購買行動モデルとは、消費者が商品やサービスを認知し、最終的に購入に至るまでの心理的・行動的なプロセスを段階的に示したフレームワークです。このモデルを理解し、マーケティング戦略に活用することで、顧客がまさに求めている情報やアプローチを、最適なタイミングで提供することが可能になります。
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購買行動モデルとは?
購買行動モデルとは、消費者が商品やサービスを購入するまでの心理的・行動的なプロセスを段階的に示したフレームワークです。このモデルを理解し、マーケティング戦略に活用することで、顧客がどのような段階にいるのかを把握し、それぞれに最適なアプローチを適切なタイミングで提供することが可能になります。結果として、見込み客を顧客へと効果的に転換させ、売上向上に繋げることができます。
消費者の購入行動は、時代とともに大きく変化してきました。その変遷は、主に以下の3つの時代区分で捉えることができます。
- マスメディア時代: テレビ、ラジオ、新聞などのマスメディアが情報伝達の中心であった時代。
- インターネット時代: インターネットの普及により、情報収集の方法が多様化した時代。
- コンテンツマーケティング時代: 消費者が自ら情報を探し、企業が提供する価値あるコンテンツを通じて関係を構築する時代。
これらのメディア環境の変化は、消費者の購買パターンに直接的な影響を与え、それに伴い購買行動モデルも進化してきました。一般的に「購買行動モデル」は、個人消費者を対象としたBtoC(Business to Consumer)の文脈で語られることが多いですが、組織を顧客とするBtoB(Business to Business)においては、BtoCとは異なる独自の購買行動モデルを考慮する必要があります。
購買行動モデルの時代による種類と特徴
購買行動モデルは、社会やテクノロジーの進化と共に変化してきました。ここでは、主要な時代区分における代表的な購買行動モデルとその特徴について解説します。
●マスメディア時代の購買行動モデル『AIDA』『AIDMA』
マスメディアが情報伝達の中心であった時代には、消費者の購買意欲を段階的に捉えるモデルが提唱されました。
▪ AIDA
購買行動モデルの原点とも言えるのが、アメリカの広告研究家セント・エルモ・ルイス氏が提唱した『AIDA』です。これは、消費者が購買に至るまでの心理プロセスを以下の4つの段階で示しています。
- Attention(認知): 広告や情報に触れ、商品やサービスを認識する段階。
- Interest(関心): 商品やサービスに対して興味を持ち、さらに情報を求める段階。
- Desire(欲求): 商品やサービスが自分のニーズや欲求を満たしてくれると確信し、欲しいという気持ちが高まる段階。
- Action(行動): 購入という具体的な行動を起こす段階。
AIDAは、その後の多くの購買行動モデルの基礎となり、今日でもマーケティング戦略を考える上で重要なフレームワークとして参照されています。
▪AIDMA
AIDAに『Memory(記憶)』の要素を加えたのがAIDMAです。 これは、アメリカの広告実務家サミュエル・ローランド・ホール氏によって提唱されました。
- Attention(認知)
- Interest(関心)
- Desire(欲求)
- Memory(記憶): 商品やサービスの良い印象や必要性を記憶に留める段階。
- Action(行動): 記憶に基づき、購買行動に至る段階。
このMemoryのステップが加わることで、単にその場での購買を促すだけでなく、長期的なブランド認知やリピート購買につながる可能性を示唆しています。テレビCMや新聞広告などが主要な媒体であった時代において、消費者の記憶に残ることの重要性が認識されていたことが伺えます。
●インターネット時代の購買行動モデル『AISAS』
インターネットの普及は、消費者の情報収集方法や購買プロセスに革命をもたらしました。これに対応して、電通が2005年に提唱したのが『AISAS』です。
AISASは、以下の5つのステップで構成されます。
- Attention(認知): 広告やSNSなどで商品やサービスを知る。
- Interest(関心): 興味を持った商品やサービスについて、さらに詳しく知りたいと思う。
- Search(検索): インターネットで商品名や関連キーワードで能動的に情報を検索する。
- Action(行動): 検索結果やレビューなどを参考に、購入を決定する。
- Share(共有): 購入した商品やサービスの使用感を、ブログやSNSなどで共有する。
特に「Search」の段階が加わったことが、インターネット時代における購買行動モデルの大きな特徴です。消費者は、企業からの情報発信だけでなく、自身で情報を探し、比較検討することが一般的になりました。また、「Share」のステップは、口コミやレビューといったUGC(User Generated Content)が購買意思決定に与える影響力の増大を示しています。これは、消費者の購買行動における透明性と、情報共有の活発化を反映しています。
●コンテンツマーケティング時代の最新の購買行動モデル『DECAX』
近年、コンテンツマーケティングが主流となる中で、消費者の行動はさらに多様化しています。電通デジタル・ホールディングスが2015年に提唱した『DECAX』は、この変化に対応した最新の購買行動モデルです。
DECAXは、以下の5つのステップで構成されます。
- Discovery(発見): 興味関心のある分野の情報(ブログ記事、SNS投稿など)に触れ、商品やサービスを偶然「発見」する。
- Engage(関係構築): 発見した情報提供者(企業やインフルエンサー)との関係を深め、信頼関係を構築する。
- Check(確認): 商品やサービスの詳細情報、レビューなどを確認し、購入の妥当性を吟味する。
- Action(行動): 購入の意思決定を行い、商品やサービスを入手する。
- Experience(体験と共有): 商品やサービスを実際に体験し、その感想をSNSなどで共有する。
DECAXモデルでは、従来の「広告を見て興味を持つ」という受動的な姿勢から、消費者が自ら情報に触れ、企業やクリエイターとの「関係構築」を経て、最終的に「体験」を共有するという、より能動的で双方向なプロセスが重視されています。このモデルは、企業が価値あるコンテンツを提供し、消費者とのエンゲージメントを高めることの重要性を示唆しています。消費者の購入行動は、単なる商品購入だけでなく、その体験の共有までを含んだものとして捉えられています。
これらの購買行動モデルは、それぞれが時代の変化とメディアの進化を反映しており、マーケティング戦略を立案する上で、ターゲットとする顧客層や時代背景に合わせて適切なモデルを選択・活用することが不可欠です。それぞれのモデルは、消費者の購入行動における心理的・情報的なプロセスを理解するための強力なツールとなります。
BtoBの購買行動モデル
これまでに解説してきた購買行動モデルは、主に個人消費者を対象としたBtoC(Business to Consumer)のものです。しかし、顧客が個人ではなく組織となるBtoB(Business to Business)においては、購買プロセスや意思決定の構造がBtoCとは大きく異なります。そのため、BtoB特有の購買行動に合わせたモデルを理解し、マーケティング戦略に活かすことが不可欠です。
BtoBの購買行動モデルとして、一般社団法人 日本BtoB広告協会アドバイザーである河内英司氏により提唱された『ASICA(アジカ)』が広く知られています。ASICAモデルは、以下の5つのステップでBtoBにおける購買行動をモデル化しています。
- Assignment(課題): 企業が抱える課題やニーズの認識から始まります。この段階では、まだ具体的な製品やサービスを特定していない場合が多く、課題解決の糸口を探している状態です。
- Solution(解決): 課題に対する解決策となる製品やサービスの情報収集や比較検討を行います。この段階で、複数のベンダーやソリューションが比較検討されます。
- Inspection(検証): 候補となるソリューションについて、機能、コスト、導入実績、サポート体制などを詳細に検証します。デモンストレーションやトライアルなどが実施されることもあります。
- Consent(承認): 関係部署や意思決定者による承認プロセスを経ます。BtoBの購買は、複数の担当者や役職者が関与するため、社内での合意形成が重要となります。
- Action(行動): 最終的な購買決定と実行に移されます。契約締結、導入、支払いなどがこのステップに含まれます。
ASICAモデルは、BtoBにおける複雑な意思決定プロセスや、複数の関係者が関与する購買行動を捉えるのに有効なフレームワークです。このモデルを理解することで、企業は顧客の各段階におけるニーズを把握し、適切な情報提供やアプローチを行うことが可能になります。これは、法人営業において非常に重要な視点となります。また、ソリューション営業を展開する上でも、顧客の課題解決に向けたプロセスを理解することは不可欠です。
まとめ
◆ 購買行動モデルとは、消費者が商品やサービスを購入するまでの行動プロセスをモデル化したものです。マーケティング戦略の立案において、消費者の購入行動を想定することは極めて重要です。
◆ 時代背景とともに購買行動モデルは変化しており、マスメディア時代には『AIDA』や『AIDMA』、インターネット時代には『AISAS』、そしてコンテンツマーケティング時代には『DECAX』といったモデルが提唱されてきました。
◆ 特に近年注目されている購入行動のモデルである『DECAX』は、消費者自身が情報を発見し、企業との関係を構築していくプロセスを重視しています。
◆ 個人消費者を対象としたBtoCとは異なり、組織を顧客とするBtoBの購買行動には、『ASICA』モデルのように、課題の明確化から承認、そして実行に至るまで、より複雑なプロセスが含まれます。






