近年、新たなサービスや製品の導入においては、顧客が主体的に課題を認識し、解決策を探し、複数の選択肢を比較検討して決定するようになっています。一方で、製品やサービスを提供する企業では、セールスとマーケティングの間で不満が生じ、顧客とのコミュニケーションが適切に取れていないケースがあります。このような状況を改善するために、セールスとマーケティングの間でSLA(Service Level Agreement)を取り交わすことが効果的です。
SLAは、もともとIT業界でサービス提供者と利用者の間で交わされるサービス品質保証や水準合意を指しますが、セールスとマーケティングの連携強化にも活用されています。セールスとマーケティングは顧客獲得という共通目標を持っていますが、業務の特性上、互いの活動を完全に理解することは難しく、不満が生じやすい状況にあります。SLAを通じて、両者の役割や責任範囲、達成すべき指標を明確化し共有することで、円滑なリード管理やフォローアップが可能となり、顧客獲得に向けて一致団結して取り組むことができます。
セールスとマーケティングで交わすSLAには、主に以下の5つの内容が含まれます。
- SLAの概要
- セールスとマーケティングの目標設定
- リードの定義と引き渡し基準
- 両者に求める情報の明確化
- 業務内容と責任範囲の明確化
これらの要素を含むSLAを作成し運用することで、セールスとマーケティングの連携が強化され、効果的な顧客獲得活動が可能となります。さらに、定期的な見直しと必要に応じた修正を行うことで、組織の変化や外部環境の変化にも柔軟に対応できます。
セールスとマーケティングの連携を強化し、効果的な顧客獲得を実現するためには、SLAの作成と運用が重要な役割を果たします。両部門の目標や責任を明確にし、リードの定義や引き渡し基準を共有することで、より効率的な営業活動が可能となります。
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目次
SLAとは
SLAはService Level Agreementの略で、サービス品質保証やサービス水準合意という意味です。もともとはIT業界でサービス提供者と利用者の間で取り交わされるサービス提供レベルを指しますが、近年ではセールスとマーケティングの連携強化にも活用されています。
セールスとマーケティングの関係において、SLAは互いの求める役割や責任範囲、達成すべき指標などを明文化し共有するために取り交わされます。これにより、両部門間のコミュニケーションが円滑になり、顧客獲得という共通目標に向けて効果的に協力できるようになります。
SLAの導入は、セールスとマーケティングの間でしばしば生じる不満や誤解を解消するのに役立ちます。例えば、セールスが「案件につながらないリードを渡される」と感じたり、マーケティングが「引き渡したリードをフォローしてもらえない」と不満を抱いたりすることがありますが、SLAによってこれらの問題を解決できます。
具体的には、SLAで以下のような項目を定義することで、両部門の協力体制を強化できます。
- リードの定義と品質基準
- リードの引き渡しプロセス
- フォローアップの方法とタイミング
- 成果の測定方法と目標設定
- 定期的な情報共有のルール
このように、SLAを活用することで、セールスとマーケティングは共通の認識を持ち、効率的な情報共有を行うことができます。結果として、スムーズなリードの引き渡しやフォローアップが実現し、最終的には顧客獲得の成功率向上につながります。
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SLAで交わす5つの内容
SLAで交わす内容は全部で5つあります。これらの項目は、セールスとマーケティングの効果的な連携を実現するために重要です。SLAを通じて、両部門の役割や責任、目標を明確にし、共通の認識を持つことができます。特に、マーケティングがセールスに引き渡すリードの質を向上させ、セールスがそれらのリードを適切にフォローアップすることで、顧客獲得の効率を高めることができます。
以下に、SLAで交わすべき5つの重要な内容を詳しく説明します。これらの項目を適切に定義し、運用することで、セールスとマーケティングの連携が強化され、最終的には企業の売上向上につながります。また、定期的にSLAの内容を見直し、必要に応じて調整することで、常に変化する市場環境や顧客ニーズに対応できる体制を維持することが可能となります。
①SLAの概要
セールスとマーケティングの両者で取り決める項目を決めます。SLA(Service Level Agreement)は、セールスとマーケティングの連携を強化し、効果的な顧客獲得を実現するための重要な取り決めです。後述に続きますが、それぞれの目標、リードの定義と引き渡し基準、業務内容と責任範囲、お互いに求める情報、そして、定例会議が主な内容となります。これらの項目を明確に定めることで、セールスとマーケティングの役割分担が明確になり、スムーズな連携が可能となります。また、SLAを通じて両部門の共通理解を深めることで、顧客に対する一貫したアプローチが実現し、より効果的なマーケティング戦略とセールス活動を展開することができます。
②セールス・マーケティングの目標
セールスとマーケティングの目標設定は、両部門の連携を強化する上で重要です。セールスの目標は通常、売上高という明確な指標がありますが、マーケティングの目標はより具体的に設定する必要があります。例えば、売上への貢献金額やリードの引き渡し数など、売上に直結する指標を設定することが望ましいでしょう。
マーケティングの目標をリードの引き渡し数に設定する場合、セールスの人数やスキルレベル、対応可能なキャパシティを十分に考慮する必要があります。これにより、セールスとマーケティングの連携がスムーズになり、効果的な顧客獲得につながります。
目標の進捗管理は、共通のCRMやSFAのダッシュボードを活用し、両部門が常に可視化できる状態にしておくことが重要です。これにより、セールスとマーケティングの連携が強化され、リアルタイムで状況を把握できるようになります。
目標が達成できない場合には、セールスとマーケティングが協力して原因を分析し、改善策を立案・実行することが求められます。この過程で、両部門の連携がさらに深まり、より効果的な顧客獲得戦略を構築することができます。
③リードの定義
どのリードがターゲットになるのか、リードの定義を行います。定義するべきリードは「リード」「MQL」「SQL」の3つです。これらの定義は、セールスとマーケティングの連携を強化し、効果的な顧客獲得戦略を立てる上で重要です。
セールスとマーケティングの違いを理解した上で、各リードの特徴を明確にすることが大切です。例えば、「リード」は契約には至っていない見込み顧客を指し、Webサイトのフォーム提出や展示会、ウェビナーなどから獲得した名刺情報が分かっている状態を指します。
「MQL(Marketing Qualified Lead)」は、マーケティング施策により創出されたリードを指します。これは、セールスとマーケティングの連携において重要な概念です。MQLは、リードの温度感によって、ホットリード、ウォームリード、コールドリードと分類されることがあります。
「SQL(Sales Qualified Lead)」は、契約につながりやすいもの、セールスに直結するリードを指します。セールスがアプローチをする対象となるため、セールスとマーケティングの連携において重要な位置づけとなります。
これらのリードの定義を明確にすることで、セールスとマーケティングの役割分担が明確になり、効率的な顧客獲得プロセスを構築することができます。
リード
契約には至っていない見込み顧客。
Webサイトのフォーム提出、展示会やウェビナーなどから獲得した名刺情報が分かっている。セールスとマーケティングの連携において重要な概念であり、顧客獲得プロセスの初期段階に位置づけられる。リードの質や量は、マーケティング活動の効果を測る指標となり、セールスの成果にも直結する。そのため、セールスとマーケティングの両部門が協力して、効果的なリード獲得戦略を立てることが求められる。リードの管理には、CRMツールなどを活用し、適切な情報共有と追跡を行うことが重要である。
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MQL(Marketing Qualified Lead)
マーケティング施策により創出されたリードで、セールスとマーケティングの連携において重要な役割を果たします。MQLは、リードの温度感によって、ホットリード、ウォームリード、コールドリードと分類されます。これらの分類は、セールスがどの程度の優先度でアプローチするかを判断する際に役立ちます。MQLの創出は、マーケティング部門の重要な目標の一つであり、セールス部門との効果的な連携を促進します。MQLの質と量を向上させることで、最終的な売上につながる可能性が高まります。
SQL(Sales Qualified Lead)
契約につながりやすいもの、セールスに直結するリードを指します。セールスがアプローチをする対象となります。SQLは、マーケティングとセールスの連携において重要な概念です。マーケティングチームが生成したリードの中から、セールスチームが商談化の可能性が高いと判断したものがSQLとなります。SQLは、セールスプロセスの中で優先的に扱われ、セールスチームが積極的にフォローアップを行います。マーケティングとセールスの連携を強化し、効果的なリード管理を行うことで、SQLの質と量を向上させることができます。
SAL(Sales Accepted Lead)
マーケティング施策により創出されたリードで、セールスが引き継いでいるリードを指します。セールスとマーケティングの連携において重要な概念です。SALは、マーケティングチームが生成し、セールスチームが受け入れたリードであり、両部門の協力を象徴しています。この段階のリードは、製品やサービスに対する一定の関心を示しており、セールスがさらなるアプローチを行うのに適していると判断されます。SALの管理は、効果的なセールスマーケティング戦略の一環として、両部門が協力して行うことが重要です。
SGL(Sales Generated Lead)
セールスの活動により、マーケティング施策を介さずに直接創出したリードです。これは、セールスとマーケティングの連携において重要な概念です。SGLは、セールス部門が独自に発掘した見込み顧客を指し、マーケティングからの引き継ぎではなく、セールス自身の努力によって獲得されたリードです。このようなリードは、セールスの経験や人脈を活かして見出されることが多く、質の高いリードとなる可能性があります。SGLの創出は、セールスのスキルや市場理解力を反映する指標としても活用でき、セールスとマーケティングの違いを明確にする一つの要素となります。効果的なセールスマーケティング戦略を構築する上で、SGLの重要性を認識し、適切に管理することが求められます。
③リードの引き渡し基準とアプローチ
リードの定義を行った後、次に重要なのはマーケティングからセールスへ引き渡すリードの基準を決めることです。これはセールスとマーケティングの連携において非常に重要な要素となります。
ある企業では、MQL(Marketing Qualified Lead)を製品・サービスの対象有無で判断し、MQLとなったリードはすべてセールスへ一度引き渡されます。そして、セールスがMQLへアプローチを行い、継続してアプローチすると判断したMQLはSQL(Sales Qualified Lead)へと変わります。
また、リードの温度感によってマーケティングでナーチャリング(育成)を行い、一定の温度感に達したらSQLと評価をし、セールスへ引き渡す場合もあります。これは、セールスとマーケティングの効果的な連携を実現するための重要な戦略です。
リードの引き渡す基準はセールスの人数とスキルにより異なるため、リードの定義を行う際にあわせて決めて合意します。また、セールスが継続してアプローチする判断基準や、一定の温度感に達したと判断する基準についても、個人に偏らないように明文化しておくことが大切です。
そして、引き渡されたリードに対するセールスのアプローチを明確にします。具体的にはリードに対し誰が、いつまでに何回、どのようにアプローチするのか、決めていきます。これにより、セールスとマーケティングの連携がより円滑になり、効果的なリード獲得につながります。
また引き渡されたリードに対し、セールスが継続して引き受けるのか、マーケティングに戻すのかという結果のフィードバックや管理について、クローズドリードの取り扱いも決めおきます。このプロセスを明確にすることで、セールスとマーケティングの連携がさらに強化され、より効果的なリード管理が可能となります。
④セールス・マーケティングに求める情報
セールスとマーケティングで共有する情報を定義することは、効果的な連携を実現する上で非常に重要です。セールスは、マーケティングから引き渡されるリード情報を必要としています。これには、潜在顧客の基本的な連絡先情報だけでなく、その顧客の興味や課題、製品・サービスへの関心度などのマーケティング情報も含まれます。一方、マーケティングは、引き渡したリードの結果報告や、見込み顧客のニーズなどセールスからのフィードバックを求めています。このような相互の情報共有により、セールスとマーケティングの連携が強化され、より効果的な顧客獲得活動が可能となります。また、セールスからマーケティングへの情報提供は、マーケティング戦略の改善にも役立ちます。例えば、顧客との対話から得られた製品やサービスへの具体的なフィードバックは、今後のマーケティングキャンペーンやコンテンツ制作に活かすことができます。このように、セールスとマーケティングの間で適切な情報共有を行うことで、両部門の連携が深まり、より効果的な顧客獲得と売上向上につながるのです。
⑤セールス・マーケティングの業務内容と責任範囲
セールスとマーケティングの業務内容と責任範囲を明確にすることは、効果的な連携を実現する上で重要です。両部門の役割を明確に定義することで、セールスとマーケティングの違いを理解し、それぞれの強みを最大限に活かすことができます。
具体的には、以下のような項目を業務別に整理し、担当者が一目で分かるような表を作成します。
- リードの獲得方法(マーケティング施策やセールス活動)
- リードの評価と選別プロセス
- 顧客とのコミュニケーション方法(電話、メール、対面など)
- 商談の進行と管理
- 顧客情報の管理と更新
- マーケティング資料の作成と活用
- 売上目標の設定と進捗管理
この表を作成することで、セールスとマーケティングの連携がスムーズになり、顧客獲得のプロセスが効率化されます。また、責任の所在が明確になることで、問題が発生した際の迅速な対応も可能になります。
定期的にこの表を見直し、必要に応じて更新することで、セールスとマーケティングの連携をさらに強化することができます。
定期的な情報共有
セールスとマーケティングの連携を強化するためには、目標進捗の共有や引き渡したリードに関するフィードバックを行う情報共有を定期的に行うことが重要です。このため、定期的なミーティングの設定が必要不可欠です。リードの獲得から受注までのリードタイムによって頻度は異なりますが、まずは月1回から始めるのが良いでしょう。
これらのミーティングでは、セールスとマーケティングの両部門が互いの活動状況や成果を共有し、課題や改善点を議論することができます。例えば、マーケティングがセールスに提供したリードの質や量について、セールスからのフィードバックを得ることで、マーケティング施策の改善につながります。逆に、セールスの活動状況やリード獲得後の顧客とのやり取りについて、マーケティングが把握することで、より効果的なマーケティング戦略の立案が可能となります。
さらに、これらの定期的な情報共有の場では、セールスとマーケティングの連携を強化するための新たな施策やアイデアを生み出すこともできます。両部門が協力して顧客獲得に向けた取り組みを行うことで、より効果的なセールスマーケティング活動が実現できるでしょう。
このような定期的な情報共有を通じて、セールスとマーケティングの連携が深まり、最終的には顧客満足度の向上や売上の増加につながることが期待できます。
SLAの運用ポイント
SLAを取り交わした後は半年に1度の頻度で振り返りを行いながら、必要に応じて変えていくことも重要です。マーケティングやセールスの組織や外部環境の変化に合わせて見直しを図ることで、セールスとマーケティングの連携を継続して強化していきます。
セールスとマーケティングの連携を効果的に進めるためには、SLAの運用を適切に行うことが不可欠です。そのためには、以下のポイントに注意しましょう。
- 定期的な見直し: SLAの内容を定期的に確認し、必要に応じて更新することが重要です。セールスやマーケティングの戦略が変更された場合、SLAもそれに合わせて調整する必要があります。
- 柔軟な対応: 市場環境や顧客ニーズの変化に応じて、SLAの内容を柔軟に変更できるようにしましょう。セールスとマーケティングの両部門が協力して、常に最適な連携方法を模索することが大切です。
- データ分析: SLAの効果を測定するために、定期的にデータ分析を行いましょう。セールスとマーケティングの連携がどの程度成果を上げているか、数値で把握することが重要です。
- コミュニケーションの強化: SLAの運用を通じて、セールスとマーケティング部門間のコミュニケーションを活性化させましょう。定期的な会議やフィードバックセッションを設けることで、互いの理解を深めることができます。
また、大きな外部環境の変化により運用が難しくなった際には、SLAを廃棄する決断をすることも重要です。そのためにSLAのキャンセル条件をあらかじめ決めておくと良いでしょう。例えば、以下のような条件が考えられます:
- セールスまたはマーケティングの組織構造が大幅に変更された場合
- 新しい製品やサービスの導入により、既存のSLAが適用できなくなった場合
- 市場環境の急激な変化により、現在のSLAが実情に合わなくなった場合
これらの条件に該当する場合は、速やかにSLAの見直しを行い、必要に応じて新たなSLAを作成することが求められます。
セールスとマーケティングの連携を強化し、効果的なリード獲得やコンバージョン率の向上を実現するためには、SLAの適切な運用が欠かせません。常に両部門の状況を把握し、柔軟に対応することで、より効果的な協力体制を構築することができるでしょう。
まとめ
- セールスとマーケティングの連携強化を目的に、互いの求める役割や責任範囲、達成すべき指標などを明文化し共有するためにSLAが取り交わされている
- SLAはそれぞれの目標、リードの定義と引き渡し基準、業務内容と責任範囲、お互いに求める情報、そして、定例会議など、セールスとマーケティングの両者で取り決める項目を決める
- リードの引き渡す基準はセールスの人数とスキルにより異なるため、リードの定義を行う際にあわせて決めて合意する
- SLAを取り交わした後は半年に1度の頻度で振り返りを行いながら、必要に応じて変えていくことも重要
- セールスとマーケティングの連携を強化することで、顧客獲得プロセスの効率化が図れる
- SLAの運用により、セールスとマーケティングの相互理解が深まり、顧客対応の質が向上する
- 定期的なSLAの見直しにより、市場環境の変化に柔軟に対応できる体制を構築できる
- セールスとマーケティングの連携強化は、最終的に企業の売上向上につながる重要な取り組みである

