マーケティング担当者にとって、広告宣伝メールやメールマガジンの配信は日常的な業務の一つです。その中で、オプトアウトやオプトインという用語をよく耳にすることでしょう。これらの概念を正しく理解し、適切に運用することは、効果的なマーケティング活動を行う上で非常に重要です。
オプトアウトとは、主に2つの意味を持ちます。1つは、事業者が顧客の許可なく広告宣伝メールを送信すること、もう1つは、顧客が広告宣伝メールの受け取りを拒否する意思表示をすることです。これらの概念は、企業データベースの管理や活用にも密接に関わっています。
近年、迷惑メールの増加に伴い、法規制も強化されています。特に、特定電子メール法の改正により、オプトアウト方式からオプトイン方式への移行が進められました。これにより、マーケティング担当者は法律に則った適切なメール配信を行う必要があります。
企業データベースを活用したマーケティング活動においても、オプトアウトの概念は重要です。顧客情報の取り扱いや、ターゲティングの精度向上など、データベースマーケティングの効果を最大化するためには、オプトアウトに関する正しい理解が不可欠です。
また、マーケティングオートメーションツールを使用する際も、オプトアウトの仕組みを適切に実装することが求められます。これにより、顧客のプライバシーを尊重しつつ、効果的なマーケティングキャンペーンを展開することが可能となります。
さらに、CRMシステムとの連携においても、オプトアウトの状況を正確に反映させることが重要です。これにより、顧客とのコミュニケーションの質を向上させ、長期的な関係構築につなげることができます。
本記事では、オプトアウトの意味や関連法規、マーケティングにおけるお作法について詳しく解説していきます。これらの知識を身につけることで、より効果的で法令遵守したマーケティング活動を展開することができるでしょう。
本記事では、マーケティング担当者にとって重要な「オプトアウト」の概念について詳しく解説します。企業データベースの活用や顧客データの管理など、オプトアウトに関連する様々な側面にも触れながら、法的な観点やマーケティングの実践的なアプローチについて説明していきます。特に、企業データベースの活用とオプトアウトの関係性、データ管理の重要性、そしてCRMシステムとの連携について、新たな項目を追加しました。これらの知識は、効果的なマーケティング戦略の立案と実行に不可欠です。
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目次
オプトアウトとは
オプトアウトは、マーケティングにおいて重要な概念であり、主に2つの意味があります。1つ目は、事業者がユーザーの許可を得ずに、営業目的で広告や宣伝情報をメールなどで送信することです。2つ目は、ユーザーが広告宣伝メールの受け取りを拒否する意思表示をすることです。英語では「Opt Out」と表記され、「会員から脱退する」という意味を持ちます。
近年、迷惑メールの増加に伴い、企業データベースの管理や活用方法にも注意が必要となっています。事業者がメールを顧客や見込み顧客に送信する際には、法律で定められた規定を遵守し、ユーザーの同意を得るなどの対応が求められます。特に、顧客データベースを活用したマーケティング活動では、オプトアウトの仕組みを適切に実装することが重要です。
マーケティング担当者にとって、オプトアウトの意味や仕組み、オプトインとの違いは必要最低限の知識です。企業情報データベースを活用する際も、オプトアウトに関する正しい理解が不可欠となっています。例えば、取引先企業データベースからメールアドレスを抽出して一斉配信を行う場合、オプトアウトの機会を適切に提供する必要があります。
また、企業向けデータベースを利用したマーケティング施策を展開する際は、オプトアウトの仕組みを組み込むことで、ユーザーのプライバシーを尊重し、コンプライアンスを遵守したアプローチが可能となります。さらに、BtoBデータベースを活用する場合も、オプトアウトの概念を理解し、適切に運用することが求められます。
企業情報管理の観点からも、オプトアウトは重要な要素です。顧客や取引先の情報を適切に管理し、オプトアウトの要望に迅速に対応できる体制を整えることで、企業の信頼性向上にもつながります。このように、オプトアウトの概念は、現代のデジタルマーケティングにおいて欠かせない要素となっているのです。
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オプトアウトと一緒に知っておきたいオプトインとは
オプトアウトをより深く理解するために、「オプトイン」との違いについても確認しておきましょう。
オプトインとは、英語で「Opt In」と表記され、「会員に参加する・加入する」という意味を持ちます。オプトアウトの対義語といえるでしょう。
具体的には、オプトインとは以下の2つの意味を指します。
1.事業者が広告宣伝メール等を配信する際に、事前にユーザーから「配信してもよい」という許可を得ること
2.ユーザーが広告宣伝メール等の受け取りを許可する意思を示すこと
近年、多くの企業のお問い合わせフォームには「今後、メールマガジンを送ってもよろしいですか?」や「必要な情報をメールで受け取りますか?」といった同意を求める文言とチェックボックスが設置されています。これは、ユーザーが入力するメールアドレスに今後広告宣伝メールを送信してもよいかという同意を求めるオプトインの一例です。
ユーザーが受け取りの意思表示をすることで初めて、事業者は広告宣伝メールを送信することが可能となります。このようなオプトイン方式は、ユーザーのプライバシーを尊重し、望まない情報の受信を防ぐ上で重要な役割を果たしています。
また、オプトインの概念はメール配信だけでなく、個人情報の取り扱いや各種サービスへの参加など、様々な場面で適用されています。ユーザーの意思を尊重し、明確な同意を得ることで、より良好な関係構築につながるのです。
企業データベースの運用においても、オプトインの概念は重要です。顧客情報を適切に管理し、許可を得た上でコミュニケーションを行うことで、効果的なマーケティング戦略を展開できます。特に、BtoB企業では、企業データベースを活用したターゲティングメールの配信や、見込み顧客へのアプローチにおいて、オプトインの原則を守ることが求められます。
さらに、企業データベースの構築時には、各企業や担当者からのオプトイン同意を得ることが、法令遵守と信頼関係構築の観点から不可欠です。このプロセスを通じて、質の高い企業データベースを作成し、効果的なBtoBマーケティングを実現することができるのです。
オプトアウト方式とオプトイン方式の仕組み
メール配信におけるオプトアウト方式とオプトイン方式の仕組みについて、詳しく見ていきましょう。これらの方式は、企業データベースの活用方法に大きな影響を与えます。
オプトアウト方式では、送信者は取得したメールアドレスに対して、原則として自由に広告宣伝メールを配信できます。受信者は、不要だと感じた場合に、その都度オプトアウトの意思表示を示し、配信停止手続き等を行う必要があります。この方式では、企業データベースに登録されている全ての連絡先に対して、広範囲にメッセージを届けることが可能です。
一方、オプトイン方式では、送信者はユーザーのメールアドレスを知っていても、同意なく広告宣伝メールを送信することはできません。あらかじめ「広告宣伝メールを受け取ります」という明確な意思表示を示したユーザーに対してのみ、広告宣伝メールを送ることが可能となります。この方式では、企業データベース内の連絡先のうち、明示的に同意を得た対象にのみメッセージを送信することになります。
これら2つの方式を比較すると、オプトアウト方式では主導権が送信側にあるのに対し、オプトイン方式では主導権は受信側にあります。そのため、オプトイン方式では、ユーザーは身に覚えのないメールを受け取った際に、苦情を申し立てやすい仕組みになっています。
企業データベースの管理においても、オプトイン方式を採用することで、より質の高い顧客リストを維持することができます。同意を得たユーザーのみにメッセージを送ることで、効果的なターゲットマーケティングが可能となり、顧客満足度の向上にもつながります。
近年の法改正により、多くの国でオプトイン方式が推奨されるようになり、ユーザーのプライバシー保護とデータ管理の観点から、マーケティング担当者はこれらの方式の違いを十分に理解し、適切に運用することが求められています。特に、企業データベースの構築と活用においては、法令遵守と顧客の信頼獲得の両面から、オプトイン方式の採用が重要となっています。
オプトアプト方式
オプトアウト方式では、送信者は原則として自由にメールを送信できます。取得したメールアドレスに対して、広告宣伝メールを制限なく配信することが可能です。受信者側は、不要だと判断した場合に、その都度オプトアウトの意思表示を示し、配信停止手続きなどを行う必要があります。この方式では、ユーザーが明示的に拒否しない限り、事業者は継続的にメールを送信できるため、マーケティング活動において効率的な面もあります。しかし、受信者の意思を尊重する観点からは課題があり、近年では規制が強化されています。オプトアウト方式による広告宣伝メールの送信は、ユーザーの同意なしに行われるため、特定電子メール法の改正により原則として禁止されています。
顧客管理の観点からも、オプトアウト方式には問題があります。ユーザーの許可なく送信されるメールは、顧客体験を損なう可能性が高く、ブランドイメージにも悪影響を与える可能性があります。また、デジタルマーケティングの効果測定においても、オプトアウト方式では正確なターゲティングが困難となり、ROI(投資対効果)の低下につながる可能性があります。そのため、多くの企業がCRM(顧客関係管理)システムを活用し、顧客の同意を得た上でのコミュニケーションを重視するようになっています。
オプトイン方式
オプトイン方式は、送信者がユーザーのメールアドレスを保有していても、同意なしに広告宣伝メールを送信することを禁止する方式です。この方式では、ユーザーが「広告宣伝メールを受け取る」という明確な意思表示をした場合のみ、企業データベースに登録され、広告宣伝メールの配信が許可されます。
オプトイン方式の特徴として、受信側に主導権があることが挙げられます。これにより、ユーザーは望まない広告メールを受け取るリスクが低減し、プライバシーの保護が強化されます。また、身に覚えのないメールを受信した場合、ユーザーは苦情を申し立てやすい環境が整っています。
企業にとっても、オプトイン方式には利点があります。同意を得たユーザーにのみメールを送信することで、メールマーケティングの効果が向上し、顧客との信頼関係構築にも寄与します。さらに、コンプライアンス遵守の観点からも、オプトイン方式は重要な役割を果たしています。
マーケティング担当者は、オプトイン方式を実践する際、以下の点に注意が必要です。
・明確な同意取得プロセスの設計
・同意の記録と管理の徹底
・定期的な同意の確認と更新
・オプトアウトの選択肢の提供
・プライバシーポリシーの明確な提示
オプトイン方式の導入により、企業は顧客中心のアプローチを強化し、より効果的なマーケティング戦略を展開できます。また、法令遵守と顧客満足度の向上を両立させることで、持続可能なビジネス成長につながります。
オプトアウト方式からオプトイン方式へ
日本には、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」、略して「特定電子メール法」という法律があります。世間一般では「迷惑メール法」と呼ばれることもあります。この法律は、企業データベースの管理や活用にも大きな影響を与えています。
特定電子メール法は、近年の改正により、広告宣伝メールを配信する際は、オプトアウト方式は禁止されることになり、オプトイン方式で送ることが規定されました。この改正の内容について知っておくことは、企業データベースを活用したマーケティング活動において非常に重要です。
特定電子メール法は、インターネットを通じてPCやスマートフォンなどに送信される迷惑メールが増加の一途をたどっていることから、迷惑メールへの対策として、日本政府が平成14年(2002年)に施行しました。その後、法律改正が重ねられ、規定や罰則強化などが行われています。これらの改正は、企業データベースの運用方法にも大きな変化をもたらしました。
特に重要な改正は平成20年(2008年)に行われました。この改正では、オプトイン方式による規制の導入が最大のポイントとなりました。これにより、一部の例外を除き、あらかじめ送信に同意したユーザーに対してのみ、広告宣伝メールの送信が認められるようになりました。企業データベースの構築においても、顧客の同意を得るプロセスが不可欠となりました。
この改正により、マーケティング担当者は顧客との信頼関係を重視し、より効果的なコミュニケーション戦略を構築する必要が生じました。オプトインの導入は、単なる法的要件ではなく、顧客中心のマーケティングアプローチへの転換を促す重要な変化となったのです。企業データベースの活用においても、顧客の意思を尊重し、適切な情報管理を行うことが求められるようになりました。
これらの変更は、企業データベースの構造や運用方法にも影響を与え、顧客の同意状況を正確に記録し、管理する仕組みが必要となりました。また、データベースマーケティングの手法も、より慎重かつ戦略的なアプローチが求められるようになりました。
特定電子メールとは
特定電子メールの定義は、「営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人」である送信者が「自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信する電子メール」のことです。これは、オプトアウトの対象となる重要な概念であり、企業データベースの管理においても注意が必要です。
例えば、電子メールの内容が、営業上のサービス・商品等に関する情報を広告または宣伝しようとするものである場合には、明らかに特定電子メールに当たるとされています。これには、製品の紹介や販売促進、セール告知などが含まれます。企業は、自社の顧客リストや企業データベースを活用して、こうした特定電子メールを送信することがあります。
その他、広告宣伝のためのWebサイトへ誘導するSNSでのメッセージも特定電子メールの範疇に含まれます。具体的には、FacebookやX(Twitter)などのSNSプラットフォームを通じて送信される広告目的のダイレクトメッセージなども、特定電子メールとして扱われる可能性があります。これらのメッセージも、企業のマーケティング戦略の一環として、企業データベースに基づいて送信されることが多いです。
企業は、特定電子メールの送信に際して、自社の企業データベースを適切に管理し、顧客の同意状況を正確に把握する必要があります。また、オプトアウト機能を提供し、顧客が簡単に配信停止を行えるようにすることも重要です。これにより、顧客のプライバシーを尊重しつつ、効果的なマーケティングコミュニケーションを実現することができます。
このように、特定電子メールの概念は、従来の電子メールだけでなく、デジタルマーケティングの様々な手法にも適用されることを理解しておくことが重要です。企業データベースの活用と特定電子メールの送信は密接に関連しており、法令遵守と顧客満足度の向上を両立させるためには、適切な管理と運用が不可欠です。
特定電子メール法とは
「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」(通称:特定電子メール法)は、インターネットを通じてPCやスマートフォンなどに送信される迷惑メールの増加に対処するため、日本政府が平成14年(2002年)に施行した法律です。この法律は、オプトアウトに関する規定を含み、迷惑メール対策の重要な柱となっています。特定電子メール法の目的は、迷惑メールによる被害を防止し、電子メールの適正な利用を促進することにあります。施行以降、社会情勢の変化や技術の進歩に合わせて、複数回の法律改正が行われており、規定の見直しや罰則強化などが実施されてきました。この法律は、マーケティング担当者にとって、メール配信の際に遵守すべき重要な法的枠組みとなっています。
特定電子メール法は、企業データベースの管理や利用にも大きな影響を与えています。法律の遵守のため、企業は顧客の同意状況を正確に記録し、適切に管理する必要があります。また、マーケティングオートメーションツールを使用する際も、この法律に準拠した設定が求められます。特定電子メール法は、デジタルマーケティング戦略全体にも影響を及ぼし、特にBtoB企業におけるリードジェネレーション活動においても重要な考慮事項となっています。
さらに、この法律はメールマーケティングの実践にも大きな影響を与えており、ターゲティング手法やコンテンツマーケティング戦略の見直しを促しています。企業は法令遵守と効果的なマーケティングの両立を図るため、より洗練された手法を開発する必要に迫られています。
平成20年(2008年)の法改正
平成19年(2007年)に、迷惑メールの全体的な増加とともに、その手口が悪質化・巧妙化してきていることから、現行の規制方法が形骸化していたこと、海外からの迷惑メールが急増していたことなどから、特定電子メール法改正が検討されました。平成20年(2008年)2月に特定電子メール法改正案が策定され、同年12月1日に施行されました。
この法改正における改正内容の大きなポイントは3つです。オプトアウト方式からオプトイン方式への移行、法の実効性の強化、そして国際連携の強化です。これらの改正により、広告宣伝メールの送信に関する規制が大幅に強化されました。特に、オプトイン方式の導入により、ユーザーの同意なしに広告宣伝メールを送信することが禁止されるなど、マーケティング担当者にとって重要な変更点が含まれています。
この法改正における改正内容の大きなポイントは3つです。
1.オプトイン方式による規制の導入
すでに取引関係にあるユーザーへの送信など一定の場合を除き、あらかじめ送信に同意したユーザーに対してのみ、広告宣伝メールの送信を認めるものです。これまではオプトアウト方式となっており、事業者はユーザーへメールを同意なく配信できましたが、それが禁止されました。つまり同意なく送ると法律違反となり、罰則が科されます。この規制により、ユーザーの意思を尊重したメール配信が求められるようになりました。オプトイン方式の導入は、迷惑メール対策として効果的であり、ユーザーのプライバシー保護にも寄与します。
2.法の実効性の強化
総務大臣による報告徴収及び立入検査の対象として、送信委託者を新たに追加しました。送信委託者とは、メール送信を依頼した人のことです。もし送信委託者が不適正な送信に責任がある場合、必要な措置を命ずることができることになりました。
そして、法人に対する罰金額が100万円以下だったところ、3,000万円以下に引き上げるなどの罰則が強化されました。これにより、オプトアウトの規定に違反した場合の罰則も厳しくなり、法の実効性が高まりました。
3.国際連携の強化
諸外国との連携を強化して、迷惑メール対策に務めることになりました。迷惑メール対策を行う外国執行当局に対し、その職務に必要な情報の提供を行うことができるようになりました。これにより、国境を越えたオプトアウト違反にも対応できるようになり、グローバルな視点での迷惑メール対策が可能となりました。また、この国際連携強化により、海外からの不適切な広告宣伝メールの流入を抑制し、国内のユーザーを保護する体制が整備されました。
マーケティング担当者が知っておきたいオプトアウトのお作法
ここまでオプトアウトについて解説してきましたが、実際にマーケティング担当者としてどのような対応をすべきか、オプトアウトに関するお作法をご紹介します。
まず大前提として、現在の法律では広告宣伝メールを送信する際はオプトイン方式のみが許可されています。つまり、ユーザーの同意なしに勝手にメールを送信することは禁止されています。この点を十分に理解し、遵守することが重要です。
また、広告宣伝メールの本文には、「オプトアウト方法」をはじめとした法律で定められた必須記載事項があります。これらの記載を忘れずに行うことも、マーケティング担当者として押さえておくべき重要なポイントです。
オプトアウトの仕組みを適切に実装することで、ユーザーの信頼を得ることができ、効果的なメールマーケティングを展開することが可能になります。法令遵守とユーザー体験の向上を両立させることが、成功するマーケティング戦略の鍵となるでしょう。
1.広告宣伝メールは、オプトイン方式のみ送信可能
先述の通り、広告宣伝メール等を送る場合は、ユーザーの同意を得なければなりません。オプトイン方式のみ許されており、オプトアウトは禁止されています。そのため、事前に、何らかの形でユーザーの同意を得る必要があります。一般的な方法として、メールアドレスを取得するお問い合わせフォームに、「今後、今入力いただいたメールアドレス宛に、広告宣伝メールを送ってもよろしいですか?」という主旨の同意を求める文言を記載し、チェックボックスを設けてそこにチェックを入れてもらうなどの仕組みを導入することが挙げられます。
また、メールマガジンの配信を募集し、その募集に申し込んだユーザーにのみメールを送る方法も、オプトイン方式の一例として有効です。これらの方法を通じて、ユーザーの明示的な同意を得ることが、法令遵守の観点から重要となります。
2.オプトイン方式のルール適用は「広告宣伝メール」だけではない
注意したいのは、オプトイン方式は広告宣伝のメールだけが対象ではないことです。オプトアウトの概念を正しく理解し、適切に運用することが重要です。
実は、広告または宣伝を行うための「手段として」送信されているとみなされるものも、特定電子メール法の規制対象となります。これには、広告宣伝Webサイトへ誘導するメールや、他の目的を装って営業目的のWebサイトへ誘導するメール、さらにはショートメッセージ等も含まれます。
特に注意が必要なのは、SNS(Social Network Service)を利用したコミュニケーションです。SNSでユーザーに情報を送信する際にも、オプトイン方式に則って広告宣伝メッセージを送る必要があります。これは、デジタルマーケティングの観点からも重要な点です。
ただし、取引関係に係る通知や単なる時候の挨拶など、一部の例外も存在します。マーケティング担当者は、これらの規定を十分に理解し、法令遵守と効果的なコミュニケーションの両立を図ることが求められます。
広告宣伝Webサイトへ誘導するメール
営業上のサービス・商品等に関する情報を広告または宣伝しようとするWebサイトへ誘導することが、その送信目的に含まれる電子メールは特定電子メールに該当します。このようなメールは、オプトアウトの対象となるため、ユーザーの同意なしに送信することは法律違反となる可能性があります。マーケティング担当者は、こうした広告宣伝目的のメールを送信する際には、必ずオプトイン方式を採用し、受信者の事前同意を得るようにしましょう。
他の目的を装って営業目的のWebサイトへ誘導するメール
SNS(Social Network Service)への招待や懸賞当選の通知、友達からのメールや会員制サイトでの他の会員からの連絡などを装って営業目的のWebサイトへ誘導しようとする電子メールも、特定電子メールに該当します。これらは、一見すると広告や宣伝とは異なる目的を持つメールのように見えますが、実際には受信者をオプトアウトの意思表示をする機会なく営業目的のサイトに誘導しようとする意図があるため、特定電子メール法の規制対象となります。このような手法は、ユーザーの信頼を損なう可能性が高いため、マーケティング担当者は避けるべきです。
ショートメッセージ等
携帯電話やスマートフォン、タブレット端末等同士でメッセージを電話番号により送受信するサービス、例えば、ショートメッセージサービス(SMS)も特定電子メール法に規定する電子メールの通信方式の一つです。これらのサービスにより広告宣伝メールを送信する場合も、原則、特定電子メール法の規制対象となるとされています。
また、SNSでユーザーに情報送信する際にも、オプトイン方式に則って広告宣伝メッセージを送る必要があります。これは、オプトアウトの仕組みが適用されないことを意味し、事前の同意なしにこれらのメッセージを送ることは法律違反となる可能性があります。したがって、マーケティング担当者は、SMSやSNSを通じた広告配信においても、ユーザーの明示的な同意を得ることが不可欠です。
【例外】
しかし、次のような電子メールについては、広告または宣伝のための手段として送信されたものとは考えられないという理由から、特定電子メールには当たらないと規定されています。
・取引上の条件を案内する事務連絡や、料金請求のお知らせなど取引関係に係る通知であって広告または宣伝の内容を含まず、広告または宣伝のWebサイトへの誘導もしない電子メール
・単なる時候の挨拶であって、広告や宣伝の内容を含まず、広告または宣伝のWebサイトへの誘導もしない電子メール
・取引関係にある人に送信する場合
(ただし、送信される電子メールが通信販売などの電子メール広告の場合には、特定商取引法が適用されるため、請求・承諾なしに送信することはできないので注意してください。)
・名刺などの書面により自己の電子メールアドレスを通知した者に対して送信する場合
(ただし、送信される電子メールが通信販売などの電子メール広告の場合には、特定商取引法が適用されるため、請求・承諾なしに送信することはできないので注意してください。)
・自身の電子メールアドレスを通知したユーザーに対する下記の広告宣伝メール
-同意の確認をするための電子メール
-契約や取引の履行に関する事項を通知する電子メールであって、付随的に広告宣伝が行われているもの
-フリーメールサービスを用いた電子メールであって、付随的に広告宣伝が行われているもの
・自己の電子メールアドレスをインターネットで公表している人に送信する場合
(個人の場合は、営業を営む場合の個人に限ります。)
(しかし、同時に広告宣伝メールの送信をしないように求める旨が公表されている場合は、同意なく送信することはできません。)
これらの規定をよく理解して、ユーザーに何かメールやメッセージを送る際には充分注意しましょう。
3.「オプトアウト方法」の明記
広告宣伝メールを受信者であるユーザーの同意を得て、送信する際、そのメールの本文には記載義務のある内容がいくつかあります。その内の一つが、「オプトアウト方法」です。
いくら同意を得ていたとしても、ユーザーがその広告宣伝メールが「不要」だと判断したら、その時点で、ユーザーは自由に「オプトアウト」することが可能です。そのため、自由に配信を拒否することができるように、オプトアウトの方法をメール本文に必ず明記しなければなりません。
受信者に広告宣伝メール送付を拒否された場合は、広告宣伝メールを送ることができなくなります。
具体的には、配信を停止する際に必要な連絡先や配信停止フォームのリンクを、本文内のわかりやすい場所に記載します。もしわかりにくい場所に記載した場合は法律に触れる可能性があるといわれています。
4.送信者の氏名または名称、住所などの表示
特定電子メール法では、オプトアウト方法の明記のほか、送信者の氏名または名称、住所などの送信者情報を表示することも義務付けられています。
このとき、注意しなければならないのは、「送信者情報はこちら」とリンク先のWebページを記載し、そのWebページ上に表示するということは認められていないということです。必ず本文中に直接記載することが必要です。
5.問い合わせ先の電話番号またはメールアドレスの表示
特定電子メール法では、問い合わせやクレーム、意見、質問等を受け付けるための電話番号やメールアドレスも記載が義務付けられています。
これらの情報は、メール本文に「問い合わせはこちら」などWebページのリンクを記載し、そのWebページ上での表示も認められています。
6.違反行為の罰則
特定電子メール法では、受信拒否したユーザーや同意を得ていないユーザーに広告宣伝メールを配信したり、送信者情報を明記せずメールを送ったりと特定電子メール法の規定に違反すると、罰則が科せられます。
違反者には、送信方法を改善する措置を取るよう通告され、そうした措置命令を無視してメールを配信し続けると、個人は1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
法人の場合は、行為者を罰するほか、法人に対して3,000万円以下の罰金等が科せられます。
7.同意を証する記録の保存も義務
広告宣伝メールの送信の前に、受信者から「送信していいですよ」という同意を取る必要があるとお伝えしました。その同意を取っている旨の記録を保存する必要がある旨も、特定電子メール法には定められています。
保存するものは、「個別の電子メールアドレスについて、同意を受けた際の状況を示す記録(時期と方法など)」です。
もし、同意の取得に際し、送信者などが書面の提示、電子メールの送信、Webサイトから通信文の伝達をしていた場合は、電子メールアドレスのリストに加え、以下の事項とすることも可能です。
・同意の取得に際し、書面(FAXを含む)の提示をしていた場合→当該書面に記載した定型的な事項
・同意の取得に際し、電子メールの送信をしていた場合→当該電子メールの通信文のうち定型的な事項
・同意の取得に際し、Webサイトから通信文の伝達をしていた場合→当該通信文(Webサイトに表示された事項)のうち定型的な事項
保存期間は、記録の保存に関係する広告宣伝メールを最後に送信した日から1ヶ月です。ただし、特定電子メール法に基づく措置命令を受けた場合は、1年間の保存義務があります。
【補足事項】
送信した広告宣伝メールが、特定商取引法上の通信販売電子メール広告などに該当する場合は、上記でご説明した記録に加えて必要な記録を必要な期間だけ保存する必要があります。該当する可能性がある場合は、特定商取引法についても留意する必要があります。
8.特定商取引法や個人情報保護法についても留意する
広告宣伝メールを送る際には、特定電子メール法に則って正しく送信する必要があります。しかし、それだけを守っていればいいというわけではありません。必要に応じて特定商取引法に基づいて送信しなければなりませんし、すべてのメール送信事業者は個人情報保護法を守る必要があります。
特定商取引法
特定商取引法は、通信販売などの電子メール広告が対象です。請求・承諾のない者に対する電子メール広告が禁止されており、請求・承諾の記録の作成・保存義務があります。また、受信拒否者への電子メール広告の禁止や表示義務もあります。
個人情報保護法
個人情報保護法は、電子メール問わず、個人情報を取り扱うすべての事業者が守るべき法です。メールマガジンなどを送る場合、読者の情報として氏名や会社名、メールアドレス等の組み合わせを取り扱うため、個人情報に該当し、個人情報保護法の対象となります。
例えば、メルマガのオプトインを取得する際に、個人情報の利用目的の明示、事前に本人から承諾を得ることなく第三者に提供しない旨の伝達などを守る必要があります。
広告宣伝メールにおける「特定電子メール法」に基づく表示義務項目の表示例
実際、広告宣伝メールを作成するとなると、表示義務のある項目があるため、初めての場合、戸惑ってしまうかもしれません。そこで、特定電子メール法に基づく表示義務項目の表示例をご紹介します。
(1)送信者情報(送信者等の氏名または名称)
送信者の氏名または名称を明記します。電子メールの送信を他社に委託している場合は、送信者または委託者のうち送信に責任を有する者の氏名または名称を記載します。
(2)受信拒否の通知ができる旨
このメールが、希望すれば受信拒否できることを知らせる主旨の内容を表示します。これは受信拒否の通知先の直前または直後に表示する必要があります。このとき、受信者が、容易に認識できる場所に表示する必要があります。
(3)受信拒否の通知を受けるためのメールアドレスまたはURL
受信拒否の通知を受けるためのメールアドレスとURLの記載が必要です。URLはURLをそのまま本文に記載するのではなく、リンクを設置するのでも問題ありません。
ただし、URLの場合、リンク先において、受信拒否のために必要な情報が明確かつ平易に提供され、受信拒否の通知が容易に行うことができるよう、必要な措置が講じられている必要があります。つまり、受信拒否がしにくいように、何度も確認を求めたり、受信拒否の方法を意図的にわかりづらくするなど、複雑に構成するといったことは規律違反となります。
(4)送信者などの住所
送信者や送信委託者のうち責任を有する者の住所を明記します。
(5)問い合わせやクレームなどを受ける電話番号、電子メールアドレス、URL
問い合わせ先の電話番号やメールアドレス、URLのいずれかを明記します。この項目については、リンク先で問い合わせ先を明記することも可能です。
まとめ
・オプトアウトには大きく2通りの意味があり、一つは、ユーザーに許可を取ることなく、営業行為のために事業者がユーザーに出す広告や、宣伝目的の情報をメールなどの方法で送ること。もう一つは、広告宣伝メールの受け取りを、ユーザーが拒否する意思を示すこと。・「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」は平成20年(2008年)の改正により、広告宣伝メールを配信する際は、オプトアウト方式は禁止され、オプトイン方式で送ることが規定された。・マーケティング担当者が知っておきたいオプトアウトのお作法として、1.広告宣伝メールは、オプトイン方式のみ送信可能、2.オプトイン方式のルール適用は「広告宣伝メール」だけではない、3.「オプトアウト方法」の明記、4.送信者の氏名または名称、住所などの表示、5.問い合わせ先の電話番号またはメールアドレスの表示、6.違反行為の罰則、7.同意を証する記録の保存も義務、8.特定商取引法や個人情報保護法についても留意することがある。
・特定電子メール法では、広告宣伝メールについて例外もあるため、該当するかよく確認しなければならない。また、特定商取引法や個人情報保護法にも注意して、それぞれに則ってメールを送る必要がある。




