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【NRRとは?】基本的な意味と計算式、売上継続率を高める実践テクニック

2026.3.23
読了まで約 9

この記事では、SaaSビジネスの成長に欠かせない重要指標「NRR(売上継続率)」の基本的な意味から掘り下げ、その重要性や具体的な計算方法について、初めてこの言葉に触れる方にも分かりやすく解説します。結論として、NRRの向上は既存顧客からの売上を最大化し、事業を安定成長させる鍵となります。そのための具体的な5つの実践テクニックと国内企業の成功事例まで、網羅的にご紹介します。

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NRRとは 顧客との関係性を示す売上継続率

この章では、企業の成長性や顧客との関係性の健全さを示す重要指標「NRR」の基本的な概念から、SaaSビジネスで特に重視される理由、そして混同されがちな関連指標との違いについて、分かりやすく解説していきます。

NRRの基本的な意味と定義

NRR(Net Revenue Retention / ネットレベニューリテンション)とは、日本語で「売上継続率」と訳され、既存顧客からの収益が、特定の期間(通常は前年同月や前月)と比較してどれだけ増減したかを示す指標です。 この指標には、契約の継続による収益だけでなく、アップセル(上位プランへの変更)やクロスセル(関連サービスの追加契約)による収益増、そしてダウングレード(下位プランへの変更)や解約による収益減がすべて含まれます。 そのため、NRRを見ることで、企業が既存顧客との関係を維持し、さらに成長させられているかを一目で把握できます。

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NRRがSaaSビジネスで特に重要な理由

NRRは、特に月額課金制のサブスクリプションモデルを採用するSaaS(Software as a Service)ビジネスにおいて、極めて重要な経営指標(KPI)と位置づけられています。その理由は、SaaSビジネスの収益構造にあります。

SaaSビジネスは、新規顧客を獲得するコスト(CAC)が比較的高く、契約初期の段階では利益が出にくい傾向にあります。 そのため、事業を安定的に成長させるには、新規顧客の獲得以上に、既存顧客にサービスを長く利用してもらい、そこからの収益を最大化することが不可欠です。 NRRが高ければ、解約による売上減少を既存顧客の利用拡大でカバーし、さらに事業全体を成長させられることを意味します。 このように、NRRは顧客満足度の高さやビジネスの持続可能性を示すバロメーターとして、投資家からも注目される指標となっています。

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NRRと混同しやすい関連指標

NRRを正しく理解するためには、類似した他の指標との違いを把握しておくことが重要です。ここでは特に混同されやすい「GRR」と「チャーンレート」との違いを解説します。

GRR(売上総継続率)との違い

GRR(Gross Revenue Retention / グロスレベニューリテンション)は、日本語で「売上総継続率」と呼ばれます。NRRとの最大の違いは、アップセルやクロスセルによる収益増を含めずに算出する点です。 つまり、GRRは純粋に解約やダウングレードによる収益の減少だけを反映した指標であり、収益基盤の安定性を示します。 GRRの最大値は100%ですが、NRRはアップセルなどにより100%を超えることがあります。

指標 考慮する要素 示すもの
NRR(売上継続率) アップセル、クロスセル、ダウングレード、解約のすべて 収益の「成長性」を含めた継続率
GRR(売上総継続率) ダウングレード、解約のみ 収益基盤の「安定性」や「維持率」

チャーンレート(解約率)との関係

チャーンレート(Churn Rate)は、一定期間内に顧客がサービスを解約した割合を示す指標です。NRRが「収益(金額)」ベースで顧客との関係性を測るのに対し、チャーンレートは主に「顧客数」ベースで離脱を測る点で異なります。NRRとチャーンレートは密接な関係にあり、一般的にチャーンレートが低ければNRRは高くなる傾向にあります。 NRRは、チャーン(解約)による収益減を、既存顧客からの収益増(アップセル等)でどれだけ相殺し、成長できているかを示す総合的な指標と言えるでしょう。

関連記事:チャーンレート(Churn rate)とは?マーケターが押さえておきたいSaaSビジネスの顧客解約率

あなたの会社のNRRは?計算方法を分かりやすく解説

この章では、自社のNRR(売上継続率)を正しく把握するための具体的な計算方法について、順を追って解説していきます。

NRRの計算式

NRRは、特定の期間における既存顧客からの収益が、どれだけ維持・成長したかを示す指標です。一般的に、以下の計算式で算出されます。

NRR (%) = ( (月初のMRR + Expansion MRR - Downgrade MRR - Churn MRR) / 月初のMRR ) × 100

この計算式を構成する各要素は、既存顧客の収益における変動の内訳を示しています。それぞれの項目が何を意味するのか、下の表で確認しましょう。

項目 内容
月初のMRR その月の初め時点での既存顧客から得られる月間経常収益(Monthly Recurring Revenue)。計算の基準となる金額です。
Expansion MRR 既存顧客による上位プランへのアップグレードや、追加機能の購入(クロスセル)によって増加したMRRです。顧客単価の向上を意味します。
Downgrade MRR 既存顧客が下位プランへ変更(ダウングレード)したことなどにより減少したMRRです。
Churn MRR 既存顧客がサービスを解約したことによって失われたMRRです。

NRRの計算具体例

具体的な数値を当てはめて、NRRを計算してみましょう。あるSaaS企業の特定の月のデータが以下のような場合を想定します。

項目 金額
月初のMRR 1,000万円
Expansion MRR (アップセル・クロスセル) 150万円
Downgrade MRR (ダウングレード) 20万円
Churn MRR (解約) 30万円

まず、月初時点の既存顧客が生み出す、月末時点でのMRRを計算します。

1,000万円 (月初MRR) + 150万円 (Expansion) - 20万円 (Downgrade) - 30万円 (Churn) = 1,100万円

次に、この金額を計算の基準である月初のMRRで割ります。

1,100万円 / 1,000万円 = 1.1

最後に、この数値をパーセンテージに変換するために100を掛けます。

1.1 × 100 = 110%

以上の計算から、この企業の当月のNRRは110%となります。これは、解約やダウングレードによる収益の減少分を、既存顧客へのアップセルやクロスセルによる収益の増加分が上回っていることを示しており、事業が健全に成長している証と捉えることができます。

NRRの目安は100%超え 業界別の平均値

この章では、自社のNRRが健全な水準にあるかを判断するための目安と、業界ごとの平均的な値について解説します。NRRはSaaSビジネスの持続可能性を測る上で極めて重要な指標であり、その水準を正しく理解することは、事業戦略を立てる上での第一歩となります。

国内SaaS企業のNRR平均値

国内BtoB SaaS市場におけるNRRの全体的な平均値に関する公式な統計は限定的ですが、一般的に優良なSaaSビジネスであればNRRは100%を超えることが一つの目安とされています。 実際、国内でNRRを開示している上場SaaS企業の中には、110%前後の高い水準を維持している例も見られます。 ただし、NRRの適切なベンチマークは、企業のターゲット顧客層によって大きく異なる点に注意が必要です。

海外の調査では、顧客の年間契約額(ACV)によってNRRの中央値に差があることが示されています。これは日本のSaaS市場でも、おおむね同様の傾向があると考えられます。

出典:Net Revenue Retention (NRR) Benchmark

顧客セグメント(年間契約額の目安) NRRの中央値(海外データ参考) 特徴
エンタープライズ(大企業向け) 108%〜118% 部署単位での導入から全社利用への拡大(アップセル)や、関連製品の追加導入(クロスセル)が起きやすく、NRRが高くなる傾向があります。
ミッドマーケット(中堅企業向け) 100%〜108% エンタープライズ向けと同様に、アップセルやクロスセルの機会があります。
SMB(中小企業向け) 97%前後 顧客の事業規模が小さいためアップセルの余地が少なく、また廃業などによる解約も発生しやすいため、NRRは100%を下回ることもあります。

このように、自社のビジネスモデルがどの顧客セグメントを対象としているかを踏まえ、適切な目標値を設定することが重要です。

NRRが100%を超えることの意味

NRRが100%を超える状態は「ネガティブチャーン」とも呼ばれ、SaaSビジネスが非常に健全な状態にあることを示します。具体的には、解約やダウングレードによって失われた売上を、既存顧客へのアップセルやクロスセルによる売上増加分が上回っていることを意味します。

この状態がなぜ重要かというと、たとえ新規顧客の獲得が一時的に停滞したとしても、既存の顧客基盤だけで事業が成長していく力を持っている証明になるからです。 これは、顧客が製品やサービスに高い価値を感じ、満足度が向上し続けている証拠でもあります。結果として、顧客生涯価値(LTV)の最大化に繋がり、持続的な事業成長の強力なエンジンとなります。 このため、NRRはベンチャーキャピタルなどの投資家が企業価値を評価する際にも、特に重視する指標の一つとなっています。

関連記事:LTV(ライフタイムバリュー)とは?算出方法や最大化するポイント

NRRを高めるための5つの実践テクニック

この章では、SaaSビジネスの健全性を示すNRR(売上継続率)を向上させるための、明日からでも取り組める5つの具体的なテクニックを解説します。既存顧客からの収益を最大化し、安定した事業成長の基盤を築くための重要な施策です。

アップセルとクロスセルを促進する

NRRを高める上で最も直接的な方法が、既存顧客の契約単価を引き上げるアップセルとクロスセルです。顧客が現在利用しているプランやサービスに満足し、さらなる価値を感じてこそ、これらの提案は成功します。 闇雲な提案は顧客満足度の低下を招くため、顧客の利用状況や課題を正確に把握した上でのアプローチが不可欠です。

それぞれの違いを理解し、適切なタイミングで提案できるよう整理しておきましょう。

  アップセル クロスセル
定義 現在利用中の商品やサービスより高価格な上位モデルを提案する手法 現在利用中の商品やサービスに関連する別の商品を提案する手法
具体例 スタンダードプランから、より機能が豊富なプロプランへのアップグレードを促す 基本機能に加えて、データ連携やセキュリティ強化などのオプション機能の追加購入を促す
目的 顧客単価(ARPU)およびLTV(顧客生涯価値)の向上

顧客エンゲージメントを高める

顧客エンゲージメントとは、企業と顧客との間の信頼関係や愛着の深さを示すものです。エンゲージメントが高い顧客は、提供されるサービスへ積極的に関与し、価値を実感しやすいため、結果として継続利用率が高まり、NRRの安定に繋がります。顧客を単なる利用者としてではなく、ビジネスのパートナーとして捉え、能動的に関わってもらう仕組みを構築することが重要です。

具体的な施策としては、以下のようなものが挙げられます。

  • サービスの活用方法を解説するウェビナーの定期開催
  • 新機能や活用事例を紹介するメールマガジンの配信
  • ユーザー同士が交流できるオンラインコミュニティの運営
  • 導入初期のつまずきを防ぐ、丁寧なオンボーディングプロセスの提供

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カスタマーサクセス体制を強化する

NRRの向上には、カスタマーサクセスの強化が欠かせません。 カスタマーサクセスとは、従来の受動的な顧客サポートとは異なり、顧客がサービスを通じて事業の成功を実感できるよう能動的に支援する活動です。 顧客の成功が自社の収益に直結するという考え方に基づき、解約を未然に防ぎながら、アップセルやクロスセルの機会を創出します。

体制強化の具体的なアプローチには、顧客の利用状況を可視化する「ヘルススコア」の導入、顧客単価に応じた「ハイタッチ」「ロータッチ」「テックタッチ」といった支援モデルの構築、定期的な活用支援ミーティングの実施などがあります。

さらに近年は、この「テックタッチ」を究極まで進化させた「PLG(プロダクト・レッド・グロース)」のアプローチを取り入れる企業が増えています。カスタマーサクセスの役割を人に依存するのではなく、「プロダクトの中に組み込む」という発想の転換です。直感的なオンボーディング設計や、利用データに基づいた自動のアップセル通知など、プロダクト自体が顧客の成功と単価向上を牽引する仕組みを作ることが、持続的なNRR向上の鍵となります。

関連記事:【初心者向け】PLGとは?意味からメリット・デメリット、始め方までを完全ガイド

料金プランを最適化する

顧客の成長やニーズの変化に合わせて自然と上位プランへ移行できるような料金体系は、NRRを安定的に向上させる上で非常に効果的です。 顧客が感じる「価値」と「価格」が連動する料金プランを設計することがポイントとなります。 これを「バリューメトリック(価値指標)」に基づいた価格設定と呼びます。

例えば、ユーザー数、データストレージ量、機能の利用回数などを価値指標に設定することで、顧客のビジネスが拡大するにつれて、自然な形でアップセルが促され、NRRが向上する仕組みを構築できます。

解約の予兆を検知し対策する

NRRの計算式からも分かる通り、ダウングレードや解約(チャーン)による収益の減少を抑えることは、NRRを改善する上で不可欠な要素です。 多くの顧客は、解約を決める前に何らかのサインを発しています。この予兆を早期に検知し、適切な対策を講じることが重要です。

解約の予兆となりうる指標には、以下のようなものがあります。

  • ログイン頻度の低下
  • 主要機能の利用停止
  • サポートへの問い合わせ内容の変化(不満やクレームの増加)
  • アンケートなどでの低い満足度スコア

これらの予兆を検知した際には、カスタマーサクセス担当者が能動的にアプローチし、ヒアリングや利用促進のサポートを行うことで、解約を未然に防ぐことが可能です。

NRR改善の国内成功事例

この章では、NRR(売上継続率)の改善に成功した国内SaaS企業の具体的な事例を掘り下げて解説します。各社がどのような課題に直面し、いかなる戦略でNRRの向上を達成したのかを学ぶことで、あなたのビジネスに応用できるヒントが見つかるはずです。

Sansan株式会社:マルチプロダクト戦略による提供価値の拡大

名刺管理サービスで知られるSansan株式会社は、既存の顧客基盤に対して複数のサービスを展開する「マルチプロダクト戦略」を推進している代表的な一社です。

 同社は名刺管理サービス「Sansan」で築いた顧客との信頼関係を基盤に、インボイス管理サービス「Bill One」や契約書管理サービス「Contract One」などを次々と展開しています。

この戦略により、顧客はSansanの提供する複数のソリューションを導入することで、バックオフィス業務全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を包括的に推進できるようになります。結果として、顧客一社あたりの取引額(単価)が上昇するクロスセルが促進され、売上継続率の向上にも寄与しうる体制が整っています。

なお、BtoB SaaSでは、複数のプロダクトを組み合わせて面を取る戦略は「コンパウンドスタートアップ(Compound Startup)」と呼びトレンドとなっています。

Sansan株式会社のNRR改善アプローチ
課題 施策 成果
単一プロダクトへの依存と更なる成長機会の模索 名刺管理サービスで得た顧客基盤に対し、請求書や契約書管理といった関連領域の新規プロダクトを開発・提供するマルチプロダクト戦略を推進。 クロスセルの成功により顧客単価が向上し、事業全体の継続的な成長と高いNRR実現につながる。

参照
https://ir.corp-sansan.com/en/ir/management/businessinformation_2.html
https://finance.logmi.jp/en/articles/383780

株式会社プレイド:顧客エンゲージメント向上による成功体験の創出

株式会社プレイドは、CX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」を提供し、自社でもKARTEを活用することで高いNRRを維持しています。「KARTE」はウェブサイトやアプリにおける顧客一人ひとりの行動をリアルタイムに解析し、個々に最適化されたコミュニケーションを可能にするツールです。

同社の成功の鍵は、顧客がプロダクトを最大限に活用し、事業成果を実感できる「成功体験」を創出することにあります。手厚い導入支援や活用セミナーはもちろんのこと、プロダクト自体が顧客のエンゲージメントを高める機能を持つため、顧客はKARTEを使い続けるほどその価値を実感できます。これにより、解約率の低下と、より高機能なプランへのアップセルが自然な形で促進され、公開情報ではNRRが100%以上の水準と紹介されています。

株式会社プレイドのNRR改善アプローチ
課題 施策 成果
ツールの多機能性ゆえの活用ハードルの高さ 自社製品「KARTE」を活用し、顧客の利用状況に合わせたサポートを提供。顧客エンゲージメントを高め、成功体験を積ませることでプロダクトへの依存度を向上。 顧客満足度の向上と解約率の低下を実現。アップセル・クロスセルも促進され、NRR110%前後を維持。

これらの事例からわかるように、NRRを高めるためには、単に解約を防ぐだけでなく、アップセルやクロスセルを通じて顧客あたりの売上を積極的に拡大していく視点が不可欠です。自社のプロダクトや顧客特性に合わせて、最適な戦略を検討することが成功への第一歩となります。

参照:PLAID(プレイド)運営KARTEのターゲット/プライシングの変遷から考えるPMFとグロース

まとめ

本記事では、SaaSビジネスの成長に不可欠なNRR(売上継続率)について、その定義から計算方法、そして具体的な改善テクニックまでを網羅的に解説しました。NRRの向上は、顧客満足度の高さと事業の安定性を示す重要な証です。ご紹介したアップセル促進やカスタマーサクセス強化などの施策は、顧客との良好な関係を築き、LTVを最大化する上で欠かせません。ぜひ本記事を参考に、自社のNRR改善に取り組んでみてください。

執筆者

マーケトランク編集部(マーケトランクへんしゅうぶ)

マーケターが知りたい情報や、今、読むべき記事を発信。Webマーケティングの基礎知識から、知っておきたいトレンドニュース、実践に役立つSEO最新事例など詳しく紹介します。 さらに人事・採用分野で注目を集める「採用マーケティング」に関する情報もお届けします。 独自の視点で、読んだ後から使えるマーケティング全般の情報を発信します。

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