本記事では、経営戦略に欠かせない外部環境分析フレームワーク「PESTLE分析」について、その目的から具体的なやり方、書き方までを3ステップで徹底解説していきます。6つの要因の図解はもちろん、すぐに使えるテンプレートや業界別の記入例、SWOT分析との違いも網羅。この記事を読めば、誰でもPESTLE分析を実践し、事業の機会と脅威を明確に把握できるようになります。
テンプレートは資料ダウンロードより無料でご利用いただけます。
人事・経営層のキーパーソンへのリーチが課題ですか?
BtoBリード獲得・マーケティングならProFutureにお任せ!
目次
PESTLE分析とは 経営戦略に欠かせない外部環境分析フレームワーク
PESTLE(ペストル/ペステル)分析は、自社を取り巻く外部環境を多角的に分析するための経営戦略フレームワークです。 企業活動は、自社でコントロールできる「内部環境」だけでなく、自社の努力だけでは動かせない「外部環境」からも大きな影響を受けます。 この外部環境の中でも、特に自社ではコントロールが難しいマクロ環境(世の中全体の大きな流れ)が、自社のビジネスにどのような影響を与えるかを把握・予測するために用いられます。 PESTLEは、分析対象となる6つの要因の頭文字を取ったものです。
- P (Political): 政治的要因
- E (Economy): 経済的要因
- S (Social): 社会的要因
- T (Technology): 技術的要因
- L (Legal): 法的要因
- E (Environment): 環境的要因
PESTLE分析の目的と重要性
PESTLE分析の主な目的は、これら6つの要因に関する情報を収集・分析し、自社の事業にとっての「機会」と「脅威」を特定することです。 VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代と呼ばれる現代において、市場や社会の変化はますます激しくなっています。 このような環境下で企業が持続的に成長するためには、外部環境の変化をいち早く察知し、将来のリスクを回避すると同時に、新たな事業機会を捉えることが不可欠です。 PESTLE分析を通じてマクロ環境の変化を予測することで、中長期的な視点に立った効果的な経営戦略やマーケティング戦略を立案できるようになります。
PEST分析との違い
PESTLE分析は、もともと存在した「PEST分析」というフレームワークが発展したものです。 PEST分析は、「政治(Politics)」「経済(Economy)」「社会(Social)」「技術(Technology)」の4つの要因から外部環境を分析する手法でした。 これに対し、PESTLE分析では「法的(Legal)」と「環境(Environmental)」の2つの要因が追加されています。
近年、コンプライアンス遵守の重要性の高まりや、SDGs(持続可能な開発目標)に代表される環境問題への関心の増大など、企業活動において法律や環境が与える影響は無視できないものとなりました。 このような時代の変化を背景に、より網羅的に外部環境を分析できるPESTLE分析が広く用いられるようになっています。
| 要因 | PEST分析 | PESTLE分析 |
|---|---|---|
| P: 政治 (Political) | 〇 | 〇 |
| E: 経済 (Economy) | 〇 | 〇 |
| S: 社会 (Social) | 〇 | 〇 |
| T: 技術 (Technology) | 〇 | 〇 |
| L: 法的 (Legal) | × | 〇 |
| E: 環境 (Environmental) | × | 〇 |
関連資料:PEST分析パワポテンプレート×6パターン【HRサービス企業の分析事例付き】
PESTLE分析の6つの要因を徹底解説
この章では、PESTLE分析を構成する6つの外部環境要因について、それぞれが自社にどのような影響を与えうるのか、具体的な項目例を交えながら詳しく解説していきます。これらの要因は、自社の努力だけではコントロールが難しいマクロ環境の変化であり、事業の成長機会(Opportunity)にも、事業を脅かす脅威(Threat)にもなり得ます。

P(Political) 政治的要因
政治的要因とは、政府の政策、法改正、政権交代、外交問題といった、政治の動向に関連する要因全般を指します。 これらの変化は、特定の業界に対する規制強化や緩和、税制の変更、新たな補助金制度の創設などを通じて、企業の事業活動に直接的な影響を与える可能性があります。
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| 法律・規制の改正 | 働き方改革関連法、インボイス制度の導入、個人情報保護法の改正 |
| 税制の変更 | 法人税・消費税の増減税、特定の事業に対する優遇税制 |
| 政府の政策・方針 | DX(デジタルトランスフォーメーション)推進、グリーン成長戦略、スタートアップ支援策 |
| 政権交代・政治の安定性 | 政権交代による政策の転換リスク、政治的な混乱 |
| 国際関係・外交 | 特定の国との貿易協定(TPPなど)、外交関係の変化による地政学リスク |
E(Economy) 経済的要因
経済的要因は、景気動向、金利、為替レート、物価変動といった経済全体の動きを指します。 例えば、景気後退は消費者の購買意欲を低下させ、企業の売上に影響を与えます。また、BtoBビジネスにおいては、クライアント企業の投資意欲の減退につながることも考えられます。
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| 経済成長率・景気動向 | GDP成長率、日経平均株価、景気動向指数 |
| 金利の変動 | 政策金利の変更による借入コストへの影響 |
| 為替レートの変動 | 円安・円高による輸出入製品の価格変動、海外事業の収益性への影響 |
| 物価・インフレ・デフレ | 消費者物価指数(CPI)の変動、原材料価格の高騰 |
| 個人消費・所得動向 | 賃金上昇率、可処分所得の変化、消費支出の動向 |
S(Social) 社会的要因
社会的要因には、人口動態、ライフスタイルの変化、価値観の多様化、教育水準といった、社会を構成する人々の意識や構造の変化が含まれます。 特にBtoBのSaaSビジネスにおいては、働き方の変化やDXへの意識の高まりなどが重要な追い風となります。
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| 人口動態の変化 | 少子高齢化、生産年齢人口の減少、都市部への人口集中 |
| ライフスタイル・価値観の変化 | ワークライフバランスの重視、SDGsやサステナビリティへの関心の高まり |
| 働き方の多様化 | リモートワークの普及、副業・兼業の一般化、ジョブ型雇用の拡大 |
| 消費行動の変化 | 所有から利用へ(サブスクリプションモデルの普及)、オンラインでの購買活動の増加 |
| 教育・健康への意識 | リスキリングの需要増加、健康経営への関心の高まり |
T(Technology) 技術的要因
技術的要因は、新しい技術の登場や既存技術の進化、特許、ITインフラの普及など、技術革新に関連する動向を指します。 近年では、AI(人工知能)やIoTの進化が著しく、これらを活用することで全く新しいサービスが生まれたり、既存業務の生産性が劇的に向上したりするケースが増えています。
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| 新たな技術の台頭 | 生成AI、ブロックチェーン、メタバースなどの新技術の普及とビジネス活用 |
| 技術革新・イノベーション | 自動運転技術の進化、再生可能エネルギー技術の開発 |
| ITインフラの整備 | 5G通信網の拡大、クラウドサービスの普及 |
| 特許・技術開発動向 | 競合他社の特許出願状況、業界全体の研究開発投資の動向 |
| デジタル化の進展 | ペーパーレス化、キャッシュレス決済の普及 |
L(Legal) 法的要因
法的要因は、ビジネスに関連する法律、条例、規制などを指します。 政治的要因における「法律・規制の改正」と重なる部分もありますが、こちらはより具体的に、企業のコンプライアンス(法令遵守)や事業運営のルールに直接関わるものと捉えると分かりやすいでしょう。法改正への対応が遅れると、事業継続に関わる重大なリスクとなる可能性があります。
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| ビジネス関連法規 | 独占禁止法、下請法、知的財産権関連法(著作権法、特許法など) |
| 労働関連法規 | 労働基準法、労働契約法、男女雇用機会均等法 |
| 業界特有の規制 | 金融業界における金融商品取引法、建設業界における建設業法など |
| 消費者保護関連法規 | 消費者契約法、特定商取引法 |
| 国際的な法規制 | EU一般データ保護規則(GDPR)など |
E(Environment) 環境的要因
環境的要因には、気候変動や自然災害、環境保護に関する意識の高まり、エネルギー問題などが含まれます。 かつては一部の業界に限定的な影響を与える要因と見なされていましたが、近年ではSDGsや脱炭素社会への移行が世界的な潮流となり、あらゆる企業にとって無視できない重要な経営課題となっています。
| 項目 | 具体例 |
|---|---|
| 環境問題への関心の高まり | 脱炭素(カーボンニュートラル)への取り組み、プラスチックごみ問題、グリーンウォッシュへの規制強化 |
| 環境関連の規制強化 | 省エネ法、リサイクル関連法、環境汚染に対する規制 |
| 気候変動・異常気象 | 自然災害の頻発化によるサプライチェーンへの影響、気温上昇による需要の変化 |
| エネルギー問題 | 再生可能エネルギーへの転換、電力価格の変動 |
| サステナビリティ | ESG投資(環境・社会・ガバナンスを重視する投資)の拡大 |
関連記事
・マーケティングにも大きな影響を与えるSDGsの基本概念と取り組みを解説
・サステナブル(Sustainable)の意味とは?SDGsを踏まえたマーケティング事例を紹介
・ESGとSDGsとの違いとは?意味や背景、人事として取り組めることを解説
・エシカルの流れの中で問題視されている「グリーンウォッシュ」とは
【3ステップ】PESTLE分析のやり方と書き方
この章では、PESTLE分析を自社の経営戦略に活かすための具体的な手順を、3つのステップに分けてわかりやすく解説していきます。各ステップのポイントを押さえることで、誰でも精度の高い分析を実践できます。

ステップ1 PESTLEの6要因に関する情報を収集する
最初のステップは、PESTLE分析のフレームワークを構成する6つの外部環境要因(政治・経済・社会・技術・法律・環境)について、客観的な情報を幅広く収集することです。この段階では、個人的な思い込みや希望的観測を排除し、事実に基づいたデータを集めることが極めて重要になります。
信頼性の高い情報源から多角的に情報を集めることで、分析の土台を強固なものにしましょう。
関連記事
・アンコンシャスバイアスの具体例は?仕事上で気をつけたい対策
・クリティカルシンキングとは? マーケティングを最大化するマーケターのための思考術【例題あり】
情報収集に役立つ情報源一覧
情報収集には、下記のような情報源が役立ちます。特にBtoBビジネスにおいては、業界の動向や法改正に関する情報が事業に直結するため、定期的なチェックが欠かせません。
| 情報源の種類 | 具体例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 公的機関 | 総務省統計局、経済産業省、各省庁の白書など | 信頼性が非常に高く、マクロ環境の動向を把握する上で必須。例えば、総務省統計局の人口動態調査は社会(Social)要因の分析に不可欠です。 |
| 業界団体・調査会社 | 各業界団体、矢野経済研究所、MM総研などのレポート | 特定の業界や市場に関する詳細なデータや将来予測が得られます。自社が属する業界の動向を深く知るのに有効です。 |
| 新聞・ビジネスニュース | 日本経済新聞、東洋経済オンライン、日経クロステックなど | 政治、経済、技術などの最新動向を素早くキャッチアップできます。特に技術(Technology)の進化は速いため、日々の情報収集が重要です。 |
| 専門書籍・学術論文 | 専門家の著書、大学の研究論文(CiNii Articlesなど) | 特定のテーマについて、背景や構造から深く理解することができます。 |
ステップ2 情報を「事実」と「解釈」に分類する
次に、ステップ1で収集した膨大な情報を「事実」と「解釈」の2つに分類します。客観的な「事実」と、それに基づいた主観的な「解釈」を混同してしまうと、分析の方向性が誤ってしまうため、この分類作業は分析の精度を左右する重要なプロセスです。
「事実」とは、誰が見ても同じように認識できる客観的な情報(例:統計データ、法律の条文)を指します。一方、「解釈」とは、その事実から推測される影響や今後の見通し(例:〜という需要が高まるだろう、〜のリスクがあるかもしれない)を指します。
| 要因 | 事実(客観的な情報) | 解釈(事実から推測されること) |
|---|---|---|
| 政治 (P) | 政府が「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進」を重要政策として掲げ、関連予算を増額した。 | 行政手続きのオンライン化が進み、関連するSaaSツールの需要が高まる可能性がある。 |
| 社会 (S) | 生産年齢人口が今後も減少し続けるという統計データがある。 | 少ない人数で業務を回す必要があり、企業の業務効率化ツールへの投資が加速するだろう。 |
ステップ3 「機会」と「脅威」に分け戦略を立案する
最後のステップでは、ステップ2で分類した「解釈」が、自社にとって「機会(Opportunity)」となるのか、それとも「脅威(Threat)」となるのかを判断し、具体的な戦略へと繋げていきます。外部環境の変化を自社の成長エンジンに変えるための、最も重要な工程です。
「機会」とは、自社のビジネスにとって追い風となるプラスの影響を指します。例えば、法改正による新市場の創出や、顧客ニーズの変化による自社製品への関心の高まりなどが挙げられます。「脅威」とは、逆風となるマイナスの影響のことで、競合の増加、市場の縮小、代替技術の登場などが考えられます。
これらの「機会」と「脅威」を洗い出すことで、「機会を最大限に活かすにはどうすべきか」「脅威によるダメージを最小限に抑える、あるいは回避するにはどうすべきか」という具体的なアクションプランの立案が可能になります。この分析結果は、後述するSWOT分析の外部環境分析(Opportunities/Threats)にそのまま活用することができます。
【すぐに使える】PESTLE分析のテンプレートと記入例
この章では、PESTLE分析をすぐに実践できるよう、汎用的なテンプレートと、具体的な業界を例にした記入例を解説します。フレームワークの理論を理解しても、実際に手を動かしてみるとどこから始めれば良いか迷うことも少なくありません。テンプレートを活用することで、思考が整理され、効率的に分析を進めることができます。

PESTLE分析のテンプレート
まずは、どのような業種でも活用できる基本的なテンプレートをご紹介します。このフォーマットに沿って情報を整理し、「事実」から「解釈」、そして「機会」と「脅威」へと段階的に落とし込んでいくことが、精度の高い分析を行うポイントです。
| 要因 | 事実(客観的な外部環境の変化) | 解釈(事実が自社に与える影響) | 分類(機会または脅威) |
|---|---|---|---|
| P: 政治 | (例:再生可能エネルギー導入を促進する補助金制度の開始) | (例:自社工場の太陽光パネル設置コストを抑制できる) | 機会 |
| E: 経済 | (例:原材料価格が前年比20%上昇) | (例:製造原価が上昇し、製品価格への転嫁が必要になる) | 脅威 |
| S: 社会 | (例:健康志向の高まりでオーガニック食品市場が拡大) | (例:自社のオーガニック製品ラインナップへの需要が増加する) | 機会 |
| T: 技術 | (例:業務自動化を推進するAIツールの普及) | (例:間接業務の効率化によるコスト削減が見込める) | 機会 |
| L: 法的 | (例:個人情報保護法の改正による規制強化) | (例:顧客データ管理体制の見直しとシステム投資が必須となる) | 脅威 |
| E: 環境 | (例:企業のサプライチェーン全体でのCO2排出量開示の義務化) | (例:環境負荷の低いサプライヤーへの切り替えが必要になる) | 脅威 |
自動車業界のPESTLE分析例
ここでは、100年に一度の変革期を迎えていると言われる自動車業界を例に、PESTLE分析の記入例を示します。特に、EV(電気自動車)関連のSaaSや部品を扱うBtoB企業にとって、示唆の多い内容となっています。
| 要因 | 事実(客観的な外部環境の変化) | 解釈(自社への影響) | 分類 |
|---|---|---|---|
| P: 政治 | 政府によるEV購入補助金制度の継続・拡充。 | EV販売が促進され、関連部品やソフトウェアの需要が増加する。 | 機会 |
| E: 経済 | 世界的な半導体不足の長期化と、リチウムイオン電池の原材料価格高騰。 | 生産計画に遅延が生じ、製造コストが圧迫される。 | 脅威 |
| S: 社会 | 若者世代の「クルマ離れ」と、所有から利用への価値観シフト(カーシェアリングの普及)。 | 個人向け販売市場の縮小リスクがある一方、MaaS(Mobility as a Service)事業者向けの新たなビジネスチャンスが生まれる。 | 機会/脅威 |
| T: 技術 | 自動運転レベル3〜4の実用化に向けた技術開発の加速と、SDV(ソフトウェア定義車両)の概念の普及。 | 車載OSやアプリケーション開発の重要性が増し、ソフトウェア開発企業にとって大きな参入機会となる。 | 機会 |
| L: 法的 | 自動運転レベル4の公道走行を可能にする道路交通法の改正。 | 特定の条件下での自動運転サービスの提供が可能になり、新たなサービス開発が求められる。 | 機会 |
| E: 環境 | 欧州を中心とした、2035年以降のガソリン車新車販売を事実上禁止する規制の強化。 | EVおよび関連技術へのシフトが不可避となり、対応できない企業は市場から淘汰されるリスクがある。 | 脅威 |
旅行業界のPESTLE分析例
次に、コロナ禍を経て大きく変化した旅行業界の記入例です。インバウンド需要の回復が著しい一方で、新たな課題も浮上しています。旅行代理店や宿泊施設向けのITツールを提供する企業などは、ぜひ参考にしてください。
| 要因 | 事実(客観的な外部環境の変化) | 解釈(自社への影響) | 分類 |
|---|---|---|---|
| P: 政治 | 政府によるインバウンド観光客「2030年に6,000万人目標」の推進と、一部観光地でのオーバーツーリズム対策の本格化。 | インバウンド向けサービスの需要が拡大するが、人気観光地では規制による影響を受ける可能性がある。 | 機会/脅威 |
| E: 経済 | 歴史的な円安水準の継続により、訪日外国人にとっての旅行費用が割安になっている。 | インバウンド顧客の誘致競争が激化し、高付加価値な体験コンテンツの提供が差別化の鍵となる。 | 機会 |
| S: 社会 | 「コト消費」への関心の高まりと、SNSでの見栄えを重視した旅行体験への需要増加。 | 画一的なツアーではなく、ユニークな文化体験やアクティビティを組み込んだ旅行プランの需要が高まる。 | 機会 |
| T: 技術 | AIを活用したパーソナライズ旅行プランの自動生成サービスや、多言語対応AIコンシェルジュの登場。 | 旅行手配の効率化が進む一方、テクノロジーを活用できない企業は競争力を失う。 | 機会/脅威 |
| L: 法的 | 旅館業法における規制緩和の動向と、民泊新法の運用実態の変化。 | 多様な宿泊施設の提供が可能になるが、コンプライアンス遵守のための体制構築が求められる。 | 機会/脅威 |
| E: 環境 | サステナブルツーリズム(持続可能な観光)への国際的な関心の高まり。 | 環境に配慮した宿泊プランやエコツアーが、新たな顧客層を引きつける要因になる。 | 機会 |
PESTLE分析と他のフレームワークとの違い
この章では、PESTLE分析と他の代表的なマーケティングフレームワークとの違いや連携方法について解説します。それぞれのフレームワークが持つ役割を理解し、目的に応じて使い分けることで、より精度の高い戦略立案が可能になります。

PESTLE分析とSWOT分析の違いと連携方法
PESTLE分析とSWOT分析は、どちらも戦略策定の初期段階で用いられる環境分析フレームワークですが、その目的と分析対象が異なります。PESTLE分析が自社を取り巻く外部環境(マクロ環境)を多角的に把握するのに対し、SWOT分析は外部環境と内部環境の両方を整理し、戦略の方向性を定めるために使われます。
それぞれの違いを下記の表にまとめました。
| フレームワーク | 分析対象 | 視点 | 目的 |
|---|---|---|---|
| PESTLE分析 | 外部環境(マクロ環境) | 自社でコントロールできない要因 | 世の中のトレンドや変化が自社に与える影響(機会・脅威)を洗い出す |
| SWOT分析 | 外部環境と内部環境 | 機会・脅威(外部)と強み・弱み(内部) | 自社の現状を把握し、戦略の方向性(攻めるべきか、守るべきか等)を定める |
この2つのフレームワークは、連携させることで非常に強力なツールとなります。具体的には、PESTLE分析で導き出した「機会」と「脅威」を、SWOT分析の外部環境(Opportunities/Threats)のインプットとして活用します。 これにより、マクロな視点に基づいた客観的な事実を元に、自社の強みを活かして機会をどう掴むか、あるいは弱みを補強して脅威にどう立ち向かうか、といった具体的な戦略(クロスSWOT分析)へと繋げることができるのです。
関連資料:SWOT分析とは?やり方や分析例を図とテンプレート付きで簡単に
3C分析や5フォース分析との使い分け
3C分析や5フォース分析も外部環境を分析するフレームワークですが、PESTLE分析が社会全体といった「森(マクロ環境)」を見るのに対し、これらは業界内や競合といったより事業に近い「木(ミクロ環境)」を分析する点が大きな違いです。
それぞれのフレームワークの役割と使い分けは以下の通りです。
| フレームワーク | 分析のレイヤー | 主な分析対象 | 主な活用場面 |
|---|---|---|---|
| PESTLE分析 | マクロ環境 | 政治、経済、社会、技術、法、環境の動向 | 中長期的な事業機会やリスクの特定、新規市場への参入検討時 |
| 5フォース分析 | ミクロ環境 | 業界内の競争要因(競合、新規参入、代替品、買い手・売り手の交渉力) | 業界の収益構造や魅力度の把握、業界内での競争戦略立案 |
| 3C分析 | ミクロ環境 | 顧客・市場(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company) | 事業の成功要因(KSF)の特定、具体的なマーケティング戦略立案 |
これらのフレームワークは、まずPESTLE分析で社会全体の大きな変化を捉え、次に5フォース分析で業界構造の魅力を評価し、最後に3C分析で顧客や競合を分析し自社の立ち位置を明確にする、という流れで使用すると効果的です。 このように分析の範囲をマクロからミクロへと段階的に絞り込んでいくことで、外部環境の変化を的確に捉え、競争優位性を確保するための具体的な戦略へと落とし込むことができます。
関連記事/資料
・ファイブフォース分析とは?定義と目的、戦略を事例とともにご紹介します
・3C分析とは?やり方や手順、テンプレートも紹介
PESTLE分析を成功させるためのポイントと注意点
この章では、PESTLE分析をより効果的に進め、ビジネス戦略に活かすための重要なポイントと注意点を解説します。分析の精度を高め、実用的な示唆を得るために、これから紹介する3つのポイントをぜひ押さえてください。

分析の目的を明確にする
PESTLE分析に着手する前に、まず「何のために分析を行うのか」という目的を具体的に設定することが不可欠です。目的が曖昧なままでは、情報収集の範囲が際限なく広がり、どの情報が重要なのか判断できなくなってしまいます。例えば、「自社SaaS製品の新たなターゲット市場を見つける」「既存事業における地政学リスクを洗い出す」といったように目的を明確にすることで、収集すべき情報に優先順位をつけ、焦点を絞った効率的な分析が可能になります。目的が明確であれば、分析結果から導き出される戦略の精度も高まり、具体的なアクションへと繋がりやすくなります。
客観的な事実に基づいて分析する
PESTLE分析の価値は、その客観性にあります。分析者の希望的観測や個人的な思い込みを排除し、信頼できるデータや情報といった「事実」に基づいて外部環境を評価することが極めて重要です。情報収集の際は、特定の意見に偏らず、公的機関が発表する統計データや業界レポートなどを活用しましょう。信頼性の高い情報源としては、総務省統計局が運営するポータルサイト(e-Stat)や経済産業省の統計、中小企業庁の白書・統計情報などが挙げられます。主観や願望を排し、客観的な事実に基づいて分析することで、分析結果の信頼性が担保され、誤った経営判断を避けることができます。
定期的に見直しを行う
自社を取り巻く外部環境は、常に変化し続けています。そのため、PESTLE分析は一度行ったら終わりというものではありません。市場のトレンド、技術の進歩、法改正、国際情勢の変化など、各要因は常に動いています。ビジネスを持続的に成長させるためには、これらの変化を迅速に捉え、戦略に反映させることが求められます。少なくとも年に一度、あるいは四半期ごとや事業年度の計画策定時など、定期的に分析結果を見直す機会を設けましょう。分析を定期的に更新し、外部環境の変化を常に監視することで、新たな機会を逃さず、予期せぬ脅威にも迅速に対応することが可能になります。
まとめ
本記事では、PESTLE分析の基礎知識から、具体的なやり方と書き方までを3ステップで解説しました。このフレームワークは、自社ではコントロールできない外部環境の変化を「機会」と「脅威」として捉え、将来の経営戦略に活かすために不可欠です。紹介したテンプレートやSWOT分析との連携方法を活用し、客観的な事実に基づいて分析することで、変化の激しい時代を勝ち抜くための、より精度の高い戦略立案を実現していきましょう。

