マーケティングの世界には、「こうすれば成果につながる」と語られるフレームワークや手法が数多く存在しています。しかし、その本質を理解しないまま表面的なやり方だけをなぞっても、ほとんどの場合実務に役立つことはなく、失敗に終わるか、成功したとしても再現性のない活動となってしまいます。
本連載「マーケティングの愚かな勘違い」では、マーケティングの現場でよく見られる勘違いを取り上げ、「なぜ勘違いされているのか」「本来はどうするべきなのか」等を解説していきます。第一弾は「ペルソナ」についてです。
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目次
ペルソナとは何か、その目的は?
マーケティングにおける「ペルソナ」とは、自社の商品やサービスを利用する典型的な顧客像を具体的に描き出したものを指します。しばしば「ターゲット」と混同されますが、両者は似て非なるもの。ターゲットが年齢層や職業など大まかな属性を示すのに対し、ペルソナは優先的に狙うべきユーザー像をより具体的に言語化したものです。
では、なぜペルソナを作る必要があるのでしょうか。重要なのはこの部分です。ペルソナ作成の大きな目的は、「商品開発やマーケティング戦略立案への活用」と言えるでしょう。商品を誰に売るべきかを明確にすることではじめて、商品や打ち手の良し悪しを判断することができるのです。
ではここからは、今お話ししたペルソナ作成の目的を前提に、よくある勘違いについて3つ取り上げ、それぞれについて解説していきます。
ペルソナ作成でよくある勘違い
「ペルソナを考える」という勘違い
ペルソナ作成の際に現場で起きてしまう最も愚かなミスは、「こういう人に買ってもらいたい」という理想を話し合い、ペルソナを作り込んでしまうこと。結果として、会社にとっての理想の人物像が完成しますが、それが実務に活かされることはおそらくないでしょう。そもそも、そのような人物が現実世界に存在しているかどうかさえ怪しいものです。
ここで覚えておいていただきたいことは、ペルソナは「考えて作り出すもの」ではなく「リサーチによって導き出されるもの」だということです。既存の商品であれば、過去の購買データを分析し、「どういう人に購入されているのか」「どのような理由で購入されているのか」を徹底的に調べる必要があります。新規サービスであっても、市場調査や競合調査、アンケート、1対1のデプスインタビューなどを通じて、実際の顧客行動をデータに基づいて整理する必要があります。
これらのデータを整理した結果として、浮かび上がってくる「最も優先度の高いユーザー像」こそがペルソナになるのです。
「名前や服装まで決める」という勘違い
完成したペルソナの資料を見ると、「名前」「出身地」「服装」「休日の過ごし方」など、細かいプロフィールが埋め込まれているケースは珍しくありません。場合によっては、「好きな色」や「口癖」が記載されているものもあります。しかし、それらの情報は本当にペルソナとして必要なのでしょうか。
ここで、前述したペルソナ作成の目的に立ち返ると、必要なのは「商品開発やマーケティング戦略立案に必要な情報」であることがわかります。それ以外の情報はいくら作り込んでも意味がありません。
では「商品開発やマーケティング戦略立案に必要な情報」とは何か。大きく分けると3つに分類されます。1つ目はデモグラフィック情報。性別や年齢、職業、所得、居住地などが該当します。2つ目はサイコグラフィック情報。ライフスタイルや価値観、性格などです。そして3つ目が、インサイトです。
本人も自覚していない潜在的な心理と言われている「インサイト」。これこそが、マーケティング戦略を考えるにあたって――つまりペルソナの要素として――もっとも重要な情報だと言えます。
ここではペルソナとして明確にしておきたいインサイトの項目を6つ紹介します。
Gain:顧客が得たい成果や欲求
Pain:それを妨げる課題や障壁
Situation:顧客が置かれている状況や制約
Alternatives:他に検討しうる代替手段
Budget:現実的な支払い可能額
Info Sources:情報収集に頼っているメディアや人
これらの情報を“データを用いて”整理することで、実務に活かすことのできるペルソナを作ることができるのです。
関連記事:インサイトとは?マーケティングにおける重要性と成功事例3選
「ペルソナは1つ」という勘違い
「ペルソナは1つに定めるもの」という考えが、当然の前提として受け入れられているケースは少なくありません。しかし、実際には、1つの商品やサービスであっても、利用シーンや購買動機の違いから、複数のペルソナが存在する可能性があります。
例えば、フィットネスクラブのペルソナには「ダイエット目的の若手女性」「仕事帰りのサラリーマン」「健康志向が高いシニア層」など複数のペルソナが必要になるでしょう。それぞれのペルソナに対して、別々のマーケティングアプローチを取るべきなのは明らかです。
もちろん、ペルソナをひとつに絞ったほうが、マーケティング戦略はシンプルになり、打ち手も決めやすくなるでしょう。しかし、ペルソナ作成の工程で、後工程の複雑さを考慮してはいけません。複数のペルソナが導き出されるなら、それぞれに応じた戦略を検討するべきなのです。
ペルソナは、マーケティング活動の土台であり羅針盤
ペルソナは、マーケティング活動の土台となるものです。これがなければ、事業開発や商品開発もできず、適切な施策が何かを判断することもできません。カスタマージャーニーマップを作成する際にも不可欠な要素です。
しかし現場では、「社内で共通認識を持てる」というメリットばかりに注目し、理想を詰め込んだだけの“無用のペルソナ”をつくってしまうケースがあまりにも多いのです。ペルソナは考えて創作するものではなく、リサーチによって導き出されるもの。そして、必要なのは趣味やプロフィールではなく、購買の背景にあるインサイト。さらに、それはひとつに限られるものでもありません。
この本質を押さえたうえでペルソナを作成できれば、明確な意図を持った戦略のもと、適切なマーケティング活動を推進することができるはずです。