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【事例で学ぶJTBD】顧客の本質的ニーズを掴む思考法|ヒット商品を生み出すフレームワーク

2026.2.2
読了まで約 10

本記事では、顧客の本質的なニーズを掴むための強力なフレームワーク「JTBD(Jobs-to-be-Done)理論」を、初心者にも分かりやすく解説します。JTBDとは何かという基本概念から、マクドナルドや任天堂Wiiといった有名企業の成功事例、明日から実践できる具体的な分析ステップまでを網羅。顧客が商品を「買う」本当の理由である「ジョブ(片づけたい仕事)」を理解し、イノベーションを生み出す思考法を学びましょう。

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JTBD(ジョブ理論)とは何か

この章では、ヒット商品を生み出すための思考法である「JTBD(ジョブ理論)」の基本的な概念から、現代のマーケティングにおいてなぜ重要視されているのか、そしてジョブを構成する3つの側面について、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。

顧客が本当に「片づけたい仕事」を見つける思考法

JTBD(ジョブ理論)とは、顧客が特定の商品やサービスを購入するのは、自身の生活における特定の「仕事(ジョブ)」を片づけるために、それを「雇用」しているという考え方です。 この理論は、『イノベーションのジレンマ』の著者としても知られるハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授によって提唱されました。

顧客の行動を「ジョブを片づける」というユニークな視点で捉えることで、製品の機能や顧客の属性といった表面的な情報に惑わされず、その背後にある本質的な動機や目的を探り当てることができます。 例えば、顧客が「会計ソフト」を導入する(雇用する)のは、ソフトが欲しいからではなく、「毎月の請求書発行業務を効率化し、コア業務に集中する時間を確保したい」というジョブを片づけたいからなのです。

なぜ今JTBDがマーケティングで重要なのか

現代の市場は技術が成熟し、多くの製品・サービスが機能面で類似しています。このようなコモディティ化が進む中で、スペックや価格だけで競合と差別化を図ることはますます困難になっています。従来の属性(年齢、性別、年収など)に基づいたペルソナ分析だけでは、顧客がなぜその商品を選ぶのか、という根本的な理由を捉えきれないケースが増えているのです。

JTBDが重要視されるのは、顧客が置かれている「状況(コンテキスト)」に焦点を当てるからです。 同じ人物であっても、状況が変われば片づけたいジョブも変わり、そのために「雇用」する解決策も変わります。この「状況」を深く理解することで、これまで見過ごされてきた新たなニーズを発見し、競争の激しい市場から抜け出して独自の価値を創造するチャンスが生まれるのです。

関連記事:商品やサービスの「コモディティ化」ってどんな意味? 問題視される理由や原因・対策を解説

機能的・社会的・感情的の3つの側面

顧客が片づけたい「ジョブ」は、単一の目的で構成されているわけではありません。JTBDでは、ジョブは主に「機能的」「社会的」「感情的」という3つの側面から成り立っていると考えられています。 これらの側面を多角的に理解することで、より深く顧客のインサイトを捉えることができます。

ジョブの側面 内容 BtoBにおける例(最新の勤怠管理システムを導入するケース)
機能的ジョブ 特定のタスクを効率的かつ効果的に完了させたいという、実用的な目的。 従業員の労働時間を正確に把握し、給与計算を自動化したい。
社会的ジョブ 他者からどのように見られたいか、特定の集団に属したいという社会的な目的。 先進的なITツールを導入し、働き方改革に積極的な企業であると認知されたい。
感情的ジョブ 特定の感情を味わいたい、あるいは避けたいという内面的な目的。 複雑な手作業による集計ミスへの不安から解放され、安心感を得たい。

このように、BtoB領域においても顧客(企業)は単に機能的な課題解決だけを求めているわけではありません。社会的・感情的なジョブも同時に片づけようとしています。これらの複合的なジョブを理解し、それに応えるソリューションを提案することが、商談化率や受注率の向上に繋がります。

JTBDと他のフレームワークとの違い

この章では、JTBD(ジョブ理論)が、これまで多くのマーケターが活用してきた「ペルソナ」や「ニーズ・ウォンツ」といった考え方とどのように異なり、どのような優位性を持つのかを解説します。それぞれの違いを理解することで、顧客理解の精度を一層高めることができるでしょう。

ペルソナ分析の限界とJTBDの優位性

ペルソナ分析は、ターゲット顧客を架空の人物として具体的に描き出すことで、チーム内の顧客イメージを統一するのに役立つ手法です。しかし、顧客の属性やライフスタイルといった「どのような人か」という情報だけでは、購買行動の根本的な理由を説明できないケースがあります。なぜなら、同じ属性の人物でも、置かれた状況によって全く異なる選択をするからです。

一方、JTBDは顧客の属性ではなく、特定の状況下で「片づけたい仕事(ジョブ)」は何か、という目的に焦点を当てます。これにより、なぜ顧客がその製品やサービスを「雇用」するのか、という購買行動の因果関係をより深く、本質的に捉えることができます。 このアプローチは、特にBtoBマーケティングにおいて、導入決定の背景にある組織的な課題や担当者の個人的なミッションを理解する上で非常に有効です。

  ペルソナ分析 JTBD(ジョブ理論)
焦点 顧客の属性・特徴(どのような人か) 顧客の目的・状況(何を片づけたいか)
主な問い ターゲットは誰か? 顧客はなぜそれを買うのか?
分析の単位 架空の人物像 特定の状況で発生する「ジョブ」
主な課題 実在しない理想像になりがち。 状況による行動変化を捉えにくい。 ジョブの発見に深い顧客理解と洞察力が必要。

ニーズとウォンツではなく「ジョブ」で捉える

マーケティングの基本として「ニーズ」と「ウォンツ」があります。「ニーズ」は顧客が感じている理想と現実のギャップ(必要性)であり、「ウォンツ」はそのニーズを満たすための具体的な欲求や手段を指します。 例えば、「業務を効率化したい」がニーズで、「新しいSaaSツールが欲しい」がウォンツです。

JTBDは、このニーズが生まれるさらに手前の「背景」や「文脈」に注目します。なぜ業務を効率化したいのか?その背景には「残業を減らしてプライベートの時間を確保したい」「より創造的な仕事に時間を使いたい」「チーム全体の生産性を上げて評価されたい」といった、様々な「ジョブ」が存在する可能性があります。「ジョブ」の解像度を上げることで、顧客自身も気づいていない動機を掘り起こし、より強力な価値提案に繋げることができるのです

関連記事:ニーズとは一体何?ウォンツやシーズとの違いも解説

JTBDとペルソナを組み合わせたハイブリッドな活用法

JTBDはペルソナを完全に否定するものではなく、両者を組み合わせることで、より立体的で精度の高い顧客理解が可能になります。 これら2つのフレームワークは対立するものではなく、相互に補完し合う関係にあるのです。

具体的な活用法としては、まずJTBDを用いて顧客が解決したい本質的な「ジョブ」を特定します。次に、そのジョブを抱えているのは「どのような人物か」をペルソナで具体化します。このアプローチにより、「誰が(ペルソナ)」「どのような状況で(コンテキスト)」「何を達成しようとしているのか(ジョブ)」という一連のストーリーが明確になります。

例えば、BtoBのSaaSマーケターであれば、次のように整理できます。

  • ジョブ:複数部署にまたがるプロジェクトの進捗状況をリアルタイムで共有し、上層部への報告工数を削減したい。
  • ペルソナ:A社のマーケティング部マネージャー、40代。DX推進の責任者も兼務しており、非効率な業務フローに課題を感じている。

このように、「ジョブ」という目的と、その担い手である「ペルソナ」を掛け合わせることで、マーケティングメッセージはより鋭くなり、現場担当者から決裁者まで、各ステークホルダーに響くアプローチが可能になります。 結果として、商談化率やLTVの向上に大きく貢献するでしょう。

JTBDを理解する有名事例

この章では、JTBD(ジョブ理論)の概念をより深くご理解いただくために、具体的な有名事例を複数ご紹介します。製品そのものではなく、顧客が本当に「片づけたい仕事(ジョブ)」に着目することで、いかにして画期的な商品やサービスが生まれるのかを学んでいきましょう。

ドリルを買う人が欲しいのは穴である

「顧客がドリルを買うのは、ドリルが欲しいからではない。彼らが欲しいのは『穴』である」。これは、マーケティングの大家セオドア・レビットが提唱した有名な言葉です。 この考え方は、JTBDの根幹をなすものです。

顧客は製品の機能やスペックそのものを求めているわけではありません。自身の課題を解決し、ある状況をより良くするための「進歩」を求めているのです。 ドリルの例で言えば、「棚を取り付けるために壁に穴を開けたい」というジョブを片付けるために、ドリルという解決策を「雇用」します。もし、穴を開けるためにより簡単で優れた方法があれば、顧客はドリルを選ばないでしょう。この視点は、自社の製品やサービスが顧客のどんな「ジョブ」を解決しているのかを本質的に問い直すきっかけを与えてくれます。

QBハウスが解決した「1000円で髪を切りたい」以外のジョブ

QBハウスは「10分1000円(現在は料金改定)」というコンセプトで、理美容業界に革命をもたらしました。 表面的なニーズは「安く髪を切りたい」に見えますが、JTBDの観点で見ると、顧客が本当に片付けたかったジョブは別にありました。

それは「移動の合間などを使って、とにかく短時間で身だしなみを整えたい」というジョブです。 従来の理容室や美容室が提供していたシャンプーやマッサージ、長時間の会話といったサービスを「過剰」と感じ、時間を節約したいビジネスパーソンなどが主な顧客でした。QBハウスは、このジョブを解決するために、カットに特化し、予約不要で、駅ナカなどの好立地に出店する戦略をとったのです。

QBハウスが解決したジョブの3側面
ジョブの側面 詳細
機能的ジョブ 伸びた髪を切り、整える
社会的ジョブ 清潔感のある身だしなみで、他者からの信頼を得る
感情的ジョブ 時間を無駄にせず、効率的にタスクをこなせたという満足感を得る

任天堂Wiiがゲームをしなかった層を惹きつけた理由

2006年に発売された任天堂Wiiは、当時高性能化・複雑化の一途をたどっていたゲーム業界の常識を覆しました。Wiiが解決しようとしたジョブは、従来のゲーマー向けのものではなく、「普段ゲームをしない人も含め、家族や友人とリビングで一緒にワイワイ盛り上がりたい」というものでした。

直感的に操作できるWiiリモコンは、ゲームの経験がないお年寄りや小さな子供でもすぐに楽しむことを可能にしました。これにより、Wiiの競合は他の高性能ゲーム機ではなく、トランプやボードゲームといった「みんなで楽しむ娯楽」となり、全く新しい市場を創造することに成功したのです。

マクドナルドのミルクシェイクが朝に売れる本当の理由

JTBDを語る上で最も有名なのが、提唱者であるクレイトン・クリステンセン教授によるマクドナルドのミルクシェイクの事例です。 あるファストフードチェーンがミルクシェイクの売上を伸ばすために味の改良などを重ねましたが、効果は出ませんでした。 そこでクリステンセン教授のチームが顧客を観察したところ、驚くべき事実が判明します。

朝の時間帯にミルクシェイクを買う顧客の多くは、一人で車に乗り、長距離通勤をする人たちでした。彼らがミルクシェイクを「雇用」したジョブは、「退屈で長い通勤時間を、手持ち無沙汰にならず、かつ手や車を汚さずに乗り切りたい」というものだったのです。 ミルクシェイクは、腹持ちが良く、飲み終わるのに時間がかかり、片手で扱えるという点で、このジョブを片付けるのに最適な商品でした。この発見に基づき、より飲みごたえがあるように改良した結果、売上は大きく伸びました。

コンビニコーヒーが解決した顧客のジョブ

今や定番となったコンビニの淹れたてコーヒーも、JTBDの好例です。 顧客が解決したかったジョブは、「朝の出勤前や仕事の合間に、高すぎず、でも缶コーヒーよりは本格的で美味しいコーヒーを手軽に飲んで気分を切り替えたい」というものでした。

カフェチェーンのコーヒーは美味しいものの、価格が高めで、注文してから受け取るまでに時間がかかることがあります。一方、自動販売機の缶コーヒーは手軽ですが、味に物足りなさを感じる人もいます。コンビニコーヒーは、この両者の間にある「価格」「品質」「手軽さ」の絶妙なバランスを満たすことで、新たな巨大市場を切り開きました。

ZOOMがビデオ通話市場で急成長した背景

コロナ禍で一気に普及したビデオ通話ツール「Zoom」ですが、その成功は単なる時流に乗っただけではありません。 以前から存在したSkypeやCisco Webexといった競合サービスが抱えていた課題を解決した点に、成功の要因があります。

Zoomが解決したジョブは、「ITリテラシーを問わず、誰でも簡単に、安定した品質のビデオ通話を開始・参加したい」というものです。 アカウント作成なしでURLをクリックするだけで参加できる手軽さや、比較的多くの人数が参加しても通信が安定している点が、ビジネスシーンでの「スムーズな会議運営」やプライベートでの「気軽なコミュニケーション」というジョブを的確に片付け、多くのユーザーに選ばれる理由となりました。

Netflixはレンタルビデオ店ではなく「退屈な時間」と競合

世界的な動画配信サービスであるNetflixは、その競合を他の配信サービスやテレビ局だけに設定していません。共同創業者で現会長のリード・ヘイスティングスはかつて「我々の競合は睡眠である」と語っています。

これは、顧客がNetflixを「雇用」するジョブが「面白い映画やドラマを観たい」だけでなく、より広く「手持ち無沙汰な時間や退屈な時間を満たしたい」ことにあると捉えているからです。 この視点に立つと、競合はYouTubeやSNS、ゲーム、読書、そして「寝ること」といった、可処分時間の使い方すべてになります。この広範な競合認識が、オリジナルコンテンツへの巨額投資や、ユーザーを飽きさせないレコメンド機能の強化といった戦略につながっているのです。

JTBD分析を実践する具体的な4ステップ

この章では、顧客のジョブを明らかにし、ヒット商品を生み出すための具体的な分析プロセスを4つのステップに分けて解説します。BtoBマーケターの方が現場ですぐに活用できるよう、各ステップの目的と実践のポイントをまとめました。

ステップ1 顧客インタビューでジョブを発見する

最初のステップは、顧客へのインタビューを通じて、彼らが本当に「片づけたい」と思っているジョブを発見することです。ここでは、製品の機能や満足度を聞くのではなく、顧客がどのような状況で、どのような課題を解決するために製品を「雇用」したのか、その背景にあるストーリーを深掘りします。特にBtoB領域では、導入決定者だけでなく、現場のエンドユーザーにも話を聞くことが重要です。

インタビューでは、「その製品を導入する前は、どのように業務を行っていましたか?」「何がきっかけで、新しいツールを探し始めましたか?」「導入の決め手になったのは何でしたか?」といった質問を通じて、製品購入に至るまでの行動や感情の変化を時系列で捉えます。重要なのは、顧客が「何を買ったか」ではなく「なぜそれを採用したのか」という背景にある文脈を明らかにすることです。

関連記事:お客様の声を活かす方法とは!サービス向上にやるべきこと!

ステップ2 ジョブマップで顧客の行動を可視化する

次に、インタビューで得られた情報をもとに「ジョブマップ」を作成します。ジョブマップとは、顧客がジョブを片づけようと思い立ってから、完了するまでの一連の行動プロセスを時系列で可視化したものです。 これにより、顧客の行動を俯瞰し、どの段階で困難(ペインポイント)を感じているのかを特定できます。

一般的に、ジョブマップは以下の8つのステージで構成されます。

ステージ 説明
1. 定義する 解決すべきジョブの目標や計画を立てる
2. 特定する ジョブを解決するために必要な情報を集める
3. 準備する 実行環境や必要なツールを整える
4. 確認する 実行可能か、正しい手順かを確認する
5. 実行する 実際にジョブを遂行する
6. 監視する 進捗や成果をモニタリングする
7. 修正する 問題が発生した場合に軌道修正を行う
8. 完了する ジョブを完了させ、後片付けをする

BtoBのSaaSツールを例にすると、「実行する」ステージで「操作が複雑で時間がかかる」といったペインがあれば、そこにUI/UX改善の機会が見つかります。各ステージで顧客が抱える課題やペインポイントを洗い出すことが、新たな価値提案のヒントになります。

ステップ3 価値提案キャンバスを作成する

ジョブマップで見えてきた顧客の課題に対し、自社の製品やサービスがどのような価値を提供できるのかを具体的に整理するのが「価値提案キャンバス」です。 このフレームワークは、顧客の視点(顧客のジョブ、利益、悩み)と、提供価値の視点(製品・サービス、利益をもたらすもの、悩みを取り除くもの)の2つを組み合わせて、両者のフィット感を高めるために使われます。

まず、顧客プロフィール(円形の部分)に、顧客が片づけたい「ジョブ」、ジョブを遂行する上で得たい「ゲイン(利得)」、そして感じる「ペイン(悩み)」を書き出します。次に対応する価値提案マップ(四角形の部分)で、自社の「製品・サービス」が、どのようにして顧客のペインを取り除く「ペインリリーバー」となり、ゲインを創造する「ゲインクリエイター」となるのかを定義します。顧客の課題と自社の提供価値が完全に一致している状態(フィット)を目指すことが、このステップのゴールです。

ステップ4 競合を特定し差別化を図る

最後のステップは、JTBDの視点で競合を再定義し、差別化戦略を構築することです。JTBDにおける競合とは、同じカテゴリーの製品だけではありません。顧客が同じジョブを片づけるために利用する代替手段すべてが競合となります

例えば、業務効率化SaaSの競合は、他のSaaSツールだけではありません。「Excelでの手作業」「アウトソーシング(外注)」「そもそも何もしない(現状維持)」といった選択肢も、顧客がジョブを片づけるために「雇用」する可能性がある競合です。これらの代替手段と比較した際に、「なぜ自社の製品が最も優れた解決策なのか」を明確に打ち出すことが重要です。これにより、価格競争から脱却し、自社独自のポジションを築くことができます。

JTBDを導入して得られる3つのメリット

 

この章では、JTBDのフレームワークをビジネスに導入することで、具体的にどのような恩恵がもたらされるのかを解説していきます。特にBtoBマーケターが直面しがちな課題と関連付けながら、3つの主要なメリットを掘り下げていきましょう。

本質的な顧客ニーズに基づいた商品開発ができる

JTBDを導入する最大のメリットは、顧客が本当に解決したい課題、すなわち「ジョブ」を深く理解し、それに基づいた商品開発やサービス改善を行える点にあります。従来のペルソナ分析では顧客の属性や行動パターンに注目しますが、JTBDでは「なぜその製品を雇う(利用する)のか」という根本的な動機に迫ります。 例えば、業務効率化SaaSを開発する際に、「多機能なタスク管理ツール」という製品スペックから発想するのではなく、「チーム内の情報共有を円滑にし、プロジェクトの手戻りをなくしたい」という顧客のジョブに着目します。これにより、顧客自身も気づいていない潜在的な「ジョブ」を発見し、真に価値のあるソリューションを提供できるため、プロダクトの成功確率を格段に高めることが可能になります。

価格競争から脱却し新たな市場を創造する

多くの市場では、機能やスペックの追加競争が激化し、最終的には価格競争に陥りがちです。 JTBDは、この消耗戦から抜け出すための羅針盤となります。顧客の「ジョブ」に焦点を当てることで、競合他社とは全く異なる価値提案が可能になるからです。 つまり、製品の機能比較という土俵から降り、「いかに顧客のジョブをうまく片付けられるか」という新しい競争軸を創出するのです。これにより、競合とは異なる土俵で戦うことで、持続的な競争優位性を確立し、価格ではなく価値で選ばれる存在になることができます。

比較軸 従来の機能中心アプローチ JTBDアプローチ
焦点 製品の機能、スペック、価格 顧客が片づけたい仕事(ジョブ)
競争 同質化しやすく、価格競争に陥りやすい 独自の価値提案による差別化
結果 短期的な売上、利益率の低下 新たな市場の創造、顧客ロイヤルティの向上

チーム内で顧客理解の共通認識が生まれる

JTBDは、組織内の異なる部門が顧客について議論する際の「共通言語」として機能します。 例えば、BtoBの現場では、営業部門が「顧客は機能Aを求めている」と主張し、開発部門は「実装コストが高い」と反論し、マーケティング部門は「競合B社にはない機能Cを訴求すべき」と考えるなど、部門間の分断が起こりがちです。しかし、「顧客のジョブは何か」という共通の視点を持つことで、「そのジョブを最も効果的に解決できる方法は何か」という建設的な議論へと発展させることができます。顧客の「ジョブ」を共通言語とすることで、組織全体のベクトルを合わせ、一貫した顧客体験を創出できるようになり、結果としてチーム全体のパフォーマンス向上につながるのです。

まとめ

本記事では、顧客が本当に片づけたい「仕事」を見つける思考法であるJTBDについて、その概念から具体的な分析ステップ、有名企業の事例までを解説してきました。顧客は製品の機能ではなく、自身のジョブを解決するために購買を決定するというのがJTBDの結論です。この視点を取り入れることで、本質的なニーズに基づいた商品開発や価格競争からの脱却が可能になります。ぜひ、あなたのビジネスにもJTBDのフレームワークを活用してみてください。

監修者

古宮 大志(こみや だいし)

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長

大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、クライアントのオウンドメディアの構築・運用支援やマーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。Webマーケティングはもちろん、SEOやデジタル技術の知見など、あらゆる分野に精通し、日々情報のアップデートに邁進している。

※プロフィールに記載された所属、肩書き等の情報は、取材・執筆・公開時点のものです

執筆者

マーケトランク編集部(マーケトランクへんしゅうぶ)

マーケターが知りたい情報や、今、読むべき記事を発信。Webマーケティングの基礎知識から、知っておきたいトレンドニュース、実践に役立つSEO最新事例など詳しく紹介します。 さらに人事・採用分野で注目を集める「採用マーケティング」に関する情報もお届けします。 独自の視点で、読んだ後から使えるマーケティング全般の情報を発信します。

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