皆さんは“Unified ID 2.0”という言葉を聞いたことはありますか? Cookieに代わる新しい広告識別子として注目されています。
1994年よりウェブマーケティングにおけるデータ取得のために長年利用されていたCookieですが、個人情報保護の観点から利用を終了する動きが出ています。脱Cookieが進んだあとに利用が見込まれているUnified ID 2.0(ユニファイドID2.0)は、利用ユーザーにとっても、ウェブマーケティングを行う企業にとっても、双方にメリットがあるよう様々な仕組みが組み込まれたシステムです。
Unified ID 2.0は、プライバシーを重視しつつ効果的な広告配信を可能にする次世代の識別子として設計されています。このシステムは、個人情報の保護と広告効果の両立を目指しており、デジタル広告業界に新たな可能性をもたらすと期待されています。
ここでは、「Unified ID 2.0とは?」の部分から、Unified ID 2.0が開発された経緯、Unified ID 2.0のメリット、今まで利用されていたCookieについても詳しくご紹介します。Unified ID 2.0の特徴や仕組みを理解することで、今後のデジタル広告の動向や、ユーザーとしての私たちへの影響についても考察していきましょう。
目次
Unified ID 2.0とは?
Unified ID 2.0は、テクノロジー企業The Trade Deskが開発した、Cookieに代わる次世代の広告識別子です。この新しい仕組みは、利用ユーザーのメールアドレスを暗号化・ハッシュ化して識別子を作成します。セキュリティを重視し、この識別子は定期的に再作成されるシステムとなっています。
Unified ID 2.0の特徴として、中立性を保つためにPrebid.orgという独立機関が管理を行っています。これにより、広告主や媒体社などの特定の企業に有利にならないよう配慮されています。
従来のCookieとは異なり、Unified ID 2.0は広告チャネル全体を横断して機能することができます。これにより、ストリーミングTV、ブラウザー、モバイル、オーディオ、アプリなど、様々なデバイスやプラットフォームにわたる広告運用を単一のIDで管理・分析することが可能になります。
Unified ID 2.0は、ユーザーの視点に立って設計されています。関連性の高い広告の価値を維持しつつ、個人情報保護の観点から利用ユーザーにより高い透明性を提供することを目指しています。例えば、ユーザーは自身のデータがどのように使用されているかを確認し、必要に応じて同意を取り消すことができます。
ウェブマーケティングを行う企業にとって、Unified ID 2.0は精度の高いマーケティングを実現する強力なツールとなります。従来のCookieでは、同じユーザーがパソコンとスマートフォンでウェブサイトを訪問すると、別の閲覧者として認識されていました。しかし、Unified ID 2.0では、デバイスを問わず単一のIDで管理・分析が可能となるため、より正確なユーザー行動の把握が可能になります。
このように、Unified ID 2.0は脱Cookie時代における新たな広告識別子として、ユーザーのプライバシー保護と効果的な広告配信の両立を目指す革新的なソリューションとして注目を集めています。
なぜUnified ID 2.0が開発されたのか?
Unified ID 2.0の開発が進んだ主な要因は、実際に脱Cookieの動きが加速したことです。特に大きな影響を与えたのは、Googleが2022年までに段階的にCookieの利用を終了すると発表したことでした。これにより、「脱Cookie」という言葉が業界内で頻繁に使用されるようになりました。
Cookieは、ウェブサイトの閲覧履歴などを保存し、インターネット広告やウェブマーケティングを行う企業にとって重要なデータソースとして長年利用されてきました。しかし近年、Cookieから得られる情報がウェブマーケティング企業に有利に利用されており、個人情報保護の観点から問題視されるようになりました。
このような背景から、Unified ID 2.0は、Cookieに代わる新しい広告識別子として開発されました。Unified ID 2.0は、個人情報保護を重視しつつ、効果的な広告配信を可能にする技術として注目を集めています。この新しい識別子は、利用ユーザーのプライバシーを尊重しながら、広告主や媒体社にとっても有益なデータを提供することを目指しています。
Unified ID 2.0の開発は、デジタル広告業界全体の変革を促す重要な取り組みとなっており、今後のオンライン広告のあり方に大きな影響を与えると考えられています。
関連記事:Cookieからの脱却を進めるGoogle広告を支える技術とは?
Unified ID 2.0のメリット
Unified ID 2.0は、利用ユーザーとウェブマーケティングを行う企業の双方にメリットをもたらす革新的なシステムです。このアプローチは、個人情報保護と効果的な広告配信のバランスを取ることを目指しています。
利用ユーザーにとっては、Unified ID 2.0によってプライバシーの向上と、より関連性の高いコンテンツへのアクセスが実現します。メールアドレスを使用した暗号化・ハッシュ化プロセスにより、個人情報が安全に保護されます。また、定期的な識別子の再作成により、セキュリティが強化されています。
一方、ウェブマーケティングを行う企業にとっては、Unified ID 2.0の導入により、より精度の高いターゲティングと効果的な広告配信が可能になります。従来のCookieベースのシステムと比較して、デバイスやプラットフォームを横断した一貫したユーザー識別が実現し、マーケティング効果の向上が期待できます。
さらに、Unified ID 2.0は広告エコシステム全体の透明性を高めることにも貢献します。中立的な機関であるPrebid.orgによる管理により、公平性と信頼性が担保されています。これにより、ユーザーと企業の間の信頼関係が強化され、デジタル広告業界全体の健全な発展につながることが期待されます。
利用ユーザーにとってのUnified ID 2.0のメリット
Unified ID 2.0は、利用ユーザーのメールアドレスを暗号化・ハッシュ化して識別子を作成し、定期的に再作成する仕組みを採用しています。これにより、強固なセキュリティのもと、質の高い無料コンテンツへのアクセスが可能となります。また、Unified ID 2.0の管理は中立性を保つためにPrebid.orgという独立した機関が行っています。これにより、ユーザーに対して関連性の高い広告を提供しつつ、個人情報保護の観点からより向上した透明性を実現しています。
Unified ID 2.0の大きな特徴は、広告チャネル全体を横断して機能することです。これにより、ユーザーは様々なデバイスやプラットフォームで一貫した体験を得ることができます。例えば、スマートフォンで見た広告と、パソコンで見た広告が、ユーザーの興味関心に基づいて適切に連携することが可能となります。
さらに、Unified ID 2.0は、ユーザーのプライバシー設定をより細かく制御できる機能も提供しています。ユーザーは自身の情報がどのように使用されるかを理解し、必要に応じて設定を変更することができます。このように、Unified ID 2.0は、ユーザーの利便性とプライバシー保護のバランスを取りながら、より良いインターネット体験を提供することを目指しています。
ウェブマーケティングを行う企業にとってのUnified ID 2.0のメリット
ウェブマーケティングを行う企業は、脱Cookieの流れの中で、Cookieに代わる、より安全で関連性の高い広告を提供できる仕組みを求めていました。Unified ID 2.0は、この要求に応える革新的なソリューションとなっています。
Unified ID 2.0の最大の特徴は、広告チャネル全体を横断して機能することです。これにより、ストリーミングTV、ブラウザー、モバイル、オーディオ、アプリ、およびデバイス全体の広告運用を単一のIDで管理および分析できるようになります。この統合的なアプローチにより、企業はより精度の高いマーケティングを実現できるのです。
従来のCookieでは、同じユーザーがパソコンとスマートフォンからウェブサイトを訪問すると、別の閲覧者として認識されていました。しかし、Unified ID 2.0では単一のIDで管理および分析が可能となるため、デバイスを跨いだユーザー行動の把握が可能になります。これにより、ウェブマーケティングを行う企業は、より正確で包括的なユーザーインサイトを得ることができます。
さらに、Unified ID 2.0は、プライバシーに配慮しつつ効果的な広告配信を可能にします。ユーザーのメールアドレスを暗号化・ハッシュ化して識別子を作成し、定期的に再作成する仕組みにより、セキュリティと透明性を確保しています。これは、個人情報保護への懸念が高まる中で、企業が信頼性を維持しながら効果的なマーケティングを展開できる重要な利点となっています。
結果として、Unified ID 2.0は、ウェブマーケティングを行う企業に対して、より精緻なターゲティング、クロスデバイスでの一貫したユーザー体験の提供、そして効率的な広告予算の活用を可能にします。これらの利点は、デジタル広告の効果を最大化し、ROIを向上させる上で非常に重要な要素となっています。
Cookieとは?
Cookieは、1994年にネットスケープ社によって開発された、ウェブサイトの閲覧履歴やログイン情報などを記録するシステムです。名前の由来はフォーチューン・クッキーから来ていると言われています。このUnified ID 2.0に代わる前のシステムは、特定のウェブサイトを訪問した履歴やログインの情報などの入力内容を記録し、同じサイトを複数回訪問した際に同じ利用ユーザーであると識別することを可能にしました。
Cookieの仕組みにより、ユーザーは一度IDとパスワードを入力したウェブサイトに再度アクセスする際、ログイン情報を再入力せずに利用できるようになりました。また、ECサイトでの買い物かごに入れた商品情報も保存されるため、途中で離脱しても後から買い物を続けられるという利便性をもたらしました。
さらに、インターネット検索においても、Cookieは重要な役割を果たしています。同じキーワードで検索しても、ユーザーによって検索結果が異なる場合があります。これは、Cookieのシステムによって保持されている情報をもとに、各ユーザーの興味関心に合わせて検索結果をカスタマイズ表示しているためです。このように、Cookieは利用ユーザーのインターネット体験をよりスムーズで個別化されたものにする上で重要な技術となっています。
利用ユーザーにとってのCookieのメリット
Cookieは、利用ユーザーにとって多くのメリットをもたらします。まず、ログインが必要なウェブサイトを利用する際、Cookieのシステムによりログイン情報が保持されるため、一度IDとパスワードを入力すれば、時間をあけてそのウェブサイトにアクセスしても再入力の手間が省けます。これは、ユーザーの利便性を大きく向上させる unified id 2.0 の特徴の一つでもあります。
また、ECサイトでの買い物においても、Cookieは重要な役割を果たします。買い物かごに入れた商品情報がCookieによって保存されるため、途中で離脱しても再度アクセスした際に商品が残っています。これにより、ユーザーは中断した買い物を簡単に再開できます。
さらに、インターネット検索においても、Cookieは個人に最適化された検索結果を提供します。同じキーワードで検索しても、Cookieに保存された情報をもとに、ユーザーごとに異なる検索結果が表示されます。これにより、より関連性の高い情報にアクセスしやすくなります。
Cookieのシステムは、ウェブサイトの利用履歴や設定などの情報を保持することで、ユーザー体験を向上させます。例えば、ニュースサイトでは、ユーザーの興味関心に基づいて記事をレコメンドしたり、オンラインショップでは過去の購入履歴を元におすすめ商品を表示したりすることができます。これらの機能は、unified id 2.0 のような新しい技術においても重要視されています。
このように、Cookieのシステムにより情報が保持されることで、利用ユーザーはよりスムーズで個人化されたインターネット体験を享受できるのです。
ウェブマーケティングを行う企業にとってのCookieのメリット
Cookieの導入により、ウェブマーケティングを行う企業は、ページに訪問したユーザーが1回の訪問でどのページを閲覧したのか、過去に何回訪れているかなどの情報を得られるようになり、ウェブマーケティングを行う上で重要なデータを把握できるようになりました。
ウェブ上で訪問者の行動を追跡できる仕組みをウェブトラッキングといいます。ウェブに訪問している見込み客が、どの商品ページにどれだけ滞在しているのかを知ることは、ウェブマーケティングを行う上で非常に重要な要素となります。Unified ID 2.0の登場以前は、Cookieがこのようなデータ収集の中心的な役割を果たしていました。
Cookieの特徴として、人単位ではなく、ブラウザ単位でのデータ取得となります。例えば、同じ利用ユーザーがGoogle ChromeとSafariでウェブサイトを閲覧した場合には、別の閲覧者として識別され、閲覧者自身の特定はできない形になります。この特性は、ユーザーのプライバシー保護の観点からは一定の利点がありましたが、マーケターにとっては完全な顧客像を把握する上での制限となっていました。
しかし、Cookieを活用することで、企業はユーザーの興味・関心に基づいたターゲティング広告を展開したり、ウェブサイトのパーソナライゼーションを行ったりすることが可能となりました。これにより、より効果的なマーケティング戦略を立案し、実行することができるようになったのです。Unified ID 2.0の登場により、こうしたCookieの利点を継承しつつ、より精度の高いデータ収集が可能になると期待されています。
Cookieの種類
Cookieの種類は2つあります。
1. 1st party Cookie(ファーストパーティCookie)
1st party CookieではCookieのシステムの管理が、利用ユーザー自身が訪れているサイトの運営元になります。システムの管理がそのサイト内のみになるため、サイトを横断ができない形になります。
ウェブマーケティングを行う企業が取得できる情報として、そのウェブサイトに訪問した人が、今まで訪問したことはあるか、前回訪問していたとすればどのページに滞在していたかなどの確認・管理ができます。
2. 3rd party Cookie(サードパーティCookie)
1st party Cookieとは異なり、Cookieのシステムの管理が外部の第三者機関となり、実際にウェブサイトに訪れている利用ユーザーからは管理者が分からない形になります。しかし、複数のサイトを通じてサイトの横断をしての管理が可能となっており、利用ユーザーにとっては自分の趣味趣向に合った表示がされるメリットがあります。
ウェブマーケティングを行う企業が取得できる情報として、ページに訪問した利用ユーザーが1回の訪問で何ページ閲覧したのか、過去に何回訪れているかについてや、複数のウェブサイトを通じて、特定の利用ユーザーに広告を表示させた回数、表示させる広告の順番を指定できるなど、広告の出稿管理とコントロールも可能となっています。
ですが、Cookieのシステムの管理が外部の第三者機関となり、実際にウェブサイトに訪れている利用ユーザーからは管理者が分からないため、個人情報保護の観点から問題視されています。Cookieで得られる情報が、ウェブマーケティングを行う企業に有利に利用されているのではないかと言われています。
脱Cookieの動きが起こった理由とは?
Cookieの導入により、ウェブマーケティングを行う企業は、ページに訪問したユーザーの行動を詳細に把握できるようになりました。しかし、Cookieの進化に伴い、当初は訪問したウェブサイトのみで管理されていたデータが、現在では第三者機関も取得可能な仕組みとなり、個人情報保護の観点から問題視されるようになりました。
この状況を受け、EUは2018年に施行された規則で、Cookieで得られるデータも個人情報と定めました。これにより、Cookieの使用には必ず利用ユーザーの同意が必要となりました。ウェブサイトを開くと、Cookieの使用に関する同意を求められるケースが増えたのは、この規制の影響です。
さらに、ブラウザ側の対応も進んでいます。Safariではすでに現在のCookieの利用ができなくなっており、Googleも2022年までに段階的にCookieの利用を終了すると発表しました。こうした動きにより、Unified ID 2.0のような脱Cookieに対応した新しいシステムの必要性が高まっています。
インターネットの普及が進んだ現代社会では、個人情報保護の重要性がますます高まっています。民間企業が個人情報を勝手に利用するのではなく、ユーザーのプライバシーを尊重しつつ、安全かつ効果的にデータを活用できるシステムが求められています。Unified ID 2.0は、この要求に応える一つの解決策として注目を集めているのです。
このように、脱Cookieの動きは、個人情報保護とデータ活用のバランスを取るための重要な転換点となっています。今後、広告業界やウェブサービス提供者は、ユーザーの信頼を得つつ、効果的なマーケティングを行う新たな方法を模索していく必要があるでしょう。
まとめ
ここ数年、「脱Cookie」という言葉を頻繁に目にするようになり、Cookieに代わる新しい広告識別子として、Unified ID 2.0が注目を集めています。
従来のCookieでは、システムの管理が外部の第三者機関となり、実際にウェブサイトを訪れている利用ユーザーからは管理者が分からない形になっていました。これにより、個人情報保護の観点から問題視される事態となりました。
一方、Unified ID 2.0は、利用ユーザーのメールアドレスを暗号化・ハッシュ化することで識別子を作成し、セキュリティを考慮して定期的に再作成される仕組みとなっています。また、中立性を保つためPrebid.orgという独立した機関が管理を行うことで、ユーザーのプライバシー保護と広告の効果的な配信の両立を目指しています。
ウェブマーケティングを行う企業にとっては、Unified ID 2.0の導入により、広告チャネル全体を横断した管理が可能となり、より精度の高いマーケティングの実現が期待されています。同時に、利用ユーザーにとっても、個人情報保護の観点からより向上した透明性が提供されるというメリットがあります。
今後、インターネット広告業界において、Unified ID 2.0のような新しい識別子の採用が進み、個人情報保護と効果的な広告配信の両立が実現されることが期待されます。