セグメントという言葉は「区分」「部分」などの意味を持つ英単語「segment」に由来し、ビジネス全般、マーケティング用語としてよく使用されます。本記事では、セグメントの意味や目的、セグメント設定で重要になる指標についてご紹介します。セグメントとはどのようなものであるかについて、全般的な理解ができるようにしていきましょう。
目次
セグメントとは
セグメントという言葉は、「区分」「部分」などの意味を持つ英単語「segment」に由来しています。ビジネス全般やマーケティングの分野で広く使用される重要な概念です。
ビジネス全般における「セグメント」は、事業の種類や営業対象地域などによって区分された個々の要素を指します。全体を構成する部分や区分を表す際に用いられる用語です。
一方、マーケティング用語としての「セグメント」は、より具体的な意味を持ちます。顧客を年齢、性別、職業などの属性で区分した層を指すことがあります。また、製品に対するユーザーの認識や消費プロセスに基づいて分類された顧客グループを意味することもあります。
つまり、ビジネス全般での「セグメント」は単純な区分要素を指すのに対し、マーケティングでの「セグメント」は特定の基準で分類された顧客層を表すという違いがあります。この違いを理解することで、それぞれの文脈での「セグメント」の意味を正確に把握することができます。
マーケティング戦略を立案する際、適切なセグメント設定は非常に重要です。顧客を適切にセグメント化することで、ターゲットとなる顧客層のニーズや行動パターンをより深く理解し、効果的なマーケティング施策を展開することが可能となります。
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セグメントとその他の言葉の違い
セグメントという用語は、ビジネスやマーケティングの分野で頻繁に使用されますが、似たような言葉と混同されることがあります。ここでは、セグメントと関連する2つの重要な用語、「ターゲット」と「セグメンテーション」との違いについて詳しく説明します。
これらの用語の違いを理解することで、マーケティング戦略の立案や実行においてより的確な判断が可能になります。
ターゲットとの違い
ターゲットとはセグメントされたグループのうち、どのグループを対象にするかを指します。具体的に言うと「男性」と「女性」で分けられたグループをセグメント、そのうちの対象のグループをターゲットといいます。
簡単に言うと、セグメントの中にターゲットがあると言えるでしょう。つまり、セグメントは大きな枠組みを示し、ターゲットはその中でより焦点を絞った対象を表現しています。マーケティング戦略を立てる際には、まずセグメントを設定し、その後ターゲットを絞り込むという順序で進めることが一般的です。
セグメンテーションとの違い
セグメントとセグメンテーションの違いは、主に行為と結果の観点から理解することができます。セグメンテーションは、顧客層を区分する行為そのものを指します。具体的には、年齢、性別、職業、購買行動などの特定の基準に基づいて、市場全体を複数の小さなグループに分割するプロセスを意味します。
一方、セグメントは、このセグメンテーションという行為によって生み出された結果、つまり区分された顧客層のグループそのものを指します。言い換えれば、セグメントは、セグメンテーションによって特定された、共通の特徴や属性を持つ消費者グループのことです。
両者の関係性を簡潔に表現すると、セグメンテーションはアクション(行動)であり、セグメントはその行動の結果生まれたプロダクト(成果物)だと言えるでしょう。マーケティング戦略を立てる際には、まずセグメンテーションを行い、その後で最適なセグメントを選択し、ターゲットを絞り込んでいくという流れになります。
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セグメントの目的
セグメントの主な目的は、自社の商品やサービスをより効果的に顧客層にアプローチするための基盤を作ることです。消費者の価値観や嗜好が多様化する中で、すべての顧客に対して同じ方法でアプローチすることは非効率的です。そのため、セグメントを設定することで、特定の顧客層に焦点を当てた戦略を立てることができます。
セグメントを設定することで、以下のような利点が得られます:
- リソースの効率的な活用: 限られた予算や人材を、最も効果的な顧客層に集中させることができます。
- 商品開発の指針: 特定のセグメントのニーズに合わせた商品やサービスの開発が可能になります。
- マーケティング戦略の最適化: セグメントごとに適切なマーケティングメッセージや手法を選択できます。
- 競合との差別化: 特定のセグメントに特化することで、競合他社との差別化を図ることができます。
- 顧客満足度の向上: セグメントのニーズに合わせたアプローチにより、顧客満足度を高めることができます。
セグメントを設定した後、より具体的なターゲットを絞り込むことで、さらに細かい施策を展開することができます。このように、セグメント設定は効果的なマーケティング戦略を構築するための重要な基礎となるのです。
セグメントを行う際の条件
セグメントを設定する際には、様々な条件や要素を考慮する必要があります。効果的なセグメンテーションを行うためには、顧客の特性や行動パターンを適切に分類し、それぞれのグループに対して最適なアプローチを取ることが重要です。ここでは、セグメントを行う際に考慮すべき主な条件について解説します。
セグメンテーションの基本となる条件は、大きく4つの変数に分類されます。これらの変数を組み合わせることで、より精緻なセグメント設定が可能となります。各変数は、顧客の異なる側面を捉えており、それぞれが重要な役割を果たしています。
これらの条件を適切に活用することで、より効果的なマーケティング戦略の立案や、顧客ニーズに合わせた商品開発が可能となります。また、セグメントの設定は固定的なものではなく、市場環境や顧客の変化に応じて柔軟に見直していくことが大切です。
行動変数
行動変数とは、ユーザーの実際の行動がどのようになっているか、曜日や時間、環境や頻度などで分類して明らかになる数値のことを指します。これには、サービスの購買経験や購買の意思決定パターン、使用頻度なども含まれます。
近年のビッグデータの台頭により、各消費者の行動を詳細に計量可能なデータとして収集することが可能になりました。これにより、ユーザーの行動を細かく分析し、より精緻なセグメント設定が実現できるようになりました。例えば、オンラインショッピングサイトでは、顧客の閲覧履歴、購買履歴、滞在時間などの行動データを活用してセグメントを作成し、個々のユーザーに合わせたレコメンデーションや広告配信を行っています。
行動変数に基づくセグメント設定は、ユーザーの実際の行動パターンを反映しているため、より効果的なマーケティング戦略の立案に役立ちます。しかし、プライバシーの観点から、データの収集や利用には十分な配慮が必要です。
人口動態変数
人口動態変数とは、年齢や性別、職業、家族構成などで分類して明らかになる数値のことを指します。総務省の人口動態調査に代表される通り、消費者を分析するうえで基本となる指標と言えます。視聴率調査でよく使用される「F1」層(Fはfemaleの頭文字で、20歳から34歳までの女性のこと)などの区分もこの人口動態変数に当たると言えるでしょう。
これらの変数は、消費者の基本的な属性を表すため、多くのマーケティング戦略の基礎となります。例えば、ある製品が若い女性向けなのか、中高年の男性向けなのかを決定する際に、人口動態変数は重要な役割を果たします。また、教育レベルや収入レベルなども人口動態変数に含まれ、これらの情報を組み合わせることで、より詳細な顧客プロファイルを作成することができます。
人口動態変数を見ることで、一番基本となるセグメントを設定することが可能になるのです。このセグメントを基に、さらに他の変数を組み合わせることで、より精緻なターゲティングが可能となります。
地理的変数
地理的変数とは、言葉通り地理的な相違を見て、国や地域ごとの経済状態や気候条件、宗教・政治環境などから分類して明らかになる数値のことです。
経済状態や気候条件などは、北海道や沖縄と東京では著しく異なってきます。また、欧米と日本、あるいは中東と日本など、宗教や生活習慣が著しく異なったところでは、購買行動において一定の基準で考えることができません。
それらの地理的変数を分析することで、有効なセグメント設定を導き出すことができるのです。地理的変数は、消費者の行動や嗜好に大きな影響を与える要因となるため、マーケティング戦略を立てる上で非常に重要な指標となります。例えば、寒冷地向けの商品を暖かい地域で販売しても効果的ではありません。このように、地域特性を考慮したセグメント設定が、効果的なマーケティング活動につながるのです。
心理的変数
心理的変数とは、多様化したユーザーの価値観やライフスタイルなど、ユーザーの行動にまで現れない心理的な部分で分類して明らかになる数値のことです。別名サイコグラフィック変数と呼ばれることもあります。この変数は、消費者の内面的な特性や志向を反映するため、マーケティング戦略の立案において重要な役割を果たします。
行動変数と似て、個々のユーザーに依存した変数ですが、行動変数とは違い、内面で考えられているそれぞれの考え方に立脚した隠れた変数であり、分析が最も難しいものと言えるでしょう。例えば、環境保護への関心度、健康志向の程度、ライフスタイルの傾向などが心理的変数に含まれます。
この心理的変数に基づいたセグメントを行うことができれば、ユーザーの承認欲求・満足感に直接アプローチできるのです。そのため、より深い顧客理解と、効果的なマーケティングコミュニケーションの実現につながる可能性があります。ただし、心理的変数の測定には、綿密な調査や高度な分析技術が必要となることが多く、その取り扱いには慎重さが求められます。
セグメントに重要な4つのR
ここまでは、セグメントを行う際の条件について述べてきました。ここからは、さらに細分化して、効果的なセグメントを設定するための目安を紹介しましょう。一般的に、4つのRと呼ばれるものです。これらの指標は、マーケティング戦略を立てる上で重要な役割を果たします。
4つのRとは、Rank(優先順位)、Realistic(現実性)、Reach(到達可能性)、Response(反応)の頭文字を取ったものです。これらの要素を考慮することで、より効果的なセグメント設定が可能となり、ターゲット顧客へのアプローチがより精緻になります。
各指標は独立したものではなく、相互に関連し合っています。例えば、優先順位の高いセグメントであっても、現実的な規模がなければ効果的とは言えません。同様に、到達可能性が高くても、顧客からの反応が期待できないセグメントは避けるべきでしょう。
これらの4つのRを総合的に評価することで、自社のリソースを最適に配分し、最大の効果を得られるセグメントを特定することができます。次のセクションでは、各Rについて詳しく解説していきます。
Rank
Rankとは、優先順位づけの意味で、顧客層を企業の目的の重要度に応じてランクづけしているかどうか判断するものです。
複数のセグメントを選択した場合、そこに優先順位が生じるのは避けられません。このような状況では、各セグメントが企業の目的達成やコンセプト実現にどれだけ貢献するかという観点から、重要度に応じてランクづけを行う必要があります。
自社の方向性との整合性はもちろんのこと、競合他社との差別化を図る上で重要なセグメントであるかどうかも、ランクづけの際の重要な判断要因となります。例えば、新規市場の開拓を目指す企業にとっては、既存顧客よりも潜在顧客のセグメントが高いランクに位置づけられる可能性があります。
また、ランクづけの際には、短期的な利益だけでなく、中長期的な成長potential potentialも考慮に入れることが重要です。将来的に大きな市場となる可能性を秘めたセグメントは、現時点での規模が小さくても高いランクに位置づけられることがあります。
このように、Rankの観点からセグメントを評価することで、限られた経営資源を効果的に配分し、戦略的なマーケティング活動を展開することが可能となります。
Realistic
Realisticとは、直訳すると現実性という意味ですが、有効規模という意味になります。セグメントを区分するうえで、十分な売上を確保できる規模があるかどうかを判断するものです。
たとえば、市場規模が少ないセグメントを作り出しても、そのセグメントは効果的なものとは言えないでしょう。大きすぎてもセグメントとしての意味は生じませんが、ある一定規模を対象とし、必要になる売上を確保できる規模のセグメントを設定できているかどうかということが重要になってくるのです。
セグメントの規模を検討する際は、単に顧客数だけでなく、顧客の購買力や購買頻度も考慮に入れる必要があります。また、将来的な市場の成長性や競合状況なども、セグメントの有効性を判断する上で重要な要素となります。
Reach
Reachとは、到達可能性という意味で、区分された顧客に到達することができるのかどうか判断するものです。
Reachという指標で考えると、ユーザーに対する商品の到達難易度が重要になります。単純に考えると、日本国内に住んでいるユーザーよりも外国に住んでいるユーザーの方が到達可能性は低くなります。
到達可能性を判断して、適切なセグメントを設定することが自社の利益を考える際に大切になってくるでしょう。また、顧客へのアプローチ方法や販売チャネルの選択にも影響を与える重要な要素です。例えば、オンラインショップを主な販売チャネルとする場合、インターネットへのアクセスが容易な顧客セグメントを選択することが望ましいでしょう。
Response
Responseとは、直訳すると反応という意味ですが、測定可能性という意味になります。セグメントによって設定された顧客層からの反応を確認できるかどうか判断するものです。
セグメントの設定には、規模や到達可能性が重要になるということは前述しました。その指標を考える際に、ユーザーからの反応が期待できるかどうかというところも重要になってきます。
マーケティング業界で口コミの重要性はよく言われることですが、ユーザーの反応が測定できるかどうかというところは、セグメント設定の適正性を評価する際にも重要になります。
例えば、特定のセグメントに対して新商品を投入した際、その反応を迅速かつ正確に測定できるかどうかは、マーケティング戦略の成功を左右する重要な要素となります。顧客の購買行動、商品レビュー、SNSでの言及など、様々な形で現れる反応を適切に捉え、分析することが求められます。
マーケティングにおけるセグメントの意味
マーケティングにおいてセグメントが重要視される理由は、効果的な商品提供と売上向上に直結するからです。適切なセグメント設定により、自社商品を求めているユーザーに的確に届けることが可能となり、結果として売上増加につながります。
一方で、セグメント設定を誤ると、望ましくない結果を招く可能性があります。例えば、商品に興味のないユーザーや、環境的に満足が得られない地域のユーザーに販売してしまうケースが考えられます。このような状況は、商品の満足度低下だけでなく、会社全体の評判にも悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、適切なセグメント設定は、限られた経営資源の効率的な活用にも寄与します。ターゲットを絞り込むことで、マーケティング活動の焦点が明確になり、投資対効果の高い施策を展開できるようになります。
また、セグメントは競合他社との差別化戦略を立てる上でも重要な役割を果たします。独自のセグメント設定により、競合が見落としている市場機会を発見し、新たな価値提案を行うことが可能となります。
したがって、マーケティング戦略を構築する際には、明確な指標に基づいた適切なセグメント設定が不可欠です。自社の強みや市場環境を十分に分析し、効果的なセグメントを選定することで、持続的な集客と売上向上を実現することができるのです。
まとめ
本記事ではセグメントの意味や目的、セグメントを設定するうえで考慮すべき指標について解説してきました。セグメントは、一般的には区分された一つ一つの要素のことを指しますが、マーケティング用語としては一定の条件で区分された顧客層のことを指します。
自社の集客・売上を上げるためにセグメントは重要です。4つの変数(行動変数、人口動態変数、地理的変数、心理的変数)や4つのR(Rank、Realistic、Reach、Response)と呼ばれる指標を念頭に置き、自社の商品を効果的にユーザーに届けるためのセグメント設定をするようにしましょう。
適切なセグメント設定は、ターゲットとなる顧客層への効果的なアプローチを可能にし、マーケティング戦略の成功につながります。また、セグメントを正しく理解し活用することで、限られたリソースを最大限に活かし、競合他社との差別化を図ることができます。
ビジネスの成長と発展のために、セグメントの重要性を認識し、継続的に見直しと改善を行うことが大切です。市場環境や顧客ニーズの変化に応じて、柔軟にセグメント戦略を調整していくことで、長期的な成功を築くことができるでしょう。