前回(予算月10万円なら内製を推奨。 ひとり担当者が挫折しないための「80点主義」の少額リスティング広告運用の始め方)の記事では、少額予算なら内製を推奨する理由と、100点を目指さず「80点主義」で回すためのマインドセットについてお伝えしました。「毎日管理画面に張り付かなくていい」「手動での入札調整は不要」「キーワードを何百個も登録しなくていい」。この3つのルールに、少しホッとした方もいるのではないでしょうか。
では、具体的にどうアカウントを作れば、80点運用が実現できるのか。今回はいよいよ実践編です。
私はこれまで1,000アカウント以上の広告運用に携わってきましたが、成果の9割は初期設定で決まると考えています。そして最初のアカウント構築さえ正しく組んでおけば、管理画面を毎日見なくても成果が安定する「メンテナンスフリー」に近い状態は作れます。逆に、ここを雑に済ませてしまうと、前回お話しした疲弊する運用につながってしまいます。
本記事では、少額予算のひとり担当者が最初に押さえるべき、アカウント構造のシンプル化を中心に、具体的な構築のポイントを解説します。
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目次
広告運用が大変になる主な理由は、初期設定が雑だから
まず、運用が大変なアカウントには共通点があります。それは、キャンペーンや広告グループが必要以上に細かく分かれていることです。
たとえば、サービスごと・地域ごと・マッチタイプごとなどにキャンペーンを分けた結果、10個以上のキャンペーンを配信するアカウントがあるとします。こうなると日々の調整箇所が増え、作業工数が膨れ上がります。
また、キャンペーンを不必要に分割しデータが分散すると、Googleの自動入札戦略が十分に学習できません。前回の記事で「手動での入札調整は不要」とお伝えしましたが、それは自動入札が正しく機能することが前提です。学習が進まなければ精度は上がらず、手動で入札を調整する必要が出てきます。
さらに、複数のキャンペーン間で予算配分を頻繁に見直したり、キーワードのメンテナンスに追われたりと、運用工数が雪だるま式に増えていきます。
つまり問題の根本は、日々のオペレーションではなく、最初のアカウント設計の雑さにあります。初期設定をシンプルに正しく組んでおけば、運用負荷は大きく減り、自動入札の学習効率も上がるため、成果向上にも繋がります。
メンテナンスフリーを実現するアカウント構造の基本方針は「少なく、太く」

メンテナンスフリーな運用を実現するための原則は非常にシンプルです。アカウント構造を「少なく、太く」設計すること。具体的には、次のような構成を目指します。
【理想の初期構成】
・キャンペーン:1つ
・広告グループ:1つ
・キーワード:まずはDoクエリに絞る
・広告:1つ
「少なすぎるのでは?」と思われるかもしれません。
しかし少額予算の場合、構造を絞るほどデータが1箇所に集まり、自動入札の学習が早く進みます。あれこれ広げるよりも、コンバージョンが見込める箇所に予算を集中させられる方が成果につながります。確認すべき箇所も少なくなるので、前回お伝えした「週に2回、30分だけ」の確認で十分回る状態が作れます。
キャンペーンも広告グループも原則1つに集約するところから始めましょう。
ただし、なんでもかんでもまとめればいいというものではありません。構成要素ごとに設計のポイントを説明していきます。
キャンペーン

原則顕在層に配信するキャンペーン1つだけにしましょう。
予算規模が大きくなれば、顕在層向けと潜在層向けでキャンペーンを分けるといった設計も有効です。しかし少額予算の段階では、潜在層への配信は費用対効果の悪化につながりやすいため、おすすめしません。まずはコンバージョン率の高い顕在層だけに絞る方がCPAは下がります。
なお、自社のサービス名やブランド名で検索するユーザーを狙う「指名キーワード」については、競合が広告を出稿している場合に限り、取りこぼし防止としてキャンペーンを用意して配信を検討してもよいでしょう。ただし、競合の出稿がなければ無理に広告を出す必要はありません。
広告グループ
広告グループについても同様です。基本的には1つにまとめてしまって構いません。まずは集約してデータを溜め、必要になってから分割を検討する方が合理的です。ただし、リンク先やキーワードのテーマが明らかに異なる場合は、最初から分けた方が効果的なので分けてください。
たとえば靴の通販がビジネスであれば、「スニーカー」「ビジネスシューズ」などで広告グループを分け、それぞれに合った広告文とキーワードを設定することで、ユーザーの検索意図に合った広告を表示できます。これによりクリック率やコンバージョン率の向上が期待できます。
キーワード

キーワードについては気をつける点がいくつかありますので、分けて説明します。
キーワード登録
必ず登録すべきは、Doクエリと呼ばれるコンバージョンに近い行動意図のあるキーワードです。たとえばりんごの通販サイトであれば、「りんご 通販」「りんご 取り寄せ」のように、ユーザーが購入や申し込みといったアクションを起こそうとしている検索語句を指します。
その上で、登録を避けるべきキーワードは大きく2種類あります。
1つ目は、「りんご」のような検索意図の広いビッグワードです。1キーワードだけで予算の大半を消化してしまい、CPAが大きく悪化することも珍しくありません。登録は避けてください。
2つ目は、「りんご 種類」「りんご 栄養」のような情報収集段階のキーワードです。コンバージョン率が低いため、少額予算のうちは登録しないでおきましょう。肝心の顕在層に予算が回らなくなる可能性があります。
マッチタイプ
マッチタイプは、完全一致とフレーズ一致から始めることを推奨します。
前回の記事で「主要なキーワードを登録しておけば、AIが関連する検索語句にまで広げてくれる」とお伝えしましたが、これは主にインテントマッチによるものです。
ただインテントマッチは検索語句の幅が広がりすぎるため、意図しないクリックが増えるリスクがあります。業種や戦略によっては最初からインテントマッチを使うべきシーンもありますが、判断が少々難しいため、初心者は扱いやすい完全一致とフレーズ一致から登録していきましょう。フレーズ一致でも検索意図が近い語句には拡張します。
完全一致とフレーズ一致でコンバージョンを獲得し、データが蓄積できたタイミング(目安としては過去30日で30件以上のCV獲得)でインテントマッチに広げていく流れが安全です。
除外キーワード
除外キーワードはアカウント構築時に主な意図違いを登録しておきましょう。たとえば「求人」「採用」「無料」など、自社サービスの申し込みにつながらない検索意図は最初の段階でブロックしておくことで、無駄なクリックを未然に防げます。
無料で使えるラッコキーワード等のキーワード分析ツールでメインキーワードとの掛け合わせを調べ、意図違いの複合ワードを洗い出して登録するのがおすすめです。たとえば「訳あり」のりんごを販売していなければ、「訳あり」が除外候補になります(下記参照)。

意図違いの検索語句が多い初期は、検索語句レポートを毎日確認して除外キーワードを追加していきましょう。雑味が少なくなってきたら、週に1回の確認で十分です。
広告

広告は1つだけ作れば十分です。複数作るとインプレッションやクリックなどのデータが分散し、どの広告が良いのか判断するためのデータが溜まるまでに時間がかかります。少額予算ではこのデメリットが大きいため、基本は1本に集中させましょう。
広告文を作る際に最も大切なのは、何の広告かをひと目でわかるようにすることです。そのためには、登録しているDoクエリのキーワードは必ず見出しに含めましょう。ユーザーが検索したワードと広告文が一致していれば、クリックされやすくなり、広告の品質向上につながります。広告の品質が上がれば、クリック単価の抑制や掲載順位の改善も期待できます。
レスポンシブ検索広告の有効性スコアについても触れておきます。有効性は広告の品質とは直接の関連はありません。ただし、有効性を高めることで広告の表示パターン(見出しや説明文の組み合わせ)が増え、結果的にクリック率の向上につながります。見出しは15個、説明文は4個までフルに設定できるので、できる限りすべて使うことを推奨します。
まとめと次回予告
少額予算でGoogle検索広告を運用する場合、最も大切なのは「あれこれ広げずに、コンバージョンが見込めるところに予算を集中させる」ことです。
■アカウント構築時のチェックポイント
・キャンペーンは1つ(多くても2つ)に絞る
・広告グループは基本的に1つにまとめる
・キーワードはDoクエリ(行動意図のあるもの)だけをまず登録する
・除外キーワードは構築時に意図違いを入れておく
・広告は1つだけ登録し、Doクエリを見出しに含めて作る
・見出し・説明文はフルで設定し、有効性を高める
また、コンバージョン計測設定は必ず行ってください。計測しないと自動入札(目標コンバージョン単価やコンバージョン数最大化等)の学習が進みません。
シンプルなアカウント構造も、正しいコンバージョン計測があってこそ機能するものですので、忘れないようにしましょう。
シンプルな構造を作り、コンバージョン計測を正しく設定し、自動入札戦略を適用する。この3つが揃えば、前回お伝えした「週に2回、30分だけ」の確認で成果が安定する運用が実現できるでしょう。
次回は最終回です。「キーワードも広告文も問題ないのに、なぜかコンバージョンが増えない」。そんなときに見直すべきは、広告の受け皿であるLP(ランディングページ)です。運用テクニック以前に押さえるべきLPの鉄則を解説します。


