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ダークファネルの効果はどう測る?「指名検索数」と「セルフアトリビューション」

2026.8.14
読了まで約 9

この記事では、トラッキング困難な購買行動「ダークファネル」の全体像を整理し、従来ツールでは追えない効果を可視化する「指名検索数」と「セルフアトリビューション」の具体的な測定手法を解説します。クッキー規制やSNS普及が進む現代において、顧客のリアルな流入経路を解き明かし、隠れたマーケティング成果を正しく評価するための実践的なアプローチを見ていきましょう。

関連記事:【図解】ダークファネルとは?BtoBマーケティングで「見えない顧客行動」を捉える方法

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ダークファネルとは何か

BtoBマーケティングにおける新たな課題である「ダークファネル」の概念から掘り下げ、なぜ今これが重要視されているのか、そしてその発生要因について解説します。

トラッキングできない見えない購買行動の定義

BtoBマーケティングにおける「ダークファネル(Dark Funnel)」とは、潜在顧客が自社製品やサービスに関する情報を収集し、購買の意思決定を進めるプロセスのうち、企業側がデータとして追跡・測定できない領域を指します。

従来のマーケティングでは、ユーザーが広告をクリックしてWebサイトを訪れ、資料をダウンロードする一連の行動(ファネル)を、アクセス解析ツールなどで可視化することが一般的でした。しかし、SaaSやITツールの導入検討において、現場の担当者がリードとして登録される前に、実は水面下で多くの情報収集や競合比較が行われています。このように、マーケターの目には見えない「暗闇(Dark)」の中で進む購買プロセスこそが、ダークファネルです。

比較項目 従来のファネル(可視化できる領域) ダークファネル(見えない領域)
主なチャネル 自社Webサイト、リスティング広告、ホワイトペーパー、メルマガなど プライベートSNS、社内チャット、クローズドコミュニティ、口コミなど
データ計測 クッキーやトラッキングタグにより、ユーザーの足跡を追跡可能 タグの設置が不可能なため、流入経路や行動履歴の追跡が不可能
購買行動の特徴 資料請求や問い合わせなど、企業が用意した導線に沿って行動する 営業担当者や企業と接触する前に、自律的に情報収集や意思決定を済ませる

このダークファネルという概念は、米国をはじめとするBtoBマーケティングの最先端トレンドとして非常に注目されています。

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ダークファネルが発生する具体的な要因

なぜ、現代のBtoBマーケティングにおいてこのような「見えない購買行動」が増加しているのでしょうか。その背景には、プライバシー保護に伴う技術的な変化と、購買担当者の情報収集スタイルの変化という、2つの大きな要因が存在します。

クッキー規制によるデータ計測の限界

1つ目の要因は、デジタルマーケティングを取り巻くプライバシー保護の規制強化です。GDPR(EU一般データ保護規則)やCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)などの法規制に加え、AppleのITP(Intelligent Tracking Prevention)に代表されるブラウザ側での規制により、サードパーティクッキー(Third-Party Cookies)を用いたユーザーの追跡の精度が大幅に低下しました。

これにより、従来のWeb解析ツールやアトリビューションツールは、ユーザーがどの広告や外部メディアを経由して自社サイトに到達したのかを正確に判別しにくくなっています。

その結果、本来は各種施策を経由した流入であっても、解析ツール上では「直接流入(Direct)」や「自然検索」として処理されてしまい、マーケティング施策の真の効果が見えにくくなる現象が起きています。

これが、技術的な側面からダークファネルを生み出す大きな要因です。

SNSや口コミなどオフラインでの情報収集の増加

2つ目の要因は、購買担当者の情報収集が、企業のコントロールが及ばない「クローズドな場」へと移行していることです。BtoBのITツールやオフィス環境サービスなどを検討する際、担当者は企業の公式サイトに書かれた美辞麗句よりも、信頼できる同僚や他社の知人によるリアルな「口コミ」や、業界のプライベートなコミュニティでの評判を重視する傾向が強まっています。

具体的には、以下のようなチャネルでの情報共有が活発に行われています。

  • 社内チャット(SlackやMicrosoft Teamsなど)での「このツール使ったことある?」というメンバー間のやり取り
  • LinkedInやX(旧Twitter)のダイレクトメッセージ(DM)による非公開の意見交換
  • 招待制のオンラインサロンや、業界関係者が集まるクローズドなDiscordサーバーでの情報収集
  • 知人同士のオフラインの勉強会やイベントでの口頭による推薦

これらのチャネルは、企業のマーケティング担当者がトラッキングコードを埋め込むことができないため、データとして可視化されません。しかし、実際にはこれらのクローズドな場での会話こそが、大口契約といった高LTVな案件の意思決定に最も強い影響を与えているのです。この購買行動の変化が、データ計測をすり抜けるダークファネルをさらに拡大させています。

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なぜ従来の計測ツールではダークファネルの効果を測定できないのか

従来の計測ツールでは、顧客の購買行動の「点」しか捉えられていないという技術的な限界があります。

なぜ、従来のアクセス解析ツールやMA(マーケティングオートメーション)ツールでは、ダークファネルの効果を正しく測定できないのでしょうか。その理由は、大きく分けて以下の2点に集約されます。

ラストクリックアトリビューションの限界

多くの計測ツールにおいて、標準的な成果測定モデルとして採用されているのが「ラストクリックアトリビューション」です。これは、コンバージョン(問い合わせや資料ダウンロードなど)の直前にクリックされたチャネルに、100%の成果(貢献度)を割り当てる仕組みを指します。

しかし、このモデルは「顧客がどのチャネルで態度変容を起こしたか」という最も重要なプロセスを無視してしまいます。

例えば、ある企業の現場担当者が、クローズドなSNSコミュニティや他社の口コミ(ダークファネル)で自社ツールの評判を知り、数ヶ月かけて導入の検討を進めていたとします。そして最終的に、社名で「指名検索」を行ってWebサイトに流入し、資料請求(コンバージョン)に至りました。このとき、従来のツールでは以下のような評価のねじれが発生します。

チャネルの種類 実際の顧客行動における役割 従来のツールでの評価(ラストクリック)
SNS・口コミ・コミュニティ(ダークファネル) 自社ツールを知り、「導入したい」という強い購買意欲を醸成した真のきっかけ 成果への貢献度「0%」(計測不能のため無視される)
指名検索(オーガニック検索) すでに導入意欲が高まった状態で、単にWebサイトへアクセスするための手段として利用 成果への貢献度「100%」(すべての手柄がここに帰属する)

このように、真に顧客の心を動かしたダークファネルの施策(コミュニティ運営やSNSでの信頼獲得など)がツール上では「効果なし」と判断され、予算やリソースが削減されてしまうという悪循環に陥るのです。

関連記事:CV改善を目指すアトリビューションの意味は?分析する方法や代表的なモデル

複数チャネルをまたぐ複雑なカスタマージャーニー

BtoB、特に高単価なSaaSやITツールの選定において、意思決定プロセスは非常に複雑です。検討期間が数ヶ月から1年に及ぶことも珍しくなく、現場担当者だけでなく、決裁者やセキュリティ担当者など複数の人物が関与します。

例えば、現場担当者が自社ツールに興味を持ち、そのURLを社内のSlackやChatworkといったチャットツールで上司に共有したり、社内会議で口頭で推薦したりする行動があります。これが、計測ツールの追跡をすり抜ける「ダークソーシャル」での情報共有です。

これらのプライベートなチャネルを介した流入は、従来のツールではすべて「ダイレクト流入(参照元なし)」として処理されてしまいます。

さらに、スマートフォンで通勤中にSNSの評判をチェックし、オフィスのPCで検索してコンバージョンするといった「デバイスをまたぐ行動」も、クッキー(Cookie)規制の強化に伴い、同一ユーザーとして紐付けることが極めて困難になっています。このように、複雑に絡み合うカスタマージャーニーを「線」として繋ぎ合わせることは、従来のクッキーベースの計測技術では限界を迎えているのです。

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ダークファネルの効果を測定する2つの重要アプローチ

見えない購買行動を可視化するための2つのアプローチについて、解説します。

指名検索数を指標としたブランド認知の可視化

ダークファネルにおいて、ユーザーはSNSやクローズドなコミュニティ、AI検索などで自社サービスについて認知・検討を深めています。その結果として現れる最も顕著な行動が「指名検索」です。

指名検索数が増える理由とダークファネルとの関係

指名検索とは、自社の社名やサービス名(例:「〇〇SaaS」「〇〇ツール」など)を直接検索窓に入力して検索する行動を指します。ダークファネル内で有益な情報に触れたユーザーは、ブックマークや直接のリンクを経由するだけでなく、改めて検索エンジンでサービス名を入力してサイトにアクセスします。特に、担当者がSNSでツールの評判を見たり、他社の導入事例をコミュニティで聞いたりした際、「一度、あのツールについて詳しく調べてみよう」と主体的に検索する行動が指名検索に直結します。指名検索数が増えているということは、ダークファネル内での認知拡大や信頼獲得が順調に進んでいる証拠と言えます。

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Googleトレンドやサーチコンソールを用いた測定方法

指名検索数の推移を可視化するためには、無料で利用できる「Googleトレンド」や「Google Search Console」が有効です。

Google Search Consoleでは、自社サイトへの流入キーワードの中から「社名」や「サービス名」のクリック数・表示回数の推移を月単位で追跡します。これにより、ダークファネルでの施策(SNS発信やイベント登壇など)が、どの程度指名検索の増加に寄与したかを間接的に評価できます。また、Googleトレンドを活用することで、自社だけでなく競合他社との「検索関心度」の推移を比較することも可能です。ここで、それぞれのツールの特徴と測定できる指標を整理してみましょう。

ツール名 主な測定指標 ダークファネル分析における役割
Google Search Console 自社サービス名の表示回数・クリック数 自社サイトに到達したユーザーの具体的な指名検索の増減を実数値で把握する。
Googleトレンド 検索ボリュームの相対的な推移(人気度の動向) 市場全体における自社ブランドの認知拡大トレンドや、競合との関心度の差を比較する。

セルフアトリビューションによる顧客のリアルな声の収集

もう1つのアプローチが、ユーザー自身に「どこで自社を知ったか」を直接回答してもらう「セルフアトリビューション(自己申告型アトリビューション)」です。

セルフアトリビューションの仕組みとメリット

セルフアトリビューションとは、問い合わせフォームや資料ダウンロードフォーム、あるいは商談の最初のヒアリングにおいて、「当社のサービスを最初にどこで知りましたか?」という質問をユーザー自身に回答してもらう仕組みのことです。従来のMA(マーケティングオートメーション)ツールやWeb解析ツールは、最後のクリック(ラストクリック)や特定の広告流入しか計測できません。しかし、セルフアトリビューションを導入することで、「実は数ヶ月前に、信頼している知人のSNS投稿で見た」「業界のクローズドなコミュニティで導入の推奨ツールとして紹介されていた」といった、デジタルデータには残らないダークファネル内の真の流入経路を明らかにできるメリットがあります。これにより、商談化率や受注率の高い良質なリードが、どこから生まれているのかを正確に特定できるようになります。

フォームへの質問追加とアンケートの設計手法

セルフアトリビューションを効果的に機能させるためには、フォームの設計に工夫が必要です。単に選択肢を並べるだけでなく、ユーザーが自由に記述できる「テキスト入力欄(自由記述)」を設けることが極めて重要です。なぜなら、選択肢にしてしまうと「Web検索」や「SNS」といった大雑把な回答に終始してしまい、ダークファネルの具体的なチャネル(特定のコミュニティ名やインフルエンサー名、AI検索など)を特定できないからです。フォーム設計の具体的な手法としては、問い合わせフォームの必須項目、または任意項目として「当社のサービスをどこで知りましたか?」という質問を追加し、回答のハードルを下げるために、以下のような具体例をプレースホルダー(入力欄の初期表示テキスト)や注記として添えておきます。「例:〇〇さんのX(旧Twitter)の投稿、〇〇コミュニティでの紹介、GoogleのAI概要など」このように設計することで、ユーザーは「そういえば、あのイベントのセッションで紹介されていたな」と思い出し、具体的な回答を残してくれやすくなります。収集した定性データをMAツールの顧客データと紐づけることで、受注やLTV向上に繋がっている真の認知経路を特定し、次のマーケティング投資への判断材料に活用できます。

ダークファネルを攻略するための具体的なマーケティング施策

従来の計測ツールでは追いきれないダークファネルですが、ただ手をこまねいている必要はありません。以下の3つのアプローチを実践していきましょう。

関連記事:7割のBtoBバイヤーが潜む「ダークファネル」攻略法|専門メディア活用から効果測定のステップまで

コンテンツマーケティングによる信頼関係の構築

BtoBの購買プロセスにおいて、顧客は問い合わせや資料請求を行う前に、ダークファネル内で自発的に情報収集を済ませています。この段階で顧客の信頼を勝ち取るためには、売り込み感のない、真に役立つ高品質なコンテンツを継続的に発信することが重要です。

特に、商談化率や受注率の低さに悩む場合は、現場担当者向けのお役立ち情報だけでなく、決裁者が導入を検討する際に必要となる「投資対効果(ROI)のシミュレーションシート」や「セキュリティチェックシートのひな形」、「他社での導入プロセスをまとめた事例集」などを先回りして用意しておきましょう。ダークファネルの中でこれらのコンテンツが共有されることで、社内稟議がスムーズに進み、受注確度の高いリードとして自社に流入してくるようになります。

関連記事:ホワイトペーパーを作って終わりにしていませんか?リードの質を高めるための「掲載場所」の重要性

企業データベースやインテントデータの活用

ダークファネルの「見えない動き」を可視化し、能動的にアプローチするために極めて有効なのが、企業データベースやインテントデータ(興味関心データ)の活用です。

例えば、自社サイトにアクセスしたもののフォーム登録に至らなかったIPアドレスから企業名を特定するツールや、特定のBtoBメディアで自社に関連するキーワードを頻繁に検索・閲覧している企業を検知するインテントデータサービスを活用します。これにより、まだ自社にリードとして登録されていない「検討初期段階の企業」をいち早く特定できます。特定した企業に対して、手紙(レター)の送付や、特定の企業セグメントに絞ったターゲティング広告、さらにはインサイドセールスによるアウトバウンドアプローチを行うことで、競合他社が気づく前に接点を持つことが可能になります。

関連記事:「とりあえず資料請求」への架電はやめる?インテントデータで「今、買いたい顧客」を見つけ出す方法

コミュニティ運営やSNSによる認知拡大施策

ダークファネルの主要な発生源である「SNS上の会話」や「知人同士の口コミ」を攻略するには、ユーザーコミュニティの運営やSNSマーケティングが欠かせません。BtoBマーケティングにおいて、信頼できる同業他社の担当者からの「このツール、本当に使いやすくて業務効率化に役立ったよ」という一言は、どんなWeb広告よりも強力な意思決定のフックとなります。

既存顧客が自発的に自社ツールを推奨してくれるようなコミュニティを形成し、ユーザー同士の成功事例の共有を促しましょう。また、国内最大級のIT製品レビュープラットフォームである「ITreview」などの外部レビューサイトへの口コミ投稿を促すキャンペーンを実施することも効果的です。第三者のリアルな高評価がダークファネル内に蓄積されることで、指名検索の増加や、検討確度の高い問い合わせの創出に直結します。

以下に、ダークファネル攻略に向けた各施策の特徴とアプローチできる課題を整理しました。自社の現在のボトルネックに合わせて、最適な施策を組み合わせてみてください。

施策名 アプローチできる課題 具体的なアクション例
コンテンツマーケティング 商談化率や受注率の低さ、決裁者へのアプローチ不足 ROIシミュレーションシートや、導入プロセスのガイドブックの提供
インテントデータの活用 検討初期段階のターゲット企業の未把握 IPアドレス解析による企業特定、興味関心の高い企業へのアウトバウンドアプローチ
コミュニティ・SNS運営 LTVの向上、口コミによる信頼感の醸成 ユーザーコミュニティの活性化、ITreview等のレビューサイトへの口コミ促進

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まとめ

クッキー規制やSNSの普及により、従来の計測ツールだけでは顧客の行動を100%可視化することはできません。だからこそ、指名検索の増減をGoogleサーチコンソール等で追い、フォームでの直接質問によって顧客の「真の流入経路」を特定する手法が極めて有効な解決策となります。見えない顧客行動を正しく捉え、マーケティングの成果を最大化していきましょう。

執筆者

マーケトランク編集部(マーケトランクへんしゅうぶ)

マーケターが知りたい情報や、今、読むべき記事を発信。Webマーケティングの基礎知識から、知っておきたいトレンドニュース、実践に役立つSEO最新事例など詳しく紹介します。 さらに人事・採用分野で注目を集める「採用マーケティング」に関する情報もお届けします。 独自の視点で、読んだ後から使えるマーケティング全般の情報を発信します。

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