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顧客ロイヤルティを意識したマーケティング戦略のポイント

2025.12.11
読了まで約 5

顧客ロイヤルティとは、顧客が特定の企業、ブランド、商品、またはサービスに対して抱く、信頼と愛情を指します。この「信頼」は、価格や品質といった客観的な評価に基づいています。一方、「愛情」は、「このブランドは自分を理解してくれている」「他にはない特別な存在だ」といった、より個人的で感情的な結びつきを表します。顧客ロイヤルティを真に高めるためには、この信頼愛情の両方を育むことが不可欠です。

今回は、顧客ロイヤルティとは何か、顧客ロイヤルティを数値化する指標NPSについて、顧客ロイヤルティを高める意味、顧客ロイヤルティを高めるマーケティングの戦略についてご紹介します。

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顧客ロイヤルティとは?

「ロイヤルティ(Loyalty)」の元々の意味は「忠誠」です。顧客ロイヤルティとは、顧客が特定の企業、ブランド、商品、あるいはサービスに対して抱く、単なる満足を超えた深い信頼愛情のことを指します。この「信頼」は、価格や品質といった客観的な要素に基づいた評価であり、商品やサービスが顧客の期待に応えているかどうかに直結します。一方、「愛情」は、「このブランドは自分に合っている」「この企業は私のことを理解してくれている」といった、より感情的で個人的な結びつき、いわば「ファン心理」とも言えるものです。顧客ロイヤルティを真に高めるためには、この「信頼」と「愛情」の両方が不可欠であり、どちらか一方だけでは持続的な関係性を築くことは難しいのです。

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顧客ロイヤルティと顧客満足度はどう違う?

顧客ロイヤルティは、単なる顧客満足度を超えた、より深い顧客との関係性を測る指標です。従来の顧客満足度調査では、「顧客は満足しているが、他社製品に乗り換えてしまう」といった状況が発生しがちでした。これは、満足度が「現状」への評価に留まり、将来的な購買行動や他者への推奨といった「未来」への影響力までは捉えきれないためです。

一方、顧客ロイヤルティは、商品やサービスの品質、価格といった合理的な側面(信頼)だけでなく、ブランドへの愛着や共感といった感情的な側面(愛情)も包括的に評価します。この「信頼」と「愛情」が組み合わさることで、顧客は単に満足しているだけでなく、その企業やブランドを継続的に支持し、他者に推奨する可能性が高まります

そのため、顧客ロイヤルティは、顧客満足度と比較して、売上や収益性との直接的な連動性が高いことが多くの調査で示されています。顧客ロイヤルティの高い顧客は、リピート購入はもちろんのこと、新商品や上位プランへのアップグレード、さらにはポジティブな口コミによる新規顧客獲得にも貢献してくれるため、企業の持続的な成長に不可欠な要素と言えるのです。CRM(顧客関係管理) においても、顧客ロイヤルティの向上は重要な戦略目標とされています。

顧客ロイヤルティの指標NPS

顧客ロイヤルティを具体的に把握し、その高まりを測るための有力な指標として広く認知されているのが「NPS(ネットプロモータースコア)」です。このNPSは、2003年にアメリカで提唱されて以来、GE、Apple、LEGOといった世界的企業がその有効性を実証したことで急速に普及しました。現在では、Google、American Express、P&Gといった名だたる企業でも活用されており、顧客ロイヤルティ測定のデファクトスタンダードとなりつつあります。NPSの大きな特長は、その計測方法と計算方法が極めてシンプルかつ直感的である点にあります。

●NPSの計測方法

NPSの計測は、顧客に対して「あなたは〇〇(製品やサービス)を、ご友人やご家族にどの程度お薦めしたいですか?」という単一の質問を投げかけ、0から10までの11段階で評価をしてもらう形式で行われます。この回答結果に基づき、顧客は以下の3つのカテゴリーに分類されます。

  • 批判者(Detractors): 0~6の点数をつけた顧客。製品やサービスに対して不満や否定的な意見を持っている層です。
  • 中立者(Passives): 7~8の点数をつけた顧客。満足はしているものの、積極的に推奨するほどではない、中立的な立場の層です。
  • 推奨者(Promoters): 9~10の点数をつけた顧客。製品やサービスに強い満足感を示し、他者への推奨意向が高い層です。

●NPSの計算方法

製品やサービスのNPSを算出するには、単純に「推奨者の割合」から「批判者の割合」を差し引きます。例えば、調査対象者のうち推奨者が40%、批判者が20%であった場合、NPSは40%-20%=「20」となります。NPSの値は、マイナスからプラス100までの範囲で示され、この値が高ければ高いほど、その製品やサービスに対する顧客ロイヤルティが高いと評価できます。

●収益性に連動するのは未来の行動を点数化するため

NPSが収益性と強く連動すると考えられているのは、その質問内容に起因します。NPSは「今後、他者に薦めるか」という顧客の将来的な行動を数値化しています。推奨者は、自社の製品やサービスを積極的に広めてくれる可能性が高く、新規顧客獲得に貢献します。逆に批判者は、否定的な口コミを通じてブランドイメージを損なうリスクがあります。このように、NPSは単なる過去の満足度ではなく、将来の顧客行動や事業成長に直結する指標として、その価値が認識されているのです。

顧客ロイヤルティを高める意味

顧客ロイヤルティを高めることには、企業経営にとって極めて重要な意味があります。具体的には、顧客離れの防止口コミによる自然な拡散という、二つの大きなメリットが期待できます。

まず、顧客離れの防止についてです。顧客ロイヤルティが高い顧客は、商品やサービスに対して単なる満足を超えた信頼や愛着を抱いているため、競合他社への乗り換えが発生しにくい傾向にあります。この顧客離れの防止は、収益性の向上に直結します。一般的に、顧客維持率を5%改善できれば、利益率は25%改善すると言われています。特に、BtoBビジネスのように契約あたりの単価が高い業種においては、1件の解約が経営に与える影響は甚大です。そのため、顧客ロイヤルティの向上による顧客離れの防止は、安定した収益基盤の構築に不可欠な戦略と言えるでしょう。

次に、口コミによる拡散です。顧客ロイヤルティが高い顧客は、自社の製品やサービスを積極的に他者に推奨してくれる傾向があります。BtoBにおいては、SNSなどでの派手な拡散は見られないかもしれませんが、業界内での評判を高めたり、取引先企業内の別部署やグループ企業への推薦に繋がったりする可能性があります。新規顧客開拓のチャネルが限られがちなBtoBビジネスにおいて、こうした信頼性の高い口コミによる紹介は、非常に強力なマーケティング効果を発揮し、新たなビジネスチャンスを生み出す源泉となり得ます。

●顧客離れの防止

顧客ロイヤルティを高めることにより、顧客離れを防止することが期待できます。顧客離れの防止、つまりカスタマーリテンションの向上は、収益性を高める上で非常に重要です。一般的に、顧客維持率を5%改善できれば、利益率は25%改善すると言われています。特に、契約あたりの単価が高いBtoBビジネスにおいては、顧客生涯価値(LTV)の観点からも、1件の解約でも大きな損失につながることがあります。そのため、継続的な関係構築による顧客離れの防止は、極めて重要な経営課題と言えるでしょう。

●口コミによる拡散

顧客ロイヤルティを高めることにより、口コミによる拡散も期待できます。特にBtoBビジネスにおいては、SNSなどのプラットフォームを通じた不特定多数への拡散は限定的かもしれませんが、既存顧客からの紹介は非常に価値のある新規開拓のチャネルとなり得ます。例えば、ある企業が貴社のサービスに満足していれば、その企業内の他部署や、取引のある関連企業へ推薦してくれる可能性があります。これは、BtoBの新規顧客獲得における選択肢が限られている状況において、非常に強力な推進力となります。顧客の信頼が、新たなビジネスチャンスを生み出すのです。

顧客ロイヤルティを高めるマーケティングの戦略

顧客ロイヤルティを高めることが、収益性を高めるためには重要であることを見てきました。では顧客ロイヤルティを高めるためのマーケティング戦略はどのようなものでしょうか?

顧客ロイヤルティの2つの側面、信頼度と愛情のそれぞれについて見てみましょう。

●信頼度を高めるための戦略

企業・ブランドとしての信頼度を高めるためには、企業活動についての情報を積極的に発信していくことが有効でしょう。とくに商材やサービスの導入実績の紹介は、どのような企業が自社の商材やサービスを利用しているかがわかりますので、信頼度を高めることにつながります。顧客体験(CX)の向上は、信頼獲得の基盤となります。情報の発信方法は、自社サイトに掲載することが1つです。その他にも、メールや、FacebookなどのSNSなどで情報を公開すれば、顧客との双方向のやり取りが生まれることも期待できます。これらの活動を通じて、企業やブランドへのエンゲージメントを高めることが重要です。

●愛着を高めるための戦略

BtoBにおいては、充実したサポートプログラムは顧客からの高いニーズがあります。サポートは、商材やサービスの導入後だけでなく、導入前にも積極的に実施することが重要です。BtoBにおける購買プロセスは、社内での意思決定に時間を要することが一般的です。この段階において、顧客の意思決定を支援するための役立つ資料の提供などを行うことで、顧客とのエンゲージメントを深めることができます。

さらに、契約が具体的に進行している顧客に対して、有益な情報を提供するセミナーを開催する企業も増えています。このような取り組みは、顧客が「この企業は自社のことを理解し、成功を支援してくれる」と感じるきっかけとなり、ブランドへの愛着、すなわち顧客ロイヤルティの醸成に繋がります。単なる取引関係を超えたパートナーシップを築くことが、長期的な顧客関係の構築において不可欠です。

まとめ

  • 顧客ロイヤルティとは、企業や商材、サービスに対する顧客の「信頼」と「愛情」を総合的に評価する概念であり、単なる満足度を超えて、収益性との強い相関が期待できます。
  • 顧客ロイヤルティを定量的に把握する有効な指標として、推奨者の割合から批判者の割合を引いて算出されるNPS(ネットプロモータースコア)が広く活用されています。NPSは、顧客の将来的な行動を予測するため、収益性との連動性が高いとされています。
  • 顧客ロイヤルティを高めることで、顧客離れの防止につながり、これは利益率を大幅に向上させる効果が期待できます。特にBtoBにおいては、1件の解約が大きな損失に繋がりかねないため、この効果は非常に重要です。
  • さらに、顧客ロイヤルティの向上は、口コミによる新規顧客獲得の促進にも寄与します。BtoBにおいても、社内での推薦やグループ企業への紹介といった形で、有力な新規開拓チャネルとなり得ます。
  • 顧客ロイヤルティの向上戦略においては、商材やサービスの信頼度を高めるための情報発信(導入実績、企業活動の開示など)と、顧客との継続的な関係構築を通じて愛情(愛着)を育むためのサポートプログラムや丁寧なコミュニケーションが鍵となります。

監修者

古宮 大志(こみや だいし)

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長

大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、クライアントのオウンドメディアの構築・運用支援やマーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。Webマーケティングはもちろん、SEOやデジタル技術の知見など、あらゆる分野に精通し、日々情報のアップデートに邁進している。

※プロフィールに記載された所属、肩書き等の情報は、取材・執筆・公開時点のものです

執筆者

マーケトランク編集部(マーケトランクへんしゅうぶ)

マーケターが知りたい情報や、今、読むべき記事を発信。Webマーケティングの基礎知識から、知っておきたいトレンドニュース、実践に役立つSEO最新事例など詳しく紹介します。 さらに人事・採用分野で注目を集める「採用マーケティング」に関する情報もお届けします。 独自の視点で、読んだ後から使えるマーケティング全般の情報を発信します。

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