マーケティングの世界には、「こうすれば成果につながる」と語られるフレームワークや手法が数多く存在しています。しかし、その本質を理解しないまま表面的なやり方だけをなぞっても、ほとんどの場合実務に役立つことはなく、失敗に終わるか、成功したとしても再現性のない活動となってしまいます。
本連載「マーケティングの愚かな勘違い」では、マーケティングの現場でよく見られる勘違いを取り上げ、「なぜ勘違いされているのか」「本来はどうするべきなのか」等を解説していきます。
第三弾となる今回は、市場や顧客の変化に迅速に対応できる仕組みづくりに重要な「マーケティングツール」について紹介します。
マーケトランク編集部より:マーケティングツール活用支援を行う「株式会社Bizsmith」がマーケティングの現場でよく見られる勘違いを取り上げていく連載「マーケティングの愚かな勘違い」。第一弾では「ペルソナ」、第二弾では「カスタマージャーニーマップ」における勘違いを紹介しています。
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目次
マーケティングツールの重要性
CRM(顧客関係管理)が重要視されデジタル化が加速するいま、データを活用したマーケティング活動の重要性が高まり、多くの企業でマーケティングツールの導入が進んでいます。顧客データを一元管理し、収集したデータを分析し、パーソナライズされた施策を実施する。そうした現代における主流のマーケティング活動を効率化してくれるツールは、確かにとても「便利なもの」であることに違いありません。しかし、実際にツールを活用しきれている企業は果たしてどれくらいあるのでしょうか。
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株式会社Bizsmithが2025年に実施した調査――マーケティングツール(MAツール)を導入している企業のマーケター515名を対象にしたMAツールの利用実態に関するアンケート――によると、ツール導入による成果を「感じている」と回答した割合が全体の93%にのぼった一方で、「十分に活用できている」と回答したのはわずか32%にとどまりました。

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ではなぜ、ツールを導入したものの活用しきれていないのか。本稿では、その原因となっている「よくある勘違い」について3つ取り上げ、それぞれについて解説していきます。
マーケティングツールのよくある勘違い
ツールが変革を起こすという勘違い
前述したように、マーケティングツールはとても「便利なもの」です。しかし、それゆえに、導入しさえすればマーケティング活動がうまくいくと考えている企業が少なくありません。断言しますが、マーケティングツールは変革を起こしません。ただし、変革においてツールにできないことはありません。うまく使いこなすことができれば劇的にマーケティング活動がうまく回るようになるはずです。
そのためにはまず、マーケティングツールを活用する目的を改めて整理する必要があります。ツールを活用してどのようなことを実現したいのか、どのような課題を解決したいのか、どのような施策を実施したいのか……。こうした目的の棚卸しを実施してみると、案外ツールがなくても実現できるものばかりだったり、あるいは現行のツールでは実現できないことが発覚したりすることもあります。
まずは、ツールはあくまで「道具」であることを認識して、それをいかにうまく使いこなすかという意識を持つようにしましょう。
人手が足りないからツールを導入するという勘違い
マーケティングツールによってマーケティング業務が効率化することは間違いありません。しかし、だからといって一人のマーケティング担当者にあらゆる業務を任せてしまってはいませんか?
実際、マーケティングツールを十分に活用するには、複数のスキルが必要になります。データ設計やデータ抽出のスキル、そのデータを分析するスキル、クリエイティブを作成するデザインスキル、細かい設定を行うコーディングスキル。さらにはマーケティングの方針や施策内容を決めるためのデジタルマーケティングの知識やツール操作の知識も必要になります。
これらの業務を、ただ「ツールを導入した」という理由だけで、一人のマーケターに任せるのは無理があります。
マーケティングツールによってマーケティング活動は一部効率化されますが、一方で「高度化」もします。その分、必要なケイパビリティ(能力)はむしろ増えると言っても過言ではありません。ツールを導入したからといって、少ない人的リソースで運用できるというのは勘違いです。
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下手な鉄砲も数打ちゃ当たるという勘違い
マーケティングツールを使えばプッシュ通知やポップアップ配信、メール送信などが比較的簡単に実施できるようになります。そのため、多くの施策を実施して、そのうちひとつでも当たれば(うまくいけば)良いという考えでマーケティングアクションを考える企業も少なくありません。
しかし、実際にはマーケティング施策は数を打っても当たりません。仮に当たったとしても再現性のない施策となってしまいます。
マーケティング施策を正しく実施するには、いくつかのステップがあります。「目標設計」「課題特定」「仮説立て」「施策検討」「施策実施」「効果検証」の6つです。
そもそも何を達成するための施策なのかを改めて整理し、分析を通して目標のために現在障害となっている課題を特定します。そのうえで、課題を解消するための仮説を立て、仮説を検証するための施策を検討します。そして施策実施後には、仮説が正しかったのかどうか、課題を解消できているのかどうかの検証を行います。
マーケティング施策の勝率は、どれだけ優秀なマーケターでも良くて3割程度でしょう。大事なのは、この一連のステップを高速で粘り強く回し続けること。それによってマーケティング活動は徐々に、確実に前進していくのです。
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マーケティングツールは魔法の杖ではない
マーケティングツールは、企業のマーケティング活動を加速させるための強力な「道具」です。しかし、それ自体が成果を生み出すわけではありません。今回取り上げた3つの勘違い――「変革を起こしてくれる」「人手不足の解消になる」「数を打てば当たる」――はいずれも、ツールへの過度な期待から生まれるものです。
繰り返しになりますが、ツールは“目的を達成するための手段”に過ぎません。どれほど高機能なツールであっても、目的や戦略が曖昧なまま使われていては成果にはつながりませんし、使いこなすためのスキルや体制が不足したままでは十分に機能しません。また、行き当たりばったりの施策を増やしても、再現性のある成長は決して生まれません。
大切なのは、マーケティングの本質である「課題を見極め、仮説を立て、施策を実行し、検証する」というサイクルを誠実に回し続けること。そして、そのプロセスを効率化し、精度を高めるためにツールを活用するという考え方です。
マーケティングツールを導入しただけで満足するのではなく、「自分たちは何を実現したいのか」「そのためにツールをどう活かすべきなのか」を改めて問い直し、本質的な運用を行っていきましょう。

