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マーケターの知りたい!が詰まったマーケトランク

「教育」と「販促」をつないで作る新しいマーケティングのカタチ
“みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト”の挑戦と可能性

2026.4.2
読了まで約 5

投資家、取引先、そして消費者。あらゆるステークホルダーが企業に対し、「脱炭素への具体的な回答」を要請する機会が増しています。2050年のカーボンニュートラル実現に向け、サプライチェーン全体での排出量削減が求められる中、企業は単なる環境配慮を超えた、より実効性の高いアクションを迫られています。

こうした背景から、マーケティングの領域でも大きな変革が起きています。製品の機能や価格だけでなく、環境価値を顧客体験に組み込む「脱炭素マーケティング」の重要性が増しているのです。しかし、消費者の意識変容を促し、具体的な行動(削減)へと繋げるプロセスには、多くの企業が課題を感じているのが実情です。

そこで本稿では、日本総合研究所が主導する「みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」について詳しくご紹介します。このプロジェクトは、生活者の暮らしの中に「脱炭素」を自然に溶け込ませるため、企業と生活者が共にアイデアを形にし、その実効性を検証する「共創型の実験場」です。
真の「サステナビリティ」を実現するために、企業はどのように生活者と手を取り合い、行動変容をデザインしていくべきなのか。本プロジェクトが示す、これからの時代のマーケティングの在り方と、社会実装のヒントを紐解きます。

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脱炭素マーケティングの新しい地平

気候変動・脱炭素に関する社会的要請は、いまや企業の経営や自治体の政策はもちろん、生活者の消費行動にも影響を与える時代となりつつあります。環境や脱炭素に配慮した商品を「作る」ことと「売る」ことは多くの企業が取り組み始めていますが、「買う」側の行動は取り組みが十分進んでいるとは言い難い状況にあります。昔に比べて環境に対する行動は広がっていると見聞きすることもありますが、実のところ本当に変わったかも定かではありません。ビジネスの現場では、メーカーが環境や脱炭素に対応できる良い商品を開発し、小売が売場で訴求しても、生活者は環境や脱炭素を意識して商品を選ぶことは稀で、環境や脱炭素を理由に商品を買うのは難しいのではないか、という諦めに近い声も聞かれます。

この脱炭素に関する消費者の購買行動の壁を乗り越え、社会的なムーブメントを広げるべく、日本総合研究所が立ち上げた活動が「みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」です。本稿では、このプロジェクトの全体像と主要な実証成果、教育啓発と販促購買をつなぐ新たなマーケティングの可能性について整理し、企業でマーケティングや販促・広報・ブランディングなどを担当する皆さんが、環境や脱炭素、サステナビリティと事業との両立を実現するのに役立つ実践的示唆をご紹介します。

脱炭素市場の“三者三様の壁”

脱炭素社会の実現に向けて、商品を「作る側」(メーカー)・「売る側」(小売)・「買う側」(生活者)の三者には、それぞれ異なる論理と障壁があります。

・メーカー :脱炭素対応したよいものを作るので少々高くても買ってほしい
・小売 :脱炭素対応は進める必要があるけど売れないものは売場の棚には置けない
・生活者 :脱炭素対応したものは興味あるけど売場の棚で見たことがないので買えない

この三すくみの状況を打破すべく、メーカーと小売の担当者が社内調整に骨を折り、ようやく脱炭素配慮商品を売場の棚に置けたとしても、生活者からは価格の高さを理由に見向きもされず、メーカーと小売の社内に「脱炭素配慮商品は売れない」という失敗体験だけが残り、三すくみの状況に舞い戻り、また新たな担当者が・・・を、繰り返すこととなります。

この壁を乗り越えるためには、脱炭素対応したよいものを安く買えるにようするか、脱炭素対応という価値に対して少し高いけど購買するという行動を誘発するようにするか、のアプローチを実現する必要があります。前者のアプローチは、メーカー各社の不断の努力や、ポイント還元や補助金などの手法で実現してきたわけですが、この手法だけでは持続的ではありません。メーカーの努力やポイント原資には限りがあります。

そのため、後者のアプローチ、すなわち「生活者の行動変容」に取り組むことにも手当をする必要があります。買い手が脱炭素対応に価値を見出すようになれば、売り手は変わります。売り手が変われば作り手も変わり、これらが連鎖することで社会が変わっていくものと考えます。

私たちはこうしたことから、「教育啓発」と「販促購買」(店頭やアプリでの体験)を一気通貫で設計し、生活者の認知・行動を促す仕組みをつくることを目指しました。そして、民間企業が長らく広告宣伝販促に投じてきた「販促購買」向けの大きなおカネのほんの一部を「教育啓発」に仕向けることで、活動の持続性にも配慮しようという試みです。この仕組みを「グリーン・マーケティング」と定義し、その効果を実証するプロジェクトを立ち上げました。

図表 背景と狙い

画像:脱炭素界隈の悩み事と活動コンセプト

みんなで減CO2プロジェクトの全体像と仕組み

「みんなで減CO2プロジェクト」は、自治体(大阪府、兵庫県、奈良県、京都府、横浜市)と民間企業15社から成るコンソーシアム(チャレンジ・カーボンニュートラル・コンソーシアム(CCNC))が公民連携で、エリア内の小学校4~6年生約53万人とその保護者に対して、学校や催事・店舗の場を活用して、学んだことを買い物で実践する行動変容を促す活動です(自治体、企業数は2026年3月末時点)。脱炭素をテーマに、学校での学び→家庭での学び→親子での会話→店舗への誘導→店舗での学び→商品の購買、を誘発するシームレスな導線を設計しました。

脱炭素に関する啓発・販促といえば、従来はPRイベントやポイント還元キャンペーンなどの手法が主で、意識は高まるけど行動につながらない、ポイント原資がなくなると効果が元に戻る、などが課題として指摘されてきました。

そこで、本プロジェクトでは行動が持続する仕掛けとすべく、

・エコラベル1・CFP2という分かりやすい「目印」を題材にして皆が取り組めるようにする
・身近な商品を通じて自分ゴトとして「目印」の意味を学び、探して、集める遊びの要素を組み込む
・子どもの学びをサポートし、子どもの未来を守るため、という大人の非金銭的動機に働きかける

という工夫を施しました。

1エコラベル:地球環境に配慮して生産・販売される商品に表示されるマークのこと。エコラベルが表示された商品を選択することで、地球環境の保全に貢献できる。
2CFP:カーボンフットプリント。商品やサービスの一生(原材料の調達、製造、輸送、販売、利用、廃棄、リサイクル)から出る温室効果ガスを表示する数値や仕組みのこと。CFP表示は商品のCO2削減に向けた取り組みの第一歩となる。

図表 行動変容の導線設計

画像:エコラベル・CFP(カーボンフットプリント)を目印にした子ども→大人への行動変容誘発の仕掛け

<2026年度の実施施策>

① 学校等での学びによる意識変容
連携自治体内の小学校4~6年生に対象に、気候変動やエコラベル・CFPを学習できる「学習キット」を配布し、学校の授業や催事等の機会を通じて脱炭素教育を行いました。

② 家庭での学びによる意識変容
夏休みの自由研究課題として、身近な商品に表示されたエコラベル・CFPを探し、たくさん集めて応募する「学習コンテスト」を実施しました。学校での学びを家庭に持ち帰り、親子での学習を促しました。

③ 買い物における実践行動
食品スーパーやドラッグストアにおいて、学習キットや学習コンテストで扱ったエコラベル・CFPが表示された商品を対象とした販促キャンペーンを実施しました。商品に表示されたエコラベル・CFPの確認をキャンペーン応募条件とすることで、学校や家庭での学びと店頭での買い物を結びつけました。

④ 行動変容のデータ分析
学習コンテストやキャンペーンの参加者に対するアンケートやID-POSデータを組み合わせて、「教育啓発から購買行動」の導線の効果を定量的に分析しました。特に、教育啓発が購買行動にどのような影響を及ぼすか、その効果はどれくらい持続するか、を中心に検証しました。

生活者の行動はどう変わったか

一連の施策により、生活者が“楽しく学ぶ”仕掛けによって、やらされ感なく自発的に行動を変えた、ということが分かりました。具体的には下記のような結果が出ました。

・エコラベル・CFPを「商品選択時に確認する」保護者が約7倍に増加
・エコラベル・CFPの表示を理由に「初めて購入」した人や「多少高くても購入」した人を誘発
・学習啓発に参加した児童の保護者は、参加していない人に比べて商品の購入金額・単価・個数が20~30ポイント上昇
・学習啓発に参加した児童の保護者は、参加していない人に比べて賞品の初回購入や継続購入が2~4ポイント上昇

また、参加した家庭に対するアンケートやインタビューからも、子どもの学びが家庭内の会話を生み、親の購買を変える「子→親の伝播モデル」が成立していたことが分かっています。

図表 学習啓発による効果

画像:学習啓発なしvs学習啓発あり

画像:脱炭素の親子会話+買い物時の意識化

マーケティング現場への実践的示唆

このプロジェクトの結果からは、サステナビリティの要素を取り込んだ販促やブランドコミュニケーションに対する示唆を得ることができます。

① 金銭的インセンティブ依存からの脱却
「楽しく学び、体験し、買う」というサイクルを設計することで、短期的な値引きやポイントに頼らない持続的な消費刺激が生まれます。価格訴求では届きにくい層にも、体験や学びを通じて行動変容を促すことが可能です。

② 教育・自治体連携は徐々に効く漢方薬
自治体と教育機関と連携は、企業の社会的価値と経済的価値の両立を実現できる施策を実現できます。とはいえ、民間企業の私益を目的とした教育機関との連携は成立しないため、自治体連携や業種横断で大義のために活動することも必要です。収益を上げたければ急がば回れ、市場創出のための活動がやがて実を結びます。

③ 教育と購買の同一体験設計が鍵
学習キットのビジュアルやコンテンツから、店頭のPOPやキャンペーンに至るまで、認知~購買までの導線を同一コンセプトで設計することで、自分ゴト化しにくいサステナブルなブランドメッセージが生活者に届くという難関を、ようやく突破できるようになります。

図表 マーケティングにおける教育啓発と販促購買の融合

画像:マーケティングにおける教育啓発と販促購買の融合

プロジェクトの社会的インパクトと今後の発展性

「みんなで減CO2プロジェクト」は、生活者の「学び」を起点とする新たな市場創造の取り組みです。これまでどちらかというと対立構造で語られることの多かった「教育」と「販促」の垣根を超え、データ計測・分析によるPDCA運用を取り込むことで、サステナ領域の取り組みをマーケティング、販促、広報、ブランディングの現場と接着できるようにしました。

課題も多く、工夫や改善すべき点ばかりですが、これまで停滞しがちであった脱炭素社会構築、ひいては「社会的価値」と「経済的価値」を両立させようと奮闘するマーケターの方々のヒントになれば幸いです。

執筆者

佐々木 努

佐々木 努(ささき つとむ)

株式会社日本総合研究所 グリーン・マーケティング・ラボ ラボ長 

京都大学大学院・工学研究科で都市環境工学を学んだ後、日本総合研究所に入社。
およそ20年にわたって、環境やエネルギー分野の事業戦略、事業開発支援に携わる。
2023年4月、生活者の意識・行動変容を促し、社会課題解決を目指す「グリーン・マーケティング・ラボ(GML)」を設立。
その活動の一環として、メーカーや小売をはじめ10社以上が参画する「チャレンジ・カーボンニュートラル・コンソーシアム(CCNC)」を立ち上げ、と公民連携で教育啓発と販促購買を一気通貫で実施する、共創型実証実験「みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」を主導する。

編集者

マーケトランク編集部(マーケトランクへんしゅうぶ)

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