「広告やコンテンツ施策は行っているが、成果が明確に見えない」
「リードは獲得できても、成約にはなかなか結びつかない」
そんな課題を感じているマーケティング担当者にとって、大きなヒントとなるのがマーケティングファネルです。
マーケティングファネルとは、消費者の購買プロセスを段階ごとに整理し、それぞれのフェーズに適した施策を設計するためのフレームワークです。この視点を使って施策を設計すれば、場当たり的な取り組みから脱却し、戦略的かつ継続的に成果を積み上げることが可能です。
本記事では、マーケティングファネルの基本的な意味や主な分類、導入によるメリットに加え、実践的な活用例や設計手順までを詳しく解説します。ぜひ最後まで読み進めていただき、自社のマーケティング戦略に活用して、成果につなげてください。
目次
マーケティングファネルとは
マーケティングファネルとは、ユーザーが商品やサービスを知り、購入に至るまでのプロセスを段階的に整理したフレームワークです。その形状が漏斗(ファネル)に似ていることから、この名称がつけられました。
ファネルの上部は広く、認知段階では多くの見込み顧客が存在しますが、下に進むにつれて購入や契約に至る人数は絞られていきます。この流れを視覚化することで、各段階における顧客の心理や行動に応じた施策を設計しやすくなるのが特徴です。
たとえば、顧客の心理変化を表すフレームワークであるAIDMA(Attention→Interest→Desire→Memory→Action)の考え方と組み合わせることで、単なる接点の整理にとどまらず、どの段階でどのような情報を届けるべきかまで一貫して設計することが可能になります。
ファネルは、こうした心理変化を構造的に捉えるための土台として、多くの企業で活用されています。
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マーケティングファネルの構成要素
マーケティングファネルは、主にTOFU(トーフ/トップオブファネル/認知)、MOFU(モーフ/ミドルオブファネル/検討)、BOFU(ボーフ/ボトムオブファネル/意思決定)、そしてPost-Funnel(ポストファネル/購入後・ファン化)という4つの段階で構成されます。
フェーズごとに、顧客の心理状態や求める情報が異なり、それに合わせた施策とKPI(目標達成に直結する行動を促すための指標)の設計が不可欠です。
フェーズ | 目的 | 顧客の心理 | 主な施策 | KPI例 |
TOFU(認知段階) | 自社やサービスの存在を知ってもらう。リードの母数を増やす | 自分の課題に気づき始めた・なんとなく興味がある | SEO記事・SNS投稿/広告・YouTube動画、TVCM、ウェビナー・ホワイトペーパー(課題喚起型)・展示会での名刺交換 | PV・インプレッション・新規ユーザー数・ブランド検索ボリューム |
MOFU(検討段階) | 見込み顧客に自社を選択肢として認識してもらう | サービスを比較検討したい・導入するならどこが良いか知りたい | 比較記事、導入事例、FAQページ・ウェビナー(製品紹介型)・サービス資料DL・メルマガ配信・セミナーや個別相談会 | 資料請求数・メルマガ登録数・セミナー参加数・滞在時間/CVR(中間CV) |
BOFU(意思決定段階) | 最終的な購買・契約・申込みにつなげる | もう少しで決めたい・実際の価格やサポート内容が気になる | 無料トライアル・デモ申込・導入事例(同業種)・導入後サポートの説明・営業面談 | 商談化率・トライアル申込数・見積依頼数・最終CV(受注・申込) |
Post-Funnel(購入後・ファン化) | LTV最大化。解約防止、アップセル、紹介促進 | このサービスは良かった・信頼できる、他人にも勧めたい | オンボーディング支援・メールによる活用支援・サクセス事例紹介・NPS調査と対応・顧客紹介キャンペーン(リファラル) | チャーンレート(解約率)・NPSスコア・アップセル/クロスセル率・紹介件数/再購入率 |
このように、マーケティングファネルの各段階には、それぞれ異なる目的・顧客心理・施策・KPIが存在します。フェーズごとの特性を理解したうえで戦略を立てることが、成果を最大化する鍵となります。
マーケティングファネルの種類
マーケティングファネルには、目的や適用領域によっていくつかのバリエーションがあります。ここでは、代表的な3つのファネルの特徴と活用のポイントを紹介します。
種類 | 特徴 | 活用ポイント |
パーチェスファネル | 認知→興味→比較→購入の基本モデル | TOFU〜BOFUの施策設計に有効 |
インフルエンスファネル | 購入後の影響力(口コミ・紹介)を重視 | エンゲージメント・リファラル施策 |
ダブルファネル | 新規獲得+既存顧客育成を一体で設計 | LTV最大化・解約率低減 |
パーチェスファネル
パーチェスファネルは、最も一般的なファネルモデルで、顧客が認知→興味→比較→購入というプロセスをたどると仮定した構造です。BtoBやBtoCを問わず、多くのマーケティング施策でベースとされており、TOFU・MOFU・BOFUという階層もこのモデルに準じています。
インフルエンスファネル
インフルエンスファネルは、従来の購買プロセスだけでなく、顧客が他者に与える影響力に着目したモデルです。たとえば、実際に購入した顧客がSNSや口コミサイトを通じて他の潜在顧客に影響を与える構造を捉えています。
このモデルでは、ファンやリピーターが新たな認知を生む起点となるため、購入後の体験やエンゲージメント向上がより重要になります。BtoBにおいても、既存顧客による紹介(リファラル)が重要なチャネルとなるケースでは、インフルエンスファネルの視点が不可欠です。
ダブルファネル
ダブルファネルは、新規獲得と既存顧客の維持・拡大の両軸を捉えたファネルモデルです。上部の「新規獲得ファネル」と下部の「顧客育成ファネル」が連動しており、認知から購入、さらにリテンション(維持)・ロイヤル化・再購買・紹介といったプロセスまでを一貫して設計します。
たとえば、SaaS企業では、契約後のオンボーディングや継続利用の支援、ユーザーコミュニティ運営などが下段ファネルに該当します。このように、契約後の顧客行動も含めてファネルを再設計することで、LTVの最大化と解約率の抑制が図れます。
▼ファネルについてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
ファネルを理解することで、実地マーケティングで生かしていく
マーケティングファネルの活用メリット
マーケティングファネルは単なる概念の整理にとどまらず、実務においても有用なフレームワークです。各フェーズに応じて施策を最適化できるため、限られた予算とリソースを効果的に分配し、ROIやLTVといった成果指標の向上につなげることが可能です。
以下では、具体的な3つのメリットを見ていきましょう。
フェーズ別にコンテンツ設計をできる
マーケティングファネルを活用する最大のメリットの一つが、顧客の心理・ニーズ段階に応じたコンテンツ設計ができる点です。
たとえば、認知段階(TOFU)では「自社を知ってもらう」ことが目的になるため、SEO記事やSNS投稿などのライトな接点が有効です。一方で、比較・検討段階(MOFU)では、比較資料や事例集など、より深い情報提供が求められます。
さらに、意思決定段階(BOFU)では、価格表や無料相談、導入後サポートの説明など、購入を後押しする内容が中心となります。
このように、各段階で必要な情報や導線を明確にできるため、成果につながるコンテンツを効率的に配置できます。
ROIの向上を見込める
ファネルは各段階における成果指標を可視化できるため、どこで成果が出ていないか、どのフェーズに追加投資すべきかといった判断がしやすくなります。
例を見てみましょう。
TOFUで10,000人にリーチし、MOFUで500件のリード、BOFUで50件の商談があり、そのうち10件が受注に至ったとします。このように数字で把握することで、MOFUの割合が低いなら資料の改善、BOFUの成約率が低いなら営業支援の強化、といった具体的な改善策を考えることが可能です。
ROIを高めるには、成果の出るポイントに集中的にリソースを配分する必要があります。ファネルによる段階管理は、この投資判断の精度を大きく高めてくれます。
▼ROIについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ROIとは?ROASとの違いや計算式をわかりやすく解説!
LTVの改善ができる
多くの企業では新規顧客の獲得ばかりに注力しがちですが、実際には既存顧客との関係強化が収益性向上の鍵を握ります。
ダブルファネルの考え方を取り入れることで、契約後のフェーズ、つまりオンボーディング、活用促進、クロスセル・アップセル、解約防止などの施策を包括的に設計できるようになります。
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特にSaaSサービスにおいては、導入直後のサポート体制が不十分だと、LTVが伸び悩み、すぐに解約されてしまうリスクが高まります。逆に、継続利用に向けたアクション(メール支援、活用セミナー、カスタマーサクセスなど)を戦略的に組み込めば、LTVの最大化が図れます。
ファネルは新規獲得だけでなく、その後の利益をどう伸ばすかという視点においても非常に有効なフレームワークです。
▼LTV(ライフタイムバリュー)についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
LTV(ライフタイムバリュー)とは?算出方法や最大化するポイント
マーケティングファネルの活用例
マーケティングファネルは理論にとどまらず、実際の施策設計や組織運営においても多くの企業で活用されています。とくに、BtoB領域においては、検討期間が長く、複数の関係者が意思決定に関与するケースが多いため、段階的に顧客を育成するファネル構造が非常に有効です。
以下では、代表的な3つの活用例を紹介します。
BtoB商材におけるリード獲得プロセスの最適化
高単価かつ導入ハードルの高いBtoB商材では、見込み顧客が段階的に情報を収集し、複数の人物や多くの社内稟議を経て意思決定するのが一般的です。そのため、ファネルを設計せずにコンテンツ発信や営業活動を行っても、購買と噛み合わず、成果につながらないリスクがあります。
たとえば、ファネルを意識したコンテンツ設計としては以下のようなものが考えられるでしょう。
ファネル | 主なターゲット | コンテンツ例 | 目的 |
TOFU | 潜在層(課題未認識) | 業界トレンド記事、課題提起型ブログ | 認知・課題意識の喚起 |
MOFU | 顕在層(情報収集中) | ホワイトペーパー、比較資料、セミナー | 選択肢としての認識を獲得 |
BOFU | 検討層(導入直前) | 事例紹介、料金表、営業面談 | 意思決定の後押し・導入促進 |
このように、各フェーズの心理状態に合わせ、関連コンテンツや接点を設計することで、CVRを最大化しながら、CPA(顧客獲得単価)の最適化が可能になります。
SaaSやサブスクモデルにおけるLTV最大化
サブスクリプション型ビジネスでは、初回契約がゴールではなく、利用の継続こそが収益の源泉です。そのため、マーケティングファネルも導入前だけでなく、導入後の利用フェーズも含めたリテンション(維持)視点で設計しなければいけません。
導入後フェーズの主な施策とコンテンツ例は以下の通りです。
フェーズ | 目的 | コンテンツ例 |
導入初期 | 早期活用の支援 | オンボーディングメール、チュートリアル動画 |
利用定着期 | 継続利用の促進 | 活用セミナー、成功事例コンテンツ |
解約予兆期 | 離脱リスクの最小化 | フォローアップメール、再訴求キャンペーン |
ファネルを獲得前後で分断せず、一貫した体験設計を行えば、LTVの最大化とチャーンレート(解約率)の低減を実現できます。
インサイドセールス体制の設計と強化
マーケティングファネルを活用することで、マーケティング部門、インサイドセールス、フィールドセールスといった部門間の役割分担を明確にできます。とくに分業体制を敷くことが多いBtoB企業では、各ファネルをどの部門が担うかを定義し、KPIを分けて管理することで、生産性を飛躍的に高めることが可能です。
ファネル別の担当部門とKPIは次のように設定するとよいでしょう。
ファネル | 担当部門 | 主なKPI | 役割 |
TOFU | マーケティング | CV数、ダウンロード数 | 潜在層の集客・リード獲得 |
MOFU | インサイドセールス | 架電率、商談化率 | リードへの接触・案件化 |
BOFU | フィールドセールス | 受注率、受注単価 | 商談クロージング・成約獲得 |
このようにファネル構造をもとに役割と指標を整理することで、属人的な感覚や不明瞭な責任範囲を排除し、組織全体で一貫した営業活動が可能になります。
▼インサイドセールスについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
インサイドセールスとは?基本的な概念やその特徴を解説
マーケティングファネルの活用手順
マーケティングファネルを実務で効果的に活用するには、単に概念を理解するだけでは不十分です。重要なのは、顧客行動をもとに段階を設計し、それぞれに適した施策とKPIを構築し、改善を繰り返す運用体制を整えることです。
ここでは、4つのステップでその具体的な手順を解説します。
ステップ | 内容 | 目的・ポイント |
1. 設計 | 顧客行動を段階ごとに構造化 | 認知〜検討〜決定の流れを可視化し、施策の土台をつくる |
2. 施策 | フェーズ別に施策を割り当てる | 段階ごとに適切な情報とチャネルを設計する |
3. KPI化 | 各段階に指標を設定し数値で管理 | ボトルネックを発見しやすくし、成果に直結させる |
4. 改善 | KPIをもとに施策を見直して改善 | 継続的な最適化により、ファネル全体の効率を高める |
ステップ1:ファネル設計をしてユーザー行動を可視化
最初のステップは、顧客の購買行動をファネル構造に落とし込み、可視化することです。
● TOFU:何をきっかけに自社を知るのか
● MOFU:どのような情報を求めているのか
● BOFU:何が意思決定の後押しになるのか
こうした購買心理の変化に沿って段階を定義します。
この設計作業により、自社のターゲットがどのようなプロセスで検討を進めているかを構造的に捉えられるようになります。単なる施策一覧ではなく、顧客視点での意思決定プロセスに沿った構造を描くことがポイントです。
ステップ2:フェーズ別に施策を分配する
ファネルの各フェーズが定義できたら、それぞれの段階に応じて届けるべき情報や施策を割り当てます。ここで重要なのは、全フェーズに対して適切なメッセージと適切な接点チャネルが設計されていることです。
たとえば、TOFUでは潜在顧客に気づきを与えるコンテンツ(SNS投稿、認知広告、SEO記事)を中心に展開します。MOFUでは比較検討をサポートするコンテンツ(事例、セミナー、比較表)を配置し、BOFUでは購入後における押しの一手(料金表、デモ申込、営業面談)を用意します。
このように、段階ごとにメッセージと手段を明確に分けることが、成果を高めるポイントとなります。
ステップ3:ファネルの指標をKPI化して可視化する
施策を展開するだけでは効果は測れません。各ファネルにおける施策の効果を数値で測定し、ボトルネック(業務が停滞する要因となっている箇所)を特定する仕組みが必要です。
たとえば、TOFUではオウンドメディアのPVや広告のインプレッション数、MOFUではホワイトペーパーのDL数やセミナー参加数、BOFUでは資料請求数や商談化率といったKPIを設定します。
これにより、「リードは多いが商談化率が低い」「検討層で情報提供が不足している」といった課題を特定でき、打ち手を検討しやすくなります。
ステップ4:改善
最後に重要なのが、可視化したKPIに基づいた改善の実行です。
MOFUで資料ダウンロード数は多いが商談につながっていない場合、ダウンロード後のフォローメールや架電のタイミングを見直す、資料の構成や内容を改善する、などの対応が考えられます。
また、BOFUで見積依頼から受注率が伸び悩んでいるなら、比較される競合への対策やクロージング支援の強化が必要になるかもしれません。
デジタルマーケティングファネルは構造的な分析と継続的な改善を通じて、初めて成果につながります。施策を回しながら、ファネル全体を動的に最適化していく視点が欠かせません。
▼ファネルを最大限に活用し、コンバージョンするまでのユーザーアクションを分析する方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ファネル分析とは?マーケティング施策のボトルネック解消に必見
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マーケティングファネルの注意点
マーケティングファネルは有効なフレームワークである一方、使い方を誤ると逆に施策のズレや思考停止を招くことがあります。ここでは、マーケティングファネルを活用する時に注意すべき3つのポイントを解説します。
顧客のリアルな行動は反映できない
ファネルは直線的な購買行動を前提とした設計です。しかし実際のユーザーは、複数チャネルを行き来しながら非連続的に意思決定を進めます。
たとえば、あるサービスをYouTube広告で知り、検索で比較し、後日SNSで再接触して購入する、といった流れは、ファネル上では整理しづらい行動です。
そのため、ファネルどおりに顧客が動いていないと短絡的に判断してしまうと、実態に即した分析や施策の改善ができなくなります。あくまでファネルは思考の補助線であるという意識が重要です。
自社都合で設計してしまうリスク
マーケティングファネルは、本来顧客の購買心理をベースにすべきものですが、しばしば自社の組織構造や予算に合わせて都合よく設計されることがあります。営業チームなどの都合で「MOFU=資料請求」と定義し、それ以外の行動(セミナー参加、イベント来場など)を軽視してしまうといったケースです。
このように顧客の多様な行動を無視すると、適切なスコアリングやナーチャリングができず、リードの質を見誤る恐れがあります。
分類しただけで満足してしまう
ファネルの各段階に見込み顧客を分類すること自体は重要ですが、それで施策設計が終わった気になってしまうのは危険です。実際の業務では、「MOFU施策=ホワイトペーパー」と定義しても、その内容が陳腐でユーザーの関心に応えていなければ意味がありません。
分類や構造化はスタート地点にすぎません。顧客がその段階で本当に求めている情報・接点・体験を提供できているかどうかを常に問い直す姿勢が求められます。
マーケティングファネルは古い?そういわれる理由
2025年以降、「マーケティングファネルは時代遅れだ」と語られることも増えています。その背景には、顧客主導の購買行動やチャネルの多様化があります。
現代の購買プロセスは直線的ではなく、認知・比較・購買・解約・再購入といった各フェーズが相互に影響し合う循環構造を形成しています。
たとえば、購買後の不満がSNSで拡散され、ブランド認知や新規獲得に悪影響を及ぼすこともあります。こうした現象はファネル構造では捉えにくいものです。
そのため、段階を切り分けて管理するファネル型アプローチでは、顧客体験(CX)全体を正しく設計しにくくなっているのです。
▼顧客体験(CX)についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
注目を集めるカスタマーエクスペリエンス(CX)の意味とは?向上のための施策
それでもマーケティングファネルはなくならない
マーケティングファネルに限界があるのは事実ですが、それでも多くの企業で使われ続けているのは、情報設計や役割分担、KPI設定といった構造化の力を持っているからです。
重要なのは、ファネルを静的なテンプレートとして扱うのではなく、環境や顧客の変化に合わせて動的に再設計し続けることです。あくまで思考を整理するための枠組みとして、柔軟に使いこなすことが求められます。
実際、近年ではファネルの進化系として、AARRRモデルやRACEモデルといった循環型フレームワークが注目されています。
AARRRモデルは、獲得・活性化・継続・紹介・収益化という5段階で構成されており、SaaSなどの継続型ビジネスにおいて、顧客の行動と成果を結びつける分析フレームとして機能します。
一方のRACEモデルは、到達・行動・転換・関係深化という循環的な構造を前提としており、Webやデジタルを基盤としたマーケティング戦略全体を設計する際に有効です。
こうしたフレームワークもまた、ファネル構造を出発点にして進化したものと言えます。HubSpot社が近年提唱している「フライホイールモデル」や、カスタマーサクセス主導の顧客体験設計も含め、いずれも一方通行の時代を超えて、マーケティングファネルを柔軟にアップデートしていく姿勢が求められているのです。
出典:フライホイールモデルとは|HubSpot(ハブスポット)
したがって、「ファネルはもう古い」と切り捨てるのではなく、顧客視点で再設計しながら活用し続けることが、これからのマーケティングにおいて重要な視点となります。
▼AARRRモデルやRACEモデルについてはこちらの記事でそれぞれ詳しく解説しています。
AARRR(アー)モデルを使った成功事例とグロースハックのポイント
デジタルマーケティングにおけるRACEモデルの重要性
マーケティングファネルに関するよくある質問
最後にマーケティングファネルに関するよくある質問に簡潔にお答えします。
マーケティングファネルとは?
ユーザーの購買プロセスを可視化し、各段階に適した施策を設計するためのフレームワークです。
マーケティングにおけるfunnelとはどういう意味ですか?
funnel(ファネル)とは漏斗の意味で、上から下に絞られていくように見込み顧客が絞られる構造を表しています。
マーケティングファネルとカスタマージャーニーの違いは何ですか?
ファネルは段階構造で施策やKPIを設計する枠組み、ジャーニーは顧客の体験を時系列で可視化するものです。目的と視点が異なります。
関連記事:カスタマージャーニーの基礎┃概念やマップの作り方、メリットまでわかりやすく解説
マーケティングファネルにおける歩留まりとは?
歩留まり(ぶどまり)とは、もともと製造業で使われていた用語で、各段階から次の段階に進んだ割合を指します。採用の現場でも「最終面接まで進んだ候補者50名のうち内定承諾者は30名となり、歩留まりは60%でした」などと使用されます。
BtoBマーケティングでは、LP訪問からフォーム送信への遷移率、リードから商談への転換率、商談から受注の獲得率、などの場面で使用されます。
マーケティングファネルが古いと言われる理由は?
顧客行動が複雑化・非直線化しているため、段階的に整理するファネル構造では現実に即した施策設計が難しくなっている点が挙げられます。
マーケティングファネルでリソースを最大化しよう
マーケティングファネルを活用する最大の目的は、限られた予算や人員といったリソースを「どこに」「どれだけ」「何を」投入すべきかを明確にすることにあります。
ただし、ファネルはあくまで構造的な思考の補助線であり、それ単体では成果を生むわけではありません。特に現代のように顧客の接点が多様化している時代では、各フェーズを統合的に捉え、顧客体験全体を設計する視点が必須です。
BtoB領域では、決裁権を持つ層に情報を届けることが求められるため、施策の打ち手と接点チャネルの精緻な設計が必要になります。その点で、たとえば経営層や人事に向けた訴求が可能な「HRプロ」などの専門メディアに広告出稿することは、ファネル運用において非常に有効です。
確度の高い接点を持つことで、検討段階から意思決定段階への遷移を効率的に進めることができるでしょう。
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