WEBサイトを構築・運営する上で最初の選択肢のグループに入っているのがCMS(Content Management Systems)です。
これは読んで字のごとく、コンテンツ(content)を管理(management)するシステム(systems)のこと。従来、専門的かつ属人的であったWEBサイトの管理をCMSというツールの導入により、誰もが扱える一般的な業務になったことはとても大きな進歩である。
そして、単に業務の効率やコストの軽減などにとどまらず、コンテンツの物量確保や即時対応によるWEBサイトとしての価値の向上、タイムリーなSEO対策、CRM(Customer Relationship Management)やMA(Marketing Automation)などとの連携による顧客サービス向上のツールとしてワンランク上の働きを求められるようになってきている。
しかしながら、ひとことにCMS導入といっても、何から始めてよいのか?最適な選択とは?と、最初の段階で悩んでしまうことも決して少なくない。
また、一度CMSを導入してしまうと、そのCMSの特性によってWEBサイト管理の方向性が決まってしまい、途中から方向転換がしにくくなってしまうことも考えられる。
そこで本稿では、CMSのしくみから、企業における導入のメリット・デメリット、具体的なCMSの種類を検証することで、自社のポジションや目的に沿ったCMSの選択と活用に役立つようにまとめてみる。
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目次
CMSのしくみを理解する
WEBサイトの構築・運営において、最初の検討段階で必ず候補に挙がるのがCMS(Content Management System)です。このシステムは、その名の通り、ウェブサイトのコンテンツ(情報)を効率的に管理(management)するための仕組み(systems)を指します。かつては専門知識を持つ技術者や特定の担当者に依存していたウェブサイトの管理業務を、CMSというツールの導入によって、より多くの担当者が扱える一般的な業務へと進化させたことは、ウェブサイト運営における大きな進歩と言えるでしょう。
CMSの役割は、単にウェブサイトの管理業務を効率化したり、運営コストを削減したりするだけにとどまりません。コンテンツの量を増やし、迅速な情報更新を可能にすることでウェブサイト全体の価値を高め、タイムリーなSEO対策の実施、さらにはCRM(顧客関係管理)やMA(マーケティングオートメーション)といった他のシステムとの連携を通じて、高度な顧客サービスを実現するツールとしての活用が期待されています。
しかし、CMSの導入は、具体的に何から始めれば良いのか、自社にとって最適な選択肢は何か、といった疑問や悩みに直面することも少なくありません。また、一度CMSを導入すると、そのCMSの特性がウェブサイト管理の方向性を決定づけ、後から方針転換することが困難になる可能性も考慮する必要があります。
そこで本稿では、CMSがどのように機能するのか、その基本的な仕組みから、企業がCMSを導入する際のメリット・デメリット、そして具体的なCMSの種類などを検証することで、自社の状況や目的に合致したCMSの選択と効果的な活用に役立つ情報を提供します。
静的コンテンツとの比較
WEBサイトは、通常、HTML(Hyper Text Markup Language)という言語と、画像や動画といったメディアファイルとの組み合わせによって構築されます。これらのWEBサイトを制作するには、全体的なデザインを担当するデザイナー、デザインをHTMLコードに変換するコーダー、そして外部システムとの連携部分などを開発するシステムエンジニアやプログラマーといった、多岐にわたる専門職の協力が必要でした。
しかし、CMS(Content Management System)を導入することで、このプロセスは大きく変わります。CMSでは、デザインやコーディング、プログラムにおける共通部分をテンプレートとしてあらかじめ用意しています。これにより、WEBサイトの制作・更新担当者は、専門的なコーディングスキルやプログラミング知識がなくても、コンテンツの中身(テキストや画像など)の作成・編集に専念できるようになります。
多くのCMSは、PHPのようなサーバーサイドで動作するプログラム言語とデータベース(DB)で構成されています。具体的には、PHPファイルがテンプレートとして機能し、データベースに格納されたコンテンツデータと組み合わさることで、WEBページが動的に生成されます。例えば、100ページ分のコンテンツがあった場合、従来のHTMLファイルのみで作成する手法では100個のHTMLファイルを作成・管理する必要がありましたが、CMSでは、テンプレートとデータベース上のコンテンツデータを用いることで、これらの100ページを効率的に管理し、動的に表示することが可能になります。このコンテンツマーケティングにおける情報発信の効率化は、CMS導入の大きなメリットの一つと言えるでしょう。
HTMLファイルとの違い
HTMLファイルのみでWEBサイトを構築する場合、各ページごとに個別のHTMLファイルを作成・編集する必要があります。これは、ページ数が増えるにつれて管理が煩雑になり、更新作業にも専門的な知識が求められることを意味します。
一方、CMSは、あらかじめ用意されたテンプレートとデータベースを活用することで、コンテンツの作成・編集作業を大幅に簡略化します。管理画面からテキストや画像などのコンテンツデータを入力するだけで、それが自動的にHTMLとして生成され、WEBページに反映されます。これにより、専門知識を持たない担当者でも、WEBサイトの更新やコンテンツの追加が容易になります。コンテンツマーケティングを推進する上で、迅速かつ継続的な情報発信は不可欠であり、CMSはこの要求に応える強力なツールとなります。
作成ソフトとの比較
静的なHTMLファイルでウェブサイトを構築する場合でも、ウェブサイト作成支援ソフトなどを活用することで、専門的な知識の習得や作業負担を軽減することは可能です。企業においてウェブサイトを更新する際によく見られる手法として、初期構築はデザイナーやコーダーが行い、その後のコンテンツ更新や軽微な修正は、ページビルダーと呼ばれる簡易な編集ツールを用いて管理していく、というケースがあります。
この方法でも、ある程度の効率的な管理は可能ですが、大量のコンテンツを管理するとなると、ページ数に相当する数のファイルを管理し続けることになります。それに対してCMSでは、テンプレートの修正によって全ページの表示デザインを一度に変更したり、コンテンツデータを流し込むだけでページが生成されたりするため、管理の利便性においてはCMSに軍配が上がると言えるでしょう。
クラウド型
HTMLファイルでウェブサイトを構築する場合、作成支援ソフトを利用したとしても、一度手元のPCでコンテンツを作成・保存し、その後、静的なファイルをサーバーへアップロードして公開するというプロセスが一般的です。
一方、CMSの場合は、あらかじめサーバー上にセットアップされたPHPやJavaといった動的なプログラムが、データベースからコンテンツデータを読み込み、それらを組み合わせてウェブページを生成・表示します。そのため、手元のPCに個別のファイルを保存する必要はなく、サーバー上のデータベースに直接データを入力することで、ウェブページの作成が完了します。
さらに、CMSの多くは、直感的で分かりやすいインターフェースを持つ管理画面を提供しており、専門知識や特殊なツールを必要とせずに、担当者が容易にコンテンツの追加や編集を行えるようになっています。一部のCMS、例えばMovable Typeのように、一度入力・登録されたコンテンツを動的な仕組みでプレビューし、その後、静的なHTMLファイルとして書き出す(パブリッシュする)機能を持つものもあります。これは、CMSでありながら表示速度の速さを実現するための仕組みとして注目されます。

関連記事:CMSとは?利用目的やメリットデメリット・基本機能を初心者向けに分かりやすく解説
企業が導入する意義
CMSを導入するにあたっては、まず企業ごとの目的を明確にすることが重要です。企業のポジションやウェブサイトの運営方針、CMS導入にかけられる予算、運用時のランニングコストやそれに割ける人的リソースといった要因によって、その企業にとって最適なCMSの選択は大きく変わってきます。これらの要素を多角的に検討するための判断材料として、CMSを導入した場合のメリット・デメリットを理解し、比較検討することが不可欠です。特に、コンテンツマーケティングを推進する上で、CMSは単なるコンテンツ管理システムに留まらず、顧客との接点を増やし、エンゲージメントを高めるための強力なツールとしての役割が期待されています。SEO対策の強化、パーソナライズされたコンテンツ配信、CRMやMAツールとの連携などを通じて、ウェブサイトの価値を最大化するために、CMSの戦略的な活用が求められます。
メリット
○知識・技術が不要
先にも述べたように、CMSはすでにプログラムされたテンプレートとコンテンツを記録するDBがサーバーにセットされており、それを管理画面によってコンテンツ登録していく仕組みです。したがって、新たにデザインを起こしたり、HTMLを学んで組み上げたりする必要はありません。ウェブサイト作成の専門知識や技術を習得することなく、ウェブサイトの管理を行うことが可能になります。これは、専門人材が不足しがちな企業や、ウェブサイト担当者のスキルにばらつきがある場合に特に大きなメリットとなります。
○分業化の促進
CMSの導入により、ウェブサイト管理は特別な部門の業務ではなく、一般業務の一部とすることを実現できます。上記のように、専門的な知識・技術を必要としなくなったため、誰もがウェブサイトを管理することが可能になります。結果として、ウェブサイト管理はシステム部門や外注会社の専管事項ではなくなり、必要な部門が必要なコンテンツを自己の責任において管理できるようになります。企業全体としても、必ずある部門を通さなければならない非効率性や、業務が一部門に集中してしまう偏りを平準化し、より効率的なウェブサイト管理を行うことができます。
○コンテンツの即時性
CMSでは、専門家が静的なHTMLファイルを作成するのではなく、データ投入とともに即時にコンテンツが作成できるため、公開までの時間を大幅に短縮できます。従来であれば、コンテンツをまとめ、専門部門または外注会社に依頼し、確認、公開まで数日、場合によっては数週間を要していたものが、CMSを利用することで即時公開が可能となります。インターネットにおいてコンテンツ更新のスピード化は非常に重要な要素であり、それを実現することは直接ビジネスの競争力向上に直結します。また、定期的に更新されているウェブサイトはSEO対策上、評価が高くなり、検索結果の順位上昇にもつながります。
○コンテンツの総量を確保
ウェブサイトの評価において、コンテンツの総量は大きなポイントを占めます。ある程度のコンテンツ量があり、それが整理されていること、必要な情報が網羅されていることは、ユーザーにとって有益な情報となることはもちろん、SEO上の評価ポイントも高くなり、即時性と並んで検索結果に好影響を与えます。簡易にコンテンツを作成できるCMSによって、より多くのコンテンツを公開し、ウェブサイトとしての競争力を向上させることが可能になります。
○マルチデバイス対応
昨今のウェブサイトにおいて、スマートフォンやタブレットなど、PC以外の携帯デバイスへの対応、いわゆるウェブサイトのレスポンシブ化は必要不可欠です。ウェブサイトの内容やユーザー層によっては、携帯デバイスでの閲覧が大多数を占めることもあります。BtoBのサイトにおいてはPCと携帯の比率が特に大きく、半々の割合になることも少なくありません。CMSの多くは、テンプレートがマルチデバイスに最適化されているため、手間をかけて個別に対応する必要がないことも大きなメリットと言えます。
○容易なリニューアル対応
先にも述べたように、CMSはテンプレートを介してDBに保存されたコンテンツを表示しています。つまり、テンプレートを修正すれば、コンテンツの量にかかわらず、すべてのコンテンツに表示の変更が一律に反映されます。ウェブサイト構成の変更に伴うメインメニューの変更はもちろん、デザインの大幅なリニューアルにおいても、テンプレートを修正することによって一斉の修正・変更が可能です。これにより、季節ごとのイメージ変更やキャンペーン開催時の一時的なデザイン追加なども容易に行うことができ、ウェブサイトの鮮度を常に最新に維持しておくことが可能となり、企業内におけるウェブサイトの価値がさらに向上します。
○属人的にならない
CMSの導入によって、ウェブサイト管理の業務を仕組み化することが実現します。これまでのウェブサイトは、特定の部門(情報システム、マーケティングの一部担当者)や外注会社のみが管理・更新できる、ある種ブラックボックス的な位置づけでしたが、CMSの導入により仕組み化され、この属人化から解放されます。オペレーションも分かりやすいインターフェースによる管理画面を介することで、担当者や他の人が操作しても、変更の履歴を残したり、操作自体がサイトに悪影響を及ぼすようなリスクは低く、誰でも操作できるようになります。そのため、日常業務として誰でも活用でき、管理することも容易になります。また、データがサーバーに保管されるクラウド型のシステムとして、担当する人や専用PCといった限定された管理からの脱却を図ることができます。
○管理費用、負担の軽減
CMSは導入時に一定のコストを必要とする一方、専門部門や外注会社に依存せず、日常の運用コスト、メンテナンス費用の軽減を図ることができます(一部のCMSでは一定の専門性が必要なものもあり、取り扱いには注意が必要です)。そこで余剰となった費用や空いた人的リソースを、コンテンツの充実や他の業務に振り分けることで、より効率的、効果的なウェブサイト管理を実現できます。
デメリット
○導入時のハードルが高い
CMS導入には、HTML制作と比較して、共通項の洗い出し、構成設計、テンプレート作成、データベース構築、管理プログラム開発といった工程が必要となるため、導入にかかる時間、労力、コストが高くなる傾向があります。目指すコンテンツ量が多ければランニングコスト軽減のメリットが導入コストを上回る可能性がありますが、コンテンツ量が少ない場合は逆にコストが増加することも考えられます。そのため、イニシャルコストとランニングコストをシミュレーションした上で検討することが重要です。WordPressのような既成のCMSを活用することで導入コストを抑えることも可能ですが、CMS管理方法についての教育や習熟が必要となり、円滑な運用開始までのハードルが高くなる側面もあります。
○表示スピードが遅い
データベースからデータを呼び出して動的に表示するタイプのCMSは、静的なHTMLを表示させるウェブサイトに比べて、表示スピードが遅くなる傾向があります。通信環境が向上しているとはいえ、古い環境下や表示量の多いコンテンツでは、ユーザーにストレスを与える可能性があります。ただし、Movable Typeのように、一度動的に登録したコンテンツを静的なファイルとしてパブリッシュするタイプのCMSでは、表示スピードは静的なコンテンツと同様になり、この心配は不要です。また、HTMLで構築された静的なウェブサイトと比較すると遅いことは事実ですが、集客などの観点で大きなビハインドになるわけではありません。
○個別対応の自由度が低い
テンプレートによって一律のコンテンツ表示を行うCMSでは、表現に限界があったり、コンテンツ表示方法の自由度が低い傾向があります。個別の要望を実現するためにはカスタマイズが必要となり、その都度開発コストがかかることも考慮しなければなりません。近年では、デザインテンプレートを自由に選択できるテーマの提供や、より細かいレイアウト設定が可能なテンプレートの充実により、以前に比べて自由度は広がってきています。コンテンツマーケティングにおいては、ターゲットユーザーのニーズに合わせた多様な表現が求められることも多いため、この点は慎重な検討が必要です。
○セキュリティ面の懸念
管理画面を介してウェブサイトを管理するCMSは、サーバーのコンテンツ保存領域にアクセスするためのポートが開いているため、理論上、静的なコンテンツに比べてセキュリティリスクが高くなります。CMSプログラム自体のバグや、シェアの高い既成CMSは攻撃対象になりやすいといったリスクも抱えています。対策としては、管理画面へのアクセスにIP制限をかけたり、定期的にプログラムのパッチ(修正プログラム)を適用したりすることが必要です。特に、WordPressのようなオープンソース型のCMSは、プログラムが全世界に公開されており、拡張性や使い勝手が良い反面、外部からの攻撃を受けやすい環境にあるため、セキュリティ対策はCMS導入における重要な検討事項となります。
目的にあった選択
CMSの導入は、単なるウェブサイトの制作・運営ツールという枠を超え、企業のデジタル戦略における中核を担う存在へと進化しています。そのため、企業が目指す具体的な目標、ウェブサイトの運用方針、そして利用可能な予算や人的リソースといった現実的な制約を総合的に考慮し、戦略的に最適なCMSを選定することが極めて重要です。
選定にあたっては、初期導入コストと継続的なランニングコストのバランス、管理・更新していくコンテンツの量と質、そして社内の人的リソースや部門間の連携体制などを多角的に比較検討することが推奨されます。これにより、一時的な流行や機能の豊富さにとらわれることなく、長期的に企業にとって最も価値あるCMSを選択し、最大限に活用することが可能となります。
コンテンツマーケティングにおいて、CMSは単なる情報発信のプラットフォームではなく、顧客とのエンゲージメントを深め、ユーザー体験(UX)を向上させるための重要なツールとして位置づけられています。そのため、各CMSが提供する機能、特にSEO対策やパーソナライゼーション、MAツールとの連携といった、コンテンツマーケティングを成功に導くための機能が充実しているかを評価基準に加えることが、現代のウェブサイト運営においては不可欠と言えるでしょう。
変遷する目的
従来、CMSの主な目的は、必要なコンテンツをリアルタイムかつ効率的に公開できる仕組みを提供することにありました。ウェブサイトの更新が迅速に行えれば、CMSの要件は満たされていました。しかし、現代においては、CMSの役割は大きく変化し、単なるコンテンツ管理システムから、ユーザーとの接点を増やし、エンゲージメントを深めるための戦略的ツールへと進化しています。
現代のCMSは、ユーザーの行動傾向や嗜好に合わせてコンテンツを動的に作成・表示する能力が求められるようになりました。具体的には、アクセス傾向に基づいたSEO(検索エンジン最適化)の最適化、ユーザーの行動分析結果に応じたパーソナライズされたコンテンツ表示、そしてCRM(顧客関係管理)、SFA(営業支援システム)、MA(マーケティングオートメーション)といった外部ツールとのシームレスな連携が、より一層高度な要件として求められています。これにより、企業は顧客一人ひとりに最適化された体験を提供し、より深い関係性を構築することが可能となります。コンテンツマーケティングにおいては、これらの機能が不可欠となり、CMSは単なる情報発信の場ではなく、顧客獲得から育成、維持に至るまでのマーケティング活動全体を支援するプラットフォームとしての役割を担っています。
CMSでできること
CMS(Content Management Systems)は、単なるコンテンツの管理システムという枠を超え、現代のデジタルマーケティング戦略において不可欠なツールへと進化しています。その活用範囲は年々広がりを見せており、企業がユーザーとの接点を増やし、より効果的なコミュニケーションを図るための強力な基盤となっています。
これもCMS、身近にあるCMS
○コーポレートサイトのお知らせやNews
コーポレートサイトのトップページには必ずあるお知らせやNewsのコーナー。静的なHTMLで作成することもあるが、多くは簡易なCMSを利用してコンテンツの管理・更新をしている。
管理画面からお知らせのタイトル、本文、イメージ画像やリンクなどを登録することで簡単に更新している。
○ブログサイト
普段よく目にするブログサイト。これもほとんどはCMSで作成されている。
ブログサービスと連携して表示をしたり、サーバー内にブログプログラムをセットし、WEBサイトと同様のデザインテンプレートにして活用していくことも可能だ。
○スケジュール管理
YahooやGoogleが提供するスケジュール管理ツールもCMSの一種。
ウィジェット(表示を埋め込むアプリ機能)を活用してWEBサイト内に表示することもできる。
他にも、天気予報や株価などが表示されているのはこのウィジェットを利用している。
○SNS
SNS(Social Networking Service)もCMSの機能を個人情報発信型に活用したものである。 コンテンツや画像、映像などを登録することで情報発信したり、閲覧したものにコメントを登録したりできる。
企業のWEBサイトもコンテンツがSNSに投稿(シェア)されるようSNSボタンを設置するなど、SNSを意識した作りが重要である。
○EC
普段私たちがショッピングをするEC(Electronic Commerce)サイトも、CMSの集合体といえる。
商品管理で商品を登録して販売、顧客管理や受注管理を行っていく。
中には売り上げを管理する基幹システムや、配送システムと連携を図るシステムを構築している場合もある。
SEO対策
先にも述べた通り、CMSとSEOは密接な関係にある。
CMSの活用によって、リアルタイムにスピード感のあるコンテンツを相当数の分量充実させることはSEO対策として効果がある。
また、SEO最適化に重要な、タイトルやキーワード、ディスクリプションをCMSで管理していくこともできる。
コンテンツの更新性もSEO対策を進める上で重要な要素ではあるが追加機能や評価を得やすいWEBサイトの構造に容易に対応をすることができる。

各ツールとの連携
昨今ではCMSは単独で管理するものから、他のシステムと連携させることで、ユーザーとの接点を増やすためのツールとして、役割を求められるようになってきている。
○SNS
特にB to CビジネスにおいてSNSの存在は欠かせないものになってきている。
SNSでの表示をウィジェットでWEBサイトに取り込んだり、SNSにシェアされるようなページ作りをCMSで図っていくことができる。
○CRM(Customer Relationship Management)
ECサイトなどではCRMとCMSを連動させているケースがある。ユーザーの購買データを基に、個別のユーザーにあったコンテンツ作成をする。また、CMSでコンテンツ作成した際に、個別にお知らせ表示をしたり、個別DMを送るなど直接表示を働きかけることも可能。
○MA(Marketing Automation)
CMSで作成した膨大なコンテンツを、MAによってユーザーの傾向にマッチングさせて表示する。CMSでコンテンツ登録時に、MAに活用する要件を登録しておくことで、ユーザーにあわせてコンテンツ表示にフィルターをかけたり、アクションを追加することができる。
○DMP(Data Management Platform)
DMPとはData Management Platformのこと。ユーザーの情報や行動分析を基に広告出稿に活かしていくもの。CRMやMAと同様、DMPで得られた値を基にCMSで作成したコンテンツを自動で広告出稿に反映させていく。
○API(Application Programming Interface)
API(Application Programming Interface)とは他のアプリケーションと連携するためのしくみのこと。基幹システムや在庫管理からのデータをAPIを介することで、そのままCMSに登録するなど効率化を図ることができる。
○Office
API同様、日常他のソフトで管理しているデータをそのままCMSで活用できるようにする。ExcelなどMicrosoft製ソフトで管理しているデータをそのままCMSに登録、表示できるようにする。

どんなCMSがあるのか
これまで、CMSの基本と応用について見てきた。
では、実際に導入するにあたってどんなCMSがあるのだろうか?
それぞれの企業にあったCMSを導入判断できるよう具体的に紹介をしていく。
CMSの種類
○オープンソース型
オープンソースとはプログラム自体は無料で配布されているもののこと。
誰もがプログラムを無償で入手し、自由に利用、カスタマイズできるため導入までの費用と時間が節約できる。
また、圧倒的な利用者数を背景にカスタマイズなどのナレッジが豊富なことがメリットといえる。
一方で、バグがあった場合に自分で対処せねばならず、ある程度の知識を有することが求められる。
また、有償のプログラムと異なり、開発者側にプログラム提供の責任がないため、セキュリティ面の不安やサポートの薄さなどがデメリットとなる。
中小企業やコンテンツの少ないCMSを運営する企業向けといえる。
○パッケージ
商用のCMSで有償のプログラムの中でも、メーカーやソフトウェア企業、ベンダーによって開発されたもののことを指す。
メーカー他の開発者からライセンスを購入し、自社のサーバーにインストールして利用する。
数多くのユーザーの利用実績を基に開発されており、機能性が高いこと、カバーする範囲が広いことが特徴で、導入までの期間も比較的早い。
一方で、多くのユーザーに対応するために公約数的な機能になりがちで、自社特有の要望に応えきれないことも考えられる。その場合、開発者に機能拡張のカスタマイズを依頼することになり追加の費用が発生することもある。
開発者が責任を持つため、マニュアル、トレーニングなどの導入支援、アップデートやセキュリティの向上といったサービスが受けられることは、導入後の運用を考えると大きな安心材料だといえる。
○フルスクラッチ
オープンソース型やパッケージのように既存のプログラムを活用するのではなく、自社の目的、業務にあわせて新たに設計、開発することをいう。
前者がレディメイドであるのに対し、フルスクラッチではオーダーメイドで構築すると捉えてよい。
フルオーダーで開発するため、自社の要望に限りなく完全に応えることができる一方で、1から構築するために導入までの期間とコストは必然的に高くなる。
独自のECプラットフォームを運営する企業や、報道メディアを運営するような大企業向けといえる。

コスト別分類
○有償版
プログラムの導入自体にコストがかかる。 定期メンテナンス費用としてランニングコストもかかることが多い。
○無償版
上記の分類とも被るが、プログラムそのものが基本的に無償で配布されているもの。 公式のサポートは受けにくい。
○ASP型
ASP(Application Service Provider)とは、インターネットを介してプログラム利用サービスを提供すること。
CMSのプログラムそのものの提供を受けるのではなく、既存のサービスを利用するスタイル。ポータルサイトのホームページ作成サービスなどがこれにあたる。
比較的低い導入コストと、利用料としてのランニングコストが必要。 容量やページ数に制限があったり利用に自由度が少ない場合もある。
代表的なCMS
○Word Press
世界で圧倒的シェアを誇るオープンソース型CMS。テンプレートやプラグイン(後述)が豊富で、カスタマイズの多様性にも定評があり、チュートリアルサイト(後述)も充実している。
○Drupal
オープンソース型の中でも、中・大規模サイト向けCMS。 高度なカスタマイズ機能、多言語対応など拡張性が高いが専門的な知識を要する部分もあり、システム部門が充実している企業向け。
○jimdo
無料でWEBサイトを作成できるASP型サービス。 比較的自由度は少なく、小規模事業者向け。
○Wix
無料でWEBサイトを作成できるツールであり、厳密にはCMSとはいえない。 デザインが豊富である一方、無料ゆえの制限が多く、日本語でのサポートが受けられない。
○Concrete5
直観的で操作性が高いとされるオープンソース型のCMSで、企業のWEBサイトに向いていると定評がある。 自自由度が高い一方で、利用者が少ないためかナレッジが少ないため作成のガイドが必要。
○EC-Cube
ECを主目的としたオープンソース。テンプレートの作成や個別ページの作成もできるため、CMSとしての活用も可能。
○Movable Type
国産CMSの最大手、有償パッケージ型。導入実績はオープンソース型のWord Pressに次ぐ利用者数。 先述の静的コンテンツをパブリッシュするタイプ。
○Share With
国内企業が開発するクラウドパッケージ型CMS。 シンプルな管理画面や便利なデータ連携機能で使いやすさに定評がある。 手厚いサポートも受けられる。
○Blue Monkey
中小企業向けの国産パッケージ型のCMS。 誰もが簡単に更新できることを目標に開発されている。

便利な機能、プラグインを活用しよう
○拡張機能
オープンソース型のCMSにおいては、世界中の開発者がプラグインやアドオンと呼ばれる便利な機能を追加開発している。
利用者が多ければ多いほどその数も必然的に多くなり、必要に応じて追加機能をインストールして機能を拡張することができる。(有償、無償両方あり)
うまく活用することで、オープンソース型のCMSといえど、目的にあったWEBサイトを 構築することも可能だ。
また、テーマと呼ばれるデザインテンプレート(こちらも有償、無償両方あり)を利用することで、レベルの高いデザインを簡単に手に入れることができる。
○チュートリアルサイト
オープンソース型の場合、メーカーやソフトウェア企業、ベンダーからのサポートを受けられないものの、世界中の開発者によるチュートリアルサイトにある情報が充実している。
設定や利用方法といった初歩的なものから、カスタマイズやバグの修正といった高度なものまで情報を入手することができる。
○ウィジェット
先にも述べたが、他のサイトやアプリケーションと連携する際に、ウィジェットと呼ばれる表示用のアプリケーション、ソースが配布されている。
WEBサイト内に他サイトの情報を表示したり検索機能を付けたりすることができる。
これらをうまく活用し、目的に即したWEBサイトの構築を実現してほしい。
まとめ
ここまでみてきたように、ひとことにCMSといっても実現したいWEBサイトやシステムの要件によって様々な種類があることをおわかりいただけたと思う。
CMSを導入するにあたって、数多くあるCMSのうちどう言った観点・視点でCMSを選定すればよいのか、とても迷いどころである。
CMSの選択をする前に、まずはCMSの仕組みを理解し、WEBサイトの目的、運営の方針、自社の置かれたポジションを明確にし、導入コスト、ランニングコスト、人的リソースを明確にする必要がある。
その上で、運営方針やリテラシーにあったCMSを選択することで、導入時だけでなく、長く運営できるようなWEBサイト管理体制を構築できることを願っています。


