スマートフォンの普及に伴いSNSの利用は増加の一途を辿っています。SNSは、ユーザーの年代層や特徴によって異なる特性を持ちますが、共通して直接ユーザーにアプローチできるメディアという強みがあります。
一般的に、SNSマーケティングはBtoC(企業対消費者)ビジネスにおいて効果的だと考えられがちです。しかし、実はBtoB(企業対企業)ビジネスにおいてもSNSマーケティングは非常に有効な戦略となり得ます。本記事では、BtoBにおけるSNSマーケティングの特徴、BtoCとの相違点、そして効果を最大化するための具体的な方法について詳しく解説していきます。
BtoBビジネスでSNSマーケティングを展開する際には、BtoB特有の意思決定プロセスを十分に理解し、それに適した戦略を立てることが重要です。例えば、BtoBでは製品やサービスの購入決定に複数の担当者が関わることが多く、意思決定までの時間も比較的長くなる傾向があります。また、取引単価が高く、継続的な取引が期待できるという特徴もあります。
これらの特性を踏まえると、BtoB向けSNSマーケティングでは、単にフォロワー数を増やすことやバズらせることを目指すのではなく、より戦略的なアプローチが求められます。具体的には、ターゲットとなる企業や意思決定者に対して、長期的な視点で信頼関係を構築し、専門性の高い情報を提供することが重要となります。
本記事では、こうしたBtoB特有の課題に対応したSNSマーケティング戦略の立て方、効果的なコンテンツの作成方法、そして成功事例などについて、詳細に解説していきます。BtoBビジネスにおいてSNSマーケティングを成功させるための具体的なヒントを得ることができるでしょう。
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目次
BtoB向けのSNSマーケティング
BtoB向け製品・サービスでSNSマーケティングに取り組む際には、BtoBならではの意思決定プロセスの特徴を抑えたうえで具体的な施策を検討していく必要があります。
BtoB企業においてSNSは「バズ」や「大量フォロワー獲得」より、信頼構築・関係性の可視化を重視する広報・リード獲得の場へ進化しています。取引先や意思決定者に「企業の人柄」や「現場の雰囲気」、「働く人の誠実さ」を伝え、リプレイス需要や導入検討の“記憶に残る”接点作りが重要です。
BtoBの意思決定プロセスには、以下のような特徴があります。
- 複数の担当者が関与する
- 意思決定までの時間が長い
- 高単価で継続的な取引が期待できる
これらの特徴を踏まえ、SNSマーケティングにおいても長期的な視点での取り組みが重要となります。また、BtoCとは異なり、対象となるターゲットは限られるため、SNSマーケティングを取り組む際にいわゆる「フォロワー数をとにかく増やす」「バズる」といったことは必ずしも重要ではありません。
むしろ、BtoB向けSNSマーケティングでは、ターゲットとなる企業や意思決定者に対して、自社の製品・サービスの価値を効果的に伝え、信頼関係を構築することが重要です。このため、質の高いコンテンツの提供や、業界特有の課題に対するソリューションの提案など、より専門性の高い情報発信が求められます。
1.担当者と意思決定者が異なる
BtoCビジネスでは、製品やサービスを検討し、購入を決定し、実際に使用するのが同一人物であることが一般的です。これに対し、BtoBビジネスでは、複数の担当者が製品やサービスに関与する点が大きな特徴となります。具体的には、窓口となる担当者が製品やサービスを検討し、稟議をあげます。その後、意思決定者が購入を決定し、最終的に現場の担当者が実際に使用するという流れになります。この複数の担当者が関わるプロセスは、BtoBビジネスにおけるSNSマーケティングを行う上で重要な考慮点となります。各段階の担当者に適切にアプローチし、情報を提供することが求められます。
2.意思決定までの時間が長い
BtoCの場合、ユーザー本人が良いと判断すれば、即座に購入の意思決定が行われることが多いです。一方、BtoBでは状況が大きく異なります。複数の担当者が関与するため、意思決定プロセスは複雑化し、時間を要します。社内での製品・サービスの検討から始まり、稟議の提出、承認プロセス、最終的な決済まで、各段階で慎重な判断が求められます。これらの手続きを経るため、BtoBにおける意思決定までの期間は、BtoCと比較して非常に長くなります。この特性を理解し、長期的な視点でのアプローチが求められます。
3.高単価で継続的な取引が期待
BtoBは法人顧客が取引先となるため、BtoCと比較すると1回の取引単価は高くなります。複数の担当者によって長い時間をかけて意思決定を行うため、一度購入されれば継続的な取引が期待できるのもBtoBの特徴です。この特性により、顧客獲得コストが高くても、長期的な視点で見れば十分な投資回収が可能となります。また、高単価であるがゆえに、顧客企業側も慎重に製品やサービスを選定するため、信頼関係の構築が重要となります。こうした長期的な関係性は、ビジネスの安定性にも寄与します。
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BtoB向けのSNSマーケティングで実現できること
BtoB向けの製品・サービスでSNSマーケティングに取り組むことで実現できることは、主に2つあります。1つ目は認知度向上と見込み顧客の獲得、2つ目は既存顧客との関係性強化です。
SNSを活用することで、BtoB企業は効果的に自社の製品やサービスを潜在顧客に紹介し、ブランド認知度を高めることができます。特に、業界内での存在感を強化し、専門性や信頼性をアピールする機会となります。
また、SNSは双方向のコミュニケーションツールとしても優れており、既存顧客との関係をより深めることが可能です。製品のアップデート情報や業界トレンド、有益なコンテンツを共有することで、顧客エンゲージメントを高め、長期的な取引関係の構築に貢献します。
さらに、SNSを通じて収集できる顧客の反応やフィードバックは、製品開発や顧客サービスの改善に活用できる貴重な情報源となります。これにより、顧客ニーズにより適合した製品・サービスの提供が可能になります。
1.認知度向上と見込み顧客の獲得
BtoB製品・サービスはBtoCほどユーザーからの口コミや紹介が起こりにくく、企業内でリプレイスの需要が起きた際には、担当者は自分が知っている企業に問い合わせや資料請求を行います。このときに担当者の頭の中に自社の製品・サービスが浮かぶことがポイントです。
担当者に自社の製品・サービスを知ってもらうのに効果的なのがSNSです。担当者がプライベートでSNSを見る時が製品・サービスの認知を得る絶好の機会となります。認知を得る方法に業界紙への広告掲載もありますが、掲載費用も高く枠も限られており、その点でSNSはコストがかからずに認知を獲得できます。
リプレイスの需要が起きる前にSNSで担当者の認知を獲得しておき、いざその時が来たら検索需要を起こし、問い合わせに導くことが可能です。製品・サービスをリリース直後など認知度の低さが課題であれば、なお積極的にSNSで投稿して認知してもらうことが重要です。
また、製品・サービスを通じて伝えたい世界観や価値観をSNSで投稿し、共感を得られれば見込み顧客の獲得にもつながり、SNSはブランディング強化にも効果的です。
2.既存顧客との関係性強化
SNSは既存顧客との関係強化にも大きな効果を発揮します。多くの企業がビジネスメールでのコミュニケーションを主としていますが、SNSを活用することで、より迅速かつ効果的な情報発信が可能となります。最新の製品情報や業界動向などをいち早くSNSで発信することで、既存顧客へのタイムリーな周知を図ることができます。また、SNSのメッセージ機能を利用すれば、顧客からの問い合わせや要望にも素早く対応でき、よりシームレスで密接なコミュニケーションを実現できます。このような双方向のやり取りを通じて、顧客との信頼関係を深め、長期的なビジネスパートナーシップを構築することが可能となります。さらに、SNSでの積極的な情報共有や対話は、顧客ロイヤリティの向上にも寄与し、結果として継続的な取引や新規案件の獲得にもつながる可能性があります。
BtoB向けのSNSマーケティングに良いSNS
BtoB向けのSNSマーケティングで効果的とされるSNSは、主にFacebook、X(Twitter)、Instagram、LINE、LinkedInの5つです。これらのプラットフォームは、それぞれ特徴的な機能や利用者層を持っており、BtoB企業のマーケティング戦略に適した選択肢となっています。各SNSの特性を理解し、自社の製品やサービス、ターゲット顧客に最適なプラットフォームを選択することが重要です。また、複数のSNSを組み合わせて活用することで、より幅広い層へのアプローチが可能となります。SNSの選定にあたっては、自社のマーケティング目標や、ターゲット顧客のSNS利用傾向を十分に分析し、効果的な戦略を立てることが成功への鍵となります。
SNS | 国内ユーザー数(推定, 2025年) | BtoB活用ポイント |
---|---|---|
LINE | 9,900万 | 公式アカウント,ダイレクト通知,情報発信 |
X(旧Twitter) | 6,900万 | 拡散力,速報性,業界トレンド |
4,200万 | ブランド世界観,デザイン,現場写真 | |
2,600万 | 実名制,業界コミュニケーション | |
400万 | 決裁層ネットワーク,海外展開,求人活用 |
1.Facebook
日本では2,600万人以上の方が利用しており、実名制の登録が基本のSNSです。そのためビジネスでの活用事例も多く、SNSマーケティングが活発に行われています。Facebook広告はユーザーの仕事や趣味、関心でセグメントでき、ターゲティングの精度が高く、多くの企業が利用しています。Facebookの特徴として、幅広い年齢層のユーザーが存在し、特に30代以上のビジネスパーソンの利用率が高いことが挙げられます。また、グループ機能を活用することで、特定の業界や職種に特化したコミュニティを形成し、そこでの情報交換や関係構築が可能です。このような特性を活かし、BtoB企業は自社の専門性や信頼性を効果的にアピールすることができます。
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2.X(Twitter)
国内ユーザー数は6,900万人を超えており、140字以内という短文でのコミュニケーションが主体のSNSです。投稿の手軽さと、投稿を簡単にシェアできるリツイート機能があることから、拡散性が高いのが特徴です。
ビジネスではリアルタイム性をコンテンツに生かし、ターゲットが興味を持ちそうなことに対して短い文章で発信することが必要となりますが、ユーザーとのコミュニケーションをきっかけに企業イメージを高めることができます。また、ハッシュタグを活用することで、特定のトピックに関心のあるユーザーにリーチすることも可能です。BtoB企業にとっては、業界のトレンドや自社の専門知識を共有する場としても活用できるプラットフォームです。
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3.Instagram
国内ユーザー数は4,200万人を超えており、写真や動画をメインで投稿するSNSです。ユーザーの目を惹く写真や動画を載せることができ、一貫したデザインと雰囲気でコンテンツを制作することで、企業のブランディング力向上を図れます。特にビジュアルコンテンツに強みを持つ企業や、製品・サービスの魅力を視覚的に伝えたい場合に効果的です。また、ハッシュタグ機能を活用することで、特定のトピックや業界に関心のあるユーザーにリーチすることも可能です。BtoB企業でも、社内の雰囲気や製品の使用シーンなどを投稿することで、企業文化や製品の価値をより具体的に伝えることができます。
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4.Line
日本国内のユーザー数は約9,900万人と、最も多くユーザーが利用しているSNSです。企業はLINE公式アカウントでユーザーに情報発信を行うことができ、企業とユーザーとの距離を近づけることができます。LINEの特徴として、メッセージの即時性が高く、プッシュ通知機能を活用することで、重要な情報を確実にユーザーに届けることが可能です。また、LINEは1対1のコミュニケーションツールとしても広く使われているため、顧客サポートや問い合わせ対応にも活用できます。BtoB企業にとっては、既存顧客とのコミュニケーション強化や、新規顧客獲得のためのマーケティングツールとして効果的に活用できるでしょう。
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5.LinkedIn
国内ユーザー数は400万人のビジネスで利用されるSNSです。海外の利用者が多いため、海外をターゲットとした製品・サービスにおいて相性が良いと言われています。LinkedInは、プロフェッショナルなネットワーキングに特化しており、ビジネスパーソンや企業間のつながりを促進します。このプラットフォームでは、業界のトレンドや専門知識の共有が活発に行われ、BtoB企業にとって貴重な情報源となっています。また、LinkedInの広告機能を活用することで、特定の業界や職種にターゲットを絞った効果的なマーケティングが可能です。
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BtoB向けSNSマーケティングのポイント
実際にBtoB向けのSNSマーケティングを開始する際には、主に3つの重要なポイントがあります。これらのポイントを押さえることで、効果的なSNSマーケティング戦略を構築し、実行することができます。
1つ目は、ターゲットの明確化です。自社の製品やサービスがどのような企業や部門、役職の方々に最も適しているのかを明確にすることが重要です。これにより、SNSでの情報発信の内容を適切に設定することができます。
2つ目は、適切なSNSの選定です。BtoB向けのマーケティングに適したSNSを選ぶことで、効率的に目標を達成することができます。各SNSの特性や利用者層を考慮し、自社の製品やサービス、そしてターゲット層に最も適したプラットフォームを選択しましょう。
3つ目は、持続可能な運用体制の構築です。SNSマーケティングは継続的な取り組みが重要です。そのため、長期的に運用可能な体制を整えることが必要です。投稿頻度や内容の計画、担当者の選定など、具体的な運用方針を定めることで、効果的なSNSマーケティングを実現することができます。
これらのポイントを押さえることで、BtoB企業はSNSを活用した効果的なマーケティング活動を展開することができます。ただし、各企業の状況や目標に応じて、これらのポイントを柔軟に調整することも重要です。
1.ターゲットの明確化
まずはターゲットを明確にすることから始めます。ターゲットの検討には4C分析と4P分析が有効です。4Pは「どのような製品を、どのような価格で、どの流通経路で、どのように販促していくか」ということを「企業側」の視点から考えていきます。これにより、自社の製品やサービスの特徴や強みを明確にし、市場での位置づけを把握することができます。
一方、4Cは「顧客が受ける価値とは、顧客が費やす費用や時間はどの程度か、顧客が入手しやすい状況とは、顧客が望む情報を届けているか、顧客の声が届いているか」を顧客側の視点で考えていきます。この分析により、顧客のニーズや課題を深く理解し、より効果的なマーケティング戦略を立てることが可能になります。
これら両方の分析を組み合わせることで、企業側と顧客側の双方の視点から総合的にターゲットを明確化することができます。そして、この明確化されたターゲットに基づいて、適切なSNSの選定や効果的な運用体制の構築へとつなげていくことが重要です。
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2.SNSの選定
ターゲットが明確になったら投稿するSNSを検討していきます。SNSによって主な利用年代、利用シーン、投稿形式などが異なるため、製品・サービスと親和性の高いSNSを選びましょう。例えば、若年層向けの製品であればInstagramやX(Twitter)が適している可能性が高く、ビジネスパーソンをターゲットとする場合はLinkedInやFacebookが効果的かもしれません。また、各SNSの特徴を理解し、自社の製品・サービスの魅力を最大限に引き出せるプラットフォームを選択することが重要です。さらに、ターゲット層の利用頻度や、競合他社の活動状況なども考慮に入れ、総合的に判断することをおすすめします。
3.運用体制の構築
最後に運用体制について検討します。具体的に投稿頻度や投稿内容、投稿する担当者を決めていきます。ユーザーとの認知を得るために行うので、投稿頻度は1日1回以上がおすすめです。また、投稿の属人化や業務負荷を避けるために複数の担当者で運用すると良いでしょう。
運用体制を構築する際は、以下の点に注意が必要です。まず、投稿内容の品質を維持するために、投稿前のチェック体制を整えることが重要です。次に、ユーザーからのコメントや問い合わせに迅速に対応できるよう、担当者間での情報共有の仕組みを作ることも大切です。さらに、投稿のスケジュールを管理するツールを活用し、効率的な運用を心がけましょう。
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まとめ
- BtoBにおけるSNSマーケティングは、複数の担当者が関わり、購入までの意思決定が長期化するという特性を踏まえた戦略が重要です。
- BtoB向け製品・サービスのSNSマーケティングでは、主に認知度向上と見込み顧客の獲得、そして既存顧客との関係性強化が実現可能です。
- Facebook、X(Twitter)、Instagram、LinkedIn、LINEの5つのSNSプラットフォームがBtoB向けマーケティングに適しており、それぞれの特性を活かした活用が効果的です。
- 成功するBtoB向けSNSマーケティングの鍵は、ターゲットの明確な定義、適切なSNSプラットフォームの選択、そして効果的な運用体制の構築にあります。
- 4C分析と4P分析を活用してターゲットを明確化し、製品・サービスとの親和性が高いSNSを選定することが重要です。
- 運用においては、投稿頻度や内容、担当者を適切に設定し、継続的かつ効果的な情報発信を行うことが求められます。