しかし、もし友人が熱心に語る行きつけのラーメン屋を紹介されたら、そのお店に足を運ぼうという気持ちになるはずです。
このように、ファンマーケティングによって生まれた熱心な支持者による口コミは、他の潜在顧客を引き付ける強力な力を持っています。ファンの口コミは信頼性が高く、新規顧客の獲得コストを大幅に削減することができるのです。
さらに、ファンマーケティングを通じて形成された良質な口コミは、単なる推奨以上の効果があります。ファンは自身の体験や感動を詳細に語ることで、潜在顧客の興味を引き出し、商品やサービスの魅力を効果的に伝えることができます。これにより、新規顧客の獲得だけでなく、その顧客自身もファンになる可能性が高まり、持続的な顧客基盤の拡大につながります。
つまり、ファンマーケティングは新規顧客獲得の効率を高めるだけでなく、長期的な視点で見ても企業の成長に大きく貢献する戦略だと言えるでしょう。
広告費の削減効果
ファンマーケティングを活用すると、広告費の削減にも繋がります。会社経営において広告費の削減ができるというのは非常に嬉しいことです。
一般的にファンとなった顧客は自分が熱狂的にハマっている商品・サービスを知ってほしいと考え、宣伝をするようになります。その宣伝として大きな力を持っているのがSNSでの宣伝と商品のレビューです。ファンマーケティングによって育成された熱心な支持者たちは、自発的に口コミやソーシャルメディアを通じて商品やサービスの魅力を広めてくれます。
実際に商品・サービスを体験した人からの感想は、自社商品をPRするよりも効果があります。ファンの宣伝によって企業のブランドイメージは確立され、結果広告費の削減に繋がるのです。さらに、ファンによる口コミは信頼性が高く、新規顧客の獲得にも効果的です。
実例として、業界最大手のコーヒーチェーン店のスターバックスは、ファンが宣伝したくなるような商品と空間を作ることを意識したことで、ファンがSNSに投稿をしてくれるようになりました。スターバックスはファンマーケティングを巧みに活用し、顧客体験を重視することで、自然な形での口コミ拡散を促進しています。
その結果、CM等の広告費をかけずに世界的大企業に成長し、さらにファンのおかげで盤石な地位で他の追随を許さなくなったほどです。このように、ファンマーケティングは広告費削減だけでなく、持続可能な成長戦略としても有効なアプローチと言えるでしょう。
良質なフィードバック
顧客がファン化すると、良質なフィードバックが得られます。ファンマーケティングの効果により、ファンとなった顧客は自身が使っている商品・サービスを競合他社よりもさらに便利で快適なものにしてほしいという想いから、どこを改善してほしいかということを具体的に伝えてくれます。
このようなユーザー目線からの具体的なフィードバックがもらえるだけでなく、顧客がファン化していればファンは自発的に伝えてくれるので、コストゼロでフィードバックが手に入るようになります。ファンマーケティングを通じて構築された強い信頼関係により、ファンは企業の成長を願い、より良い製品開発に貢献したいと考えるようになります。
通常であれば、このような良質なフィードバックは商品・サービスの割引や資金を使って調査することが多いので、非常に大きなメリットと言えるでしょう。ファンマーケティングによって得られる良質なフィードバックは、製品改善や新製品開発の貴重な情報源となり、企業の競争力向上に大きく寄与します。
ファンマーケティングのデメリット
ファンマーケティングには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。ここでは、ファンマーケティングを実施する際に注意すべき主なデメリットについて解説します。
●ファン以外の顧客への対応不足:
ファンに注力するあまり、ファン以外の一般顧客への対応が疎かになる可能性があります。ファンマーケティングに偏重すると、新規顧客の獲得機会を逃す恐れがあります。
●ファンの期待に応え続けるプレッシャー:
熱心なファンは常に高い期待を持っています。その期待に応え続けるためには、継続的な努力と投資が必要となり、企業に大きな負担がかかる可能性があります。
●ファンの意見への過度の依存:
ファンの意見は貴重ですが、それに過度に依存すると、市場全体のニーズを見失う危険性があります。ファンマーケティングを行う際は、幅広い顧客層の声にも耳を傾ける必要があります。
●ブランドイメージの固定化:
特定のファン層に強く支持されることで、ブランドイメージが固定化し、新たな顧客層の開拓が難しくなる可能性があります。
●ファンの離反リスク:
何らかの理由でファンの信頼を失うと、急激な離反が起こる可能性があります。ファンの期待を裏切るような行動や、不祥事などは致命的な影響を及ぼす可能性があります。
●コスト増大の可能性:
ファン向けのイベントやコミュニティ運営、特別サービスの提供などには、相応のコストがかかります。これらの活動が収益に直結しない場合、経営を圧迫する可能性があります。
ファンマーケティングを成功させるためには、これらのデメリットを十分に認識し、バランスの取れたマーケティング戦略を立てることが重要です。ファンを大切にしながらも、幅広い顧客層にアプローチし、持続可能な成長を目指すことが求められます。
時間をかけて形成していく必要がある
ファンマーケティングの注意点でもあるのが、ファンを作るまでの時間です。ファンマーケティングは、始めてすぐに利益が出るほど甘いものではなく、むしろ時間が経てばストーリーが生まれ、そのストーリーに共感して顧客はファンになっていきます。
一見すると注意点であるファンが出来るまでの時間は、見方を変えれば実は高い参入障壁となり、誰でもできるわけではないので、構築することによって大きな差別化ポイントとなるでしょう。
炎上のリスクがある
ファンマーケティングは、一般的なマーケティング手法よりも顧客と近い距離でコミュニケーションを取る手法です。そのため、企業の告知の情報よりも、企業に勤める人の本音や人柄が分かるような情報に興味を持ち始めます。
企業の人の本音などの情報は、告知の情報発信よりも個人の考えや想いが混ざっているので、予測できないような炎上のリスクもあるのです。意図的ではないにしても、反感を買うことも考えられます。
そのため、事前に炎上や反感を買った際に、企業としてファンの方達をがっかりさせない立ち回りを考えておきましょう。
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ファンマーケティングを成功させるポイント
最後に、ファンマーケティングの成功のポイントを4つ紹介します。成功のポイントを抑えているかどうかで企業の売り上げや成長速度も大きく変わるので、しっかり確認しましょう。
● ファンの定義を決める
● ファンとの密なコミュニケーションを実施
● ファン同士のコミュニケーションの環境を創る
● ファンが興味を示す企画の実行
ファンの定義を決める
ファンマーケティングを行う前に、明確にするべき点であるのがファンの定義です。ファンの定義は企業によって異なりますが、企業の世界観、創業者の価値観などに共感し、商品・サービスを多く活用してくれるといった人物像が当てはまります。
そこで、さらに正確にファンを定義する方法を紹介します。具体的にファンを定義するには「購買データ」と「感情データ」の2つの軸から考えていく必要があります。
購買データとは実際にどれほどのお金を使ってくれているかというデータであり、感情データとは企業にどれほどの愛情や信頼があるのかというデータのことです。
それぞれのデータを計測する際は、購買データは売り上げの数値からある程度把握し、感情データはNPSという指標で判断することができます。NPSとは「ネットプロモータースコア」と呼ばれ、今まで計測が難しかった「企業やブランドにどれほど愛着と信頼があるのか」を数値として定義したデータのことです。
このデータを使い、購買データと感情データの2つの面から感覚に頼らず定量的に把握して、ファンの定義について考えてみてはいかがでしょうか。
ファンとの密なコミュニケーションを実施
ファンマーケティングを成功させる為には、ファンとの密なコミュニケーションは非常に重要となります。
実際にファンマーケティングを行っている会社は多いので、コミュニケーションの密度で差別化を狙うことがポイントでしょう。例えば、自社の商品・サービスを利用して、SNSに投稿している人に「いいね」などで反応する、フォロワーからのコメントに返答するなどがあげられます。
ファン同士のコミュニケーションの環境を創る
ファン同士がつながるコミュニティサイトや、ファンミーティングなどを設けることも大切です。実際にファン同士が交流を持つことで、競合他社にブランドスイッチすることも防げる効果があります。
また、企業側もファンとの接点を容易に作ることができたり、ファンの会話の中から企業側にとっても新しいアイデアを得ることができたりするので、交流の場は積極的に創ることを意識してみましょう。
ファンが興味を示す企画の実行
ファンがファンとして居続けてもらうためには、ファンである顧客を楽しませ、ワクワクさせるような企画を行う必要があります。
そのため、ファンでない人をファンにするという活動とは一度別に考えて、ファンになっている人に向けて行う企画であることを念頭に置いて考えましょう。例えば、ワクワクさせるような企画として代表的なものは、商品・サービスのテスターや非売品を先着数名でプレゼントといったものが挙げられます。
ファンマーケティングの成功事例
ファンマーケティングを導入することによって、成功した企業の事例を紹介いたします。
● カゴメ
● スターバックス
● AWS
カゴメ
カゴメでは、自社商品における熱狂的なファン獲得に向け、2015年に会員制のコミュニティサイト「&KAGOME(アンドカゴメ)」を開設しました。
単に情報発信や商品の宣伝を行うだけにとどまらず、「顧客としっかりつながるために開設した」と当時の広告部宣伝グループ課長の水野氏は話しています。
実際サイトには、顧客同士が気軽におしゃべりできる掲示板が設置されていたり、顧客によるコンテンツの投稿に対して他の顧客がコメントできるシステムが整っていたりするなど、顧客を巻き込みながら運営している体制が確認できます。
2020年には会員数がおよそ3万人を超え、ファンマーケティングにおける成功事例と言えます。
スターバックス
インナーブランディング戦略でエンゲージメントを高めることに成功しているスターバックスコーヒーは、ファンマーケティングにおいても功績を挙げています。
今や世界規模となっているスターバックスは、意外にもマス広告にはほとんどコストをかけず、SNSを活用したファンマーケティングをメインにファンを増やし続けています。
SNSにおいて店舗体験を基軸にブランディングを行い、その活動内容に共感したSNSユーザーから更に他のユーザーへ口コミが拡散され、ファンマーケティングのみで1500万人以上のタッチポイントを有するまでになりました。
更に、新オウンドメディア「Starbucks Stories Japan」を新たに立ち上げるなど、積極的な情報発信を行っています。
AWS
AWSは「Amazon Web Services」の略で、Amazonが提供しているクラウド型のプラットフォームです。AWSもファンマーケティングを実行しファン獲得に成功しています。
AWSでは昨今の顧客ニーズの多様化に伴い、ベンダー自らの自画自賛では顧客に響かないことを知っていました。そのため、ファンを獲得するにはAWSを実際に使用し、気に入っている人に推してもらわなければならないと考え、すでに「AWS」のファンになっている人たちをコミュニティ化する戦略を打ち出していました。
インフルエンサーのように金銭や報酬などの対価は発生させず、AWSの良さを知っている本当のファンの人たちが能動的に情報を発信してもらえる環境を提供したことでコミュニティの拡大につながり、新規のファン獲得にも成功していきました。
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まとめ
今回の記事ではファンマーケティングの基礎知識や活用するメリット、ファンマーケティングを成功させるためのポイントについて解説しました。
ファンマーケティングはファンを作り、ファンの力でビジネスを成長させるマーケティング手法です。企業や商品・サービスに愛着を持っているファンを増やすことで、安定的な経営に繋げることができます。
「これからさらに売り上げを向上し、安定的な事業経営をしたい」と考えられている企業にはオススメのマーケティング手法となっています。ぜひ自らのビジネスに活用してみてください。