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要件定義とは?ポイントをわかりやすく

2024.11.20
読了まで約 10

「要件定義」は、システム開発の初期に実施する、プロジェクトの方向性を決める工程です。適切な要件定義なくして、プロジェクトの成功はありえません。

しかし、その重要性は理解していても、具体的に何をどう進めれば良いのか悩むことはありませんか。

今回は要件定義の意味や重要性から、実施のプロセスや記載事項、成功のポイントまでをわかりやすく解説します。

初めて要件定義に関わる方はもちろん、経験者の方も参考にしてください。

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要件定義とは

要件定義は、システム開発プロジェクトの成功を左右する極めて重要な工程です。この工程が不十分だと、プロジェクトの遅延やニーズに合わないシステムが完成するリスクを伴います。

まずは、要件定義の基本的な考え方を押さえた上で、混同しやすい要求定義や基本設計との違いについて確認していきましょう。

要件定義とは

要件定義とは、システム開発の初期段階で、システムが満たすべき条件や仕様を明確化する工程です。

この工程では、ユーザーやクライアントが抱えるビジネス上の課題やニーズを掘り下げ、それらをシステムとして実現可能な形に整理します。具体的には、必要な機能や性能、品質基準、制約条件などを明文化し、要件定義書として取りまとめることで、プロジェクト関係者間の共通理解を築きます。

要件定義は、その後の設計や開発の指針となります。後工程での手戻りや遅延を防ぎ、スムーズに進行させるためには、要件定義を綿密かつ妥協なく固めることが重要です。

要求定義との違い

要件定義と混同しやすい工程に、要求定義があります。両者は似た表現ですが、異なる役割を持つ工程です。

要求定義は、システム開発を希望するユーザーやクライアントが「何を実現したいか」という、ビジネス視点の要望を整理する工程を指します。一方、要件定義は、要求定義を受けて「何を作るか」をシステム的な観点から具体化する工程です。

例えば、ユーザー・クライアントが「ECサイトの売上を増やしたい」と要求した際、「サイトにレコメンド(おすすめ)機能を実装する」という具体的なシステム要件に落とし込むのが要件定義にあたります。

要求定義は原則、ユーザー・クライアントが主体的に行う工程です。しかし、潜在的なニーズを漏らさず引き出すためには、システム開発側も積極的にコミュニケーションをとり、ヒアリングや提案をしながら進めることが不可欠です。

基本設計との違い

要件定義と混同されやすいもう1つの工程が基本設計です。

基本設計は、要件定義に続いて実施する工程で、要件定義で決められた要件をシステムで「どのように実現するか」を具体的な設計に落とし込みます。

例えば、「サイトにレコメンド(おすすめ)機能を実装する」という要件に対して、アルゴリズム設計や表示位置・件数などのUI/UX設計、データベース設計などを行うのが基本設計です。より技術的な視点で、システムの構造を視覚化・文書化する工程といえるでしょう。

基本設計は、その後の詳細設計や実装に向けたインプットとなるため、要件定義の内容を正確に反映させることが重要です。

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要件定義が必要な理由

要件定義は、システム開発プロジェクトの成功を左右する重要な工程です。では、なぜ要件定義はこれほど重要なのでしょうか。

その理由を3つの観点から解説します。

プロジェクト関係者の認識統一

要件定義が必要な理由の1つ目は、プロジェクト関係者での認識統一です。

システム開発には、発注者や開発者、経営層、エンドユーザーなど、さまざまな利害関係者が関わります。各関係者が異なる認識を持ったまま開発を進めると、期待と大きく異なるシステムが完成する可能性があります。

要件定義では、システムの目的や機能、制約条件などを文書化し、関係者間で共有し、認識統一を図ります。これにより、後工程での「こんなはずではなかった」という事態を防ぎ、開発をスムーズに進める土台を作ることが可能です。

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ゴールの明確化

プロジェクトのゴールを明確にすることも、要件定義が持つ重要な役割の1つです。

要件定義では、システムが実現すべき機能や性能、品質基準などを具体的に定め、プロジェクトのゴールを明確にします。これにより、関係者全体が同じ目標に向かって進むことが可能です。

ゴール設定が曖昧なまま開発を進めると、仕様変更や機能追加が頻発するなど、方向性が定まらずにプロジェクトが迷走する可能性が高まるでしょう。また、明確なゴール設定は、進捗状況を客観的に見やすくなり、効果測定や問題点の発見なども迅速にできるようになります。

リスク回避

プロジェクトの潜在的なリスクを洗い出して、対策を計画しておくことも、要件定義が必要な理由の1つです。

システム開発には、予算超過やスケジュール遅延、品質低下、技術的な問題など、さまざまなリスクが潜んでいます。要件定義の段階で、想定されるリスクを洗い出し、顕在化する確率や影響度を評価して対策方針を決めておくことが重要です。

事前に対策が練られていないと、いざリスクが顕在化したときに混乱が生じ、対応が後手に回ることが少なくありません。対応が遅れるほど手戻りが大きくなり、スケジュール遅延やコスト増加を招きます。

こうした事態を回避するために、過去のプロジェクトで得た知見を活用し、リスク対策を計画しておくことが重要です。

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要件定義の3つの視点

要件定義を行う際には、業務要件、機能要件、非機能要件の3つの視点での整理が重要です。これにより、システム開発に必要な要素を漏れなく組み込めるでしょう。

各視点の目的や具体例を解説します。

業務要件

業務要件では、システム化する業務の目的や、実現したい業務フローを定義します。

業務要件はシステム開発の出発点であり、システムが業務をどのように改善し、ビジネスに貢献するかを明確にするためのものです。業務要件では、現状の業務フローや各担当者の役割、業務上の課題、システムで実現したいことなどを定義します。

業務要件が不明確だと、完成したシステムが現場のニーズを満たせず、十分に活用されなかったり、大幅な修正が発生したりする可能性が高まります。業務要件を明確に定義することで、次に続く機能要件と非機能要件の工程をスムーズに進めることが可能です。

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機能要件

機能要件では、業務要件を実現するために、システムが備えるべき機能を具体的に定義します。

機能要件は、システムで「何ができるか」を方向づける、要件定義の中核となる部分です。例えば、「商品の在庫数をリアルタイムで表示する」「取引先ごとに異なる価格体系で計算する」のように、システムに実装する機能を概要レベルで記述します。

後続の工程で大幅な手戻りや、ユーザー・クライアントの期待と異なるシステムができあがるリスクを防ぐため、必要な機能を漏れなく正確に洗い出すことが重要です。また、予算や技術的制約で「できないこと」も明確にしておくことで、認識齟齬などによるトラブルを避けられるでしょう。

非機能要件

非機能要件は、ユーザーが直接利用する機能以外の、システムの安定的な稼働に必要な要素を定義するものです。

代表的な非機能要件として、性能やセキュリティ、可用性、拡張性などが挙げられます。非機能要件はユーザーからは見えにくい要素ですが、システムが安定的かつ安全に稼働するためには不可欠です。

非機能要件では、「ピーク時でも3秒以内にレスポンスを返す」「システムの稼働率99.9%を維持する」のように具体的な数値目標を設定します。非機能要件に見落としや不備があると、システムの本番稼働後に重大なトラブルにつながりかねません。非機能要件は、システムを裏側から支え、信頼性にも関わる重要な要素です。

要件定義のプロセス

要件定義はシステム開発の初期段階で、ユーザーやクライアントの要望をシステム要件に具体的に落とし込んでいく工程です。

要件定義は大きく、ヒアリング、要件の検討、文書化(要件定義書の作成)という3つのプロセスからなります。各プロセスの活動内容を解説します。

要望のヒアリング(ユーザー・クライアント側)

要件定義の最初のプロセスは、ユーザー・クライアントから、要望を聞き取るヒアリングです。

ヒアリングでは、システムを実際に使用するユーザーやクライアントから、業務上の課題や改善したい点、新しいシステムに求めることなどを詳細に収集します。開発者とユーザー・クライアント間で共通認識を確立し、開発すべきシステムの方向性を固めるための重要なプロセスです。

ヒアリングを進める際は、事前に詳細なヒアリングシートを用意します。ユーザーやクライアントは自分たちのニーズを十分に言語化できていない場合もあるため、開発側は積極的な姿勢で潜在的なニーズを引き出すことが重要です。

要求の細分化と要件の検討

要求の細分化と要件の検討は、ヒアリングで得た要望を具体的な要件へと落とし込むプロセスです。

細分化のプロセスでは、漠然とした要望を実現可能な機能として整理し、優先順位付けを行います。例えば、「作業時間を短縮したい」という要望は、「データ入力の自動化機能」「一括入力機能」「テンプレート機能」などの具体的な要件に分解が可能です。技術的な実現可能性や予算、スケジュールなどの制約も考慮しながら、要件の実現方法を検討します。

検討のプロセスでは、要望と実現可能性のギャップを明確にして、ユーザーやクライアントと十分な合意形成を図ることが重要です。

内容を明文化した要件定義書を作成

最後に、ここまでのプロセスで検討した内容をまとめて、「要件定義書」を作成します。

要件定義書は、システムの目的や背景、機能要件、非機能要件、制約条件などを明文化した文書です。要件定義書は以降の工程の土台となるため、曖昧な表現を避け、具体的な数値や基準を用いて要件を記述します。例えば、「レスポンスが速い」ではなく「検索結果の表示を3秒以内」といった具合です。

要件定義書が曖昧だと、関係者の解釈にバラつきが生じ、手戻りや品質低下の原因となります。作成した要件定義書は、開発者やユーザー、クライアントを含むプロジェクト関係者全員で内容に合意し、認識を共有することが大切です。

要件定義書の記載事項

要件定義書には、プロジェクトの目的や方向性を明確にし、設計や開発工程の指針となる重要な文書です。プロジェクトを成功に導くために必要な事項が漏れなく網羅されていなければなりません。

要件定義書に盛り込むべき記載事項を解説します。

目標と課題

「目標と課題」は、システム開発の目的や達成したい目標、解決すべき課題を記載する項目です。

現在の業務やシステムで生じている問題や非効率な部分を挙げ、システム導入によって実現したいことを、指標などを用いて具体的に記載します。例えば、「データ集計に1人あたり毎月8時間を要している」という課題に対して、「集計作業を自動化して工数を90%削減する」といった具合です。

これにより、プロジェクトの方向性を明確にし、関係者全員が同じゴールに向かって動くことができます。目標は具体的かつ数値化し、客観的に評価できるよう記載することが重要です。

システム全体像と構成

「システム全体像と構成」は、システム全体の構成や各機能間の関係性を記載する項目です。

システムの全体像を関係者全員が共有し、設計の誤りを防ぐ役割があります。例えば、システム開発の対象となる機能の範囲やシステムの基本的な構造、外部システムとの連携方法などを明確にします。

システム全体像と構成が不明確だと、設計段階で誤りが発生し、開発の遅延やコスト増加につながる可能性が高まるでしょう。後工程での問題を防ぐためには、図や表を活用しながら、漏れなくわかりやすく記載することが重要です。

機能要件の定義

「機能要件の定義」は、システムが提供する具体的な機能を詳細に記載する項目です。

開発者が実装すべき機能を明確にし、開発側とユーザー・クライアント側の認識を一致させます。具体的には、機能・画面・帳票・データベース・外部インターフェースの一覧やそれぞれの処理概要、業務フローなどを明確にします。

機能要件に漏れや誤りがあると、設計・開発段階での仕様変更や、ユーザー・クライアントの期待とは異なるシステムができあがる可能性が高まるでしょう。後工程での混乱を防ぐため、実現できる機能とできない機能について、ユーザー・クライアントと認識を合わせておくことが重要です。

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非機能要件の定義

「非機能要件の定義」は、ユーザー・クライアントが直接利用する機能以外の、システムを裏で支える要素を記載する項目です。

非機能要件は、システムに求められる構成やリソースを設計するためのインプットとなります。具体的には、性能やセキュリティ、可用性、保守性、拡張性などに関して、実装の方針や数値目標などを記載します。

非機能要件の定義が不適切だと、運用開始後にパフォーマンスやセキュリティの重大な問題を引き起こす可能性があります。業務やシステムの特性を踏まえて、適切な実装方針や具体的な数値目標を定めることが重要です。

スケジュール、予算、プロジェクトメンバーなど

上記のほかに、プロジェクトのスケジュールや予算、体制など、プロジェクトの実行計画に関する記載も、要件定義書の重要な構成要素です。

プロジェクトの初期段階で、全体の実行計画を明確にすることで、進行がスムーズになります。スケジュールや予算、体制に加えて、リスク管理やコミュニケーション管理などの計画を定めておくことも重要です。

プロジェクトの実行計画が不明確だと、スケジュール遅延や予算超過を招き、プロジェクトが暗礁に乗り上げかねません。スケジュールや予算に余裕を持たせ、現実的な計画を立てるとともに、定期的な見直しの仕組みを組み込むことも重要です。

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要件定義のポイント

プロジェクトの基盤となる要件定義を成功させるためには、いくつかのポイントを押さえて進めることが重要です。

質の高い要件定義を行うためのカギとなる7つのポイントを解説します。

ヒアリングを十分に行う

要件定義の成否は、最初に行うヒアリングの質に大きく依存します。

形式的なヒアリングだけでは、業務の本質的な課題や現場の工夫、例外的な業務フローなどを見落とす可能性があります。現場の業務担当者や管理者など、さまざまな立場の関係者から丁寧に要望を引き出すことが重要です。必要に応じて、業務の現場に足を運んで観察するのも良いでしょう。

ヒアリングが不十分だと、現場のニーズとかけ離れたシステムができる可能性が高まります。事前にヒアリングシートを準備し、「なぜ」「どうして」と掘り下げて確認し、本質的な課題やニーズを理解することが重要です。

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開発の目的を明確化する

システム開発の目的を明確化することは、プロジェクトの迷走を防ぐのに不可欠です。

システム開発の目的は「システムの刷新」や「業務の効率化」のような抽象的なものであってはなりません。「なぜこのシステムが必要か」「どのような価値を生み出すのか」という本質的な問いに対する答えを明確にします。

目的が曖昧だと、過剰な機能の実装や、本当に必要な機能の欠落につながる恐れがあります。目的の明確化には、具体的なビジネス価値と紐づけて、できるだけ定量的な指標を設定することが有効です。

対象の範囲を決める

プロジェクトのスコープ(対象範囲)を明確に決めることで、要件追加や仕様変更による失敗を防ぐことができます。

ユーザーやクライアントは、設計や開発着手後でも要件追加や仕様変更を求めてくることが少なくありません。対象範囲が曖昧なまま進めると、要件や仕様変更が膨らみ、スケジュールや予算に大きな負担がかかる可能性があります。

要件定義の段階で、システムに含める業務や機能、対象のユーザー、制約条件などを明確にし、関係者間で合意形成しておくことが重要です。

業種業界を理解する

要件定義を行う上で、システム開発の対象となる業種業界に対する深い理解は不可欠です。

現場の課題やニーズに沿った要件定義書を作成するには、表面的な業務フローだけでなく、なぜそのような業務プロセスが必要なのかという背景まで理解しておかなくてはなりません。理解が不足していると、重要な要件の見落としや、非現実的な要件の定義につながります。

業種や業界に特有の商慣習や法規制、ルールなどを把握することで、実用的で現場に即したシステムを提案できるでしょう。実践的な知識を得るためには、現場業務の観察や担当者との対話が有効です。

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現行システムの課題を知る

システムの移行や刷新を行う場合には、現行システムを分析して、課題を正確に把握することが重要です。

現行システムのボトルネックや使いにくい点、機能の過不足などを知ることで、新システムに必要な要件が洗い出されます。また、現行システムの良い点は新システムにも継承すると良いでしょう。

現行システムの分析が不十分だと、時間とコストをかけて作った新システムでも、同じ問題が繰り返されるリスクがあります。現行システムの課題を多角的に把握するためには、システム管理者だけでなく、現場のユーザーからも広く意見を集めることが有効です。

わかりやすい要件定義書を作る

要件定義書を作成する際は、開発者だけでなく関係者全員が理解できるように、わかりやすく記載することが重要です。

要件定義書は、開発者向けの設計のインプットであると同時に、ユーザー・クライアントや経営層などとの合意形成を図る役割も持っています。難解な文章や曖昧な表現が含まれると、関係者が正しく理解できないままレビューが形骸化し、誤解や見落としを招く可能性が出てきます。

わかりやすい要件定義書を作成するためには、専門用語の多用を避け、図表を効果的に活用するなど、読み手の立場に立った工夫が大切です。

関係者ですり合わせ、合意をとる

要件定義の最終段階では、すべての関係者で内容を確認し、合意を得ることが重要です。

合意形成の過程では、開発者やユーザー・クライアント、経営層などのプロジェクト関係者が、それぞれの視点で要件の妥当性を確認します。また、各関係者の役割と責任が明確になり、後工程での協力や支援も得やすくなるでしょう。

合意形成が不十分だと、要件の追加や変更などのトラブルを招きかねません。合意形成をスムーズに進めるためには、段階的なレビューを実施し、各関係者の意見や懸念事項に丁寧に対応することが重要です。

要件定義に役立つスキル

要件定義を効果的に進めるためには、システム開発の技術力はもちろんのこと、さまざまなソフトスキルも求められます。

特に重要な4つのスキルを解説します。

ヒアリング能力

ヒアリング能力は、ユーザー・クライアントから課題や要望を引き出す際に欠かせないスキルです。

業務の現場には、あたり前だと捉えられるあまり言語化されていない暗黙知や、できて当然と思われている要件が多く存在します。単にヒアリングシートに沿って聞き取るだけでなく、相手の発言の背景にある課題や要望を深掘りして引き出すことで、潜在的な要件を明らかにできます。

ヒアリング能力を高めるには、自由に回答してもらうオープンクエスチョンと、イエス・ノーで答えられるクローズドクエスチョンをうまく使い分け、相手の発言を掘り下げていく訓練を重ねることが効果的です。また、質問では5W1Hを意識して、重要な要素を漏らさないことも大切です。

実現可能性の判断力

実現可能性の判断力は、要望が技術的・予算的・時間的に実行可能かを見極める力です。

要件定義の現場では、ユーザー・クライアントから、理想的ではあるものの実現困難な要望が出されることも少なくありません。このようなケースでは、技術やコスト、時間の制約などを考慮し、代替案を提示しながら、実現可能な範囲の要件に収めていくことが求められます。

実現可能性の判断力が足りないと、非現実的な要件定義が作られ、後工程で大幅な見直しを強いられることになります。判断力を養うには、プロジェクトマネジメントの知識習得に加え、実務経験の積み重ねが必要です。

業種業界の知見や理解

適切な要件を定義するためには、対象となる業種業界の知見や理解も不可欠です。

業界特有の商習慣や法規制、用語、業務プロセスなどを理解しているか否かによって、要件定義のスピードや精度、スピード感などが大きく変わってくるでしょう。例えば、金融業界であれば法規制対応、製造業であれば品質管理プロセスなど、業界特有の要件を見落とさずに定義できます。

業界の知見や理解を向上させるには、業界関連の書籍や記事での学習に加え、現場担当者との対話や業務観察などが有効です。技術面だけでなく業務に興味を持って、前向きに知ろうとする姿勢が欠かせません。

言語化、アウトプット能力

最後に紹介するスキルは、要件を正確かつわかりやすく説明・文書化するための、言語化とアウトプット能力です。

要件定義では、ユーザーやクライアントの曖昧な要望を具体的な要件として記述したり、技術的な内容を非技術者にも理解できるように説明したりする場面が多くあります。優れた言語化・アウトプット能力があれば、そうした場面で認識の齟齬を防ぎ、スムーズに合意形成を図れるでしょう。

言語化・アウトプット能力を高めるには、図表の活用や具体例の提示、階層的な文書構成、できる限り平易な表現を選択するなど、明確さとわかりやすさを意識した表現を心がけることが有効です。

まとめ

プロジェクトの基盤を築く要件定義は、システム開発の成功を左右する重要な工程です。

要件定義の目的は、ユーザーやクライアントの真のニーズを理解し、それを実現可能な形で具体化することにあります。そのためには、十分なヒアリングに始まり、システム開発の目的や範囲の明確化、わかりやすい文書化、そして関係者との丁寧な合意形成が不可欠です。

初めて要件定義に取り組む方や、要件定義の進め方に悩んでいる方は、本記事で解説したポイントを意識しながら、各プロセスを丁寧に進めてみてください。正確で高品質な要件定義を行うことで、後工程でのトラブル防止につながり、プロジェクトを成功に導くことができるでしょう。

監修者

古宮 大志(こみや だいし)

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長

大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、クライアントのオウンドメディアの構築・運用支援やマーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。Webマーケティングはもちろん、SEOやデジタル技術の知見など、あらゆる分野に精通し、日々情報のアップデートに邁進している。

※プロフィールに記載された所属、肩書き等の情報は、取材・執筆・公開時点のものです

執筆者

『MarkeTRUNK』編集部(マーケトランクへんしゅうぶ)

マーケターが知りたい情報や、今、読むべき記事を発信。Webマーケティングの基礎知識から、知っておきたいトレンドニュース、実践に役立つSEO最新事例など詳しく紹介します。 さらに人事・採用分野で注目を集める「採用マーケティング」に関する情報もお届けします。 独自の視点で、読んだ後から使えるマーケティング全般の情報を発信します。

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