マーケティングは、どの顧客にアプローチするのかが成果に関わってきます。ターゲットの選定において、顧客セグメンテーションは特に重要です。今回は、顧客セグメンテーションについて、分類例や実践方法とあわせて解説します。
目次
顧客セグメンテーションとは?必要な理由
顧客セグメンテーションは、自社の製品・サービスの対象となる市場を特定の要素で細分化する活動のことを指します。市場を細かく分けることで、他社との競争で自社が優位に立てる部分を探し、他社とアプローチする顧客層を変えることで効果的なマーケティング活動の意思決定を行います。
さらに、セグメンテーションを行うことで、その顧客層へ広告などで適切なメッセージを届けることができ、最小の費用で最大の効果を狙うことができるマーケティング施策を実現できるようになります。これは、限られた予算を効率的に活用する上で非常に重要です。
顧客セグメンテーションは多くの企業がその重要性を再認識していますが、それはインターネットやSNSの普及が契機となっています。普及する前はマスメディアを主体として、不特定多数に向けた一方通行のマーケティングがほとんどでした。
しかし、インターネットやSNSの普及により情報量が爆発的に増え、顧客の購買行動が変化し、また、顧客の価値観も多様化する中であらゆるニーズが生まれています。そのため、企業は市場の中から自社に合う顧客層を見つける必要がでてきました。セグメンテーションを通じて、これらの多様なニーズに対応することが可能となります。
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また、IT技術の進化により、SNSなどを通じ顧客の興味・関心や購買行動に関する情報が簡単に入手できるようになり、顧客に最適化した広告配信を行う企業が増えたことも、セグメントの重要性を高める要因となっています。これにより、より精緻なセグメンテーションが可能となり、ターゲット顧客へのアプローチがより効果的になっています。
セグメンテーションを適切に行うことで、企業は自社の強みを活かせる市場を特定し、その市場に合わせた製品開発やマーケティング戦略を立案することができます。これにより、限られたリソースを最大限に活用し、効率的な事業展開が可能となるのです。
セグメンテーションにおける主な分類例
顧客セグメンテーションは、効果的なマーケティング戦略を立案する上で不可欠な手法です。セグメンテーションを行うことで、市場を細分化し、ターゲット顧客をより明確に把握することができます。ここでは、顧客セグメンテーションにおける主な分類方法を紹介します。これらの分類方法を適切に組み合わせることで、より精緻なセグメンテーションが可能となり、マーケティング施策の効果を最大化することができます。
セグメンテーションの主な分類方法には、ジオグラフィック変数(地理的変数)、デモグラフィック変数(人口動態変数)、サイコグラフィック変数(心理的変数)、ビヘイビアル変数(行動変数)の4つがあります。これらの分類方法を組み合わせることで、より詳細な顧客セグメントを作成することができます。
例えば、ある企業が新製品のマーケティング戦略を立てる際、まず地理的変数で都市部と地方に分け、次に年齢や性別などのデモグラフィック変数で細分化し、さらに顧客の価値観や趣味嗜好などのサイコグラフィック変数を考慮することで、より的確なターゲット顧客像を描くことができます。このように、複数の変数を組み合わせたセグメンテーションを行うことで、より効果的なマーケティング施策の立案が可能となります。
セグメンテーションの重要性は、近年のデジタルマーケティングの発展とともにさらに高まっています。オンライン広告やソーシャルメディアマーケティングなどでは、細かく設定されたセグメントに基づいて、パーソナライズされたメッセージを届けることが可能になっています。このような精緻なセグメンテーションとターゲティングにより、マーケティング効果の向上と効率化が実現できるのです。
ジオグラフィック変数(地理的変数)
ジオグラフィック変数は、顧客セグメンテーションにおいて地理的な条件に基づいて市場を分類する方法です。この変数は、国、都市、地域、市町村などの単位で顧客を分けるのに使用されます。例えば、BtoBビジネスでは企業・事業所の所在地、BtoCビジネスでは顧客の居住地でセグメントする際に活用されます。
特にBtoCマーケティングにおいて、ジオグラフィック変数を用いたセグメンテーションは重要です。食品や衣類、家電など、季節変動や地域特性が売上に大きく影響する製品・サービスを扱う企業にとって、この手法は非常に有効です。例えば、寒冷地向けの暖房製品や、海沿いの地域向けの防錆製品など、地理的特性に合わせた製品開発やマーケティング戦略の立案に役立ちます。
さらに、ジオグラフィック変数を活用したセグメンテーションは、地域ごとの消費者の嗜好や購買行動の違いを理解するのにも役立ちます。これにより、各地域に最適化されたマーケティングメッセージや販促活動を展開することが可能となり、より効果的な顧客アプローチを実現できます。
デモグラフィック変数(人口動態変数)
顧客の属性に関する特性で分類する方法です。BtoBであれば、企業の業種業態、従業員規模、設立年数、担当者の所属部署、役職など、BtoCであれば、顧客の年齢、職業、性別、家族構成などの要素で分けられます。このセグメンテーション手法は、容易に測定ができ、顧客ニーズとの関連性が高く、顧客セグメントでよく用いられます。
デモグラフィック変数によるセグメンテーションは、多くの企業がマーケティング戦略を立てる際に活用しています。例えば、ある製品が20代の女性に人気があることが分かれば、その年齢層と性別にターゲットを絞った広告展開が可能になります。また、BtoB市場では、企業規模や業種によってセグメンテーションを行うことで、より効果的なアプローチが可能になります。
さらに、デモグラフィック変数を組み合わせることで、より詳細なセグメンテーションを行うこともできます。例えば、「30代の既婚女性で、子供がいる」といったように、複数の要素を組み合わせることで、より具体的な顧客像を描くことができます。このような詳細なセグメンテーションは、製品開発やマーケティングキャンペーンの精度を高めるのに役立ちます。
サイコグラフィック変数(心理的変数)
顧客の心理的な状態に関する特性で分類する方法です。顧客個人の性格、価値観、趣味嗜好などの要素で分けられます。セグメンテーションにおいて、サイコグラフィック変数は顧客の内面を理解するのに重要な役割を果たします。特にSNSで、ユーザーの価値観や趣味嗜好に関するデータの精度は高くなっており、近年重視されるようになっています。このセグメンテーション手法は、顧客の心理的側面に焦点を当てることで、より精緻な顧客理解を可能にし、効果的なマーケティング戦略の立案に貢献します。例えば、環境意識の高い顧客セグメントに対しては、エコフレンドリーな製品やサービスを提案するなど、顧客の価値観に合わせたアプローチが可能となります。
ビヘイビアル変数(行動変数)
顧客の行動パターンに関連する特性で分類する方法です。製品・サービスの購入有無や購入頻度などの購入履歴、サービスサイトの訪問や資料ダウンロード、お問い合わせなどのユーザーの行動を要素にして分けられます。様々なユーザー行動がデータでとれるようになり、サイコグラフィック変数と同様に重視されている分類です。特に、顧客セグメンテーションにおいて、ビヘイビアル変数は重要な役割を果たします。例えば、ウェブサイトでの閲覧履歴や検索キーワード、商品の使用頻度などの行動データを分析することで、より精緻なセグメンテーションが可能になります。また、顧客のライフサイクルステージや購買意思決定プロセスに基づいたセグメンテーションも、ビヘイビアル変数を活用した効果的な方法です。このようなセグメンテーションアプローチにより、顧客のニーズや行動パターンに合わせたより的確なマーケティング戦略を立案することができます。
セグメンテーションの評価
4つの分類方法を用いて行ったセグメンテーションが適切であるかどうか評価する方法があります。「4Rの原則」と言い、①優先度(Rank)②有効性(Realistic)③到達可能性(Reach)④測定可能性(Response)の4つの条件で評価します。この評価方法は、効果的なセグメンテーションを行うために重要な指標となります。
①事業戦略やマーケティング戦略に基づいた優先順位をつけられているか
②その市場が十分な売上・利益を見込める市場規模であるか
③その市場の顧客に製品・サービスはもちろん、広告を届けられるか
④その市場の規模や特徴、マーケティング施策の効果は測定できるか
これらの条件を満たすことで、より精度の高いセグメンテーションが可能となります。セグメンテーションの評価を適切に行うことで、ターゲット顧客への効果的なアプローチが可能となり、マーケティング活動の成功につながります。
また、セグメンテーションの評価は一度きりではなく、定期的に見直しを行うことが重要です。市場環境や顧客ニーズの変化に応じて、セグメンテーションの妥当性を検証し、必要に応じて再評価を行うことで、常に最適なセグメンテーションを維持することができます。
セグメンテーションの実践方法は?
セグメンテーションを実践する方法はいくつかあります。まず、STP戦略の一環としてセグメンテーションを行うことが挙げられます。STP戦略は「Segmentation(セグメンテーション)」「Targeting(ターゲティング)」「Positioning(ポジショニング)」の頭文字を取ったもので、効果的なマーケティング戦略を立てるためのフレームワークです。
セグメンテーションはこのSTP戦略の最初のステップとして重要な役割を果たします。市場を細分化し、自社の製品やサービスに最適なターゲット層を見つけ出すことができます。
次に、製品開発や広告戦略にもセグメンテーションを活用できます。顧客セグメントごとの特性や嗜好を分析することで、各セグメントに適した製品開発や広告メッセージの作成が可能になります。例えば、若年層向けの製品ラインナップを開発したり、高所得者層向けの広告キャンペーンを展開したりするなど、セグメントに応じたアプローチが可能になります。
さらに、マーケティングオートメーション(MA)ツールを活用することで、より効率的にセグメンテーションを実践できます。MAツールを使用すると、顧客データを自動的に分析し、セグメントを作成することができます。また、セグメントごとに最適化されたメッセージを適切なタイミングで配信することも可能になります。
セグメンテーションの実践においては、「4Rの原則」を用いて評価することも重要です。優先度(Rank)、有効性(Realistic)、到達可能性(Reach)、測定可能性(Response)の4つの観点から、作成したセグメントが適切かどうかを確認します。この評価プロセスを通じて、より精度の高いセグメンテーションを実現することができます。
最後に、セグメンテーションは一度行えば終わりというものではありません。市場環境や顧客ニーズの変化に応じて、定期的にセグメントの見直しと更新を行うことが重要です。これにより、常に最新の市場動向に合わせたマーケティング戦略を展開することができます。
STP戦略
STP戦略においてセグメンテーションは必須であり、非常に重要な作業です。STP戦略は「どのような製品・サービスをどのような顧客にどのように販売するのか」といった戦略立案に用いられ、市場の整理やニーズの把握する際に必要です。
セグメントの他に、ターゲティング、ポジショニングという計3つで構成されるフレームワークです。セグメンテーションはSTP分析の一番はじめに行います。細分化した市場のなかでターゲットを絞り、競合他社と比較して優位になる位置を探っていきます。
上述の「4Rの原則」でその位置がズレていないか、間違いがないか確認しながら、適切なセグメントを行うことで、その後のターゲティングとポジショニングの精度が高くなっていきます。セグメンテーションを正確に行うことで、効果的なマーケティング戦略の立案が可能になります。
さらに、セグメンテーションを活用することで、顧客のニーズや行動パターンをより深く理解することができます。これにより、製品やサービスの開発、価格設定、プロモーション戦略などの各マーケティング要素を最適化することが可能となります。
また、セグメンテーションを定期的に見直すことも重要です。市場環境や顧客ニーズの変化に応じて、セグメントの再定義や新たなセグメントの発見を行うことで、常に効果的なマーケティング戦略を維持することができます。
関連記事:BtoBで重要視されるセグメンテーションの設定方法とは?STP分析との関連性も紹介
開発や広告にも
STP分析以外にも、セグメンテーションは製品開発や広告などにも活用できます。開発においては、顧客セグメントごとの趣味嗜好や製品・サービスに対する印象を分析することで、最適な製品・サービスを最適な顧客層に届けられるようになります。これにより、顧客ニーズに合わせた効果的な製品開発が可能となります。
広告分野では、セグメンテーションを活用することで、ターゲット顧客に対してより精密なアプローチが可能になります。例えば、リスティング広告やSNS広告を行う際には、ターゲット顧客の性別や年齢などの属性だけでなく、趣味嗜好・興味関心などに基づいたピンポイントなターゲティングが可能となります。これにより、広告の効果を最大化し、無駄な広告費用を削減することができます。
さらに、セグメンテーションを活用することで、各顧客セグメントに合わせたカスタマイズされたメッセージングや提案が可能となります。これにより、顧客とのコミュニケーションの質を向上させ、より強固な顧客関係を構築することができます。このように、セグメンテーションは製品開発から広告、顧客コミュニケーションまで、マーケティング活動の様々な側面で重要な役割を果たしています。
MAツールを使えばもっと簡単に
また、マーケティングオートメーション(MA)ツールを活用すれば、顧客リストのデータを使って効率的にセグメンテーションを行うことができます。MAツールを用いることで、セグメント化したターゲット顧客に対して、適切なタイミングで最適化されたアプローチが可能となります。さらに、顧客セグメンテーションと顧客へのアプローチだけでなく、効果測定まで一貫して実施できるのが大きな利点です。
MAツールの機能を活用すれば、顧客の行動データや属性情報を基に、より精緻なセグメンテーションを自動的に行うことができます。例えば、ウェブサイトの閲覧履歴、購買履歴、メールの開封率などの行動データを組み合わせて、顧客の興味関心や購買意欲の度合いに応じたセグメントを作成することが可能です。
このように、MAツールを使用することで、マーケターは手作業で行うセグメンテーションの労力を大幅に削減でき、より多くの時間を戦略立案や創造的な業務に充てることができます。結果として、より効果的なマーケティング施策の実行と、ROIの向上につながることが期待できます。
まとめ
顧客セグメンテーションについて、主な分類方法や評価方法、実践方法を紹介しました。顧客セグメンテーションは、自社の製品・サービスにフィットする市場を見つけ出すのに非常に重要な戦略です。適切なセグメンテーションを行うことで、効果的なマーケティング施策を実行できるようになります。
特に、ジオグラフィック変数、デモグラフィック変数、サイコグラフィック変数、ビヘイビアル変数の4つの分類方法を組み合わせることで、より精緻なセグメンテーションが可能になります。また、「4Rの原則」を用いてセグメンテーションの評価を行うことで、より効果的な市場細分化を実現できます。
STP戦略におけるセグメンテーションの重要性や、製品開発や広告への活用方法、さらにはマーケティングオートメーション(MA)ツールを使った効率的なセグメンテーションの実施など、様々な角度から顧客セグメンテーションの活用法を理解することが大切です。これらの知識を活かし、自社の製品・サービスに最適な顧客セグメンテーションを行い、効果的なマーケティング戦略を展開していきましょう。