ライフスタイルサポート事業(比較・情報サイト)、エンターテインメント事業(スマホゲーム)、EC事業の3本柱で事業を展開する株式会社エイチームは、同社グループの強みであるデジタルマーケティング⼒を中⼼に、 周辺市場‧周辺機能を拡充していくことで刷新した成⻑戦略の遂行を掲げている。
この連載では、同社のマーケティング戦略を担うスタッフが登場し、自社の強みや、独自のマーケティング戦略について語ってもらう。第2回目は、エイチームライフデザイン・プロモーションマーケティング本部・アドマーケティング部の目谷氏が、エイチームのWeb集客の新たな強みを作るべく注力している動画広告の取り組みについて解説する。
エイチーム連載記事
・エイチームが目指すデジタルマーケティングの勝ち筋とは? | エイチーム連載第1回
・エイチームのSEO戦略~データ分析と基盤作りについて~ |エイチーム連載第3回
・エイチームのブランディング戦略~ブランディングとしてのSNS運用~ |エイチーム連載第4回
・エイチームにおけるCX・DXへの取り組みとその道のり|エイチーム連載第5回
目次
「動画広告」をWeb集客の新たな強みに
自社の主力事業の1つである、デジタルマーケティング支援サービスは、その多くがアフィリエイトビジネスとして成り立っています。その中でも集客を支えているのは「リスティング広告」「SEO」の2本柱。
SNS・動画領域については、新たな集客の柱として、インオーガニック成長(外部との提携や買収を通じて成長すること)に向けた投資強化の取り組みを進めるのと同時に、社内でもノウハウを獲得する動きをとっています。
関連リンク
・アフィリエイトの概念を解説!基本な仕組みや進め方とは?
・リスティング広告の基礎知識を解説。メリットや特徴とは?
エイチームが動画広告に注力する理由は2つ
なぜ動画広告に力を入れているか?というと、主に2つの理由があります。
1つ目の理由は、縦型動画広告の市場規模の拡大です。
総務省の調査によると、LINEやInstagramなどのソーシャルメディア系サービス・アプリの利用率は全年代で右肩上がり。多くの人にとってSNSが身近な存在になっています。
関連リンク:総務省情報通信政策研究所 令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書
その中でも「縦型動画」は、フルスクリーンによる没入感・UGCによる親近感などから普及が進み、TikTok、Instagramストーリーズ・リール、YouTubeショートなど、各媒体で縦型動画の配信がリリースされました。
またサイバーエージェントの調査によると、2022年の動画広告市場は、昨対比133.2%の5,601億円と高い成長率をとげ、今後もさらなる拡大が予想されています。
関連リンク:サイバーエージェント、2022年国内動画広告の市場調査
これらの調査結果を見ても、今後Web集客における動画広告の重要性はさらに高まることが想定されます。エイチームの従来の集客の柱である「リスティング広告」「SEO」に加え、時代に沿った新たな集客手法として「動画広告」は重要であると考えています。
動画広告に注力する2つ目の理由は、自社・クライアント企業の利益にしっかり結びつくお客様を獲得するためです。
自社が展開する「デジタルマーケティング支援ビジネス」は、クライアント企業へ見込み顧客を紹介するビジネスです。
より多くのお客様を紹介するだけでなく、しっかり利益に結びつくお客様(ホットリード)を紹介するため、様々な工夫をこらしています。
その点「動画広告」は、ホットリードの獲得に効果的であると考えます。動画広告は、バナー広告・テキスト広告などと比較して、より多くの情報をわかりやすく伝えることが可能です。
テキストだけでは理解がしづらかったサービスのメリットが、動画広告によってお客様に伝わり、納得してサービスを申込んでいただくことに繋がれば、最終的に「しっかり利益に結び付くお客様」が増えていくと考えます。
1. 動画広告の市場規模の拡大
2. 利益に結び付くお客様の獲得
この2点を見据え、インハウスでも動画広告に取り組んでいます。
関連リンク
・YouTube広告の基本!種類や出し方、配信の流れまで解説します!
・BtoB動画広告の活用と動画作成のポイント
動画広告に取り組む上での課題は「費用対効果」
ただ、実際に「動画広告を強化するぞ!」と意気込んだものの、取り組むうえでの課題やハードルは尽きません。
課題に感じた点として、
・そもそも動画広告の企画~制作に工数・費用がかかる
・広告成果に影響する変動要素が多く、検証が複雑化しやすい
・工数がかかるために、改善施策を回すスピード感が遅くなってしまい、広告成果が出づらい
などがあげられます。
動画制作の工数面は言うまでもなく、リスティング広告は「テキスト」だけで制作は不要。ディスプレイ広告は「静止画バナー」なので画像素材さえ集めれば自前で制作可能。
であるのに対し、動画広告は「動画素材」「BGM」「ナレーション」を組み合わせて作るため、素材集めの工数もかかれば、動画制作ツールも必要・動画制作のセンスや技術も求められます。
また制作費用もかかります。動画1本にかかるコストに対し、消耗が激しい広告でCPAが合うのか?の不安が付きまといました。
制作工数・費用がかかるにもかかわらず、成果面がリスティング広告や、ディスプレイバナー広告よりも良いとは限りません。
むしろ「改善」の面では、動画は広告成果を振り返る要素が多く、慣れないうちはPDCAを回しづらい。加えて修正の工数もかかるため、施策改善のスピードが保てず、広告成果を合わせづらい。
このように動画広告は、工数がかかるわりに成果が合わせづらい「費用対効果」の良くない集客手法になってしまう課題がありました。
動画広告の重要性は理解しているものの、取り組む上でのハードルが高く、費用対効果が良いとも限らないため、短期的な成果のインパクトを重視して優先度が後ろ倒しになってしまう…。
このようなケースは、私たちだけでなく他の企業でも見られるのではないでしょうか。
関連リンク
・費用対効果とは?計算式や費用対効果が合わない時の高め方など網羅的に解説
・バナー広告がよくわかる!~サイズ選定から制作手順まで解説~
・PDCAサイクルはもう古い、時代遅れ?!OODAとの違いを含め解説!
課題・ハードルを乗り越えるための環境整備
「動画広告は制作の工数がかかる割に成果が合いづらい」課題に対し、しっかりと動画広告の成功確率を上げ、再現性を高めることで解決することができるよう、以下のことに取り組んでいます。
・動画制作の体制を整える
・振り返りの体制を整える
・サービスの垣根を超え広告成果の共通認識をそろえる
動画制作の体制を整える
まずは何より、動画の制作体制を整えることから始めました。
・インハウスで動画を作れる環境を整える
・外部で動画を作ってもらう環境を整える
動画が制作できる環境が整えば、まずは動画を作ることへのハードルが下がります。作りたいときに作れる状況をつくるべく、社内・社外問わず、制作環境を整えました。
振り返りの体制を整える
そして次に、振り返りの体制を整えました。
動画広告は、広告成果の変動要素が多岐にわたります。仮に広告成果が良い動画がでた時「この動画の何が良かったのか?」を振り返ると、「動画の冒頭の訴求がよかった?」「冒頭に登場する人がよかった?」「動画の長さが短い・長いのがよかった?」などなど様々な考察がでてきます。
また動画広告は、他の広告手法と比較して、見られる指標も多く存在します。動画の〇秒視聴率、〇秒時点のクリック率、など。リスティング広告やディスプレイバナー広告の指標よりも、細かく見ることが可能です。
指標が細かく見られる反面、振り返りが複雑化しやすいとも言えます。だからこそ、「結局何が成果に寄与している?」のノウハウがしっかりとたまり、動画広告の勝ち率が上がる振り返り体制は重要だと考えました。
振り返り体制とは具体的には、動画の要素の一覧化、動画の指標の一覧化、動画の指標と広告成果への関連性、振り返りの一連のフォーマットの追加などです。
サービスの垣根を超え広告成果の共通認識をそろえる
そして同時に、サービスの垣根を超え広告成果の共通認識をそろえることも行いました。
具体的には週に1度、動画広告に関わるメンバーが集まり、動画広告の振り返り会を開催。
動画広告の勝ちパターンが確立していないからこそ、皆で振り返りの共有をすることで、勝ち事例がでた際は、皆で見解を深め、すぐに取り入れられる環境を作ることを意識しました。
これらのことをすることで、リスティング広告やSEOなどの集客の柱に並ぶには及びませんが、少しずつWeb集客手法における「動画広告」のプレゼンスが上がってきている状況です。
まとめ
最後にまとめると、私たちは、「1.動画広告の市場規模の拡大」「2.クライアント企業の利益にしっかり結びつくお客様の獲得」の2点を見据え、動画広告に注力。
動画広告は、制作工数・費用がかかるのに対し、成果面が合いづらい課題がありますが、打率を上げて再現性を高めることで、課題を解決するべく、取り組みを進めてきました。
今後は、動画広告・SNS広告を、リスティング広告・SEOに並ぶ新たな柱にできるよう、社内ノウハウの蓄積と、インオーガニック成長(外部との提携や買収を通じて成長すること)を掛け合わせ、さらなる拡大を目指していきたいと思います。
次回は、SEOのテーマを深く掘り下げた内容のコラムをお届けする予定です。ぜひお楽しみにしてください。