オンラインショッピングが日常的になった現代社会において、「ライブコマース」という新たな販売手法が注目を集めています。ライブコマースとは、ライブ配信を通じて商品やサービスを紹介し、視聴者がリアルタイムで購入できるシステムのことを指します。この革新的なECの形態は、中国を中心に急速に普及し、わずか1時間の配信で数億円の売上を記録する事例も珍しくありません。
ライブコマースの特徴は、SNSなどのプラットフォームを利用して、配信者と視聴者が双方向のコミュニケーションを取りながら商品を紹介・販売する点にあります。従来のテレビショッピングとは異なり、視聴者はリアルタイムで質問やコメントを投稿でき、配信者はそれに即座に対応することができます。これにより、ネットショッピングでありながら、実店舗で買い物をするような臨場感と信頼感を得られるのが大きな魅力です。
ライブコマースは、ECサイトとライブ配信を融合させた新しい対面型のコミュニケーションツールとしても位置付けられています。芸能人やインフルエンサーが商品を紹介することで、視聴者の購買意欲を効果的に高められる点も特筆すべき特徴です。
この新しい販売手法は、2016年頃から中国で爆発的に成長し、市場規模とユーザー数の拡大が続いています。日本でも2017年頃から複数のサービスが開始され、今後の普及が期待されています。しかし、ユーザビリティや需要とのマッチングなど、市場に定着するためにはまだ課題も残されています。
ライブコマースは、単なるオンラインショッピングの進化形ではなく、エンターテインメント性を兼ね備えた新しい購買体験を提供する可能性を秘めています。今後、技術の進歩や消費者ニーズの変化に伴い、さらなる発展が期待される分野と言えるでしょう。
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目次
ライブコマースとは
ライブコマースとは、SNSなどでライブ配信をしながら視聴者と配信者がコミュニケーションでき、ECサイトとライブ配信を融合させた新しい対面型のコミュニケーションツールです。視聴者は芸能人やインフルエンサーによる商品紹介のライブの配信動画を見ながら気になる商品を購入できます。
ライブコマースは、従来のテレビショッピングをインターネット上で進化させた形態といえます。視聴者はリアルタイムで質問やコメントすることができ、ネットショッピングでありながら実店舗で買い物をするようなリアリティを味わえます。単純にアップロードされた動画を見るだけでは得られない臨場感があり、活用の仕方によっては視聴者の購買意欲を大いに高められる販売手法として非常に注目されている分野です。
ライブコマースは既に海外で人気のある新しい通販の形で、特に発祥の中国では2016年頃から商品販売者や購入者が爆発的に増加しています。市場規模やユーザー数ともに今後も拡大していくと考えられています。日本においては2017年頃から複数のサービスが始まり、国内に普及されることを期待されました。しかし、2019年までの約2年間でサービスがローンチされましたが、撤退する企業が相次ぐ結果となったことも事実です。
ライブコマースの需要の高まりを受けて参入する企業がある一方、ユーザーの使い勝手や理にかなっていない仕様では市場に定着しづらい反面もあります。そのため、ライブコマースを成功させるには、配信者の魅力や商品の訴求力はもちろん、使いやすいプラットフォームの構築や効果的なマーケティング戦略が不可欠です。
近年では、5G通信の普及やスマートフォンの高性能化により、ライブコマースの視聴環境も大きく改善されています。これにより、より高画質で安定したライブ配信が可能となり、ユーザー体験の向上にもつながっています。また、AIや機械学習技術を活用した個人化されたレコメンデーションシステムの導入など、ライブコマースの技術革新も進んでいます。
このように、ライブコマースは単なる通販の一形態にとどまらず、エンターテインメント性や社会的つながりを重視した新しい購買体験を提供する可能性を秘めています。今後も、ライブコマース市場の動向に注目が集まることでしょう。
ちなみに、中国本土やアジア新興国では2025年現在も市場規模が拡大し続けており、KOL(Key Opinion Leader/インフルエンサー)×AIレコメンドの連携が主流です。
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ライブコマースが注目される理由
前述したように、2016年頃から徐々に普及し始めたライブコマースですが、2020年から改めてまた注目されているのはなぜでしょうか。その理由として、2020年以降においては3つの理由があげられます。
1つ目は、ライブ配信の普及です。情報源がマスメディアからインターネットへ移行する中、SNSの利用が世界中で広がっています。人気SNSでライブ配信サービスが開始され、多くのユーザーがライブ動画に慣れてきました。これにより、ライブコマースが受け入れられやすい環境が整ってきたと言えるでしょう。
2つ目は、5G通信の開始です。2020年春から日本でも5G商用サービスが始まり、高速・低遅延・同時多数接続が実現しました。この通信システムの進化により、動画視聴のハードルが一層低くなり、ライブコマースの利用促進が期待されています。
3つ目は、巣ごもり消費の拡大です。コロナ禍以降のニューノーマル時代においても、家でお金を使う「巣ごもり消費」が新トレンドとなりました。この状況下で、Eコマース市場の売上が大幅に増加しており、ライブコマースへの需要も高まっています。
さらに、ライブコマースは従来のEコマースとは異なり、リアルタイムでの双方向コミュニケーションが可能です。商品の詳細な情報をその場で確認でき、購入の不安を解消できることも、注目される大きな理由の一つです。
ライブ配信の普及
情報源がテレビや新聞などのマスメディアからインターネットへ移行しつつある昨今、世界中で幅広い世代によってSNSが利用されています。多くのユーザーがいる人気のSNSで開始されたのが、ライブの配信サービスやその機能強化です。
このことにより、多くのユーザーがライブ動画に慣れていて、普及し始めた2016年頃と比較をするとライブコマースが受け入れられやすい環境になってきたと言えます。
ライブコマースの浸透には、ライブ配信プラットフォームの進化が大きく寄与しています。YouTubeやInstagram、TikTokなどの主要SNSがライブ配信機能を強化したことで、ユーザーはより身近にライブ動画を楽しめるようになりました。また、専門的なライブコマースプラットフォームも登場し、商品販売に特化した機能を提供しています。
ライブ配信の普及により、視聴者と配信者のリアルタイムなコミュニケーションが可能になりました。これはライブコマースの大きな特徴であり、従来のEコマースにはない魅力となっています。視聴者は商品について即座に質問でき、配信者は詳細な説明や実演を通じて商品の魅力を効果的に伝えることができます。
さらに、スマートフォンの高性能化やインターネット回線の高速化も、ライブ配信の普及を後押ししています。どこでも手軽に高画質のライブ動画を視聴できる環境が整ったことで、ライブコマースの利用シーンも拡大しています。通勤中や休憩時間など、隙間時間を活用して商品情報を得られることも、ユーザーにとって大きな利点となっています。
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5G通信の始まり
日本では2020年の春から国内の大手通信企業4社を筆頭に5G(5th Generation)の商用通信サービスがスタートし、それにより高速、低遅延、同時多数接続を実現しました。ライブコマースにおいても、5Gの導入によって大きな変革が期待されています。通信速度は4Gの数倍で、家庭やオフィスに普及している光ファイバーに匹敵する速さとも言われています。
膨大なデータ量を必要とするゲームや動画も、どこでも高速でダウンロードが可能となり、5Gという通信システムの進化によって、より一層に動画視聴のハードルが低くなると予想されるでしょう。ライブコマースの配信品質も飛躍的に向上し、より高画質・高音質の配信が可能になります。
さらに、5Gの特徴である低遅延性は、ライブコマースにおけるリアルタイムのやりとりをより円滑にします。視聴者からの質問やコメントに対して、配信者がほぼ遅延なく応答できるようになり、よりインタラクティブなライブコマース体験が実現します。これにより、視聴者の購買意欲を高め、商品の魅力をより効果的に伝えることが可能になるでしょう。
巣ごもり消費の拡大
2020年に世界規模で感染が拡大した新型コロナウイルスの影響により、ロックダウンや外出禁止令が発令され、現在でも各国や地域で不要な外出を避けるなど、以前の生活様式とは変わりました。日本も同様に国からの不要不急の外出自粛の要請に、イベント中止や商業施設の営業時間短縮などが続きました。
外出を控え、在宅化が進むことにより生まれた新らしいトレンドが、家でお金を消費する「巣ごもり消費」です。家で快適に過ごすためにゲームや健康器具、そして動画配信サービスなどのニーズが高まっています。コロナウイルスの影響により、世界中でEコマース市場の売り上げ増加が顕著となり、拡大する需要は想定以上だといえます。
この「巣ごもり消費」の拡大は、ライブコマースの成長にも大きく寄与しています。ライブコマースは、自宅にいながら商品を見て、質問し、購入できるため、外出自粛中の消費者にとって魅力的な選択肢となっています。特に、ファッションやコスメ、食品など、実際に見たり試したりしたい商品カテゴリーにおいて、ライブコマースの需要が高まっています。
さらに、ライブコマースは単なる買い物だけでなく、エンターテインメント性も兼ね備えているため、家で過ごす時間が増えた消費者にとって、楽しみの一つとなっています。インフルエンサーや専門家による商品紹介や使用方法の説明を視聴しながら、他の視聴者とチャットでコミュニケーションを取ることで、新しい形の社会的つながりを得ることができるのです。
こうして、コロナ禍以降のニューノーマル時代においても、ライブコマースを含むEC活用は消費者行動の主流となりつつあります。オフライン施策としてのリアルイベントの復活やO2O戦略との掛け合わせによる新たな潮流が生まれています。
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ライブコマースの特徴とは
ライブコマースの特徴について、詳しく見ていきましょう。ライブコマースは、従来のEコマースとは異なる独自の魅力を持っています。
まず、ライブコマースは、リアルタイムでの双方向コミュニケーションが可能です。視聴者は配信者と直接やり取りができ、商品についての疑問をその場で解消できます。これにより、実店舗での買い物体験に近い臨場感が得られます。
また、ライブコマースでは、商品の実際の使用感や質感を動画で確認できます。静止画や文字情報だけでは伝わりにくい商品の特徴も、ライブ配信を通じて視覚的に理解することができます。
さらに、ライブコマースの大きな特徴として、即時性が挙げられます。視聴者は配信を見ながらすぐに購入決定ができ、購入までの導線がスムーズです。これにより、衝動買いを促進する効果も期待できます。
インタラクティブ性
従来のEコマースはインターネット上に実店舗があるイメージで、商品の選定から購入までを基本的に自身で行います。
ライブコマースと比較をすると、Eコマースにテレビショッピングとインタラクティブ性を掛け合わせたスタイルになります。配信者と視聴者の双方向のやり取りが発生することで、実店舗で買い物をするような疑似体験やコミュニケーションが存在します。
文字や画像ではわかりにくい情報も、インタラクティブなコミュニケーションが発生することで手軽に伝えることが可能になります。
また、ライブ配信だからこそ味わえるオンタイムの臨場感や、配信者とのやり取りが心地よいほど、選定から購入に至る過程にワクワクや楽しさが加わるでしょう。ライブコマースの特徴であるインタラクティブ性は、視聴者の購買意欲を高める重要な要素となっています。
ライブコマースでは、視聴者からの質問やコメントにリアルタイムで対応できるため、商品に関する疑問をその場で解消することができます。この即時性が、従来のEコマースにはない魅力となっています。さらに、ライブコマースのインタラクティブ性は、商品の使用感や質感など、文字や静止画では伝えきれない情報を、視聴者に効果的に伝える手段としても機能します。
このように、ライブコマースのインタラクティブ性は、単なる商品販売にとどまらず、視聴者と配信者が一体となって作り上げる新しい購買体験を提供しています。この特徴が、ライブコマースの人気と成長を支える大きな要因となっているのです。
インフルエンサーの存在
多くのファンやフォロワーがいる有名タレントや、人気のあるインフルエンサーがライブコマースを通じて商品紹介を行うことで、商品に興味を持ちにくい潜在層の獲得が期待できます。配信者の影響力によって興味の度合いは左右されますが、収益性やPRに繋がる効果は高いと言えます。ライブコマースにおいて、インフルエンサーは視聴者と商品を結びつける重要な役割を果たします。
一方で、課題として配信中に閲覧されなければ意味をなさない等、知名度のある人物の選定や告知等の工夫を模索する時間が必要になるでしょう。ライブコマースの成功には、適切なインフルエンサーの起用と効果的な宣伝戦略が不可欠です。
また、インフルエンサーの個性や魅力がライブコマースの視聴者数や購買意欲に大きく影響します。商品との相性や、インフルエンサーの専門性、信頼性なども考慮する必要があります。さらに、ライブコマース特有の即時性や双方向性を活かし、インフルエンサーと視聴者との密接なコミュニケーションを促進することで、より高い効果が期待できます。
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ライブコマースのメリット
ライブコマースには、従来のECにはない大きなメリットがあります。ここでは、ライブコマースならではの特徴的なメリットを解説します。
まず、リアルタイムでの双方向コミュニケーションが可能です。ライブコマースでは、視聴者が商品に関する質問をその場で投稿でき、配信者がすぐに回答できます。これにより、商品の詳細や使用感などをより具体的に理解することができ、購買意欲の向上につながります。
次に、視覚的な商品紹介ができることも大きな利点です。ライブ映像を通じて、商品の実際の色味や質感、サイズ感などを伝えることができます。静止画や文章だけでは伝わりにくい情報も、ライブコマースなら効果的に伝えられます。
さらに、即時性と限定感も魅力の一つです。ライブコマース中に限定商品や特別価格を提供することで、視聴者の購買意欲を高めることができます。この「今しかない」という感覚が、衝動買いを促進する要因となります。
最後に、エンターテイメント性も重要なメリットです。ライブコマースは単なる商品紹介にとどまらず、視聴者を楽しませる要素も含まれています。これにより、商品への興味関心が自然と高まり、結果として購買行動につながりやすくなります。
これらのメリットにより、ライブコマースは従来のECよりも高い購買率や顧客満足度を実現できる可能性があります。企業にとっては新たな販売チャネルとして、消費者にとっては新しい買い物体験として、ライブコマースの重要性は今後さらに高まっていくでしょう。
ユーザーの疑問にその場で返答できる
ライブコマースの最大の特徴は、配信者と閲覧するユーザーがリアルタイムで双方向にコミュニケーションできる点です。ユーザーは気軽に配信者に質問やコメントを投稿でき、配信者はその場で即座に返答することができます。この即時性がライブコマースの魅力であり、従来のEコマースにはない体験を提供します。
例えば、商品の色味や素材感、使用感などについて、ユーザーが気になる点をその場で質問できます。配信者は実際に商品を手に取りながら詳しく説明したり、使用デモンストレーションを行ったりすることで、ユーザーの疑問を解消できます。これにより、ユーザーは購入の意思決定に必要な情報をリアルタイムで得られるため、購買意欲が高まりやすくなります。
また、ライブコマースでは、配信者がユーザーの反応を見ながら商品説明を進められるため、より効果的なプレゼンテーションが可能です。ユーザーの関心が高い点に焦点を当てたり、よくある質問に先回りして答えたりすることで、商品の魅力をより深く伝えられます。
さらに、ライブコマースでは、配信者とユーザー、またはユーザー同士のコミュニケーションを通じて、一種のコミュニティ感覚が生まれやすくなります。これにより、単なる商品購入だけでなく、楽しい体験としてライブコマースに参加する動機にもなり得ます。
このように、ライブコマースは実店舗での買い物体験に近い臨場感と即時性を提供しつつ、オンラインショッピングの利便性も兼ね備えた新しい販売形態として、今後さらなる成長が期待されています。
購入までの導線がスムーズ
ライブコマースでは商品を欲しいと思ってから購入までの導線がスムーズであり、その場で「お金を払う」という行為ができるため、敷居が低くなることもメリットになります。ユーザーは商品の質や値段で納得していても、支払い時に購入をためらってしまうことがあります。購入時に煩雑な入力や手間がかかる手続きを促してしまうと、面倒と思われ、購買意欲を下がる可能性が高いです。
ライブコマースのプラットフォームでは、購入までわずか数回のタップやクリックで完了するため、瞬間的に生まれた購買意欲が下がることなくスムーズに購入に至ります。これはライブコマースの大きな特徴であり、従来のEコマースと比較しても優位性があります。ユーザー目線でもストレスなく購入ができるので、ネガティブな印象が残りにくく、ポジティブな体験として記憶されるため、リピーターやファンの獲得に期待できます。
さらに、ライブコマースでは配信者とのリアルタイムなコミュニケーションを通じて商品の魅力を直接伝えることができるため、購入の決断をより後押しする効果があります。これにより、従来のEコマースよりも高い購買率を実現できる可能性があります。
ライブコマースのデメリット
ライブコマースにはメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
第一に、Web上での集客が必要不可欠です。ライブコマースは基本的にオンラインで行われるため、視聴者を集めるための効果的な宣伝戦略が求められます。SNSやメールマーケティングなどを活用し、ライブコマースの開催情報を事前に周知する必要があります。
第二に、技術的なトラブルのリスクがあります。ライブ配信中に接続が切れたり、音声や映像の品質が低下したりする可能性があります。これらの問題は視聴者の購買意欲を著しく低下させる可能性があるため、安定した配信環境の確保が重要です。
第三に、ライブコマースは即時性が高いため、在庫管理や配送の準備に迅速な対応が求められます。特に人気商品が短時間で完売した場合、追加生産や在庫確保に時間がかかり、顧客の期待に応えられない可能性があります。
最後に、ライブコマースの成功は配信者のスキルに大きく依存します。商品知識だけでなく、視聴者とのコミュニケーション能力や、ライブ配信特有の臨機応変な対応力が必要となります。適切な人材の確保や育成にコストがかかる可能性があります。
これらのデメリットを認識し、適切に対策を講じることで、ライブコマースの効果を最大限に引き出すことができるでしょう。
Web上で集客を行う必要がある
ライブコマースは商品を販売するためには、まずライブ配信に視聴者を集める必要があります。これは従来の実店舗での販売と大きく異なる点です。ライブコマースでは、Web上で効果的な集客戦略を立てることが重要になります。SNSやメールマガジン、ウェブ広告などを活用し、ターゲットとなる顧客層にリーチする必要があります。
また、ライブコマースの成功には、魅力的なコンテンツ作りも欠かせません。単に商品を紹介するだけでなく、視聴者を引き付ける企画や演出が求められます。これには時間とリソースがかかるため、ライブコマースを始める際には十分な準備が必要です。
さらに、ライブ配信中の技術的なトラブルにも備える必要があります。通信障害や音声・映像の乱れは、視聴者離れを招く可能性があります。安定したライブ配信を行うための環境整備やバックアップ体制の構築も、ライブコマース成功の鍵となります。
このように、ライブコマースでは集客からコンテンツ作成、技術面のサポートまで、幅広い準備と継続的な努力が必要です。しかし、これらの課題を克服することで、従来のECにはない独自の魅力を持つ販売チャネルとして、ライブコマースは大きな可能性を秘めています。
ユーザー体験を損なう可能性
ライブ配信では予期せぬ事態が起こることもあります。例えば、ライブコマースを提供するサーバーやシステムのスペックに影響されて、集客した人数が多すぎることでサーバーが耐えきれず動画が重たくなる、画像が乱れる、最悪のケースだと止まってしまうこともあります。他にも、配信者と閲覧者のインターネットの環境面や、デバイスのスペック差によって同様のトラブルが起きる可能性もあります。さらに、閲覧者が想定よりも多いと、有名人やインフルエンサーとコミュニケーションを目的にライブ配信を見ても、視聴者が多いため質問やコメントを回答されない、または無視されてしまうなどが発生し、関係性が薄くなることもデメリットと言えるでしょう。
注意点として、リアルタイムで時間を共有できること、双方向でコミュニケーションできる強みがある一方で、環境によっては動画の閲覧に問題が起きてしまいユーザー体験を損なう可能性があるので、気を付けましょう。
ライブコマースサービス例
次に、ライブコマースのサービスを紹介します。ライブコマースには、大きく分けてYouTube、Instagram、Facebook、LINE LIVEなどSNSに設定されているライブ配信機能で行うタイプとECサイトから直接動画を見られるようになっているECモールタイプ、自社ECサイトに埋め込んだかたちのSaaS型があります。
サービスの紹介と、支持されているユーザー層などの特徴をまとめます。
Instagramは写真や画像、ライブ配信ができる特に女性を中心に人気のあるSNSアプリです。投稿されている商品タグをタップすると、価格や商品名が簡単にチェックできます。
Instagram内でアイテムの検索から支払いまで行うことができるチェックアウト機能は2019年に米国で対応開始となりました。
特に2024年にはMeta社がInstagramライブコマースを日本国内向けに正式拡張し、SNS連携型ECと自社ECライブ配信の融合が活発化しています。
国内で影響力のあるInstagramインフルエンサーも徐々に増えており、多い人で万単位のフォロワーがいるアカウントが存在しています。
既に企業から依頼を受け、商品をPRすることで広告収入を得るインフルエンサーも現れており、新しい働き方の一つとして見受けられるようになってきました。
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SHOPROOM
運営はSHOWROOM株式会社。アイドルやアーティストの動画ストリーミングサービスから派生したサービスです。
アプリだけではなくPCでもライブ配信が可能です。主に扱っている商品ジャンルはモデル・タレントに関する有名人のグッズが多く、配信者も芸能人がメインです。時にはドラマで着用した服装を紹介することもあり、他のサイトでは珍しい商品をPRしているのも特徴です。ユーザー層は20~40代で、男性が多い傾向にあります。
C CHANNEL
C CHANNEL株式会社がアプリで商品紹介などの動画配信サービスを展開しています。配信者はモデルやインフルエンサーが多く、ユーザー層としてはF1層が過半数以上、20~30代の女性がメインの傾向にあります。コンテンツも同じ年齢層の知りたい情報を集めたキュレーション型アプリです。
TAGsAPI
株式会社Mofflyが提供する自社ECサイトで簡単にライブコマースを行うことができるクラウド型ライブコマースサービスです。大手百貨店やアパレルでの導入実績があります。2021年3月にはファッション雑誌販売部数でトップクラスの株式会社宝島社と共同で、企業のライブコマース参画をサポートする「LIVE SHOPPING」事業をスタートさせることを発表。
LIVE812
株式会社MyStarが開発及び運営する、2020年5月にグランドオープンしたオンラインストリーミング配信アプリです。サービス名の由来は静岡県焼津市に本社があることから「LIVE812(やいづ)」と名付けられています。
ハンドメイド作家や農家など、個性的なライバーが多いのが特徴です。あまり馴染みのない職業に携わっている配信者から、作品の良さを直接言葉で聞けるという貴重な体験を提供しています。
au PAY マーケット
auが運営するau PAYマーケットは、モール型のECサイトです。以前はau Wowma!というサイト名で愛されていました。30代~40代がメインユーザーとなり、サイトの機能にライブコマースが可能なライブ配信機能が存在します。
auの携帯を利用しているユーザーに加えて、auが提供する関連サービスのユーザーが利用できるECサイトになるため、ライブコマースの課題となる集客にも強いプラットフォームと言えるでしょう。
ライブコマースの活用事例
ここでは、ライブコマースの活用事例を紹介します。
株式会社FiNC Technologiesの活用事例
管理栄養士などが選ぶヘルスケア商品をECサイトで販売、TAGsAPIを導入し、ヘルスケア商品の販売と使用イメージを配信した結果、商品に関する深い知識を顧客と共有できました。商品のイメージを字や画像のみで伝えることに難しさを感じていましたが、ライブコマースの導入によってその課題をクリアすることができました。
株式会社三越伊勢丹ホールディングスの活用事例
大手百貨店の三越伊勢丹は2018年にライブコマースでお歳暮の商品を紹介、過去最高のECサイト売上となったことから2019年、2020年にもお歳暮、お中元の商品紹介をしており、効果的にライブコマース配信サービスを使っています。
株式会社 資生堂の活用事例
資生堂は中国においてライブコマース配信を使ったサービスを展開し、中国の自社ECサイトの売上アップを実現したことから、2020年7月からは国内でも開始。ビューティーコンサルタント(BC)が化粧品や美容法を紹介するライブ映像を配信し、消費者がリアルタイムにBCとコミュニケーションをしながら商品が購入できる取り組みを始めました。
まとめ
ライブコマースとは新しい商品販売戦略のひとつであり、今後市場が拡大して新規参入企業も増えていくことが予想されています。
消費者となる視聴者はリアルタイムで商品に関する質問が可能となり、提案型の販売ができるなど、メリットが多くあります。失敗の事例もなかには報告がありますが、発展が予想される分野でもあり今後の動向を注視していく必要がありそうです。
ライブコマースはネット上で実店舗のような接客を可能にしていることが強みであり、購入する前のコミュニケーションを楽しむことでユーザー体験を作り出しています。また、ECの利用だけでなく、他にも様々な活用方法があるため、新しいビジネスチャンスの創出にもつながるでしょう。
2025年現在、ライブコマースは小売・ファッション・食品・美容など多様な業界に浸透し、OMOやAIを活用した新たな「次世代ショッピング体験」の中核手法です。既存のSNS活用やリアル店舗との連携も進み、消費者との新たな接点創出やファン化施策として定着しつつあります。

