オウンドメディアを成功に導くためには、ターゲットとする顧客層を明確に定義し、そのペルソナ設定に基づいた検索意図に合致するコンテンツを作成することが不可欠です。オウンドメディアの集客は、主に自然検索からの流入に依存しています。そのため、ユーザーが検索する際の意図(検索意図)に的確に応えるコンテンツでなければ、検索エンジンでの上位表示は困難となり、結果として集客につながらないのです。この記事では、効果的なターゲット設定の方法、特にペルソナの作成方法と、ユーザーの検索意図を深く理解し、コンテンツに落とし込むための具体的な手法について詳しく解説します。
オウンドメディアはターゲット設定と、ターゲットの検索意図に合わせたコンテンツ作成が重要
オウンドメディアを成功に導くためには、まずターゲットを明確に設定することが不可欠です。そして、そのターゲットが持つであろう検索意図に合致したコンテンツを作成することが、集客の鍵となります。なぜなら、オウンドメディアは主に自然検索からの流入によって成り立っており、ユーザーが情報を求めて検索した際に、その意図を的確に満たすコンテンツでなければ、検索エンジンの上位に表示されることは極めて困難だからです。
従来型の広告記事は、企業や製品の情報を中心とした「企業目線」で作成されることが一般的でした。これは広告費を支払って掲載するため、そのスタンスでも問題はありません。しかし、Googleなどの検索エンジンで上位表示を目指すオウンドメディアでは、アプローチが根本的に異なります。Googleは、ユーザーの検索意図に最も合致すると判断したページを上位に表示します。したがって、ユーザーの意図から外れたコンテンツを作成しても、検索上位に表示される可能性は低く、結果として集客につながらないのです。
仮に、運良く検索上位に表示されたとしても、流入してきたユーザーがコンテンツを読んだ際に、求めている情報と異なると判断すれば、すぐにページから離脱してしまいます。これは、複数のページを回遊してもらい、サイトのファン化を促進し、最終的なコンバージョンへとつなげていくというオウンドメディアの本来の目的を達成できません。
これらの理由から、オウンドメディアでは、すべてのページが、そのページに流入してきたユーザーの検索意図に正確に応える「ユーザー目線」のコンテンツであることが極めて重要です。ユーザー目線のコンテンツを作成するための具体的な手順は、以下の2つのステップになります。
・ペルソナを作成し、ターゲットを具体化する
・ターゲットが持つ検索意図を正確に読み取る
この2つのステップについて、以降で詳しく解説していきます。
ペルソナの作成~ターゲット設定の方法
オウンドメディアのターゲットを設定するためには、「ペルソナ」を作成します。ペルソナとは、自社の商品やサービスに関心を持ち、将来的に顧客となる可能性のある仮想の人物像のことです。このペルソナを詳細に設定することで、コンテンツ制作の方向性が明確になり、よりターゲットに響く情報発信が可能になります。
ペルソナの作成方法について、ここで詳しく見てみます。
●ペルソナとは?
ペルソナ(persona)とは、日本語に直訳すると「人格」を意味します。マーケティング用語としてのペルソナは、企業が販売する商材やサービスを購買する主要な顧客の、より具体的で詳細なイメージを指します。単なるデモグラフィック情報(年齢、性別、居住地など)だけでなく、その人物のライフスタイル、価値観、行動パターン、そして何よりも「情報ニーズ」まで深く掘り下げて定義することが重要です。
ペルソナとして設定される項目は、一般に以下のようなものです。
・属性情報: 年齢、居住地域、架空の氏名、学歴、職歴、年収など。
・家族構成: 配偶者の有無、子供の数、家族構成による生活スタイルなど。
・職業・役職: 勤務先の業種、部署、役職、担当業務、仕事上の課題など。
・趣味・ライフスタイル: 普段どのようなことに興味があるか、休日の過ごし方(インドアかアウトドアかなど)、購読している雑誌や情報源、SNSの利用状況など。
・価値観: 人生や社会に対する考え方、大切にしていること、仕事におけるモチベーションなど。
・情報ニーズ・課題: 現在抱えている悩み、解決したい問題、情報収集の目的、どのような情報に価値を感じるかなど。
これらの詳細な情報を設定することで、ペルソナは単なるデータ上の存在ではなく、あたかも実在する人物のように感じられるようになります。この「実在感」こそが、チーム全体でターゲット像を共有し、一貫したメッセージを発信するための強力な土台となります。
●BtoBでは企業ペルソナを作成する
ペルソナとして設定する一般的な項目は以上のものとなりますが、BtoB(Business to Business)の場合には、顧客となるのは企業そのものです。したがって、BtoBのオウンドメディアを運営する際には、個人ではなく「企業ペルソナ」を作成することが不可欠です。
企業ペルソナを作成する際には、設定する項目は、単に企業の情報だけでなく、その企業に属する「購買担当者」や「購買に関わる関係者」の視点も加味する必要があります。具体的には、以下の3つの要素で構成されます。
・企業についての情報
・購買担当者についての情報
・購買関係者についての情報
企業についての情報
企業ペルソナに設定する企業についての情報は、以下のような項目を含みます。
・業種・業態: どのような産業に属し、どのようなビジネスモデルで事業を展開しているか。
・企業規模: 売上高、従業員数、資本金など。
・抱える課題・経営目標: その企業が現在直面している経営上の問題点や、達成しようとしている目標。
・購買決定プロセス: どのようなプロセスを経て購買決定が行われるか、購買決定に関わる人物(購買関与者)は誰か。
●購買担当者についての情報
企業ペルソナに設定する購買担当者についての情報は、まずは上で見た一般的なペルソナの項目(年齢、役職、担当業務など)が基本となります。それに加えて、自社の商品やサービスを認知し、情報収集、比較検討、そして最終的な購買に至るまでの各段階で、どのような情報ニーズを持っているのかを詳細に洗い出し、ペルソナの情報として設定します。例えば、「〇〇という課題を解決するために、△△のようなソリューションを探しているが、具体的な製品比較の基準が分からない」といった具体的なニーズを盛り込みます。
●購買関係者についての情報
企業において、商材やサービスの購買は、購買担当者一人で決定できるものではありません。そのため、購買プロセスに関わる他の人物や部署も考慮に入れる必要があります。具体的には、以下のような関係者を特定します。
・決裁者: 上司や経営層など、最終的な購買決定権を持つ人物。
・影響者: 商材の購買によって業務に影響を受ける部署や担当者(例:実際に製品を使用する現場担当者、IT部門、法務部門など)。これらの関係者は、購買担当者に対して質問を投げかけたり、承認を求めたりする立場にあります。
これらの関係者から購買担当者に対して、どのような質問がされると想定できるかを検討し、それに対する回答となるような情報ニーズを企業ペルソナの情報として追加することで、より網羅的なペルソナが完成します。
●ペルソナを作成する目的
ペルソナを作成する目的は、オウンドメディアのコンテンツ作成チームのメンバー間で、ターゲット顧客に対する共通理解を醸成することです。
オウンドメディアの目標やターゲットについて、抽象的な表現や箇条書きなどで表現しても、メンバーごとに解釈が異なってしまうことがあります。しかし、具体的なペルソナを設定することにより、ターゲット像をより鮮明に、そして実感として理解しやすくなります。例えば、「30代男性、都内在住、IT企業勤務」といった情報だけでは漠然としていますが、「〇〇株式会社の△△部で働く、山田太郎さん(35歳)。部下5名のマネジメントに苦慮しており、業務効率化のためのツールを探しているが、予算の制約も大きい」といったペルソナを設定することで、チーム全員が「山田さん」という一人の人物像を思い浮かべながら、どのようなコンテンツが彼にとって有益かを議論できるようになります。
また、ペルソナは、どのようなコンテンツを作成すべきか迷った際や、コンテンツの方向性がずれてきたと感じた際に、チームのメンバー全員が立ち返るべき「共通の基盤」となります。これにより、ブレのない、一貫性のあるオウンドメディア運用が可能になります。
●ペルソナはできる限りデータにもとづいて作成する
ペルソナは、ある程度は架空で作成することになりますが、その際、できる限りデータに基づいた客観的な情報を取り入れることが重要です。なぜなら、データに基づいたペルソナは、より現実に近いターゲット像を反映し、マーケティング施策の精度を高めるからです。
企業ペルソナを作成する場合には、自社の収益源となっている上位20%くらいの顧客企業をピックアップすることから始めると良いでしょう。これらの企業は、自社のサービスや製品にとって最も価値のある顧客層であり、その特徴を深く理解することが重要です。その上で、購買担当者や購買関係者といった個々の人物像については、営業担当者の見聞や、顧客企業へのヒアリング結果などを参考に、できる限り実在する人物に近い、具体性のあるペルソナ像を構築していきます。これにより、担当者の抱える課題やニーズをより正確に把握することが可能になります。
●属性情報だけでなく「悩み」などの情報ニーズも盛り込む
ペルソナには、年齢や職業といった表面的な属性情報だけでなく、「悩み」や「課題」といった情報ニーズを具体的に盛り込むことが極めて大切です。
購買担当者は、現状の業務やビジネスにおいて、何らかの解決すべき課題や悩みを抱えているからこそ、関連する情報や商材を探します。そして、商材を認知し、情報収集、比較検討、購買に至る各段階で、必ず疑問点やさらに知りたい情報といった「情報ニーズ」が生まれます。オウンドメディアの役割は、まさにこれらの情報ニーズに対し、適切なタイミングで、的確に応えることができるコンテンツを作成し、提供していくことです。ペルソナに具体的な悩みや情報ニーズを落とし込むことで、どのようなキーワードで、どのような内容のコンテンツを作成すべきかのヒントが得られ、より効果的なオウンドメディア運用に繋がります。
参考:オウンドメディア運用に押さえておくべきカスタマージャーニーとは?
ターゲットの検索意図を読み取る方法
ペルソナを設定したら、次にそのペルソナが、どのようなキーワードで検索するかを検討します。オウンドメディアの集客の要となるのは、ユーザーが抱える疑問や課題を解決するコンテンツであるため、ターゲットがどのような検索意図を持っているのかを正確に把握することが不可欠です。 検索キーワードは、「キーワードファインダー」などのツールを利用することにより効率的に探すことができるでしょう。
その上で、各キーワードに対する検索意図を検討します。近年では、グーグルの検索エンジンは大幅に進化しており、キーワードの単純な羅列や表面的な内容だけでは、ユーザーの真のニーズに応えられず、検索上位に表示させることは困難です。 検索意図をしっかりと読み取ることなしに、検索上位に表示させることは困難です。
●検索意図とは?
検索意図とは、検索をするユーザーが実際に何を知りたいと意図しているかということです。大きく分けて、「取引型」「情報収集型」「案内型」に分類されるといわれています。
取引型キーワードの例
取引型の検索キーワードとは、ユーザーの「何かがしたい」「何かに対してアクションが起こしたい」との意図が含まれているものです。「何かを購入したい」は、その典型的なものとなります。具体例には以下のようなものがあります。
・iPhone5ケース 通販
・Google Chrome ダウンロード
・リフォーム 資料請求
・情報収集型キーワードの例
情報収集型の検索キーワードとは、ユーザーの「何かの疑問や悩みを解決したい」との意図が含まれているものです。具体例には以下のようなものがあります。
・ネクタイ 結び方
・ラスベガス 時差
・カルボナーラ レシピ
・案内型キーワードの例
案内型の検索キーワードとは、ユーザーの「このサイトにアクセスしたい」との意図が含まれているものです。公式サイトを探すキーワードが、その典型的なものとなります。具体例には以下のようなものがあります。
・ウィキペディア
・Nexus7
・ドコモ 問い合わせ先
●検索エンジンは大幅に進化している
従来ならば、Webページ内に所定のキーワードが一定数散りばめられていれば、検索上位に表示されることが可能でした。
しかし近年では、検索エンジンは大幅に進化しており、キーワードを一定数散りばめるだけでは検索上位に表示されることは困難です。
グーグルは、検索エンジンに人工知能「Rankbrain」を活用しています。
検索エンジンは、Webページの内容についてかなりのところまで理解できるようになっているといわれます。
「ハミングバード」と呼ばれるアルゴリズムを導入することにより、検索ユーザーの「意図」を理解できるようになったともいわれます。
たとえば「東京」ならば、単に文字列としてではなく、「日本の首都だ」と理解できるといわれています。
したがって作成するページを検索上位に表示させるためには、ユーザーの検索意図をしっかりと読み取ることが必須です。
検索意図を適切に読み取ることにより、検索順位が大幅に上がることも多くあります。
検索意図を読み取るためには、「サジェストワード」「検索上位サイト」などを参考にします。
●検索意図の読み取り方(1) サジェストワードを参考にする
検索意図を読み取るために第一に参考になるのが「サジェストワード」です。
サジェストワードとは、グーグルの検索窓に文字列を入力すると、候補として表示される単語のことです。
グーグルは、サジェストワードを抽出するために「検索頻度」を一つの指標としています。
したがってサジェストワードは、「検索ユーザーが知りたいこと」を反映していると考えられます。
●検索意図の読み取り方(2) 検索上位サイトを参考にする
検索意図を読み取るために有効となる第二の方法は、実際に検索上位に表示されているページの内容を参考にすることです。
検索上位に表示されているページは、グーグルが「ユーザーの検索意図を満たしている」と判断していると考えられます。
検索上位ページの内容を見ることにより、ユーザーの検索意図としてグーグルがどう判断しているのかがわかります。
検索意図以外にも、グーグルは「スマホでの閲覧に適しているか」など、ページの表示方法についても検索順位の判断基準としているといわれます。
検索上位のページを見ることは、ページの作り方の基本的な部分についても参考になるといえるでしょう。
グーグルは「ページの独自性」も検索順位の判断基準にしています。
検索上位のコンテンツと同じコンテンツを作成しても、単に「コピーコンテンツ」と判断され、検索上位に表示させることは困難です。
まとめ
◆ オウンドメディアを成功させるには、ターゲット設定と、そのターゲットの検索意図に合致したコンテンツ作成が不可欠です。
◆ ターゲット設定の具体的な手法として、BtoCであれば顧客像を詳細に描いたペルソナを、BtoBであれば商材を購買する企業や担当者の姿を具体化した企業ペルソナを作成することが重要です。
◆ ターゲットの検索意図を正確に把握するためには、Googleのサジェストワードや、検索上位に表示されているページの分析が有効な手段となります。これらの情報を活用することで、ユーザーが真に求めている情報を提供し、オウンドメディアへの集客とエンゲージメントを高めることができます。



